三一 - みる会図書館


検索対象: 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩
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1. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

( 現代語訳三五四ハー ) かかる人なん率て来たるなど、法師のあたりにはよからぬニ 0 女を自分の娘にしたいので、 〔六〕女依然として意識 その血縁の者が捜し出して連れ戻 不明、妹尼ら憂慮する ことなれば、見ざりし人にはまねばず。尼君も、みな口がすのではないかと、気が気でない。 ニ一以下、妹尼の推測 しづごころ ゐなか ひと 一三高貴な身分に思えるこの女。 ためさせつつ、もし尋ね来る人もやあると思ふも静心なし。 いかで、さる田舎 ニ三宇治は初瀬・奈良への物詣で びと ものまうで 人の住むあたりに、かかる人落ちあぶれけん、物詣などしたりける人の、心地の途中にあるので、こう推測する。 ニ四 一西継母などが、悪だくみをして ままはは などわづらひけんを、継母などやうの人のたばかりて置かせたるにゃなどそ思置き去りにさせたのだろうか。 ↓一五六ハー一三行。 第一と ひ寄りける。「川に流してよ」と言ひし一言よりほかに、ものもさらにのたま = 六女への敬語の初出。身分ある 女と察する妹尼の気持の反映。逆 はねば、し に妹尼に敬語がっかないのは、彼 、とおばっかなく思ひて、いっしか人にもなしてみんと思ふに、つく 女の心中に即した語り口による。 づくとして起き上がる世もなく、いとあやしうのみものしたまへば、つひに生毛妹尼は、どうにも不安に思い 三 0 夭人並の健康状態に。 す ゅめがたり くまじき人にやと思ひながら、うち棄てむもいとほしういみじ。夢語もし出で = 九以下、女のさま。後文による と、物の怪のため。↓一六二ハー あぎり 三 0 長谷寺で見た夢 ( ↓一五五ハー ) て、はじめより祈らせし阿闍梨にも、忍びやかに芥子焼くことせさせたまふ。 の内容を、ここで人々に明かす。 うちはヘ、 かくあっかふほどに、四五月も過ぎぬ。いとわ三一護摩をたく意。 習〔を僧都の加持により、 三ニ浮舟が入水をはかったのは三 物の怪現れ、去る 月末。一一か月が経過。 びしうかひなきことを思ひわびて、僧都の御もとに、 手 三三看護、祈疇の効果が見えない。 お 妹尼なほ降りたまへ。この人助けたまへ。さすがに今日までもあるは、死ぬ三四死ぬはずのない運命の人に、 深く取り憑き正気を失わせた魔物。 りゃう まじかりける人を、憑きしみ領じたるものの去らぬにこそあめれ。あが仏、 = 宝懇願しての呼びかけ。 ニ七 っ 三三 ニ八 三五 三四 ニ九

2. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

ごとも御宿世にこそあらめ。ただ、 , 御心の中に、すこし思しなびかむ方を、さ匂宮のほうへと。↓五六 ~ 七ハー ニ一侍従。匂宮びいきの女房。 るべきに思しならせたまへ。いでや、いとかたじけなく、いみじき御気色なり一三ただ、浮舟の胸中で。気持の 傾く相手を、宿縁と考えよとする。 ニ四 しかば、人のかく思しいそぐめりし方にも御心も寄らず。しばしは隠ろへても、ニ三匂宮のたいそうなご執心ぶり。 一西薫が浮舟を迎えるべく何かと 心づ - もりしていたらしいことにも。 御思ひのまさらせたまはむに寄らせたまひねとぞ思ひはべる」と、宮をいみじ 一宝当分は身を隠してでも。 ニ六気持のまさっている方。匂宮。 くめできこゆる心なれば、ひたみちに言ふ。 0 右近の姉をめぐって二人の男が 右近「いさや。右近は、とてもかくても、事なく過ぐさせ争う悲話は、浮舟を震えあがらせ おとめづか 〔毛〕警固の厳重なるを る。後掲の処女塚伝説 ( 七五ハー ) と ぐわん ニ九 聞き、浮舟の苦悩ます たまへと、初瀬、石山などに願をなむ立てはべる。この大も類似。浮舟入水の伏線でもある。 毛薫、匂宮のどちらでも。 さう ふだう 将殿の御庄の人々といふ者は、いみじき不道の者どもにて、一類この里に満ち天浮舟の信心する観音の寺。 ニ九薫の荘園の家来という人々は、 やまと りゃう てはべるなり。おほかた、この山城、大和に、殿の領じたまふ所どころの人な大変な乱暴者たちで。 三ニ 三 0 中務省に属し貴人の護衛など うどねり うこんのたい む、みなこの内舎人といふ者のゆかりかけつつはべるなる。それが婿の右近大にあたる。四、五位の子弟。 三一内舎人をさす。 夫といふ者を本として、よろづのことを掟て仰せられたるななり。よき人の御 = 三右近衛将監 ( 正六位相当 ) で特 舟 に五位に叙せられた者。右大将で なさけ ゐなかびと 仲どちは、情なきことし出でよと思さずとも、ものの心得ぬ田舎人どもの、宿ある薫の直属の下僚。 三三このあたりの警護など万端を。 浮ゐびと 直人にてかはりがはりさぶらへば、おのが番に当たりていささかなることもあ = 西薫と匂宮の間柄をさす。 三五匂宮に危害の加わるのを危惧。 あり しとこそむくつけく三六対岸の家での逢瀬。↓〔一七〕。 らせじなど、過ちもしはべりなむ。ありし夜の御歩きは、、 ふ ニ六 もと 三 0 三五 三三 はっせ 三六 おき ばん よ うち ニ七 ニ五 ひとるい 三四 けしき との

3. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

69 浮舟 ( 現代語訳一一九四ハー ) まほならねどほのめかしたまへる気色を、かしこにはいと一九道を踏みはずして妙な結果を 三六〕右近東国の悲話を 迎えることになろう。薫から嫌わ 一九 語る侍従匂宮を勧む ど思ひそふ。つひに、わが身はけしからずあやしくなりぬれて母の期待に背く結果を思う。 ニ 0 手紙を返すのは禁物とされる。 べきなめりと、 いとど思ふところに、右近来て、「殿の御文は、などて返した相手を傷つけ、絶交を意味する。 ニ一まちがいのあるような文面だ ニ 0 てまつらせたまひつるぞ。ゅゅしく、忌みはべるなるものを」、浮舟「ひが事のったので、宛先が違ったかと。 一三右近は、浮舟がなぜ手紙を返 たが あるやうに見えつれば、所違へかとて」とのたまふ。あやしと見ければ、道にすのか不審に思ったので。 ニ三語り手の評言。 ニ四薫にも浮舟にも難儀なことに。 て開けて見けるなりけり。よからずの右近がさまやな。見つとは言はで、右近 一宝右近は、薫の歌から、薫が浮 「あないとほし。苦しき御事どもにこそはべれ。殿はもののけしき御覧じたる舟と匂宮の秘事を知ったと察した。 ニセ ニ六浮舟は。恥すかしさに動揺。 ふみ べし」と言ふに、おもてさと赤みて、ものものたまはず。文見つらむと思はね毛右近が文を見たとも知らぬ浮 舟は、別の筋から薫を知る人が右 たれ ば、異ざまにて、かの御気色見る人の語りたるにこそはと思ふに、「誰かさ言近に教えたのだと思う。不倫が歴 然と知れわたったかと愕然とする。 ふぞ」などもえ問ひたまはず、この人々の見思ふらむことも、いみじく恥づか = 〈右近や侍従など女房たち。 ニ九自ら進んで始めたのでないが。 こころうすくせ し。わが心もてありそめしことならねども、心憂き宿世かなと思ひ入りて寝た三 0 右近姉妹が母 ( 浮舟の乳母 ) と ともに常陸介に従って下った時分。 ひたち るに、侍従と二人して、右近「右近が姉の、常陸にて人二人見はべりしを、ほ三一男を一一人持ったが。 三ニ身分は違っても、恋とはこん どほどにつけてはただかくぞかし、これもかれも劣らぬ心ざしにて、思ひまどなもの。挿入句。 三三二人の男はそれぞれ。 三四 ひてはべりしほどに、女は、今の方にいますこし、い寄せまさりてぞはべりける。 = 西新しい男のほうに。 あ こと ニ九 ニ四 ニ六 三 0 けしき

4. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

ゐなかびと らば、何か、隠れもはべらじをや。田舎人のむすめも、さるさましたるこそはニ 0 田舎娘にも美女はいよう。 一 = 『法華経』提婆達多品第十一一に りゅう む しとみえる竜女成仏の話。竜女が変成 はべらめ。竜の中より仏生まれたまはずはこそはべらめ、ただ人にては、、 男子によって成仏したように、女 人も往生しうる。 罪軽きさまの人になんはべりける」など聞こえたまふ。 一三普通の身分の人としては実に ニ四おまへ そのころかのわたりに消え失せにけむ人を思し出づ。この御前なる人も、姉前世の罪業が軽そうで美しい人。 前世の功徳で美人に生れた人。 君の伝へに、あやしくて亡せたる人とは聞きおきたれば、それにゃあらんとはニ三宇治で行方不明になった人 ( 浮舟 ) の話は、すでに中宮の知る 思ひけれど、定めなきことなり、僧都も、「かの人、世にあるものとも知られところ。↓蜻蛉一三三ハー ニ四宰相の君。その姉が何らかの かたき じと、よくもあらぬ敵だちたる人もあるやうにおもむけて、隠し忍びはべるを、事情で浮舟の死を知っていた。 ニ五よからぬ敵のような人もいる ニ六 らしく。僧都は浮舟を、継母に迫 事のさまのあやしければ啓しはべるなり」と、なま隠す気色なれば、人にも語 害された娘か本妻に脅迫された愛 ニ ^ らず。宮は、「それにもこそあれ。大将に聞かせばや」と、この人にぞのたま人ぐらいに解しているか。 ニ六事情をはっきりさせない。 三 0 はすれど、いづ方にも隠すべきことを、定めてさならむとも知らずながら、恥毛話題の「消え失せにけむ人、 ( 四行 ) だったら大変、の気持。 ニ ^ 宰相の君が薫と親しいので。 習づかしげなる人に、うち出でのたまはせむもつつましく思して、やみにけり。 ニ九薫も浮舟も秘密にしようと。 姫宮おこたりはてさせたまひて、僧都も登りたまひぬ。か三 0 いかにも気づまりな薫に。 三巴僧都、帰山の途中 手 三一僧都が小野の山里に。 立ち寄り浮舟を励ます = 三浮舟の尼姿。若い女の出家は しこに寄りたまへれば、いみじう恨みて、妹尼「なかなか、 かえって罪つくりになりかねない。 かかる御ありさまにて、罪も得ぬべきことを、のたまひもあはせずなりにける三三私にご相談もなかったとは。 ニ五 ニ九 ニセ ニ 0 三三 けしき

5. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

23 浮舟 つかさめし せたまはじを。殿は、この司召のほど過ぎて、朔日ごろにはかならずおはしま一五一夜の女主人。浮舟である。 一六中の君に。浮舟が中の君の異 ニ 0 つかひ しなむと、昨日の御使も申しけり。御文にはいかが聞こえさせたまへりけむ」母妹だと、匂宮はまだ知らない。 宅裁縫で反物に折り目をつける。 けしき と言へど、答へもせず、いともの思ひたる気色なり。右近「をりしも這ひ隠れ一 ^ 浮舟が。彼女がどこかに外出 する話。後文によれば中将の君と 、つしょに石山詣でをする前夜。 させたまへるやうならむが見苦しさ」と言へば、向かひたる人、「それは、か 一九二月初め。 せうそこ かるがる いかニ 0 京の薫からの使者。 くなむ渡りぬると御消息聞こえさせたまへらむこそよからめ。軽々しう、 ニ一薫への返事には。 ニ五 ものまうでのち でかは、音なくては這ひ隠れさせたまはむ。御物詣の後は、やがて渡りおはし一三浮舟は。 ニ三薫来訪の折、身を隠すような のも。すねたと見られては不都合。 ましねかし。かくて心細きゃうなれど、心にまかせてやすらかなる御住まひに ニ四後文で侍従と呼ばれる女房。 ニ七 一宝薫への挨拶なしには。 ならひて、なかなか旅心地すべしや」など言ふ。また、あるは、女房「なほ、 ニ六そのままこちらに帰られよ。 ニ九 毛京の母の邸はかえって他人の しばし、かくて待ちきこえさせたまはむぞ、のどやかにさまよかるべき。京へ 家のようで落ち着かないだろう。 のち三 0 など迎へたてまつらせたまへらむ後、おだしくて親にも見えたてまつらせたま夭薫の来訪を。 ニ九薫が浮舟を京に迎えるつもり へかし。このおとどのいと急にものしたまひて、にはかにかう聞こえなしたまでいる。↓一二ハー一〇行。 三 0 気がねもなく。 ふなめりかし。昔も今も、もの念じしてのどかなる人こそ、幸ひは見はてたま三一あの乳母殿が実にせつかちな 人。「おとど」は女房などの敬称 ふなれ」など言ふなり。右近、「などて、このままをとどめたてまつらずなり三ニ参詣を母君に勧めたのだろう。 三三「まま」は乳母。その乳母の上 めのと にけむ。老いぬる人は、むつかしき心のあるにこそと憎むは、乳母やうの人京を止めるべきだったとする。 三三 ついたち 一九 ニ四 ニ六

6. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

さいけいギ、つき 羽翼已ニ成ル ( 巻五十五・留侯世家 ) 西京雑記王昭君は、妃たちの画像を描く画工に賄賂を贈らす、た 須磨 3 五四川・行幸 3 一 0 三・同一 0 四 5 めに漢の元帝に知られないまま胡王に遣わきれることになった。 昔、荊軻ハ、燕丹ノ義ヲ慕フ、白虹日ヲ貫ケリ、太子畏チタリ 出発に際してその美貌を知った帝は後悔し、画工たちを処刑した 賢木一八一 2 ( 巻八十三・魯仲連鄒陽列伝 ) 須磨 3 哭 2 ・絵合 3 一会 2 ・宿木九三貶 明月ノ珠、夜光ノ璧、闇ヲ以テ人ニ道路ニ投ズレバ、人トシテ剣 史記楚の養由基、百歩の距離から柳の葉を百発百中で射る ( 巻 若菜下圈一一一一一 5 ヲ按ジテ相眄ミザルハナシ、・ : ・ : 隋侯ノ珠、夜光ノ璧トイへドモ、 四・周本紀 ) ナホ怨ヲ結ビ徳ヲ見ズ ( 巻八十三・魯仲連鄒陽列伝 ) 松風団一六 6 秦の始皇帝、阿房宮を造営する ( 巻六・秦始皇本紀 ) 匂宮 3 一三 7 屈原は、楚王と同族であり、楚懐王に重用されたが讒言にあい 秦の趙高は、二世皇帝に馬と言って鹿を献上、群臣の追従をため べきら 須磨 3 四六 江潭に漂い汨羅に投身した ( 巻八十四・屈原賈生列伝 ) した ( 巻六・秦始皇本紀 ) 須磨 3 一五・同三一 6 高祖五日ニ一タビ大公ニ朝スルコト、家人父子ノ礼ノ如シ ( 巻 りよふい 藤裏葉 3 一一一 0 秦の始皇帝は、皇帝の母太后が臣下の呂不韋と密通して生れた子 八・高祖本紀 ) せきふじん 薄雲 3 五八 2 ( 巻八十五・呂不韋列伝 ) 戚夫人、漢の高祖に寵愛される。高祖崩後、呂后の子の孝恵が即 少女団三 5 明父、子ヲ知ル ( 巻八十七・李斯列伝 ) 位すると、呂后は戚夫人とその子趙王を虐殺。残忍な母太后に孝 えうてう ・」うきゅう かんしょ 恵帝は気を病み、飲酒淫楽に走って早没する ( 巻九・呂太后本紀 ) 詩経窈窕タル淑女ハ君子ノ好逑タリ ( 国風・関雎 ) 若菜上 3 一一一朝 あまのがは 維レ天ニ漢アリ : : : 跂タル彼ノ織女 : : : 睆タル彼ノ牽牛 : 賢木一七一川・明石 3 八一ⅱ・澪標 3 一 0 六 5 帚木田六一一 8 ・松風 3 三一一 8 ・幻一一一七 3 ( 小雅・大東篇 ) 呉の季札は、自分の剣を欲しがっていた徐の君主に生前献上でき 総角 3 一一三一 1 ・同一一三一 5 ・東屋 3 一五六 6 ・同一六五Ⅱ ず、墓辺の樹に剣をかけた ( 巻三十一・呉世家 ) 竹河 3 吉 7 じゅっいき らんか 文ワレハ文王ノ子武王ノ弟、成王ノ叔父ナリ、ワレ天下ニオイテマ述異記爛柯の故事。晋の王質が童子らのうつ碁を見ているうちに、 くさ 斧の柯が爛り、帰ると七世の孫に会った 賢木一九四 タ賤シカラズ ( 巻三十三・魯周公世家 ) 松風 3 一二 2 ・同三 02 ・胡蝶 3 = 一四 囲梁王日ク、寡人ノ国ノゴトキハ小ナレドモ、尚ホ径寸ノ珠車ノ前 かんしゆくさいしゆく いかん 語後オノオノ十二乗ヲ照ラスモノ十枚アリ、奈何ゾ万乗ノ国ヲ以テ向書周公旦は、周の成王の時、弟の管叔、蔡叔に讒言されて東征 物 し、東都での二年目の秋にはげしい暴風雨と雷鳴に遭う ( 巻五・金 宝ナカランヤ、ト、威王日ク、寡人ノ宝ト為ス所以ハ王ト異ナル 明石 3 五九 2 縢篇 ) 松風団一六 6 源ナリ ( 巻四十六・田敬仲完世家 ) 呂后が張良に謀って、隠棲の四皓 ( 四人の老賢人 ) を招き、わが続日本後記尾張浜主の故事。百十三歳の浜主が宮廷に召され、長 寿楽を舞い、「翁とてわびやはをらむ草も木も栄ゆる時に出でて 子の太子を安泰ならしめた ( 巻五十五・留侯世家 ) 花宴八八 8 舞ひてむ」の歌を奉った ( 承和十二年 ) 澪標 3 一 0 六 5 ・行幸突 3 かへり

7. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

して世を背きにけるなど、おのづから隠れなかるべきを」など、あやしくかへちででもあるかのように。 天もの狂おしいほど気持が高ま るのを気どられては困るので。 すがヘす思ふ。「尼なりとも、かかるさましたらむ人はうたてもおばえじーな 一九名を知られた身分ある誰かれ。 ニ 0 夫が女をもうけたのを恨む例 ど、「なかなか見どころまさりて心苦しかるべきを、忍びたるさまに、なほ語 あきら ニ一尼となれば諦めて当然。以下 ニ五 レレ。カ らひとりてん」と思へば、まめやかに語らふ。中将「世の常のさまには思し憚の中将の心は異常なまでの高ぶり。 一三四 ( 思へば」に続く ニセ ニ六 ニ三尼になって、かえって。 ることもありけんを、かかるさまになりたまひにたるなん、心やすく聞こえっ 一西妹尼に、真剣に相談しかける。 べくはべる。さやうに教へきこえたまへ。来し方の忘れがたくて、かやうに参ニ五俗人だった時は気がねをなさ る子細もおありだったろうが。 り来るに、また、い ま一つ心ざしを添へてこそ」などのたまふ。妹尼「いと行「思し憚る」は、前の男への遠慮。 ニ六出家したことをいう。 三 0 く末心細く、うしろめたきありさまにはべるめるに、まめやかなるさまに思し毛気がねなく話も申せよう。 ニ〈亡き妻のことが忘れられす。 のち 忘れずとはせたまはん、いとうれしくこそ思ひたまへおかめ。はべらざらむ後ニ九もう一つ、浮舟への気持も。 三 0 浮舟の気がかりな身なので。 なん、あはれに思ひたまへらるべき」とて、泣きたまふに、この尼君も離れぬ三一色恋沙汰でなく、誠実に浮舟 を後援してもらいたい気持。 うしろみ 習人なるべし、誰ならむと心得がたし。中将「行く末の御後見は、命も知りがた = 三前にも、自分の余命が長から ぬと危ぶんだ。↓二〇〇ハー一行。 く頼もしげなき身なれど、さ聞こえそめはべりなばさらに変りはべらじ。尋ね三三妺尼が浮舟の遠縁かと推測 手 三四浮舟の行方を捜すようなお方。 きこえたまふべき人は、まことにものしたまはぬか。さやうのことのおばっか浮舟の前の男をさす。 0 三五色恋なしの後援なら、何も気 がねせずともよいが、の気持。 なきになん、憚るべきことにははべらねど、なほ隔てある心地しはべるべき」 ニ九 ニ四 ニ八 三三 三四

8. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

35 浮舟 一九はばか ばや。いかがすべき。かうつつむべき人目も、え憚りあふまじくなむ。大将も報告をそのまま伝える。 一六都ではどんなに騒いでいよう。 むつ ↓三三ハー四行。 いかに思はんとすらん。さるべきほどとはいひながら、あやしきまで昔より睦宅 一 ^ 身軽に動ける身分の。 一九浮舟ゆえに構ってはいられぬ。 ましき中に、かかる心の隔ての知られたらむとき、恥づかしう、また、いカレ ニ 0 薫も、これを知ったら。 ぞや、世のたとひにいふこともあれば、待ち遠なるわが怠りをも知らず、恨みニ一親しくて当然の間柄ながら。 ニ三薫への背信の行為。 られたまはむをさへなむ思ふ。夢にも人に知られたまふまじきさまにて、ここ ニ七 一西翻って、薫批判に転ずる。 ゐ こも ならぬ所に率て離れたてまつらむ」とぞのたまふ。今日さへかくて籠りゐたまニ五自分のことは棚に上げて他人 ことわ、 を責めたがる、ぐらいの諺による。 まれ ふべきならねば、出でたまひなむとするにも、袖の中にぞとどめたまひつらむニ六稀にしか訪れず浮舟を待ち遠 しく思わせている薫は、その怠慢 かーし。 を顧みず、浮舟が他に心を移した として恨むだろう、の意。 明けはてぬさきにと、人々しはぶきおどろかしきこゅ。妻一尸にもろともに率毛今日で三日目になる。 ニ ^ 語り手の推測。「飽かざりし 袖のなかにや入りにけむわが魂の ておはして、え出でやりたまはず。 みちのく なき心地する」 ( 古今・雑下陸奥 ) 。 ニ九 ニ九「夜」「世」の掛詞。「まどふ」 匂宮世に知らずまどふべきかなさきに立っ涙も道をかきくらしつつ 「立つ」「道」が縁語 三 0 「ほどなき袖」は、狭い袖、人 女も、限りなくあはれと思ひけり。 数ならぬいやしい身、の両意。 三 0 しののめ 三一「東雲のほがらほがらと明け 浮舟涙をもほどなき袖にせきかねていかに別れをとどむべき身ぞ ゆけばおのがきぬぎぬなるぞ悲し おと あら 風の音もいと荒ましく霜深き暁に、おのがきぬぎぬも冷やかになりたる心地しき」 ( 古今・恋三読人しらず ) 。 ニ五 ニ八 そで つまど ニ四 ニ 0

9. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

( 現代語訳三九四ハー ) 一九 大将は、このはてのわざなどせさせたまひて、はかなくて宅俗世にいた時は。「一人」は母。 三九〕浮舟の一周忌過ぎ、 天六 ~ 4 尽きせず隔て : ・ーに照応。 ニ 0 ひたち 薫、中宮に悲愁を語る か一九浮舟の一周忌。三月末である。 もやみぬるかなとあはれに思す。かの常陸の子どもは、 ニ 0 常陸介の子ら。浮舟の異母兄 ニニつかさぞう 。、、たはりたまひ弟。彼らの仕官への協力を約束し うぶりしたりしは蔵人になし、わが御衛府の将監になしなと ( 蜻蛉一一八ハー三行 ) 、それが実現。 な ニ一六位の蔵人であろう。 けり。童なるが、中にきょげなるをば、近く使ひ馴らさむとそ思したりける。 ニ四 一三右近衛府の三等官。正六位上。 キ、き」い おまへ 雨など降りてしめやかなる夜、后の宮に参りたまへり。御前のどやかなる日ニ三元服前の子。後に登場の小君。 ニ四明石の中宮。 ニ五 ひな にて、御物語など聞こえたまふついでに、薫「あやしき山里に、年ごろまかり = 五鄙びた山里。宇治をさす。 ニ六正室女二の宮の側近者が非難 ニ六そし ニ七 がましかったか。↓浮舟五六 通ひ見たまへしを、人の譏りはべりしも、さるべきにこそはあらめ、誰も心の 毛前世の因縁であろうが。以下、 三 0 寄る方のことはさなむあると思ひたまへなしつつ、なほ時々見たまへしを、所薫らしい冷静な判断が目だっ。 ニ ^ 自分を納得させては。 のち のさがにやと心憂く思ひたまへなりにし後は、道も遥けき、い地しはべりて、久 = 九浮舟に逢っていた意。 三 0 「憂し」に通う土地柄のせいか しうものしはべらぬを、先っころ、もののたよりにまかりて、はかなき世のあ大君、浮舟のうち続く死を思う。 三一浮舟の一周忌をばかして言う。 だうしん ことさら道心をおこすべく造りおきたりけ三 = 大君の死と浮舟の死を重ねて。 習りさまとり重ねて思ひたまへしに、 三四 三三人 ( 私 ) に道心を起させるよう ひじりす に。薫らしい感懐。↓蜻蛉九九ハー。 る聖の住み処となんおばえはべりし」と啓したまふに、かのこと思し出でて、 手 三四八の宮の邸。 うわ寺一 三五中宮は、横川の僧都の噂した 、といとほしければ、中宮「そこには恐ろしき物や住むらん。いかやうにてか、 浮舟のことを想起する。 三六 かの人は亡くなりにし」と問はせたまふを、なほ、うちつづきたるを思し寄る三六大君・浮舟の引き続いての死。 三五 ニ九 たれ

10. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

57 浮舟 匂宮「いと忍びたる人、しばし隠いたらむ」と語らひたまひけれま、 。いかなる一六「いと忍びて」とはいえ。 宅薫が浮舟を引き取ってしまっ 人にかはと思へど、大事と思したるにかたじけなければ、受領「さらばと聞ては一大事、という焦燥感。 天宮自身の乳母で、遠国の受領 まう ニ 0 つごもり こえけり。これを設けたまひて、すこし御心のどめたまふ。この月の晦日方にの妻として下る者の、その夫の家 が下京あたりにあるのを。 くだ 下るべければ、やがてその日渡さむと思し構ふ。匂宮「かくなむ思ふ。ゅめゅ一九内密の女をかくまいたい意。 薫に先立ち浮舟を引き取りたい。 うち め」と言ひやりたまひつつ、おはしまさんことはいとわりなくある中にも、こ ニ 0 乳母らは三月末ごろに離京。 ニ一決して人に気取られぬように。 こにも、乳母のいとさかしければ、難かるべきよしを聞こゅ。 一三宮自身が宇治を訪れることは。 ニ三↓「さかしき乳母」 ( 五一ハー末 ) 。 うづき 大将殿は、四月の十日となん定めたまへりける。さそふ水 = 四浮舟引取りの日程を。 三三〕中将の君来訪、弁 一宝「わびぬれば身をうき草の根 の尼と語る浮舟苦悩 を絶えて誘ふ水あらばいなむとそ あらばとは思はず、いとあやしく、いかにしなすべき身に 思ふ」 ( 古今・雑下小野小町 ) 。 ニ六 かあらむと、浮きたる心地のみすれば、母の御もとにしばし渡りて、思ひめぐ = 六「浮き」は、前注の歌にもよる が、「浮舟」の歌 ( 四七ハー ) 以来、わ ずほふ が身を形象。↓五五ハー注一三。 らすほどあらんと思せど、少将の妻、子産むべきほど近くなりぬとて、修法、 毛左近少将の妻、浮舟の異父妹。 どきゃう 読経など隙なく騒げば、石山にもえ出で立つまじ、母ぞこち渡りたまへる。乳昨年八月結婚。出産は五月ごろか。 夭こちら宇治の浮舟のもとに。 さうぞく 三 0 母出で来て、「殿より、人々の装束などもこまかに思しやりてなん。いかでき ニ九薫から、女房の着物までも。 三 0 なんとか無難に万事準備を。 よげに何ごともと思うたまふれど、ままが心ひとつには、あやしくのみぞし出三一乳母。ここは自称。↓一一三 三ニ宮に連れ出されることや、宮 との仲が露顕することなど。 ではべらむかし」など言ひ騒ぐが、心地よげなるを見たまふにも、君は、「け ひま ニ九 だいじ ニ七 ニ四 め かた 三ニ