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経済セミナー 2014年12月号 2015年1月号

Feature 特集 交通経済学への招待 けられている。最近は、電子データでこれを 記録するデジタルタコグラフも普及している。 これらの機器を用いると改ざんが難しくな る。ほとんどの違反は証拠が残ってしまう。 しかし、その解析には相当な手間がかかるの で、検査率と違反率の関係を正しくつかんで 対応する必要がある。 EU では、ドライバー 数の 1 % 以上の検査を義務付けているが、将 来 4 % まで検査率を上げれば違反を減らすこ とができるとみている。日本でも同様の目安 を決めるべきである。 行政による運転時間などの法令順守の取り 締まりは、バス会社の車庫だけで行われてき た。しかし、書類改ざんを防ぎ、事故を水際 で食い止めるためには、運行中のバスを取り 締まる必要がある。 2013 年から、頻度は低い ものの、街頭検査というバスターミナルなど での検査も始められた 9 ) 。 2 人乗務が必要な 路線なのにドライバーが 1 人しか乗っていな いケース、運行指示書自体に違反があるケー ス、安全運行に必要な機器が備わっていない ケースなどをその場で取り締まることができ るようになった。 実際にはそのような例は出ていないが、場 合によっては、運行中のバスを差し止め、運 行中止にすることもできるようにした。その ようなバスに乗車していた利用者にははた迷 惑な話かもしれないが、事後規制がやむを得 ないとして、悲惨な事故を未然に防ぐために 社会が支払わなければならない最小限の機会 費用である。 違反があったときの処分の重さも重要であ る。従来はバス会社間の公平性や処分点数の 客観性に配慮しすぎていて、あまり効果のな い軽い処分もあった。そこで、悪質な場合に は一発でただちに事業停止 ( 廃業 ) となる仕 組みも採用した。また、処分の発令に半年以 上の時間がかかっていたことも改めた。あら ためて交通機関に安全規制を課すということ を考えてみると、従来は、行政側に違反を直 接取り締まることに対して過剰な慎重さがあ った。そして、そのことが機会費用の大きさ からすれば非現実的な事前規制への幻想を 人々に抱かせていた、ということに思い当た るのである。 注 1 ) 国土交通省バス事業のあり方検討会 ( 新 ) 、「高速・貸 切バスの安全・安心回復プラン」フォローアップ会議等。 2 ) 同論文の解説については、寺田 ( 1997 ) 参照。 3 ) エバンズは、もう一点、国内交通と国際交通の差も指 摘している。 4 ) 1 台を 1 つの契約で借り切るバスのこと。対する乗合 バスは、乗客ごとに個別に契約を行うバスのこと。 5 ) 高速ツアーバスとそのルーツについては、寺田 ( 2002 ) 参照。 6 ) 当該政策とその問題点、とくに発着場所確保と運行委 託の制限については、寺田 ( 2014 ) 参照。 7 ) 両規制の経済学的な対比については、横倉 ( 1997 ) が 参考になる。 8 ) 日通総合研究所 ( 2012 ) 、寺田 ( 2013 ) 参照。 9 ) 自動車運送事業者に対する監査のあり方に関する検討 ( 2012 ) の提案による。以下の処分厳格化も同じ。 参考文献 自動車運送事業者に対する監査のあり方に関する検討会 ( 2013 ) 「自動車運送事業者に対する監査のあり方に関す る検討会・報告書』国土交通省自動車局 寺田一薫 ( 1997 ) 「交通におけるリスクと安全措置」 lfMobiIityJ NO. 109 , pp. 64 ー 67. 寺田一薫 ( 2002 ) 『バス産業の規制緩和』日本評論社 寺田一薫 ( 2013 ) 「高速ツアーバス規制と貸切バスの長時間 運転防止」 TIATSS ReviewJ 38 ( 1 ) , pp. 41 ー 48. 寺田一薫 ( 2014 ) 「新局面を迎える高速バスの課題」「高速 道路と自動車」 57 ( 1 2 ) 、近刊 日通総合研究所 ( 2012 ) 「 EU 諸国における自動車運転者の 法規制及び実態に関する調査研究・報告書」厚生労働省 委託調査 横倉尚 ( 1997 ) 「安全規制」植草益編著「社会的規制の経済 学』 NTT 出版、第 7 章 Evans , Andrew W. ( 1997 ) " 日 i sk Assessment by Transport Organizations," Transport Reviews, 1 7 ( 2 ) , pp. 145 ー 163. 46 THE KEIZAI SEMINAR DECEMB ER 2014/JANLIARY 2015

