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文藝春秋2016年7月号

凸版印刷株式会社印刷 printed in 」 apan paid 50n F 「 ancis ( 0. ( alif. (USPS 0 / 9 ・ 500 ) Entered 05 2nd-Class Ma ・ Po 0 ( ・ San F 「 ancis ( 0. Calif.,U. S A.. 2n 0055 PO 0 "THE BUNGElSHUNJU"July 2016. VOL94 No. 10 pu トト ed Mon 出ツ by BUNGEISHUNJU Ltd. TO JAPAN 大正十二年一月三十日第三種郵便物認可 Panasonic ニッポンの暮らしに 耳を傾けました。 3 万人以上への家電調査から始まった、新しい家電づくりの挑戦。これからの ニッポンに求められる機能は ? 使い勝手は ? フォルムは ? たくさんの声をカに ニッポンの知恵と技術を結集。それは、旬の味わいを愛し、家事を楽しむ人に ふさわしいこの国ならではの家電。心地いいニッポンを、 美味しいニッポンを、もっともっと楽しんでほしいから。 豊かに年齢を重ねてきた、この国の大人たちへ。 J コンセプト。 ニッポンの心づかいと美意識を、かたちに J コンロプト concept 0 詳しくはバナソニック株式会社ホームページで Wonders! 0 ご購入の際は、必す「保証書」の記入事項をご確認のうえ、 大切に保管してください。 0 ご使用の際は、必す「取扱 panasonic. JP/jCOnCePt/ by Panasonic 説明書」をよくお読みのうえ、正しくお使いください。 隹誌 0 / 701 ー 0 / 4 91 0 0 7 7 01 0 7 6 4 0 0 81 5

小説すばる2020年12月号

「牧本要蔵と申しますー 「解りました」 「戻った」 後ろ手に戸を閉めつつ、斎藤は屋内に声それ以上なにも言わず、時尾は黙って斎男は卑屈なくらいに媚びた笑みを浮か おもね をかけた。白足袋を履いた爪先で静かに廊藤に背をむけた。奥の方から母を呼ぶ勉のべ、斎藤に辞儀をした。相手に阿るような ときお 下を撫でる音をさせながら、妻である時尾声がする。急かされるようにして時尾は、態度が、なんとなく作り物染みている。 「私はあなたに見覚えがないのだが、どこ が姿を見せる。張り出た腹が重そうだっ廊下の奥に消えた。 汗で汚れたシャツのまま、斎藤は廊下をかでお会いしたかな」 ゆるりと歩む。閉ざされた客間の障子戸の「お目にかかるのは初めてです。ですが、 「お帰りなさいませ」 かまち 靴を脱ぎ、框から廊下に上がると、時尾むこうに、気配がひとっくぐもっていた。私はあなたのことを、よく知っている。ね が背後に回る。うながされるようにして制指先を引手にかけて、少しだけ開く。客間え斎藤一さん」 服の上着から腕を抜いていると、妻の静かの気配は動こうとしない。それを確認して卑屈な容貌はそのままに、牧本は不快な ひんと張った両腕が、し から、一気に開いた。六畳ほどの部屋の真言葉を口にした。。 な声が聞こえた。 しつら ちゃぶだい ん中に設えられた卓袱台の奥に、こぢんまきりに動いている。膝を撫でているのだ。 「お客様ですー りとした体格の男が座っている。細面でどそのせせこましい仕草は、山崎とは正反対 「誰だ」 やまざき だった。あの元間者は、どんなことがあっ ことなく山崎を思い出させる風貌だった。 「牧本様と仰る御方です」 たかぎこじゅうろう 時尾は、会津藩大目付高木小十郎の娘間者という生き物は、どこかで似通ってくてもつねに堂々としている。それはもう、 すがすが である。五年前に妻に貰った。もちろん斎るのかも知れないなどと、斎藤は密かに思厚かましいを通り越して清々しいほどだ。 「御用は」 藤の前歴を知っている。だから主人の客のった。 いに、上目遣いの牧本の目が弓 ことをとやかく詮索はしない。 座したままこちらを見上げる男と視線を斎藤の卩 ゆが 合わせたまま、斎藤は腰のベルトから刀を形に歪んだ。目だけが笑っている 「そうか [ 「今日、陸軍省に呼ばれましたな」 外す。そして妻に牧本と名乗った男の前に 「客間で待っていただいておりますー あぐら お前は勉ととも座る。胡坐をかき、膝の上に手首のあたり腐っても元は太政官直属の間諜組織に所 「なにも出さなくてしし に奥にいなさい を乗せた。正座でかしこまっている牧本を属していた男だ。そのあたりは抜け目がな 勉は二歳になる息子である。時尾の腹の見つめながら、一度小さく息を吸いこん 「それで」 なかには二人目の子がいた。あとふた月もだ 「御会いなされたのは、陸軍卿山県有朋で すれば生まれる。 「藤田五郎です」 せんさく っとむ 148

