リング - みる会図書館


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1. リング

坂東齢人 活字を読んで、あるいは映像を見て、本当に恐い思いをすることなど、滅多にあること ではない。 キング・オヴ・モダンホラー スティーヴン・キングは・ほくが敬愛してやまない作家の リウッドが続々と制 一人ではあるが、彼の小説を読んで、恐い、と思ったことはない。ハ 作するホラー映画は、実際にはショッカーやスプラッタやスリラーであり、恐いという感 きようがく 情ではなく、驚愕や嫌悪、サスペンスを見るものに提供するだけである。そこには恐怖の かけらすら存在していないように、・ほくには思える。 才能にれた物語作家や、映像作家がありとあらゆるテク = ックを駆使してこちらを恐 がらそうとしてみたところで、この・ほくが、三日酒を断ったときに見た悪夢の足元にすら 説 をない。モンスターもヴァンパイアも狼男もこの世にはいない。今の世の中、死以上の たた 解恐布をぼくたちに与えてくれるものといったら、まったき孤独の中に叩き込まれるか、ド 7 ラッグが見せる幻覚しかないのではないか。 と、鈴木光司の『リング」を読むまではそう思っていた。真の才能に溢れた者は、計算 解説

2. リング

330 『リング』は理性を麻させる恐怖と「クのあるサスペンスを充分に堪能することができ る物語なのであり、たとえサスペンスがなかったとしても、鈴木光司が生みだしたモンス ターの恐布は、前世紀末にはブラム・ストーカーが世界に問うたホラー小説『ドラキ = おび ラ』と同じようなイン。ハクトを持っている。中世から近代にかけて、人々を怯えさせたの が性にく魔物なら、現在から近未来にかけて・ほくたちを怯えさせるのは、鈴木光司がこ の物語で提示したヴィジョンーー新たなモンスターであるのだろう。 鈴木光司は、第二回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞した『楽園』で、九〇年 の暮れにデビューしている。・ほくは出版された直後にこの『楽園』を読んだのだが、新人 とは思えぬ筆力、豊かなイマジネーションに感心した。中でも、タイトルにもなった第一一 章「楽園」は出色のできで、南海の冒険に躍らされたものだ 0 た。 その『楽園』の半年後に出版されたのが、この『リング』である ( 実際には、『リング』 は九〇年の横溝正史賞に応募された作品だから、もしかするとこちらの方が先に書かれて いたのかもしれない ) 。自分でも短絡的すぎるよなあと思うのだが、タイトルを見て、 「へえ、ファンタジーノベル出身の人がボクシングものを書くのかあ」などという、まっ たく呆な感想を抱きつつ手に取ったのだが、いくら『楽園』で感心したからといって、 正直なところ、デビー二作目の新人が、これほどまでの傑作をものするとは予想もして よ、つこ 0 し子 / 、刀子ー 『楽園』から『リング』までは、わずか半年のインターバルしかなかったが、第三作めは

3. リング

してそうするのか、偶然が導くのかは知らないが、足元にぼっかりと穴が開いたような底 なしの恐怖を人に与えることができるのだ、とぼくは考えを変えざるをえなかった。それ ほどまでに、『リング』という物語は恐い物語だったのである。 実際の話、『リング』を読み終わったのは梅雨のまっ盛りの午後十時過ぎだったのだが そのときのことは、いまだによく覚えているーーーぼくは、一人で部屋にいることに耐 えられなくて、新宿までタクシーを飛ばして仲間がたむろする飲み屋へ駆けつけた。一人 でいることがなんだか無性に恐く、一人でトイレヘ行くのが怖くてしかたのなかった子供 の時のように、他人のぬくもりを求めてしまったのだ。そう、理性ではなく本能を直撃す るような恐さが、『リング』にはあったのだ。こんなこと、恥ずかしながら、初めての体 験だっこ。 それほどまでの恐怖を、『リング』よ、 をしかにしてぼくに与えたのか ? それはひとえに、 鈴木光司が生みだした、新しいモンスターのせいである。そのモンスターは、活字の合間 から姿を現すやいなや、たちまちのうちに・ほくの理性を食い破り、長いこと忘れていた恐 怖の謝罘を暗示してい 0 たのだ。 物語の発端は、四人の少年少女たちのの突然死にはじまゑ四人とも、同じ日の同じ 時刻に申し合わせたように心不全で死ぬ。死んだ少女の父に当たる主人公が原因を調べ はじめ、見た人間の一週間後の死を予告する恐怖の ( まさしく恐怖の ! ) ヴィデオ・テー プを見てしまう。そのテープの末尾には死を回避するための方法が描かれているはずなの

4. リング

リング 鈴木光司 角川ホラー文庫 8962

5. リング

リング するのだ。今も陽子は、暗い部屋の中で母に抱かれて眠っている。

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だが、その部分だけが消されている。どうやら、死んだ四人がそのテープを見たあとに ( その部分を消してしまったらしい。一週間という区切られた時間で、死を回避する方法 オマジナイを見つけることができるのか ? そして : こうして並べてみると、この物語が実にオーソドックスな骨子を持っていることがわか る。誤解されることを恐れずにいってしまうなら、スリラー・サスペンスの形式を持った 物語なら、この手のものはザラにあるはずで、驚くには当たらない。『リング』をサスペ ンスとして読むのなら、ポイントはヴィデオが予告した死を回避する「オマジナイ」とは いったいなんなのか ? という謎と、一週間というタイムリミットの中でその謎を解決す ることができるのか ? ということになる。作者がやらなければいけないのは、主人公の 前に幾多の難関を用意し、ストーリイ・テリングのテク = ックを駆使して物語を盛りあげ ていけばいいのだ。 だがしかし、ここで「なあんだ、ただのサスペンスなのか。などといって本書と鈴木光 司をなめてはいけない。絶対にいけない。罰が当たります。「リング』がただのサスペン スであるならば、たしかに「なあんだ」であるかもしれないが、この物語は斬新なアイデ 説 アに支えられた驚天動地のホラー小説なのである。サスペンスがクライマックスを迎えた 解その先に、鈴木光司の才能のまばゆいきらめきと、まったく新しい種類のモンスター ( 怪 物ったって、ビラ = ア人間や恐怖の蛇男のようなものではないから安心してください ) が 待ち受けているのである。