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交通経済学への招待 特集 Feature ろうとは思わなかっただろうな、そしたらど うしていたのだろうと、ふと考えることがあ ります。 私は慶應の商学部で 3 年になった時から交 通論をやってきました。交通経済が専門の増 井健一先生のもとで、べタに交通経済を始め たのです。 最初に取り組んだ交通に関する勉強は過疎 地域の交通についてでした。それで過疎バス とか、離島の航空などを研究しているうちに 結局、経済学の視点から見るとこれは再分配 の間題だな、と。その再分配の方法の 1 つに 交通の価格を下げるとか、地方のバスに補助 金を出すとかという交通を通じた方法がある。 そういう議論を勉強し始めると、そのうちに これは医療でも教育でも基本的に同じ話だと いうことにだんだんと気が付いてきました。 それで、交通経済から経済一般へと対象が広 がってきたのです。 今では授業では、「公共政策」を担当してい ます。公共経済学というほど経済学のきちん とした理論を教えているわけではないので、 「公共政策」と題しています。 ただ、それでも、研究対象は、比較的交通 に関するものが多いです。交通以外にも興味 はあるのですが、交通問題、とくに航空につ いてのニーズが多いので、どうしても中心は そちらになっています。 留学は、金本先生と違ってだいぶ後のほう で 30 代になってからです。 就職されてからですか。 中条そうです。就職してからオックスフォ ード大学に行きました。そこの交通研究所で、 主として航空に関する研究をやりました。 Profile 金本良嗣さん ( かねもと・よしつく ) 1950 年生まれ。米国コーネル大学大学院地域科学専攻修了 ( Ph. D. ) 。プリティッシュ・コロンビア大学経済学部助教授、筑波大学社 会工学系助教授、東京大学経済学部教授、同大学公共政策大学院 教授等を経て、 2011 年より政策研究大学院大学教授。専門は都市経 済学、公共経済学、交通経済学。 著書 : 都市経済学 ( 東洋経済新報社、 1997 年 ) 、政策評価ミクロモ テル」 ( 東洋経済新報社、 2006 年、共著 ) 、「道路投資の便益評価ーー 理論と実践 ( 東洋経済新報社、 2008 年、共著 ) ほか。 その頃は留学される方が多かったのです か ? 金本年に数名といったところですね。そも そも大学院生は数が少なく、いわゆる近代経 済学の大学院生は 5 、 6 人でした。私の大学 院の同期は東大の入試がなかった年だったた め、留年組や他大学から進学してきた人だけ で、さらに人数は少なかったのです。その中 で留学しようという人の割合は高かったです ね。 中条私はまさに東大で入試がなかった年に 慶応義塾大学に入学しました。東大を受けた ら入っていたかもしれないと、いつも言って います ( 笑 ) 。まあ、たぶん落ちていたでしょ うが、万が一、東大に入っていたら同世代の 金本先生にはとても敵わないから研究者にな 12 THE KEIZAI SEMINAR DECEMBER 2014/JANLIARY 2075