小説すばる2020年12月号

「それが私の名であります , い煙を立ち昇らせる。ひとしきり肺腑に吸藤を見上げる目が、わずかに下がる。ふた 「戸籍の上で : ・ と、い、つことかな」 い込んだ後、ゆっくりと口から吐きだしたび手の甲に顎を乗せたのだ。 思わせぶりな言葉遣いをする男である。た。その間も男は、黙ったまま斎藤を注視「その名で呼ばれたのは何年ぶりか。久し もったい じゅうたん 勿体ぶっていて回りくどい。こういう喋りし続けている。毛足の長い絨毯を踏みしぶりに聞いても悪い気はせん。狂介に戻す うかが 方をすることで、相手の出方を窺っているめながら、男へと近づく。机の上に置かれか」 のだ。少しでも動揺を面に出せば、待ってた灰皿の縁で、人差指と中指の間に挟んだ「貫属戸籍で、改名は禁じられている」 ましたとばかりに喰らいついてくる。 煙草を叩いた。近づいたことで男の顔がよ「そうだった」 やまぐちじろう くちもし」 「藤田五郎、山口二郎、そして : ・ うやく形を持つ。やたらとロ許が印象に残山県の笑い声に自嘲が滲む。前歯がせり 男はそこで言葉を切った。 る顔だ。前歯が大きく張り出している。 出したロが、怪しく蠢く。 「斎藤一 , 「調べはついているんだろ」 「そろそろ本題に移ろうか」 言葉を奪うようにして、斎藤は言った。 「君は己の立場が解っていないようだな」 吸い口あたりまで灰になったまま危うい 男が甲の上の顎を、かすかに上下させる 相手は陸軍中将、斎藤は警視局の警部試均衡を保っている煙草を灰皿に押しつけ、 こも すべての行いが陰に籠っていた。 補だ。互いの身分には天と地ほどの開きが背筋を伸ばして山県を見下ろす。 せいいんかんぶ 「あの頃の京にいた志士のなかで、その名ある。本来なら斎藤の身分では、こうして「正院監部という言葉を知っているか」 を知らぬ者はいない」 一対一で言葉を交わすことなどできない相斎藤は沈黙を答えに代える。 「新撰組三番隊隊長の名ですー 手だ。 「八年ほど前、太政官直属の機関として設 いびつ おも 「藤田警部試補の言う通りだ」 斎藤のロ角が歪に吊りあがる 立された部署だ。主に行っていたことは、 「なにが言いたい」 「昔は、俺たちから逃げ回っていた長州者新政府に不満を持つ者たちの調査。要は間 声を荒らげもせず、斎藤は問う。いい加が、偉そうな口を利くじゃないか」 者よ 減、回りくどい問答に付き合うのはうんざ「時代が変わったのだよ」 「話が見えんな」 りだった。男が手の甲から頭を上げた。影「過ぎ去った昔を持ち出したのは、あんた「案外せつかちなのだな、三番隊隊長は」 やまがたありとも に彩られた肩が、一度緩やかに上下する。の方だろ。陸軍卿山県有朋さんよ。ああ、 しつこく昔を持ち出す山県に辟易してい 斎藤は制服の胸ポケットから箱を取り出俺のことを昔の名で呼ぶのなら、あんたはる斎藤が黙っていると、陰険な目付きの中 きょ・つすけ し、紙巻き煙草を一本つまむと、燐寸を擦狂介か」 将は話を続けた。 ほのおとも った。茶褐色の葉に焔が点り、先端から細山県が小さな笑い声をひとっ吐いた。斎「正院監部自体は警視庁内に国事警察が創 マッチ しゃべ うごめ へきえき

