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検索対象: 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩
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1. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

ものけ けん。物の怪もさこそ言ふなりしか」と思ひあはするに、「さるやうこそあら = = 以下、僧都の心中。 一四浮舟に取り憑いた物の怪の言 め。今までも生きたるべき人かは。あしきものの見つけそめたるに、、 しと恐ろ葉を想起。↓一六 一五何か深い事情があるのだろう。 あやふ 一六あの時修法もせす放置してい しく危きことなり」と思して、僧都「とまれかくまれ、思したちてのたまふを、 たら今まで生きていなかったろう。 さ・んばう 三宝のいとかしこくほめたまふことなり、法師にて聞こえ返すべきことならず。宅悪霊が目をつけはじめたので、 このままでは実に恐ろしく危険。 御むことは、、 しとやすく授けたてまつるべきを、急なることにてまかでたれ天浮舟本人が、出家を。 一九「 : ・ことなり」まで挿入句。 こよひニ一 あす みずほふ 「三法」は仏・宝・僧。ここは、仏。 ば、今宵かの宮に参るべくはべり。明日よりや御修法はじまるべくはべらん。 ニ 0 僧の身として反対できない意。 かなニ一 一品の宮 ( 女一の宮 ) 。 七日はててまかでむに仕まつらむ」とのたまへば、かの尼君おはしなば、 一三七日間の修法である。 ニ三七日後には妹尼も帰っていよ らず言ひさまたげてんといと口惜しくて、浮舟「乱り心地のあしかりしほどに、 う。そうなれば彼女に反対される。 乱るやうにていと苦しうはべれば、重くならば、忌むことかひなくやはべらん。 = 四気分のすぐれなかった過往と 同じ状態。五戒を受けた時のこと。 一宝重態になったら、戒を受けて なほ今日はうれしきをりとこそ思うたまへつれ」とて、いみじう泣きたまへ もむだになるかもしれない。病気 ひじりごころ ふ は口実にすぎないが、浮舟の懇願 習ば、聖、いにいといとほしく思ひて、僧都「夜や更けはべりぬらん。山より下り は必死である。出家できなければ はべること、日はこととも思うたまへられざりしを、年のおふるままには、た来世もまた救われがたい思い。 手 ニ六年をとるにつれて。「生ふる」 か。やや落ち着かない表現。 へがたくはべりければ、うち休みて内裏には参らん、と思ひはべるを、しか思 毛あなたが、出家を。 し急ぐことなれば、今日仕うまつりてん」とのたまふに、、 しと , つれしくなりぬ。夭浮舟は、ほっと安堵する。 つか ニ五 ニ三 ニ六 ニ七

2. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

ゆる木の下を、疎ましげのわたりやと見入れたるに、白き物のひろごりたるそ妖怪が住みつきやすいとされた。 一 ^ 「物」は、本来、霊魂の意。 あか 見ゆる。「かれは何ぞ」と、立ちとまりて、灯を明くなして見れば、もののゐ一九「変化」は、人間以外のものが 一九 人の姿に化けること。古来、狐は きつねへんぐゑ ひとり こ化けると信じられていた。 たる姿なり。僧「狐の変化したる。憎し。見あらはさむ」とて、一人はいます人し ニ 0 まあ、およしなさい ニ 0 よう こし歩みよる。いま一人は、「あな用な。よからぬ物ならむ」と言ひて、さや = 一「印」は、仏・菩薩などの悟り や誓願を、手の指で種々の形に結 しぞ いん かしら うの物退くべき印を作りつつ、さすがになほまもる。頭の髪あらば太りぬべきんで表すこと。変化退散には、不 ニ四 動の印を結び、陀羅尼などを読む。 ひとも ーカ あう 心地するに、この灯点したる大徳、憚りもなく、奥なきさまにて近く寄りてそ = ニ正体が分らぬので、やはり。 ニ三恐怖感を、頭髪を剃った僧侶 かいやく たちなので、諧謔的に表現した。 のさまを見れば、髪は長く艶々として、大きなる木の根のいと荒々しきに寄り 一西恐れもせず気にかけもせぬ様 ′ばう ゐて、いみじう泣く。僧「めづらしきことにもはべるかな。僧都の御坊に御覧子で。勇敢な態度を見せたい。 一宝女人の体。狐が化けたか。 まう ぜさせたてまつらばや」と言へば、「げにあやしきことなり」とて、一人は参 = 六寝殿から裏庭へ。高徳の僧な がら好奇心旺盛で、柔軟な人柄。 へんぐゑ でて、かかることなむと申す。僧都「狐の人に変化するとは昔より聞けど、ま毛尼君一行が、宇治院に。 ニ六 ニ ^ 僧都一行の下人たち。 ニ九調理場。寝殿とは別棟か。調 習だ見ぬものなり」とて、わざと下りておはす。 ニ九理やその他の雑用を、宿泊先では かの渡りたまはんとすることによりて、下衆ども、みなはかばかしきは、御支度しなければならぬので、の意。 手 三 0 仕事にかかりきりなので、こ づしどころ ちらはひっそり。下人たちは調理 厨子所などあるべかしきことどもを、かかるわたりには急ぐものなりければ、 場などに入ったままで、裏庭には ゐしづまりなどしたるに、ただ四五人してここなる物を見るに、変ることもな見に来ない ニセ あ ニ五 かみ つやつや ニ三

3. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

夜、召して、夜居にさぶらはせたまふ。日ごろいたうさぶらひ困じたる人はみ一六寝所近くで終夜加持すること。 宅この何日間か、一品の宮の看 一 ^ み おまへ な休みなどして、御前に人少なにて、近く起きたる人すくなきをりに、同じ御病に伺候して疲れた女房たち。 一 ^ 中宮が一品の宮と同じ御帳台 ちゃう に。その病状を見にきた。 帳におはしまして、中宮「昔より頼ませたまふ中にも、このたびなん、いよい 一九中宮自身の言葉に、語り手の よ後の世もかくこそはと頼もしきことまさりぬるーなどのたまはす。僧都「世中宮への尊敬語「たまふ」も加わる。 ニ 0 来世もこのとおり救ってくれ うち・ るものと。僧都によって極楽往生 の中に久しうはべるまじきさまに、仏なども教へたまへることどもはべる中に、 もかなえられよう、との期待。 ニ一私の寿命もそう長くはあるま 今年来年過ぐしがたきゃうになむはべりければ、仏を紛れなく念じっとめはべ いと、仏などが教えてくださるこ こも おほ′一と とも数々あるが。仏のお告げで命 らんとて、深く籠りはべるを、かかる仰せ言にてまかり出ではべりにし」など 終の時期を予知する話は、高僧伝 などに多い。朝廷の召しにも容易 啓したまふ。 に出仕しなかった言い訳でもある。 しふね 一三僧都に調伏された物の怪が、 御物の怪の執念きこと、さまざまに名のるが恐ろしきことなどのたまふつい 正体を明らかにすること。 ニ五 でに、僧都「いとあやしう、稀有のことをなん見たまへし。この三月に、年老ニ三中宮が。物の怪について話す 中宮の言葉に、僧都は浮舟に憑い まう なかやどり うぢのゐん ぐわん た物の怪を想起。浮舟紹介の契機 習いてはべる母の、願ありて初瀬に詣でてはべりし、帰さの中宿に、宇治院とい 一西僧侶らしい漢語の用法。 ひはべる所にまかり宿りしを、かくのごと、人住まで年経ぬるおほきなる所は、一宝以下、巻頭の宇治院でのこと。 手 一宍漢文訓読語。僧侶らしい言葉。 ニ ^ びやうぎ よからぬ物かならず通ひ住みて、重き病者のためあしきことどもやと思ひたま毛妖怪変僊や狐など。 夭母尼のこと。「病者」も漢語。 ニ九浮舟を発見した経緯を。 へしもしるく」とて、かの見つけたりしことどもを語りきこえたまふ。中宮 ニ七 ものけ よゐ ニ九 はっせ ニ四 一九 へ

4. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

宅「左」は「右」とあるべきか。タ ちなどゐて、もの言ふけはひすれば、妻戸の前にゐたまひて、薫「おほかたに 霧の子息たち。常に親しく交流し おきな かた 一九 げぎんい 、とおばえなく翁合っている。↓一二七ハー注一一 0 。 は参りながら、この御方の見参に入ることの難くはべれば、し 天寝殿の西南の角。廂にいる女 びはてにたる心地しはべるを、今よりはと思ひおこしはべりてなん。ありつか房を相手に恋の風情を楽しむ趣。 一九女一の宮の女房たちとは、親 をひ ずと若き人どもそ思ふらんかし」と、甥の君達の方を見やりたまふ。女房「今しく会うことも容易でないとする。 いつの間にか年寄じみたとし て、親交を求める。恋の下心もな よりならはせたまふこそ、げに若くならせたまふならめ」など、はかなきこと いとしながらの屈曲した物言い を言ふ人々のけはひも、あやしうみやびかにをかしき御方のありさまにぞある。ニ一女房たちを相手にする若々し い振舞を、不相応なこととする。 そのこととなけれど、世の中の物語などしつつ、しめやかに、例よりはゐたま一三タ霧の子息たちをさす。 ニ三女房の声や衣すれの音などか ら女一の宮方のみやびやかな風情 へり。 に感じ入る。主君の高雅な人柄が 姫宮は、あなたに渡らせたまひにけり。大宮、「大将のそ女房たちの挙措に表れる。 〔一巴中宮、浮舟入水の ニ四女一の宮は、中宮のもとに。 真相を聞き驚愕する なたに参りつるは」と問ひたまふ。御供に参りたる大納言中宮は寝殿の東面にいる。 一宝女一の宮づきの上﨟女房。 こさいしゃう 蛉の君、「小宰相の君に、もののたまはんとにこそははべめりつれーと聞こゆれ兵思いを寄せて言いかける意。 毛気のきかない女だったら。 ニ七 ニ六 ば、中宮「まめ人の、さすがに人に心とどめて物語するこそ、心地おくれたら「まめ人」薫だけに、相手の教養趣 味の高尚さが要求されるとする。 夭中宮と薫は姉弟の関係だが。 む人は苦しけれ。、いのほども見ゆらんかし。小宰相などはいとうしろやすし」 ニ九女房も不用意に応対しないで ほしい、と願う気持 とのたまひて、御はらからなれど、この君をばなほ恥づかしく、人も用意なく ニ八 ニ四 つまど ニ 0 ニ九

5. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

うしろで 一五馴れてそれが普通と思うよう りとや思ひつらん、立ちてあなたに入りつる後手、なべての人とは見えざりつ。 になろう。若い女らしさを失う不 さやうの所に、よき女はおきたるまじきものにこそあめれ。明け暮れ見るもの都合さを難じ、禅師の関心を惹い て女の素姓を聞き出そうとする。 めな ふびん は法師なり。おのづから目馴れておばゆらん。不便なることなりかし」とのた一六以下、禅師が、宇治院に倒れ ていた女を初瀬帰りの一行が救っ 一六 まう はっせ た話を仄聞している趣。 まふ。禅師の君、「この春、初瀬に詣でて、あやしくて見出でたる人となむ聞 一セ宇治の山里。 きはべりし」とて、見ぬことなればこまかには一一 = ロはず。中将「あはれなりける天高貴な女が、事情があって山 里に隠れ住むうちに男に見出され 一七 る、昔物語の一類型。↓帚木田六 ことかな。いかなる人にかあらむ。世の中をうしとてぞ、さる所には隠れゐけ 七ハー・末摘花一四ハー。『細流抄』 は『住吉物語』を掲げる。中将の非 むかし。昔物語の心地もするかな」とのたまふ。 日常的な感動を導く。 またの日帰りたまふにも、中将「過ぎがたくなむ」とてお一九小野の邸に。 一巴翌日小野に寄って ニ 0 中将が帰途立ち寄るだろうと、 ニ 0 浮舟に贈歌妹尼返歌 はしたり。さるべき心づかひしたりければ、昔思ひ出でた食事の用意などをしている。 ニ一姫君在世中を思い出させるよ そでぐちニニ うな給仕役の少将の尼など。 る御まかなひの少将の尼なども、袖口さま異なれどもをかし。 しとどいや目に、 にびいろ 一三昔とは異なる鈍色 ( 尼衣 ) 。 習尼君はものしたまふ。物語のついでに、中将「忍びたるさまにものしたまふら = 三涙がちの目。亡き娘を思う。 一西なまじ中将に話して、浮舟の たれ ニ四 んは、誰にか」と問ひたまふ。わづらはしけれど、ほのかにも見つけたまひて近親者に伝わるのを懶る気持。 手 一宝中将が浮舟をかいま見たこと。 ニ六 ニ六亡き娘のことを忘れかねて、 けるを、隠し顔ならむもあやしとて、妹尼「忘れわびはべりて、いとど罪深う その執着がいよいよ罪障深いこと と思ってきたが、その慰めにと。 のみおばえはべりつる慰めに、この月ごろ見たまふる人になむ。いかなるにか、 一九

6. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

( 現代語訳三一八ハー ) びん 籠りしたまはむも便なし、行きと行きてたち返らむも心苦しなど思しわづらふ。としてもはりあいがなく。 一六母中将の君。受領の妻の身分。 けふ 月たちて、今日ぞ渡らましと思ひ出でたまふ日の夕暮、いとものあはれな宅兄弟ある人は葬儀を簡略にす るとの風習。↓九六ハー一〇行。 おまへ たちばなか ふたこゑ 一 ^ 浮舟の死に対する不審。 り。御前近き橘の香のなっかしきに、ほととぎすの二声ばかり鳴きてわたる。 一九宇治に赴き、忌籠りの三十日 ニ四 薫「宿に通はば」と独りごちたまふも飽かねば、北の宮に、 ここに渡りたまふ間を共にするのも不都合だとする。 けが ニ 0 また行くには行っても、穢れ を避けるべくすぐ帰るのも不本意。 日なりければ、橘を折らせて聞こえたまふ。 ニ一四月。四月十日に浮舟を都に ニ五ね 迎えようと予定していたのを想起。 薫忍び音や君もなくらむかひもなき死出の田長に心かよはば 一三↓花散里二〇六ハー注一の歌。 ニ六 宮は、女君の御さまのいとよく似たるを、いとあはれに思して、二ところながニ三「亡き人の宿に通はばほとと ぎすかけて音にのみ泣くと告げな けしき む」 ( 古今・哀傷読人しらず ) 。 めたまふをりなりけり。気色ある文かなと見たまひて、 一西二条院。ここに匂宮のいる日。 ほとと ~ す 一宝「死出の田長」は時鳥の異名。 匂宮「橘のかをるあたりはほととぎす心してこそなくべかりけれ 冥土と現世を往来するという。浮 舟をさす。「忍び音」は四月、姿を わづらはし」と書きたまふ。 見せずに鳴く時鳥の声。 ニ九 ニ六中の君。浮舟に似る。 女君、このことのけしきは、みな見知りたまひてけり。 蛉〔六〕匂宮、時方をやり、 毛浮舟をほのめかしたと気づく。 侍従を呼び実情を聞く 「あはれにあさましきはかなさのさまざまにつけて心深き夭時鳥よ注意して鳴け、とする。 蜻 ニ九宮と浮舟の仲、浮舟の死など。 ひとり 三 0 大君も浮舟も悲しくはかない 中に、我一人、もの思ひ知らねば、今までながらふるにや。それもいつまで」 一生で物思いに屈した姉妹なのに、 自分だけが幸運だと思う。 と、い細く思す。宮も、隠れなきものから、隔てたまへるもいと心苦しければ、 三 0 ニセ たを )

7. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

によりて碁聖といへり」 ( 花鳥余 ばれしうもてなしておはしませ。あたら御身を。いみじう沈みてもてなさせた 情 ) 。『大和物語』『古今著聞集』 くちを まふこそ口惜しう、玉に瑕あらん心地しはべれ」と言ふ。夕暮の風の音もあは『今昔物語集』などにもみえる人物。 一四三番勝負に一一敗した意。 三暗に、浮舟のほうが僧都より れなるに、思ひ出づること多くて、 強かろう、との推測 そで ゅふべ 一六尼削ぎの、頬に垂れた前髪が、 浮舟心には秋のタをわかねどもながむる袖に露ぞみだるる みつともない意。髪が薄いカ ニ 0 ふみ 月さし出でてをかしきほどに、昼、文ありつる中将おはし宅少将の碁の趣味から、今後も 〔一九〕中将来訪浮舟、 相手をさせられないかと厄介。 母尼の傍らに夜を過す たり。あなうたて、こはなぞ、とおばえたまへば、奥深く一 ^ せつかく年若の御身なのに。 一九「露」に涙を、「みだるる」に心 乱れる意をもこめる。自分には秋 入りたまふを、少将の尼「さもあまりにもおはしますかな。御心ざしのほども、 のタの情趣も解せないが、とする。 あはれまさるをりにこそはべるめれ。ほのかにも、聞こえたまはんことも聞かニ 0 ↓前ハー三行。 ニ一以下、浮舟の心中に即す。 しとうし一三中将の厚志。秋の夜更け、遠 せたまへ。しみつかんことのやうに思しめしたるこそ」など言ふに、、 路はるばるの訪問を感動的とする。 つかひ ろめたくおばゅ。おはせぬよしを言へど、昼の使の、一ところなど問ひ聞きたニ三中将の申される言葉を。 ニ四言葉を聞くだけで深い仲にで いと言多く恨みて、中将「御声も聞きはべらじ。ただ、け近くてもなりそうに恐れて。「しみつく」 習るなるべし、 ↓東屋一九四ハー一一行。 一宝少将が中将を手引せぬかと。 聞こえんことを、聞きにくしとも思しことわれ」と、よろづに言ひわびて、 手 実浮舟が一人居残っているのを こ、 ) ろう ニ七 中将「いと心憂く。所につけてこそ、もののあはれもまされ。あまりかかるは」聞き出していたのだろう。 8 毛寂しい山里だから、物事に感 ずる度合も深かろうに、の気持。 などあはめつつ、 ニ四 ニ六

8. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

113 蜻蛉 ゐなかびと なりなど、いましめ仰せらるることなど申して、ものの心得ず荒々しき田舎人遇がやっと決ったという安堵感。 一四納得できぬ文。薫からの「波 のち こゆる・ : 」と心変りを非難された。 どもの、あやしきさまにとりなしきこゆることどもはべりしを、その後久しう 一九 ↓浮舟六八ハー。それが浮舟を一方 こころう , 、冫息などもはべらざりしに、、い憂き身なりとのみ、いはけなかりしほどより的に追いつめた、の気持もこもる。 一五内舎人らの厳戒。↓浮舟〔一一 0 。 ひとかず ニ 0 思ひ知るを、人数にいかで見なさんとのみよろづにあっかひたまふ母君の、な一六女房らがふしだらなようだ。 宅山荘を厳重に警固したこと。 かなかなることの人笑はれになりはてば、、かに思ひ嘆かんなどおもむけてな一 ^ 薫から返書もなかった。 一九薫の不信を買ったところから、 ん、常に嘆きたまひし。その筋よりほかに、 何ごとをかと、思ひたまへ寄るに、あらためて自らの薄幸を顧みる。 ニ 0 なまじ薫に庇護される幸運が、 かえって世間のもの笑いになる結 たへはべらずなむ。鬼などの隠しきこゆとも、いささか残るところもはべるな 果に終るなら。 るものを」とて、泣くさまもいみじけれま、 しいかなることにかと紛れつる御心ニ一悪いほうに考えて、の気持。 一三薫の不信をかった以外には。 も失せて、せきあへたまはず。 ニ三思いあたることがない意。 一西証拠を残していくもの。入水 ニ六 けんしよう 薫「我は、いに身をもまかせず、顕証なるさまにもてなされたるありさまなれ以外には考えられぬという気持。 一宝匂宮が隠したかと疑って、紛 ニセ らされていた悲しみの心も。 ま、おばっかなしと思ふをりも、いま近くて、人の心おくまじく、目やすきさ ニ六自由に振舞えぬ、目だっ身分。 まにもてなして、行く末長くをと思ひのどめつつ過ぐしつるを、おろかに見な毛やがて京に迎えて、何の不満 もないように、世間体もよく。 したまひけむこそ、なかなか分くる方ありけるとおばゆれ。今はかくだに言は夭かえって浮舟のほうに、他に 分ける気持があったからだと。匂 じと思へど、また人の聞かばこそあらめ、宮の御事よ、いつよりありそめけん。宮との仲を暗に言う。 一七

9. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

( 現代語訳三七七ハー ) 、い地す。はじめより、薄きながらものどやかにものしたまひし人は、このをり一三自分をしかるべく処遇しよう と決めたお方。薫のこと。 かのをりなど、思ひ出づるぞこよなかりける。かくてこそありけれと聞きつけ一四幼少時以来の漂泊の生活から 脱け出せそうだった矢先に。 られたてまつらむ恥づかしさは、人よりまさりぬべし。さすがに、この世には、一五すべて台なしにしてしまった わが身の宿運をつくづく思うと。 ありし御さまを、よそながらだに、、 しつかは見んずるとうち思ふ、なほわろの一六匂宮への過往の共感を反省。 ↓浮舟〔」九〕 CIIO) 〔一一九〕「三一〕「三一こ。 宅匂宮と巡り会った縁で、小野 心や、かくだに思はじ、など心ひとつをかへさふ。 の山里に落魄の身を過すとする。 からうじて鶏の鳴くを聞きて、いとうれし。母の御声を聞一 ^ ↓浮舟四七ハー 三 0 〕僧都立ち寄る浮 一九最初から深い思いではないが、 舟懇願し遂に出家する 末長く庇護してくれそうだった薫 きたらむは、ましていかならむと思ひ明かして、心地も、 ( ↓浮舟四一ハー ) 。「夏衣薄きなが ふ ひとへ とあし。供にてわたるべき人もとみに来ねば、なほ臥したまへるに、いびきのらぞ頼まるる一重なるしも身に近 ければ」 ( 拾遺・恋三読人しらず ) 。 かゆ おまへ 人はいととく起きて、粥などむつかしきことどもをもてはやして、母尼「御則ニ 0 薫の姿。彼への憧れが心をか すめるが、それを打ち消す。 に、とくきこしめせ」など寄り来て言へど、まかなひもいと心づきなく、うたニ一夜明けを知り、ほっとする。 一三「山鳥のほろほろと鳴く声聞 けば父かとそ思ふ母かとそ思ふ」 習て見知らぬ心地して、浮舟「なやましくなん」と、ことなしびたまふを、強ひ ( 玉葉・釈教行基 ) 。母を思う。 ニ三女童のこもき。 て言ふもいとこちなし。 手 一西見向きもしたくない食膳。 お 一宝さりげなくお断りになるのを。 下衆下衆しき法師ばらなどあまた来て・、「僧都、今日下りさせたまふべし」、 ニ七 ニ六尋ねる声が聞えるので。 ニ六 ものけ いつばん 「などにはかには」と問ふなれば、僧「一品の宮の御物の怪になやませたまひけ毛明石の中宮腹の女一の宮。 ニ 0 ニ三 一九 ニ四 とり そうづ

10. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

とあり。こたみはさもありぬべしと思ひゆるして帰りぬ。 えに、浮舟を引き取ったがその処 遇に思いあぐねた、とする歌 ふみ 三不慣れで気恥ずかしく。 文などわざとやらんは、さすがにうひうひしう、ほのかに 〔一五〕中将三たび訪れる 一六浮舟の物思い。↓前ハー一行。 妹尼応対する 見しさまは忘れず、もの思ふらん筋何ごとと知らねどあは宅隼など小形の鷹で小鳥をと る狩。小野に立ち寄る口実である。 第」たかがり れなれば、八月十余日のほどに、小鷹狩のついでにおはしたり。例の、尼呼び一 ^ 少将の尼。中将の応対役。 一九「誰をかも待乳の山の女郎花 しづごころ 出でて、中将「一目見しより、静心なくてなむ」とのたまへり。答へたまふべ秋と契れる人そあるらし」 ( 小町 一九 集 ) 。誰か他に思う人がいるか。 まっち ニ 0 ニ 0 妹尼が簾外の中将に。 くもあらねば、尼君、「待乳の山のとなん見たまふる」と言ひ出だしたまふ。 ニ一浮舟の身の上について。 たいめん 対面したまへるにも、中将「心苦しきさまにてものしたまふと聞きはべりし人一三もっと詳しく聞きたい意。 ニ三以下、自分 ( 中将 ) の性分。万 うへ の御上なん、残りゆかしくはべる。何ごとも心にかなはぬ心地のみしはべれば、事、望みのかなわぬ人生だとする。 一西出家して山にこもりたい意。 山住みもしはべらまほしき心ありながら、ゆるいたまふまじき人々に、思ひ障一宝出家を許してくれそうもない 人々。両親などであろう。 ニ六 りてなむ過ぐしはべる。世に心地よげなる人の上は、かく屈したる人の心から = 六屈託なげに楽しそうにしてい る人。今の妻 ( 藤中納言の娘 ) 。 習にや、ふさはしからずなん。もの思ひたまふらん人に、思ふことを聞こえば毛憂愁が身上の私の性分からか。 ニ ^ 物思いの浮舟に共感したい意。 ニ九 おの や」など、いと、いとどめたるさまに語らひたまふ。妹尼「、い地よげならぬ御願己が人生の憂愁を楯に恋を訴える 手 中将の物言いは薫とも共通するが、 この場限りの言葉にすぎない。 ひは、聞こえかはしたまはんに、つきなからぬさまになむ見えはべれど、例の 一一九苦悩する女と結婚したい希望。 三 0 よはひ 人にてあらじと、 いとうたたあるまで世を恨みたまふめれば。残り少なき齢の三 0 「うたて」と同じ。 ニ ^ うへ ニセく さは はやぶさ