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II II II Ⅲ II Ⅲ II II Ⅲ II Ⅲ II II II II II Ⅲ II II ⅢⅢ II II II II II II II II ⅢⅢ ます。徳川の時代、駕篭による江戸ー大坂の移動 には 19 日を要したのに対し、鉄道開通後の 1890 ( 明 治 23 ) 年には東京ー大阪間を 19 時間で移動できる ようになったとのことです。また、 10 貫目 ( 37.36kg ) の羽二重を東京ー福井間で輸送するの に、鉄道開通以前は 10 日間で 1 円 32 銭かかりまし た。 1880 年代になると敦賀ー関ヶ原間の開通によ り 8 日間で 1 円、さらに東海道全線開通により 4 日間で 62 銭となりました。絹織業者にとっては、 東京ー福井間の移動に要する時間もコストも半減 したのです。 こういった進歩は、 ことに製糸業においては貴 重でした。生系の生産において原料となる繭や動 カ源となる薪炭を低コストで大量に調達できるよ うになります。輸送コストが軽減することで低価 格で供給できる量も増えます。さらに重要なこと は、鉄道を利用できるようになることで、決済や 受け渡しまでの時間を短縮できる点にあります。 生糸は主力の輸出品であり、激しい価格変動や為 替リスクに晒されていました。製糸業者にとって はマーケットの情報に迅速に対応できるかどうか が鍵だったのです。スムースな決済は、価格や為 替変動リスクの軽減に繋がります。同時に、「保 険料」などの費用項目も圧縮することができます ( 加藤 1997 ) 。生産・販売の両側面において、鉄道 はビジネス上の計算感覚を様変わりさせたのです。 0 鉄道敷設には当然ながら土地の買収が不可欠で す。すでに繁栄している宿場町付近の土地よりも 農地を買収するほうが低コストで済みます。その ため駅や線路は、従来から栄えていた宿場町より 概して距離を置いて建設されます。ただし、土地 買収に対する不満、鉄道敷設による農業水利の変 化に対する不安、洪水など自然災害リスクの懸念 など、各地で反発の声も上がります。反発は百も 承知の上で、自治体あるいは各地のビジネスマン は鉄道敷設を要望します ( 青木 2006 ) 。 だからこそ、鉄道事業においては、たとえば甲 州の根津嘉一郎など、地域社会の利害を調整する コーディネーターが重要な役割を果たしました ( 老川 2010 ) 。明治期鉄道会社の経営者は、大株 主のみならず中小株主、あるいはさまざまな利害 関係者の意向を調整するために奔走しました ( 片 岡 1988 、石井 2013 ) 。 鉄道の敷設は企業立地を誘発し、産業化を促進 します。この関係が見せかけの相関ではないとい うことを検証した研究があります。 Tang ( 2014 ) は、明治期の府県別データを用いて、差の差の検 定 (difference-in-differences; DID) と呼ばれる手 法による分析を行いました。分析結果から、鉄道 敷設は企業立地を統計上無視できないほどに増加 させており、なおかっその効果は人口規模 ( 1883 年時点 ) に依存していた、とのことです。鉄道敷 設は企業立地を増大させるかたちで資本投資を誘 発するとともに、企業間取引を活発化し、ひいて は日本の経済成長を牽引していくことになったの です。 明治維新の前後、交通の発達を受けてビジネス 現場の計算感覚が一変しました。現在、リニアモ ーターカー建設が具体化するなど、交通の新機軸 が登場しつつあります。どのようなコーディネー ションが展開され、人々の行動原理がどう変化し ていくのか、注視したいところです。 参考文献 青木栄一 ( 2006 ) 『歴史文化ライブラリー 222 鉄道忌避伝説 の謎ーーー汽車が来た町、来なかった町』吉川弘文館 石井里枝 ( 2013 ) 「戦前期日本の地方企業ーー一地域における 産業化と近代経営』日本経済評論社 老川慶喜 ( 2010 ) 「第 6 章根津嘉一郎」小池滋・青木栄一 和久田康雄編「日本の鉄道をつくった人たち」悠書館 片岡豊 ( 1988 ) 「明治期における株主と株主総会一一鉄道業 の合併をめぐって」「経営史学第 23 巻第 2 号 , pp. 33 ー 58. 加藤要ー ( 1997 ) 「鉄道敷設における地元の「認識」と「実 際」一一明治期山梨県における馬車鉄道を事例に」「社会 経済史学第 63 巻第 3 号 , pp. 346 ー 377. 中西聡 ( 2009 ) 「海の富豪の資本主義ーー北前船と日本の産 業化」名古屋大学出版会 深井甚三 ( 2009 ) 「近世日本海海運史の研究ーーー北前船と抜 荷」東京堂出版 藤野正三郎 ( 1965 ) 「日本の景気循環ーー循環的発展過程の 理論的・統計的・歴史的分析』勁草書房 南亮進 ( 1965 ) 「長期経済統計推計と分析 12 鉄道と電力」 大川一司・篠原三代平・梅村又次編、東洋経済新報社 山本弘文 ( 1983 ) 『叢書・歴史学研究維新期の街道と輸送』 増補版、法政大学出版局 Tang, JOhn P. ( 2014 ) "RaiIroad Expansion and lndus- trialization: Evidence from Meiji Japan, JournaI Of Economic History, 74 ( 3 ) , pp. 863 ー 886. 0 ⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢ II Ⅲ II II II II II II II II Ⅲ II II ⅢⅢⅢ 70 THE KEIZAI SEMINAR DECEMBER 2014/JANLIARY 2015