新潮45 2016年09月号

川浜市鶴見区に引っ越し、長男は川り仕切っている会社ですから、重要書類ほうから船会社でロシア語ができる人間 崎にあった東芝のトランジスタ工場に勤が山ほどあるわけです。それを随時コピを求めているという話があった。これは めることになった。 ーして渡すだけでなく、公にできない活すぐに就職させられると、兄は東洋共同 そこで一家はそれぞれ大きな転機を迎動もしていました。弟も別の会社に就職海運に、弟は別の運輸会社の横浜支店に えることになるのだ。 させるということでした」 就職させました」 堂上氏は、昭和三七年に鬚学校に人 ソ連に留学し語学が堪能ということで、 公安警察と吉田家 兄弟とも公安警察からリクルートされた学し、翌年から神奈川県警の戸 . 部署、横 まず長男について。 というのである。昭和五一年のことだ。浜水上署、本部外事課、鶴見署などに勤 さらりと驚くべき話が攜された。そ にわかには信じがたい話だが、当時、務し、公安擎鬚の最前線で諜報活動を行 ってきた人物である。途中、ロシア語の の話を聞いた時、何度も聞き返さずには彼を勧誘した神奈川県警の刑事にもイン いられなかった。 タビューすることができた。仮に堂上明教育も受けている。 「公安警察の方から、日ソ合弁の船会社氏とするが、七八歳の彼の記憶は鮮明だ彼は吉田家と非常に親密な関係を築き、 で働かないかという話があったんです。った。 一家ぐるみの付を答いに発展する。清治 そこでロシア語ができる人を探している「東芝の。ハーツ工場にソ連の大学を卒業氏の妻フサ工さんは昭和五四年に死去す ので、人社して彼らを監視してほしい。 した人物がいるという情報が人ってきて、るが、その葬儀を取り仕切り、翌年の次 横浜港に人るソ連船の船舶業務を全部取会いに行きました。当時、水上警寂旧の男の結婚式にも親族として出席している。 築和 朝本人へ伝えたいごど ( , で平 季登輝 物トニ、 旧で戸 も李登輝 定価】本体 1100 円 ( 税別 ) 日本人へ ーダー不在、 哲人政治家・元台湾総統が叱咤激励 ! ゼロ ( 米一国支配終焉 ) 時代のニッポンの進むべき道。 毎日新聞出版 〒 102-0074 東京都千代田区九段南 1 ・ 6 ・ 17 httø://mainichibooks ℃ om/ 65 慰安婦問題を作った男の肖像

天皇の世紀 3

暴で、どんな処置にも出る。重役として現実の難易成敗も計ることなく、おのれの才カ を頼んで、軽々しく事を弁ぜんとするのは以てのほかだ。行末頼もしからず、と叱りつ けられた。 久木がたくみに舵を取ったので、斉昭は知らずに反省してその方角に出た。返納を已 むを得ぬと考えたのである。しかし、久木が恐れながら御前にては勅書につき如何御取 計い遊ばさるる思召かと伺いを立てると、よく考えて見よう、その方たちも執政どもと よく協議せよと答えただけで意志を明らかにしない。水戸の老公も数年前の豪快な猪突 的な気性を示さなくなっていた。 翌日、水戸城内に大評定を開き、家老杉浦羔一一郎を初め、重臣の元家老の面々、諸番 しりぞ 頭、弘道館教職の者が集った。半年前の幕府の沙汰に依り激派の者は斥けられて藩の要 路に在るのは保守的な鎮派の者が多い。勅諚の返納は已むを得ないと見たのが全体の空 気である。 ただ直接水戸藩から朝廷に返納すべしという意見が強く打出された。激派の者は、も とより返納に反対である。これまでに藩を追いつめて来た幕府の遣り方を怒って、感情 動 的にも拒否を主張する。論理ではない。論理的でありながら不思議に軟弱なのは弘道館 反総教会沢正志斎の主張であった。御家老を使者として直々に返納されるがよく、その際 四公辺より然るべき役人を見届に遣わされるように、と言い、「御家より御直達の儀も、 や

