テーブル - みる会図書館


検索対象: アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1
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1. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

さけごえはっ ろたえた叫び声を発した。 「あら ! 落としちゃったわー 彼女はいすをうしろにおしやると、かがみこんでテーブルの下をさぐった。 / 彼女の右ど きよう なりの席にいたジョージ卿も、テーブルの下をのぞきこんだ。そのさわぎで、グラスがひ ふじん とつ、テーブルからころげ落ちた。スタインや、ルウエリン、ラスティントン夫人らも、 こうなっては知らぬ顔をしているわけにはいかず、最後にはレディ ー・マロウェイも捜索 くわ に加わった。 し くわ ただひとりポインツ氏だけが、さわぎに加わろうとせず、いすにすわったまま皮肉な笑 みをうかべて、グラスのワインをなめていた。 「こまっちゃったわ」と、イーヴがあいかわらずきどった、わざとらしい調子でいった。 「どこへころがってっちゃったのかしら ? どうしましよう ! どこにも見あたらないわ。」 そ、つさく 捜索に手をかしていたものたちも、ひとりまたひとりと立ちあがった。 きよう しようしつ 「きれいに消失したようだよ、ポインツ」と、ジョージ卿がほほえみながらいった。 めいじよゅう 「うまくやりましたな。」ポインツ氏はうなずいていった。「あんたはたしかに名女優にな じよう もんだい れますよ、お嬢さん。そこでです、問題は、あんたがそれをどこかにかくしたか、それと せき し ちょうし ひにく そうさく え 212

2. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

「どうかしたのか、おまえ ? ー彼女の父親がきいた。 ィーヴは、かすれた声でいった。 「ないのよ : : なくなっちゃったの : : : 」 「なにがどうしたんですって ? ーポインツ氏がすすみでてたすねた。 ィーヴは、はげしいいきおいで彼のほうにむきなおった。 とがね もぞうほうせきかざ 「こうなんですーーこのあたしのバッグ、留め金のまんなかに大きな模造宝石の飾りがっ いてるんです。それがゆうべとれちゃって、おじさまからあのダイヤモンドを見せても らったとき、ちょうどおなじぐらいの大きさだなあって、あたし思ったんです。それで寝 もぞうほうせき ながら考えたんだけど、この模造宝石のはめこんであったあとに、おじさまのダイヤを粘 簿 ほんもの 土でくつつけたらどうだろう。そうすればきっと、だれもそれが本物だとは思わないわ事 の こんや ン そう思って、今夜、そのとおりにやってみたんです。 イ はじめそれを床に落として、、、ハッグを手にもったままテーブルの下をさがす。そして、 ねんど とがねあな 用意しといた粘土でそれを留め金の穴にくつつけたら 、、、ハッグをテーブルの上において、 ダイヤをさがしつづけるようなふりをする。 ほら、ポオの『盗まれた手紙』とおんなじよ 最初から最後ま ゆか ぬす ごそんじでしよう ねん 217 ハーカ

3. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

たんじゅんもんだい 「おやおや。」ボワロはつぶやいた。「こんなに単純な問題が解けないとはね。これがあき ひとみ らかなること、マダム・クレイトンの青い瞳にまさるともおとらずさ。」 「あんたはほんとうにそう信じてーーー」 なっとく 「なにも信じちゃいないさーーー証拠をつかむまではね。わたしを納得させるには、あとひ しようこ とつ、小さな証拠があればたりる。」 でんわ けいしちょう けいぶ そしてボワロは電話をとって、警視庁のジャツ。フ警部をよびたした。 けいしちょういっしつ 二十分後、わたしたちは警視庁の一室で、テーブルの前に立っていた。テーブルの上に しなもの ひがいしゃ は、さまざまな品物が小さな山にして積みあげてあったが、それは被害者のポケットには いっていたものだった。 せん せいきゅうしょ まず ( ンカチ、ひとにぎりのばら銭、三ポンド十シリング入りの紙入れ、請求書二、 しやしん 通、ふちが・ほろ・ほろになったマーガリータⅡクレイトンのスナツ。フ写真。あとは、ポケッ こうぐ トナイフに金のペンシル、ぶかっこうな木製の工具などだ。 しな ボワ口がさっそく手をのばしたのは、この最後の品だった。彼がその柄をまわすと、ば らばらと小さな木くずが落ちた。 「どうだね、ヘイスティングズ、この錐こそわたしのさがしていた証拠さ。見たまえ ! つう きん しようこ きり っ もくせし と しようこ

4. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

すか、それともよろこんでくださいますか ? ちょっと間があって、それからハリスンはゆっくりと身を起こした。その顔には、新た ひれつ じがこくふく な威厳がかがやいていた。それは、卑劣な自我を克服した男の顔だった。彼はテーブルご しに手をさしのべた。 かんしゃ 「感謝します」と、彼はいった。「おお ! おいでくださったことを心から感謝いたしま げん あら

5. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

わ 「けっこうです。ついでにおききしますが、ワイングラスが割れたとおっしゃいましたか な ? エヴァンはまたしても目を見はった。 「そのとおりです。テーブルから落ちたところを、だれかに踏まれて、こなごなになりま した。 「やっかいなものですな、ガラスのかけらというのは。」 「で、どなたのグラスでした、それは ? 「たしかあの娘の , ーーイーヴのだったと思います。」 「なるほどー で、そのとなりの、グラスのあった側にいたのは ? き、よ、つ 「ジョージマロウェイ卿です。」 「二人のうちどちらがグラスを落としたか、ごらんにはならなかったでしような ? 」 「残念ながら見ていませんでした。それがなにか と、立ちあがって 「いや、べつに。ついでにうかがってみただけですよ。では そくろう 「きようはこれでけっこうです。三日のうちに、もういちどご足労ねがえませんか ? そ のときまでには、 いっさいをご満足のいくように解決してさしあげられるつもりです。」 ざんねん こ まんぞく かいけっ がわ 。ハイン氏はいっこ。 230

6. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

Ⅱポニントンといっしょに、チェルシーのキ エルキ = ールⅡボワロは、友人のヘンリー エンデヴァー〉で食事をしていた。 ングズ・ロードにあるレストラン、〈ギャラント・ し エンデヴァー〉をひいきにしていたが、それはこの店の ポニントン氏は〈ギャラント・ くわ ふんいき ゆったりした雰囲気と、〈あっさり〉して、〈イギリスふう〉で、〈ごたごた手を加えない〉 ′レ、つり・ 料理が気にいっているからだった。 簿 しんせつ 彼女は件 親切なウ = イトレスのモリーが、年来の知己をむかえるように二人をむかえた。 , の きおく 客ひとりひとりの好きな食べものを、ぜんぶ記憶していることを誇りにしていた。 ワ あんない いちぐう 「いらっしゃいませ」と、モリーは男二人を一隅のテーブルに案内しながらいった。「いし こうぶつ しちめんちょう 日においでになりましたわ。きようは栗をつめた七面鳥がございますー、ーご好物でしょ きやく 二十四羽の黒っぐみ わ ゅうじん ねんらい みせ

7. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

「いや、ぜんぜんそうじゃないね。」イヴシャムがするどくいった。「そんな気配はまった おおあな だんげん コンウェイのいうとおりだよ。みごと大穴をあてながら、 くなかったと断言してもいい。 たいど こううん 自分の幸運にとまどっているギャンブラー。そういう態度だった。」 こんわくみ コンウェイが困惑の身ぶりを見せていった。 「ところがだー・ーーそのわすか十分後に : : : 」 ちんもく いちどう 沈黙が一同を支配した。それから、イヴシャムがこぶしでドンとテーブルをたたいた。 お だが、それはなんだろ 「その十分間に、なにかが起こったんだ。そうにちがいないー う ? もういちど、じっくりとあのときのことを考えなおしてみようじゃないか。われわ れは話をしていた。そのさいちゅうに、ケイベルがふいに立ちあがって、部屋をでていっ こ 「なぜです ? ーと、クイン氏がいった。 こしお 話の腰を折られて、イヴシャムはまごっいたようだった。 「なんといわれたかね ? ー 「こ。こ、 『なぜ ? 』とおたずねしただけですよ。」クイン氏はいった。 きおく イヴシャムは記憶をさぐろうとして顔をしかめた。 し = クインの事件簿 131

8. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

「お嬢さん。」彼はいった。「負けました、かぶとをぬぎますよ。あんたはいままでにで ほうせきどろばう かんぜん あった、もっとも手ぎわのいい宝石泥棒だ。お手なみには完全にシャッポをぬぎます。わ み たしの見たかぎりでは、この部屋からもちだされたはすはないし、あんたが身につけてい ないんなら、これはわたしの負けですな。」 「じゃあストッキングはもらえるのね ? 」イーヴはいっこ。 じよう 「あげますとも、お嬢さん。」 「それにしてもイーヴ、 いったいどこへかくしてしまったの ? 」ラスティントン夫人がふ っこ 0 しぎそうにいナ ィーヴはとびはねるようにすすみでた。 「いま見せてあげるわ。きっとみんな、くやしがるわよ。」 しよくたく そういって彼女は、サイド・テーブルのところへいった。そこには、食卓からどかした しなものざっぜん 品物が雑然と積みあげてあったが、そのなかから彼女は、自分の小さな黒いイプニング・ バッグをとりあげた ようき 「みんなの目の前にあるのよ。ほら、ここに : ・ : 」陽気で得意そうだった彼女の声が、ふ いにとぎれた。「まあーー・どうしたのかしら : : : 」 じよう っ 0 へや ま ふじん 216

9. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

「もう、すずめばちの巣はかたづけてしまったのですか ? 「いや。じつは、やめにしました。」 すたいじ 「ほう ! 」ボワロはそっといった。「すると、すすめばちの巣は退治しなかったのですな。 じゃあ、なにをなさっていました ? 」 「なに、すわってハリスンと話をしていただけですよ。じつは・ほく、ちょっといそいでし とうち るのです。あなたがまだ当地におられたとは、思いもよりませんでしたよ。」 ようじ 「ここに用事がありましたのでね。」 ハリスンならテラスにいますよ。時間がありませんので、ぼくはこれ 「そうでしたかー で失礼します。」 しんけいしっせいねん ン ホワロはそのうしろ姿を見送った。神経質な青年だ。ハ 彼はいそぎ足に立ちさった。。、 サムだが、見るからに気のよわそうな口もとをしている。 「ではハリスンはテラスにいるんだな。ーボワロはつぶやいた。「さて、どうなることか。」 にわきど リスンはテーブルのそばのいすにかけ 彼は庭木戸をとおって、小道を歩いていった。ハ み いた。ボワ口が近づいていっても、身じろぎもせず、ふりむきすらしなかった。 「やあ、あなた。」ボワロは声をかけた。「だいじようぶですかな ? しつれい す すがた 23 ボワロの事件簿

10. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

女をだきとめた。 きけんかんち 「いや、いかをーー命にかかわるんだ。においもない。だから危険を感知することもでき まま ない。ほんのひと吸いで、すべてはおわりだ。どんなに危険か、だれも知らない。い で使われたどんなものともちがうんだ。」 サタースウェイト氏がくりかえしているのは、さいぜん夕食の席でフィリップィース トニーのいったことばだった。 ジリアンはなにがなんだかわからず、ただまじまじと相手を見つめるばかりだった。 じこく フィリップィーストニーは時計をとりだし、時刻をたしかめた。ちょうど十一時半。 かしどお すでに四十五分ちかくも、このテムズ北岸の河岸通りをいったりきたりしている。彼はし事 かわも とたんに鼻先にあらわン ばし河面を見わたし、それから思いきったように向きをかえた れたのは、だれあろう、夕食のとき、テーブルでいっしょになった小男の顔だった。 はち こんばん みよう 「こりや妙だ。」そういってイーストニーは笑った。「どうやら今晩は、あなたと鉢あわせ うんめい ばかりする運命らしい。」 うんめい 「もしきみがそれを運命とよぶならね」と、サタースウェイト氏はいった。 いのち ほくがん わら せき はなさき 189