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FeatureI 特集交通経済学への招待 情報通信技術で蘇る ロードプライシングの理論 シンガポールとアメリカの事例から ロードプライシング、つまり道路混雑料金の理論とは、混雑している道路の利用者 から料金を徴収することで、道路サービス市場に生じる非効率を減らす理論であ る。世界で初めて実際に導入されたシンガポールの事例や、アメリカの事例を紹 介しつつ、より効果的なロードプライシングのあり方を考察する。 根本敏則 Nemoto Toshinori 一橋大学大学院商学研究科教授 1 はじめに された。その後、混雑・環境問題への関心の ステッカー方式のロードプライシングが導入 ポールで、都心部入域許可制度として簡便な しかし、 1975 年には、世界で初めてシンガ 現は困難と評価されていた。 組みを構築するのが難しいことなどから、実 して、該当する利用者から料金を徴収する仕 れにくいこと、混雑する道路・時間帯を特定 料金を課すことに対して社会的な理解が得ら されたときは、混雑している道路の利用者に ( 1961 ) によって提案されている。ただ、発表 題に応用したもので、 50 年前に WaIters 部不経済を内部化するピグー税を道路混雑問 ーっである。限界費用価格形成原理に従い外 発され現実の交通政策に役立っている理論の 混雑料金 ) の理論は、交通経済学の分野で開 ロードプライシング (Road Pricing ; 道路 30 THE KEIZAI SEMINAR DECEMBER 2014/JANLIARY 2015 高まり、情報通信技術を用いた課金システム の開発などがあり、導入事例が増えている。 なお、交通需要の最適管理を目指すロードプ ライシングと、財源調達が目的の有料道路は 区別しておきたい ( ただし、有料道路の枠内 で夜間・早朝割引などのロードプライシング を活用することは可能である ) 。本稿では、 両者の違いを理解するためにロードプライシ ングの理論を確認した上で、各国の導入事例 を紹介したい。 著者紹介 1953 年生まれ。東京工業大学大学院社会工学専攻修了 ( 工学博 士 ) 。東京工業大学工学部助手、福岡大学経済学部教授を経て、 1997 年より現職。専門は交通経済学、ロジスティクス・マネシメン ト。著書 : 「対距離課金による道路整備』 ( 勁草書房、 2008 年、共 著 ) 、「自動車部品調達システムの中国・ ASEAN 展開ーートヨタ のグローバル・ロシスティクス ( 中央経済社、 2010 年、共著 ) ほ か。