天皇の世紀 1

の甲板で火を焚き、船では大切な飲料水を勝手に使用して物を煮炊きする、時間を厳守 しないのも、その頃の下層の日本人にある習癖で、オランダ人教師を困らせた。 地方の藩から来た留学生の方が、江戸から来た旗本の生徒よりよく勉強して成績がよ かった。これが、江戸人と、田舎の者と分裂して不和を起す原因ともなり、仲裁には教 師のオランダ人が入る場合さえあった。新しい伝習所の中に、直参と外様との区別がや はり入っているのだ。オランダ人の教師が困ったことは、成績の悪い者を叱って戒めて も、中に立っ通詞が相手の身分が高いと遠慮して、教師の叱責を十分に伝えないで、ご まかして済ますことである。しかし、全体として伝習所学生の知的探究心は、語学の不 便を越えて、実に烈しかった。禁じられていた未知の世界に俄かに入ることになったせ いもあろう。これだけ、知識に渇えている若者は、西欧以外のどこにも見らないのを、 自たち。がしナ オランダ政府が派遣した既」一一にが鶤司理ど交代する第一一次の班が一八五六年 ( 安 政三年 ) に長崎に着いた。幕府がオランダに注文した軍艦の竣工 : 、遅れていこ ようやく出来上がったのに乗込んで、試運転も行わずに、極東までの大航海に出た。オ ランダ側で付けた船名は、ヤ。ハン ( 日本丸 ) だったが、日本に着き幕府に引渡されてか し」あ咸臨仇 . を冷名は第た。この艦長とな 0 て渡日し、伝習所の教授とな 0 たのが、カ〉テ ンディーケ中佐である。三十七名の教育班をひきいて、前任者と交代した。 418 カ

新潮45 2016年09月号

と、こぼしている。 え人れ、そのまま宮の部屋に導かれた師手塚治虫の『奇子』で、皆にバカにさ 桜はは美しいけれど、枝がもろく忠は彼女と関係を持ってしまう。 れていた頭の弱いお涼も、奇子同様、実 父は天外作右衛門であった。にもかかわ て折りやすい、手応えがない、とコメンやがて前斎宮は妊娠。 トしたのだ。 彼女の相手が自分ひとりではないと知らず、作右衛門に溺愛されていた奇子と そしてその後はふつつり訪れないのだ った実兼は不快に思うものの、やはり思違って、家族の一員として認められず、 から、異母妹への能蓙としても恋人へのい当たるふしがあったのか、お産の時も天外家に仕える立場であった。 能蓙としても不誠実極まりない。 心を込めて世話をして、財産分与もした お涼がここまで粗末にされるのは、頭 『増鏡』第九によれば、前斎宮は、″後という。 が弱いからという以上に、 " 腹〃が卑し 嵯峨院の更衣腹の宮〃であった。と、い実兼の誠実さが救いとはいえ、亠人いからだろう。 ちいち誰の腹から生まれたかを明記するたちの性がここまで軽く扱われるのは、 れつきとした長男の嫁が生んだ奇子と のがこの時代ので、上から史呂 ( 皇天皇の母方が力をもっていた光女中期と、違って、お涼は小作人 ( 吾助 ) の妻が生 后 ) ↓女御↓更衣という序列のある妃の違い、光女後期に人って、天皇の父方Ⅱんだ子だ。 中で、最下位の身分の女から生まれた皇院が力をもっ院政が行われるようになっ近親者のあいだで女が共有される様と 女であったわけだが ( ちなみに後深草・たためだろう。要するに女の価値が下がいい、″腹〃で扱いの変わる様といい、 亀山両院の母は中宮 ) 、後深草にやり捨って、地位も低下したのだ。 光女後期から鎌倉時代の性の実態が残っ てられた前斎宮を訪れたのが実兼 : : : 一一 ているかのような『奇子』の設定には驚 腹か卑しいから 条の恋人であるから、ややこしい。 かされる。終戦直後あたりには、昔の風史 実兼は前斎宮のもとに誠実に通い続けついでに言うと実兼の正妻は、一一条の習が脈々と受け継がれているこうした旧 の たので、前斎宮の母代わりの人も黙認す父のいとこの娘に当たる。実兼の正妻と家が残っていたのかもしれない。 るようになったころ、お忍びでそのあた一一条ははとこどうしなわけで、近い血筋そんな世界では、家族の中にありとあ で りにいた大臣の一一条 ( 藤原 ) 師忠が、華で、地位や立場が違ってしまう。ことにらゆるエロの基本が隠されている。 図 それが、系図の一一重線に込められてい女 やかな様子で来る実兼一行にし、こよると、仕える側と仕えさせる側になる の前斎宮の敷地内でやり過ごそうとした。という、光女中期と同様の社会の仕組みるのだ。 それを宮の家の者が実兼と勘違いして迎が表れている。