7. リング

RING ・ KOJI SUZUKI Y 540 0 ど 0 膩Ⅱ III ⅧⅢは間Ⅲ馴 9 7 8 4 0 五のリング I S B N 4 ー 0 4 ー 1 8 8 0 01 ー 7 C 0 1 9 5 \ 5 4 0 E 定価 : 本体 540 円 ( 税別 ) 300 ・ 0 ド「 、リング 0 1 9 2 0 1 9 5 0 0 5 4 0 0 鈴木光司 ( すずきこうじ ) 1957 年、浜松生まれ。慶応大学仏文科卒。 — 9 9 0 年「楽園」で日本ファンタジーノベ ル大賞優秀賞を受賞しデビュー。濃密な文体 の中にあらゆる恐怖を描き込んだ本書、吉川 英治文学新人賞を受賞した「らせん」など、 メッセージ性の強いエンタティンメントを発 表し、日本文学に新境地を拓いている。他著 に「仄暗い水の底から」「光射す海」「生と死 の幻想」、エッセイ集「新しい歌をうたえ」が ある。 0 同日の同時刻に苦悶と驚愕 の表情を残して死亡した四 人の少年少女。雑誌記者の 浅川は姪の死に不審を抱き 調査を始めた。 そしていま、浅川は 本のピデオテ 1 プを手にし ている。少年たちは、これ を見た一週間後に死亡して いる。浅川は、震える手で ビデオをデッキに送り込む 期待と恐怖に顔を歪めなが ら。画面に光が入る。静か にビデオが始まった : 恐怖とともに、未知なる世 界へと導くホラー小説の金 字塔 , , 鈴木光司 鈴木光司 角川ホラー文庫 カバー / 安藤岳史 (ROBOT) 富永晶美 (ROBOT) カバー旭印刷 角川ホラ文庫

8. リング

リング 「男のほうはよ、ジーンズと一緒にブリーフを膝まで下げていた。女の子のほうもよ、 ンティを膝まで下げていた」 「とすると、その、最中だったってわけですか」 「最中ってわけじゃない。 これからやろうとしていたところだ。お楽しみはこれからって え、その時 ! 」 吉野はパンと手を打った。 「なにかが起こった」 いかにも、相手の気持ちを高ぶらせる語り口であった。 「なあ、浅川。正直に言ってくれよ。おまえ、この事件に関係したネタを掴んだんじゃね えのか : : : 」 「秘密は守るからよお。手柄を横取りする気もない。ただ、オレには興味があるだけだ」 浅川は黙り込んだ。 「なあ、オレは聞きたくてうずうずしてるんだぜ 考えてみる。やつばりだめだ。まだ言わないほうがいし 。しかし、嘘は通用しない。 「すみません、吉野さん。もうちょっと待ってもらえますか。まだ、なんとも言えないん ですよ。二、三日のうちには必ずお話しできます。約束しますよ」 失望の色が吉野の顔に浮かんだ。 ひざ つか

9. リング

リング 九月五日午後十時四十九分 横浜 三渓園に隣接する住宅地の北端には十四階建てのマンションが数棟建ち並び、新築にも かかわらずそのほとんどの部屋はふさがっていた。一棟に百近い住居が密集していたが、 たいがいの住人は隣人の顔も知らず、それそれの住居に人が住んでいるのを証明するのは 夜になって灯る部屋の明りだけであった。 南の方向では、脂つぼい海が工場の常夜灯の光をテラテラと照り返している。工場の外 壁には無数のパイプがまとわり付き、体内の筋肉を這い回る血管を思わせた。しかも、表 面を覆う無数のイルミネーションは夜光虫に似て、グロテスクな景観も見ようによっては 美しい。工場は、黒い海に無言の影を落としていた。 第一章初秋 も

10. リング

331 解説 。、レを置いて九三年の初頭に出版された。『光射す海』というロマ ほ・ほ一年半のインター / / ンティックなタイトルをつけられた、ロマンティックで情熱的なラヴ・ストーリイである。 、ノティントン氏病という奇病をキイにして、鈴木光司の才能がダイナミ この物語でも、 ( ックに躍動しているのを読み取ることができる。 これまでに出版された = 一作を読むと、才能にれたストーリイ・テラーなおかっ屈指の アイデア・マン、というのが現在のところの鈴木光司のポジションのように見受けられる どんよく が、まだまだ一皮も一一皮もけてくれそうな気がする。少なくとも、・ほくたち貪欲な読者 は、味の飢えを満たしてくれる新たな才能をまた手に入れたのだ。 なにはともあれ、『リング』は極上の , ンタティンメントであり、背骨が凍りつくよう なホラー小説である。ぜひとも、ご一読いただきたい。