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させ、それを用いて⑨式の期待値を、シミュレー ションによって発生させた標本の標本平均で近似 することによって、オプションの価格を評価して います 7 ) 。分析の結果、彼らは、① ARFIMA (x) モデルのパフォーマンスカゞ最も良いこと、② Hansen-Lunde 調整によって調整した実現分散や 実現力ーネルの方がパフォーマンスが良いこと、 ③実現力ーネルを用いた価格付けの方が良いパフ ォーマンスを示した一方で、 Hansen-Lunde 調整 を施した場合は、実現力ーネルと実現分散の間に はそれほどパフォーマンスに違いがないこと、な どを発見しました。②は Hansen-Lunde 調整がオ プションの価格付けに関して有用であること、③ は Hansen-Lunde 調整が、部分的には実現分散の バイアスをも修正している可能性があること、を 5 ・まとめ 示唆しています。 今回は、近年発展が著しい高頻度データを用い た分析について解説をしました。 こでは紹介し ませんでしたが、 こ数年、実現分散を ARCH - GARCH 型の離散時間モデルと組み合わせる研究 も盛んに行われています。そのようなモデルは、 実現 GARCH モデルなどと呼ばれ、それらを用い た実証研究によると、既存のモデルよりも良いパ フォーマンスを示しています。また VaR や期待シ ョートフォールなどのリスク指標の評価にも、実 現分散や実現 GARCH モデルなどが応用されてい ます。これらについて詳しくは Watanabe ( 2012 ) を参照してください。 注 1 ) 実現分散 (Realized Variance) は実現ボラティリティ (Realized Volatility) とも呼ばれます。 2 ) ブラウン運動は「ウィーナー過程」とも呼ばれます。 3 ) これは例えば、伊藤の公式によって 1 。 gS ( のの確率微分 方程式を求め、これより ( 5 ) 式を求めれば、そこから ( 4 ) 式を求めることができます。 4 ) S ( のが、 ( 6 ) 式ではなく一般の幾何ブラウン運動に従う とした場合は、裁定機会がない場合に「リスク中立確率」 の下で、⑥式の幾何ブラウン運動に従うことが証明でき ます。 5 ) S ( t) が一般の幾何ブラウン運動に従う場合には、 の期待値は「リスク中立確率」の下でとられます。以後 の期待値もとくに言及しない場合、リスク中立確率の下 でとっています。 こでの確率的ボラティリティモテルは、厳密にいう と連続時間確率的ボラティリティモテルと呼ばれるもの です。これに対して、離散時間確率的ホラティリティモ テルと呼ばれるものがあり、これは連載第 3 回で述べた ARCH 型モデルのように、離散時間確率過程として定義 されます。 7 ) 実際にはコールオプションではなく、ブットオプショ ンを分析しています。ブットオプションについても同様 の方法により価格を評価できます。 参考文献 Andersen, T. G. , T. BoIIerslev, F. X. Diebold and P. Labys ( 2001 ) "The D istri but i on of Realized Exchange Rate VoIatiIity, JournaI the American StatisticaI Associa- on , 96 ( 453 ) , pp. 42 ー 55. Bandi, F. M. and J. R. Russell ( 2008 ) "Microstructure Noise, ReaIized Variance, and Optimal Sampling, Review of Economic Studies, 75 ( 2 ) , pp. 339 ー 369. Barndorff-NieIsen, O. E. , P. R. Hansen, A. Lunde and N. Shephard ( 2008 ) "Designing ReaIized KerneIs tO Mea- sure the Ex POSt Variation Of Equity Prices in the Presence Of Noise," Econometrica, 76 ( 6 ) , pp. 1481 ー 1536. CampbeII, J. Y. , A. W. LO and A. C. MacKinIay ( 1997 ) The Econometrics Of FinanciaI Markets, Princeton University press. Hansen, P. R. and A. Lunde ( 2005 ) "A Forecast Compari- son Of VoIatiIity ModeIs: Does Anything Beat a GARCH ( 1 , 1 ) ? " Journal of Applied Econometrics, 20 ( 7 ) , pp. 873 ー 889. HuII, J. and A. White ( 1987 ) "The pricing of Options on Assets with Stochastic Volatilities," Journal Of Finance, 42 ( 2 ) , pp. 281 ー 300. Patton, J. A. ( 2011 ) "Volatility Forecast Comparison Using lmperfect VoIatiIity Proxies, JournaI Of Econometrics, 160 ( 1 ) , pp. 246 ー 256. Ubukata, M. and T. Watanabe ( 2014 ) "Pricing Nikkei 225 Options Using ReaIized VoIatiIity, Japanese Economic Review, 65 ( 4 ) , pp. 431 ー 467. Watanabe, T. ( 2012 ) "QuantiIe Forecasts of Financial Returns Using Realized GARCH models," Japanese Economic Review, 63 ( 1 ) , pp. 68 ー 80. 金谷太郎 ( 2009 ) 「マーケット・マイクロストラクチャー ノイズがある場合のボラティリティ推定」「経済論叢」第 183 巻第 2 号、 pp. 77 ー 86 木島正明 ( 1994 ) 「ファイナンス工学入門《第Ⅱ部》派生証 券の価格付け理論」日科技連出版社 木島正明・小守林克哉 ( 1999 ) 「シリーズ《現代金融工学》 8 信用リスク評価の数理モデル」朝倉書店 渡部敏明 ( 2007 ) 「 Realized Vo ⅲ ty ーーサーベイと日本の 株式市場への応用」「経済研究」第 58 巻第 4 号、 pp. 352 ー 373 DECEMBER 2014/JANUARY 2015 THE KEIZAI SEMINAR 101