小説すばる2020年12月号

それはこの男の掌中での出来事であった「監部であった頃の伝手で三菱の末端会社 設されて以降解体され、今はもうない。 いんうつ が、監部の間者たちの多くは、その後も政はずだ。しかし陰鬱な中将は、塚本との間に勤めている。渉外担当などと言ってはい るが、給金泥棒だ。どうせ脅迫めいたこと 柄など噫にも出さない。 府要人に飼われて生き延びておる」 「あんたも飼い主の一人って訳か」 「叛乱を企む者を調査、捕縛する。そんなをして潜り込んだのだろう」 間者などをしていると、人の弱味を嫌と ことは一警部試補のやれることではない」 山県が微笑を浮かべ、なおも語る。 いうほど知る。それを元手にすれば、金に 「飼い大の一匹を殺して欲しい 国事警察。それが斎藤の真の所属先であ 「何故、俺がー る。この事実を知るのは、警察でも上層の困らぬ生活もたしかにできる。 「僕が知らないと思っているのか」 数人だけだ。公の立場は、警視局警部試補「奴には家族がいない。死んでも誰も困ら ん。喜ぶ者は山ほどいるだろうがな。ま 国事警察という言葉が山県の口から出たである。 時に、覚はしていた。 「これは陸軍卿として、国事警察所属の藤あ、世直しだと思ってくれればいい」 つかもとなにがし 「一年ほど前、塚本何某なる士族とその一田五郎警部試補に頼んでいるのではない。 「人殺しに世直しもへったくれもないだ 党が逮捕された一件で、君は大層活躍したあくまで山県有朋一個人として、斎藤一君ろ」 そ、つじゃないか に依頼しているつもりだ」 「都の警護などと御託を並べ、さんざん人 人身売買などを手掛けていた士族、塚本山県はあえて、斎藤一と呼んだ。つまりを斬り殺しまくっていた君の言葉とは思え しんばち 新八を逮捕するために、斎藤はずいぶん骨現在の藤田五郎に用があるのではなく、新んな」 を折った。西南戦争、そして立志社の騒動撰組三番隊隊長であった斎藤一に人を殺し「嫌だと言ったらどうする , たくら から続く不平士族たちの企みは、この塚本て欲しいということなのである。 山県の縦に太く横に短い眉が、わずかに 新八の逮捕によって一応の収東を見た。そ「もちろん君の上司にも話は通していな吊りあがる してそれを機に、陸軍は参謀本部を立ち上 いこうして正式に面会を依頼しはした「こういう時に、僕のような人間が考えて野 いることなど、君にはとっくにお見通しだ げ、内務省の手を離れたのである。塚本をが、その辺りのことはうまくほかしてい 操っていた人物。それが眼の前の山県だとる」 ろ」 盛 斎藤は睨んでいた。 ぬかりはないのだろう。別に斎藤は、心 の 夜 配もしていなかった。 山県はなおも語る。 明治十ニ年八月ニ十日午後七時三十分 まきもとようぞ・つ つな 東京根津宮永町 「塚本は立志社とも繋がり、政府に叛乱を「牧本要蔵。それが獲物の名だ」 企んでいたそうじゃないか」 極めて淡々と山県が告げた。

ヤクザ式相手を制す最強の「怒り方」

「は、はい」 「私が経費をどうのこうのという批判をキミがしているというウワサだが、まさかそんなこ とはないよな」 「もちろんです ! 」 という返事になるのだ。 「叱りつけたいテーマ」を直接口にせず、「キミ」という人間をョイショで攻め、冷や汗を かかせたところで「まさかキミが」 と追い込めば、恨みどころか、忠誠の言葉さえ吐か せることができるのだ。 160

ちいさいなかま 2016年09月号

してください かって、日本の右翼思想の大物が、戦争責 任者が処罰されないまま戦後がスタートした ことは、「必ず禍根を残す」と語ったことが かみ ある。なぜなら、「お上」は何をしても裁かれ ないことが暗黙の前提となってしまうからだ。 その怖れは的中した。福島第一原発事故の 責任は今日に至るまで問われていない。安倍 みそう 政権は、経済政策の未曾有の大失敗を認め す、反省もせず、消費税増税の先送りで国民 174 わたしの アングル イラスト デュフォ恭子・・ 辛淑玉 しん・すご 人材育成コンサルタント ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える 国際ネットワーク「のりこえっと」共同代表 著書には 『差別と日本人』 ( 角川 One テーマ 21) 『怒りの方法』 ( 岩波新書 ) 「その一言が言えない、このニッポン』 ( 七つ森書館 ) 「その手に乗ってはいけない」 ( ちいさいなかま社 ) ほか多数