ラングトン - みる会図書館


検索対象: アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1
11件見つかりました。

1. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

「えーーーオ冫 よこーーーそのーーーもちろんですよ。きらいなわけがないでしよう ? す 「気にかかったものでねーー、彼を好いておられるかどうかが。」ボワロは平静にいっこ。 あいて そのあと、相手が答えようとしないのを見てとって、彼はつづけた。 「それにまた、ラングトンさんがあなたを好いているかどうかも気にかかります。」 「いったいなにをおっしやりたいのです、ボワ口さんワ・なにか考えていることがおあり らしいが、わたしにはさつばりわけがわからない。」 そっちよく ハリスンさ 「では、ごく率直にお話しいたしましよう。あなたは婚約なさいましたね、 じよう みりよくてき ん。お相手のモ リーⅱディーン嬢はわたしもそんじあけています。ひじように力的で、 こんやく うつく ひじようにお美しい。ディーン嬢はあなたと婚約するまえに、クロード日ラングトンと婚 かいしよう 約していました。あなたのために、ラングトンとの婚約を解消したのです。 ハリスンはうなすいた。 りゅう 「その理由がなんであったかは問いますまい。おそらく正当な理由があったのでしよう。 しかし、ラングトンとしては、けっしてわすれてはいないし、ゆるしてもいない、そう考 えても、考えすぎではないと思います。」 だんげん 「それはまちがいですよ、ボワ口さん。あなたの誤解だと断言してもよろしい。ラングト じよう と ごかい こんやく せいと、つ 17 ボワロの事件簿

2. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

「それで、 ハリスンさん、ラングトンさんがすすめばちの巣を退治するのに、ガソリンを 使うということは、たしかなのでしような ? 」 「たしかですとも。なぜです ? 」 くすりや 「ふしぎに思ったからですよ。じつは、きようの午後、用があって。ハーチェスターの薬屋 どくぶつこうにゆうば にいったのです。 いくつか買ったもののうち、毒物購入簿に署名しなければならないのが ちょうば らん こうにゆう やくぶっせい ありまして、そのさい、たまたま帳簿の最後の欄が目にとまりました。購入した薬物は青 酸カリ、署名はクロードⅱラングトンとありました。」 ハリスンは目を見はった。 「そいつはおかしい。ラングトンは先日、自分の口からいっているのですよーー、ーそういう はちすじよきょ やくひん 薬品を使おうなんて考えたこともないって。じじつ、蜂の巣を除去するくらいのことで、 きけんせい やくひん あのような危険性の高い薬品を売るべきではないといってたほどです。」 しつもん ボワロは、ばらに目をやった。つぎの質問を口にしたとき、その声はひどくおだやか 。こっこ。 「あなたはラングトンさんに好意をおもちですか ? 」 あいて いひょう かんぜん 相手ははっとした。その質問に、なぜか完全に意表をつかれたようすだった。 さん しよめい せんじっ すたいじ しよめい

3. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

きあなたは、それをかくそうとはしておられなかった。見ているものがあるとは気づかな かったからです。」 ハリスンはうながした。 「つづけてください。」 「あとはあまりお話しすることもありません。わたしはここへき、まったく偶然のことか どくぶつこうにゆうば ら毒物購入簿でラングトンの名を見つけ、彼に会い、そしてあなたに会いにきました。 せいさん こ、つにゆ、つ わな ちょっとした罠をかけたところ、あなたはラングトンに青酸カリの購入を依頼したことを しめ 否定された。それどころか、彼がそれを買ったことにおどろきさえ示された。 はじめわたしがここにあらわれたとき、きっとあなたはぎくっとされたでしようが、じ りよう ぎわく きにわたしを利用できると思いなおして、わたしの疑惑をかきたてにかかった。わたしは じしん ラングトン自身の口から、ここへくるのは八時半だと聞いていたのですが、それをあなた けいかく は九時だといわれた。わたしがもどってきたときには、すべてがおわっているように計画 めいは′、 されたのでしよう。それでわたしにはいっさいが明白になったのです。」 さけ ハリスンは叫んだ。「あなたさえおいでにならなけれ 「なぜ、おいでになったのです ? 」 ボワロは胸をはった。 ヾま ひてい むね ぐうぜん

4. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

けん まんぞく す ますね、すずめばちがきよう一日の仕事をおえて、満足しきって巣にもどってこようとし だいぎやくさっ ている。あといくらもたたないうちに、大虐殺がはじまろうとしているのですが、彼らは ゅめ そんなことは夢にも知らない。だれもそのことを教えてくれないからです。彼らのなかに は、どうやらエルキュール日ボワロはいないとみえる。 し′」と さつじんじ わたしはね、 ハリスンさん、ここへ仕事でやってきました。わたしの仕事とは、殺人事 お どうよう 件です。それが起こるまえであっても、起こったあとと同様に、わたしの仕事であること にかわりはない。 ところでラングトン氏は、何時にここへすずめばちを退治しにくること になっています ? 」 「ラングトンにかぎって、そんなーーー」 「何時です ? 「九時です。しかし何度でもいいますが、あなたはまちがっていますよ。ラングトンは ぜったいに : 「イギリス人はこれだからこまる ! 」 ほうし ボワロは激して叫んだ。そして帽子とステッキをとりあげ、庭の木戸のほうへ歩きだし かた っこ 0 たが、すこしいって立ちどまると、肩ごしにいオ し′」と し にわ

5. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

とした予感が彼をとらえているようだった。けれども、けつきよく、その胸さわぎをしい くじゅう てふりはらって、そのまま村のほうへ歩きつづけた。顔にはいぜんとして苦渋のかげがあ しやくぜん 一度か二度、どうも釈然とせぬというように首を横にふった。 ま ふたたび彼が庭の木戸に近づいていったのは、九時にはまだ数分、間があるころだった。 びふう 晴れた、おだやかな宵で、あるかなきかの微風が木の葉をゆすっていた。そのしずけさに あらし ふきっ ちょうど嵐のまえのしずけさの は、あるいはなにか不吉なものがあったかもしれない よ一つに。 じしん ふあん ボワロの足どりがほんのわすか早まった。きゅうに不安がおそってき、自信がゆらいだ。 なにかわからぬものが彼をおそれさせた。 しゅんかん まさにその瞬間、木戸がむこうからひらいて、クロード日ラングトンが足早に通りへで てきた。。、 ホワ口を見て、彼はぎくっとしたように立ちすくんだ。 「だれーーーああ、あなたでしたか こんばんは。」 「こんばんは、ラングトンさん。ずいぶんお早かったですな。」 ラングトンはまじまじと彼を見つめた。 「なんのことです ? 」 よかん にわ こ むな あしばや

6. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

「われわれとおっしやると ? 「さよう、われわれです。あなたのお力をかりたいのです。」 「それでここへおいでになったのですか ? 」 あいて またしてもボワロは相手を見つめ、こんどもまたある漠然としたなにかが、ノ 不安におとしいれた。 「ここへきたのは、、 ノリスンさん、あなたがーーーそのーーー好きだからですよ。」 ちょ、つし それから、がらりとかわった調子になって、ボワロはつづけた。 ハリスンさん、お見うけしたところ、お宅の庭にはすずめばちの巣があるようですな。 たいじ あれは退治してしまわなけりやいけませんよ。」 ふしん わだい ハリスンは不審そうにまゆをひそめた。それから、ボワ きゅうに話題がかわったので、 しせん ロの視線を追いながら、ややうろたえぎみに答えた。 「じつをいうと、わたしもそうするつもりでいたのですよ。というより、ラングトン君が そうしてくれるはずです。クロードⅱラングトンのことはお・ほえておいででしよう ? ・わ ばんさんかい しゆっせき たしがお目にかかったあのときの晩餐会に、彼も出席していたはすです。たまたま今夜、 すたいじ あの巣を退治しにきてくれることになっていましてね。どっちかというと、おもしろい仕 ふあん たく にわ ばくぜん す す 、リスンを こんや くん し

7. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

さつじんじけん 「申しあげたでしよう。殺人事件はわたしの仕事なのです。」 じさっ 「殺人 ? 自殺でしよう ? 」 さつじん 「いや。」ボワロの声が高くなり、するどくりんりんとひびきわたった。「殺人です。あな しく くる いっしゅん たは苦しみもなく一瞬のうちに死んでいけますが、あなたがラングトンのために仕組まれ どくやく た死は、人の死にゆく道のうち、もっともおそろしいものです。彼は毒薬を買っています。 きゅうし せいさん あなたに会いにきて、二人だけになっています。あなたが急死して、青酸カリがあなたの こうしゆだいゅ はつけん グラスから発見されれば、クロード日ラングトンは絞首台行きをまぬがれますまい。それ け - い . か / 、 があなたの計画だったのです。」 っこ 0 またしてもハリスンはうめくようにいオ 「なぜ、あなたはおいでになった ? なぜ、おいでになったのです ? り・ゅ、つ 「それは申しあげたはずです。しかし、もうひとっ理由があります。わたしはあなたに好 簿 件 意をもっているのですよ。 事 しいですか、あなた、あなたはまもなく死んでゆかれる。愛していた女性もうしなって口 しまわれた。ですが、ひとつだけあなたのうしなっていないものがある。殺人者にはなら きようじ なかったという矜持です。どうです、これでもわたしがきたのをうらんでいらっしゃいま さつじん し し ) 」と じよせい さつじんしゃ こう

8. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

死んでしまった。。、 十ワロは一分か二分ほどようすを見まもっていたが、やがてかるくうな ずくと、べランダにひきかえしてきた。 そくし 「即死にちかいですな。ひじようにききめが早い。」そう彼はいった。 ハリスンはし。ほりだすようにいオ 「あなたはどこまでごそんじなんです ? ぜんばう ボワロはまっすぐ前方を見つめた。 やっきよくちょうば 「さっきも申しあげたとおり、わたしは薬局の帳簿でクロードⅡラングトンの名を見つけ ました。さっきはお話ししませんでしたが、じつはそのすぐあとで、たまたま彼にでくわ せいさん したのです。たずねてみると、あなたにたのまれて青酸カリを買ったといいましたーーー・す しまっ ずめばちの巣を始末するためにです。これを聞いて、わたしはちょっとへんに思いました。 せんじつばんさんかい せき 先日の晩餐会の席で、あなたのおっしやったことをお・ほえていたからです。あなたはガソ こうのうすいしよ、つ きけん せいさん ふひつよう リンの効能を推奨され、青酸カリをそのために買うのは、危険でもあり、不必要だと力説 されました。」 「それで ? 」 「まだあります。先日わたしは、クロード日ラングトンとモリー し す せんじっ ディーンかいっしょに りきせつ

9. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

いじよう ぎろん 「これ以上あなたと議論する気はありません。腹がたってくるだけですからな。しかし いっておきますが、九時にはかならずもどってきます。」 ハリスンはなにかいおうとして口をひらきかけたが、。、 ホワロはそれをさえぎった。 「なにをおっしやりたいかはわかっています。ラングトンにかぎって、そんなことはない とでもいうのでしよう。 やれやれ、ラングトンにかぎってか ! しかし、とにかく九時に もういちどおじゃまします。さよう、おもしろいことが起きると思うのでね すたいじ うしいましよう すずめばちの巣を退治するところは、さそかし見ものだろうとね。こ れもまた、あなたがたイギリス人のたのしみのひとつらしい あゆ あしばや 相手の返事を待たずに、ボワロは足早に小道を歩みさり、きしむ木戸をぬけてでていっ どうろ あゆ ひょうじようき げんしゆく くじゅう た。道路にでると、その歩みはおそくなった。いきいきした表情は消えて、厳粛な苦渋 じこく おもて の色がその面をおおった。一度、ポケットから時計をだして、時刻をたしかめたが、その とき針は八時十分すぎをさしていた。 「まだ四十五分もあるーと、彼はつぶやいた。「あるいは待っていたほうがよかったかもしロ れんな。」 ばくぜんっ 足どりはますますおそくなった。いまにもひきかえそうとするようすさえあった。漠然 あいて

10. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

けろと警告しておられるんだ。それを警告しに、きようわざわざここへ : ボワロはうなずいた。するとハリスンは、いきなりはじかれたように立ちあがった。 ぶんめいこく 「しかし、それはばかげていますよ、ボワ口さん。ここは文明国イギリスなんですよ。そ どく こいがたきせなかさ ういうことはこの国では起こりません。ふられた男が恋敵の背中を刺したり、毒をもった ) 」かい りすることはないんです。それにあなたは、ラングトンという男をも誤解しておられる。 あの男ははえも殺せない男ですよ。 「はえの生死はわたしには関ありません。」ボワ 0 はおちつきはら 0 てい 0 た。「しかし、 かりにあなたのおっしやるように、ラングトン氏がはえも殺せない男だとしても、その彼 じゅんび が、数千びきのすずめばちの命をとろうと準備している、それをわすれてもらってはこま ります。」 たんてい ハリスンはすぐには返事ができなかった。かわって小男の探偵が立ちあがると、友人の こうふん あいて おおがら あゆ かた そばに歩みより、その肩に手をかけた。ひどく興奮して、相手の大柄なからだをがくがく ゆすらんばかりにしながら、その耳もとで強くささやきかけた。 そら、 「しつかりしなきゃいけません。目をさますことです。そして、ごらんなさい わたしのゆびさしているところを。あの斜面の上、大きな木の根もとのところです。見え ころ け いのち しやめん ころ ゅうじん 19 ボワロの事件簿