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交通機関の安全を 規制することの難しさ 高速バスの事故防止 安全な高速バスによる移動サービスを妥当な運賃で提供するには、とうすれはよ いのか。 事前規制と事後規制について紹介しつつ、経済学的な視点で検討する。 寺田一薫 Terada Kazushige 東京海洋大学大学院海洋工学系教授 1 悲惨な事故をなくしたい 悲惨な事故の映像を見ることは悲しい。 2012 年 4 月に関越道で起きた高速バス事故は いまだ記憶に新しい。この事故によって高速 バスと聞けば危険な乗り物というイメージが、 いつまでも人々の記憶の片隅にこびりついた とすれば、本当に残念な出来事である。 どのようにすれば安全なバスを、社会が許 容するコストと運賃で供給できるのかという 問いに答を出すのは容易ではない。関越道の バス事故の後、コストや運賃は少し高くなっ てもよいから安全なバスを望むという方向に 世論が変化した様子がうかがえた。しかし、 仮にその方向性で人々の意見が一致したとし ても、安全性というのはきわめて多様な要素 を組み合わせたものである。対策のために国 土交通省が設けた会議 1 ) でも、それらのいろ いろな要素をどのように組み合わせ、どのよ うな方法で、どれぐらいの安全水準を達成す るのかという具体案作りの段階で、関係者の 意見を一致させることはたいそう難しい状態 が続いている。交通機関の安全性を考えると きには、ある程度割り切った整理が必要にな る。 2 公共交通はマイカーより安全である べきか 交通機関の安全問題への客観的な整理とい うことでは、英国での議論が参考になる。本 節では、 Evans ( 1997 ) の整理を引用するこ 著者紹介 1957 年生まれ。 1986 年慶應義塾大学大学院商学研究科後期博士 課程単位取得退学。博士 ( 商学・神戸大学 ) 。徳山大学経済学部 教授、東京商船大学商船学部教授等を経て、 2012 年より現職。専 門は交通経済論、都市交通論、物流経済論。著書 : 「バス産業の規 制緩和」 ( 日本評論社、 2002 年 ) 、通信と交通のユニバーサルサー ビス」 ( 勁草書房、 2013 年、共著 ) 、「都市交通の世界史ーー出現す るメトロホリスとハス・鉄道網の拡大」 ( 悠書館、 2012 年、共著 ) ほ か。 DECEMBER 2014/JANLIARY 2015 THE KEIZAI SEMINAR 41

「ドイツ帝国」が世界を破滅させる : 日本人への警告

図表 19 ヨーロッパにおける 1 人当たり購買力平価実質 GDP : ドイツとの比較 ( 1988 ~ 2010 年 ) ( 2005 年の恒常ユーロと 2005 年の為替レートにおける GDP) ドイツ 0 11 り朝 4 ・ー -8- ウクライナ 2009 ( 年 ) 2003 2006 出典 : 世界銀行 & EU 統計局 2000 1994 1997 1988 1991

