マロウェイ - みる会図書館


検索対象: アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1
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1. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

も身につけているかということですが ? ・ しんたいけんさ 「じゃあ身体検査をしてごらんなさい。 ィーヴは芝居がかった身ぶりでいった。 し あたりを見まわしたポインツ氏は、部屋のすみにある大きな衝立に目をとめた。 きようふじん 彼はそのほうへあごをしやくって、つぎに視線をマロウェイ卿夫人とラスティントン夫 人にむけた。 「お手数ですが、ご婦人がた きようふじん えがおおう 「ええ、よろしゅうございますわ。」マロウェイ卿夫人は笑顔で応じた。 ふじん 二人の婦人は立ちあがった。 きようふじん マロウェイ卿夫人はいっこ。 てかげん しんばい 「どうかご心配なく、ポインツさん。わたくしたち、手加減せずに調べますから。」 き ついたて 三人は衝立のうしろに消えた。 まど 部屋のなかは暑かった。エヴァンⅡルウエリンが窓をおしあけた。ちょうど窓の下を新 ぶんう 売り子は新聞を投げあげた。 聞売り子がとおりかかったので、エヴァンは小銭をほうり、 ルウエリンはそれをひろげた。 じん み てすう こ あっ ふじん み しせん ついたて しら しん = パインの事件簿 213 カ

2. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

けいさっ ら、警察をよんで、身体検査をしてもらうことになりますよ。」 しんこく けいさっ 「かまわないわ、ちっとも。でもね、警察をよぶなんて、そんな深刻な事件になることは ふじん なくてよ。レディ マロウェイかラスティントン夫人におねがいして、気のすむまでさ がしていただくわ。」 「なるほど、ではそうしましよう。 , ポインツ氏はいった。「それにしてもお嬢さん、あん しよ、つらい いちりゅうほうせきどろほう たは将来、一流の宝石泥棒にでもなるおつもりですかな ? 」 わる わり しようばい 「そうね、それを商売にするのも悪くはないわねーーーもしほんとうに割のあう商売なら。」 みようじよう ぬす 「〈明けの明星〉を盗みだせば、ひきあいますよ。カットしなおしても、三万ポンドはく だりませんから。」 「まあ ! 」イーヴは感じいったようにいった。「ドルになおしたら、いくらになるかしら。」 はっ きようふじんたんせい マロウェイ卿夫人も嘆声を発した。 こうか ほ、っせき 「そんな高価な宝石を、いつももちあるいていらっしやるんですの ? 三万ポンドもする ものを ? 」 ひなん 非難がましくそういうのにあわせて、黒いマスカラをつけたつけまっげがふるえた。 ラスティントン夫人だけはおだやかにいった。 あ ふじん しんたいけんさ し じけん じよう 208

3. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

しゅ かくせいき の小屋が三つもあって、それそれがべつの音楽を拡声器から流している。 まど 「窓をしめよう。これでは話もでぎない。」 まど し ポインツ氏がふきげんにいって、自分から窓をしめにいっこ。 いちどう 一同がテーブルをかこんで席につくと、ポインツ氏は満面に笑みをたたえて客たちを見 じしん まわした。この客たちをじゅうぶんにもてなしているという自信があったし、そのうえ、 よろこ しせんじゅん 彼の視線が順ぐりに客のうえにとまった。 ひとをもてなすのがなによりの喜びでもあった。 / かんぜんほんもの じようりゅうふじん きようふじん りつばな上流夫人だ。むろん、完全な本物とはいえない。 まず、マロウェイ卿夫人 じん クレム・ド・ラ・クレム いっしよう それはよくわかっているーー、彼が一生をつうじて〈社交界の粋〉とよびならわしてきた人 しようち そんざい ふさい 種は、マロウ = ィ夫妻などとはほど遠い存在だということは、じゅうぶん承知のうえだ。 簿 し いちりゅうじんし しかし、そうよばれるほどの一流人士となると、むこうがポインツ氏を相手にしてくれ事 の ン / . し イ きようふじん いきびじん だから、たまにブリッジでい ともあれ、マロウェイ卿夫人はすばらしく粋な美人だ きよう かさまをやることがあっても、大目に見ることにしている。だが、ジョージ卿にはそんなカ まねはさせない。見るからにこすからそうな目をして、金もうけとなると、どんなことで ばあい . し、刀十 / もやりかねない男だ。しかし、このアイザックⅱポインツが相手の場合は、そうま、 こや せき おおめ え まんめん かね あいて きやく 203

4. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

わ 「けっこうです。ついでにおききしますが、ワイングラスが割れたとおっしゃいましたか な ? エヴァンはまたしても目を見はった。 「そのとおりです。テーブルから落ちたところを、だれかに踏まれて、こなごなになりま した。 「やっかいなものですな、ガラスのかけらというのは。」 「で、どなたのグラスでした、それは ? 「たしかあの娘の , ーーイーヴのだったと思います。」 「なるほどー で、そのとなりの、グラスのあった側にいたのは ? き、よ、つ 「ジョージマロウェイ卿です。」 「二人のうちどちらがグラスを落としたか、ごらんにはならなかったでしような ? 」 「残念ながら見ていませんでした。それがなにか と、立ちあがって 「いや、べつに。ついでにうかがってみただけですよ。では そくろう 「きようはこれでけっこうです。三日のうちに、もういちどご足労ねがえませんか ? そ のときまでには、 いっさいをご満足のいくように解決してさしあげられるつもりです。」 ざんねん こ まんぞく かいけっ がわ 。ハイン氏はいっこ。 230

5. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

んば娘 ? まさかね。では、マロウェイ卿夫人 ? しかし彼女の場合は、あなたがそのよ うな離れ業をやってのけたと知ったら、あなたを見なおしこそすれ、さげすみはしないで たしよう ふじん しような。わたしは多少あのご婦人を知っているのです。すると、のこるのはラスティン ふじん トン夫人しかありません。」 っこ 0 ルウエリンはややしばらくしてから、 いいに / 、みごっにしオ けいけん 「あのひとは いままでずいぶんつらい経験をしてきてるんです。夫にえらんだ男が、 ふだ しんよう 札つきのごろっきでしてね。それからというもの、すっかりひとを信用しなくなりました。 彼女はーー、もし彼女が・ほくの一」とをーーー」 いじよう それ以上、ことばはつづかなかった。 じたい 「お気持ちはわかります。」。、 パイン氏はいった。「事態の重大さものみこめまし さっきゅうぎわく た。早急に疑惑を晴らす必要がありますな。 わら エヴァンはそっけなく笑った。 「いうだけなら、たやすいことですがね。」 じっこう 「実行することもかんたんです。」 「そうお思いですか ? 」 むすめ はなわざ ひつよう きようふじん し じゅうだい おっと 228

6. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

した。とにかく、・ほくはそれを投げなかったとしか申しあげられません。もちろん信じて いただけるとは思っていませんがね。あなただけじゃなく だれからも。」 「いや、わたしは信じていますよ」と、 ハイン - 氏はいっこ。 「信じてくださる ? なぜです ? 」 はんざいしゃ 「あなたが犯罪者のタイ。フじゃないからです。」。 ハイン氏はいった。「いや、こ うししましよう 宝石を盗むような犯罪者のタイ。フではないと。むろん、あなただって、 もんだい なんらかの犯罪をおかすことがないとはいいませんーー・もっとも、いまはその問題には立 ちいりませんがね。とにかく、あなたがその〈明けの明星〉を盗むことはない 、とわたし は見ています。」 「ところがほかの連中はみんなそう見ているーと、ルウエリンはに : 「なるほど。」。 ハイン氏はいっこ。 「あのときみんなは、そろって、おかしな目つきでぼくを見た。マロウェイなんか、わざ まど わざ新聞をとりあげ、つづいて窓のほうを見たものです。なにも、 しいはしませんでしたが、 さっ ポインツはすぐにそのいわんとするところを察したようでしたよ。。ほくにだって、彼らの ひなん 考えていることはびんときた。表だって非難はしませんが、それだけに、かえってこっち しんぶん はんざい れんちゅう ほうせきぬす おもて し はんざいしゃ あ みようじよう し ぬす し 力にがしげにいっこ。 224

7. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

「いや、まったく。ジョージ卿のご提案はもっともだと思いますな。わたしは全面的に賛 成です。」 「・ほくも賛成です。」エヴァンⅱルウエリンがいた きようふじん しめ さんい ラスティントン夫人がマロウェイ卿夫人を見ると、これもかるくうなずいて、賛意を示 な した。二人の女性は衝立のむこうへ消え、イーヴも泣きながらあとにしたがった。 ウェイターがドアをノックしたが、いまは入れるわけこよ、 冫をしかないといわれて、ひきさ 力 / 五分後、八人の男女は、信じられぬといったおももちで顔を見あわせていた。 あ みようじよう かんぜんしようしつ 〈明けの明星〉は、完全に消失していた : しあん せいねん 。ハイン氏は思案ぶかげなまなざしで、むかいあった色のあさ黒い青年の、お ひょうじよう ちつかぬ表情をながめた。 しゆっしん 「むろんあなたはウェールズのご出身でしような、ルウエリンさん ? 」と、彼はいった。 じけん かんけい 「それがこの事件となにか関係があるのですか ? 」 し パイン氏は、大きな、手入れのゆきとどいた手をふった。 さんせい じよせい ふじん ついたて し きよう ていあん き 0 ぜんめんてきさん 220

8. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

さけごえはっ ろたえた叫び声を発した。 「あら ! 落としちゃったわー 彼女はいすをうしろにおしやると、かがみこんでテーブルの下をさぐった。 / 彼女の右ど きよう なりの席にいたジョージ卿も、テーブルの下をのぞきこんだ。そのさわぎで、グラスがひ ふじん とつ、テーブルからころげ落ちた。スタインや、ルウエリン、ラスティントン夫人らも、 こうなっては知らぬ顔をしているわけにはいかず、最後にはレディ ー・マロウェイも捜索 くわ に加わった。 し くわ ただひとりポインツ氏だけが、さわぎに加わろうとせず、いすにすわったまま皮肉な笑 みをうかべて、グラスのワインをなめていた。 「こまっちゃったわ」と、イーヴがあいかわらずきどった、わざとらしい調子でいった。 「どこへころがってっちゃったのかしら ? どうしましよう ! どこにも見あたらないわ。」 そ、つさく 捜索に手をかしていたものたちも、ひとりまたひとりと立ちあがった。 きよう しようしつ 「きれいに消失したようだよ、ポインツ」と、ジョージ卿がほほえみながらいった。 めいじよゅう 「うまくやりましたな。」ポインツ氏はうなずいていった。「あんたはたしかに名女優にな じよう もんだい れますよ、お嬢さん。そこでです、問題は、あんたがそれをどこかにかくしたか、それと せき し ちょうし ひにく そうさく え 212

9. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

ダイヤモンド・ ) 」う いくらかぎこちなく、ポインツ氏はゆうべメリメイド号でいったことばを、思いだせる かぎり正確にくりかえした。 しな 「たぶんみなさんは、この品をごらんになりたいと思います。ことのほか美しい宝石でし あ みようじよ、つ て、わたしはこれを〈明けの明星〉とよんで、一種のマスコットとし、膚身はなさずもち あるいています。いかがです、ごらんになりますか ? 」 きようふじん たんせい 彼はそれをマロウェイ卿夫人にわたした。夫人はそれをうけとって、その美しさに嘆声 し みごとなも をもらし、それからそれをレザーン氏にまわした。レザーン氏は、「美しい たいど のだ」と、どこかわざとらしい態度でいうと、それをルウエリンにわたそうとした。 ほ、っせき ちゅうだん そこへウェイターたちがはいってきたので、宝石をまわすことはいったん中断され、彼 さ しな らが去ったあとで、あらためてエヴァンがそれをうけとり、「ひじようにみごとな品です ねといいながら、レオにわたした。うけとったレオは、なにもいわずに、さっさとイー ヴにまわした。 「なんてすてきな宝石でしよう。」 しゅんかんほうせき ィーヴはきどったかんだかい声をあげたが、つぎの瞬間、宝石を手からとりおとし、う せいかく ほ、っせき 0 し いっしゅ はだみ うつく ほうせき 210

10. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

二人の男は、すぐさま勝負に熱中しだした。 きようふじん それを見てマロウェイ卿夫人が、エヴァンⅱルウエリンの耳もとでささやいた。 「子どもなのはイーヴだけじゃないらしいわね。」 ほうしん びしよう ルウエリンは微笑しつつうなずいたが、そのようすには、どこか放心したようなところ があった。 その日一日、ルウ = リンは、むここにあらずといったふぜいでふるまっていた。一度か 二度は、話しかけられて、とんでもない的はずれな返事をしたこともある。 ハメラマロウェイは、つと彼のそばをはなれると、夫に話しかけた。 わか 「あの若いひと、なにかに気をとられてるみたいね。」 「なにかか、でなければだれかにね」と、ジョージ卿はささやきかえした。 しせん そして彼の視線は、ちらりとジャネットⅡラスティントンのほうへむけられた。 きようふじん マロウ = イ卿夫人はちょっとまゆをひそめた。背のすらりとした、こった身なりの女性 かさんご である。耳につけたまっ赤な珊瑚の玉にあわせて、爪を真紅に染め、黒い目はゆだんのな→ きよう おっと さそうな光をはなっている。夫のジョージ卿は、ごくむそうさに、〈元気いつばいのイギリ やく じようりゅうしんし ス上流紳士〉といった役どころをきどっているが、それでいて明るいブルーの目には、夫 しようぶ ねっちゅう きよ、つ つめしんく おっと じよせい = パインの事件簿