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Feature とにする 2 特集交通経済学への招待 英国では、安全性への投資に対しても、公 共投資のケースと同じ費用便益分析が行われ ている。マンチェスター空港での航空機の火 災事故後、 1993 年には航空機客室へのスプリ ンクラー設置義務化に関する費用便益分析が なされた。その結果、スプリンクラーの設置 で救われる人命は世界で年間 14 人と予測され、 当該政策は費用が便益を上回るとして棄却さ れている。 英国の国内交通と関係する国際交通につい て死亡事故率をみると、事故率が低い交通機 関から順番に、公共交通、マイカー、船とな る ( 正確には、旅行時間当たり死亡者数の少 ない交通手段から、バス、鉄道、航空、自家 用車、徒歩、自転車、自動二輪の順 ) 。 なぜ、交通機関によって、安全対策の水準 ( 安全対策の限界費用 ) に違いが生じたまま になっているのであろうか。そのことを跡づ ける理由として、人々の世論を反映している であろう現実の政策がいくつかの特徴を持っ ていることを Evans ( 1997 ) は指摘している。 第 1 に、利用者自身が事故をコントロール できるかどうかである。たとえば、自家用車 のドライバーが危険を承知で単独事故を起こ すのは仕方がない。そのため、自家用車の安 全性は低くてよい、つまり公共交通の方が安 全でなくてはならないと考えられているので はないか。 第 2 に、一度に多くの死傷者が出る事故は、 死傷者数に対する比例以上に重く扱われる。 このため、事故 1 回当たり死傷者の多い公共 交通、とくに大量輸送には高い安全性が求め られがちになる。 第 3 に、物損 ( 環境面も含む ) と比較して 人損を大きく評価する傾向がある。このため、 船舶などの物流交通機関の事故と比べて旅客 42 THE KEIZAI SEMINAR DECEMBER 2014/JANUARY 2015 交通機関の事故が大きく捉えられる 3 ) 。 当然のこととして、単純な費用便益分析で は、自家用交通と比べてバスなどの公共交通 を特別扱いすべきということにならない。だ が、上記を総合すれば、社会は公共交通の方 に高い安全性を要求し、そのことには根拠が あるとみるべきである。 安全対策の限界費用に差が生じていて、追 加の一定額をマイカーの安全対策に投じた方 が助けられる人命の数が大きいのに、そのお 金を公共交通に投じているという現実は、 概に誤りとは言えず、バスは、マイカーより も事故率が低いばかりでなく、実は最も安全 な交通機関である。それにもかかわらず、社 会はバスにさらなる安全を求めていて、その ことはわが国にも当てはまると考えられる。 3 高速ツアーバスという運行形態 冒頭で言及した、 2012 年 4 月に関越道で事 故を起こし問題となったバス会社は、貸切バ ス 4 ) 市場で 2000 年に行われた規制緩和以後の 新規参入者であり、車両台数からみた規模も 19 台と大きくなかった。このことから、新規 参入バス事業者、中小バス事業者悪者論が起 きる。 事故を起こしたバスは、その時点の事業区 分で、正規の乗合バスではない運行形態の高 速ツアーバスであった。高速ツアーバスとは、 旅行会社が貸切バスの座席をばら売りするこ とで、乗合バスの許可とその運行のための事 業計画認可なしに運行されている事実上の定 期輸送サービスである 5 ) 。 2006 年にも、貸切バスの座席のばら売りと いう点で共通する夜行運転のスキーバスが、 大阪府で添乗員 1 名を死亡させる事故を起こ した。死亡事故を連続して引き起こしたとい

シャルリとは誰か? : 人種差別と没落する西欧

第 3 章 逆境に置かれた平等 地図 3 ーー 2 失業率 2014 年末の失業率 12 ー 16 % ロ 8 ー 10 % [ : 二一 5 ー 8 %

「ドイツ帝国」が世界を破滅させる : 日本人への警告

1988 図表 1 1 ヨーロッパにおける 1 人当たり購買力平価実質 GDP ( 1988 ~ 2010 年 ) ( 2005 年の恒常国際的購買力平価 GDP 〔ドル換算〕 ) ーク ドイツ フランス ・イギリス 1991 1994 1997 2000 2003 ( ドル ) 45000 40000 ・・ 35000 30000 25000 20000 15000 10000 5000 0 2009 ( 年 ) 出典 : 世界銀行 イタリア 2006 図表 12 ョーロッパにおける 1 人当たり購買力平価実質 ( 2005 年の恒常国際的購買力平価 GDP 〔ドル換算〕 ) GDP ( 1988 ~ 2010 年 ) アンマ ーラルタ共和国 アイルランド ドイツ スペイン ポルトガル - スロパキア ( ドル ) 50000 40000 キプロス ~ / ルーマニア " " ギリシャ” ハンガリー プルガリア - 30000 20000 10000 1988 1991 1994 1997 2000 2003 0 2009 ( 年 ) 出典 : 世界銀行 2006 74