三三 - みる会図書館


検索対象: 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩
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1. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

ごとも御宿世にこそあらめ。ただ、 , 御心の中に、すこし思しなびかむ方を、さ匂宮のほうへと。↓五六 ~ 七ハー ニ一侍従。匂宮びいきの女房。 るべきに思しならせたまへ。いでや、いとかたじけなく、いみじき御気色なり一三ただ、浮舟の胸中で。気持の 傾く相手を、宿縁と考えよとする。 ニ四 しかば、人のかく思しいそぐめりし方にも御心も寄らず。しばしは隠ろへても、ニ三匂宮のたいそうなご執心ぶり。 一西薫が浮舟を迎えるべく何かと 心づ - もりしていたらしいことにも。 御思ひのまさらせたまはむに寄らせたまひねとぞ思ひはべる」と、宮をいみじ 一宝当分は身を隠してでも。 ニ六気持のまさっている方。匂宮。 くめできこゆる心なれば、ひたみちに言ふ。 0 右近の姉をめぐって二人の男が 右近「いさや。右近は、とてもかくても、事なく過ぐさせ争う悲話は、浮舟を震えあがらせ おとめづか 〔毛〕警固の厳重なるを る。後掲の処女塚伝説 ( 七五ハー ) と ぐわん ニ九 聞き、浮舟の苦悩ます たまへと、初瀬、石山などに願をなむ立てはべる。この大も類似。浮舟入水の伏線でもある。 毛薫、匂宮のどちらでも。 さう ふだう 将殿の御庄の人々といふ者は、いみじき不道の者どもにて、一類この里に満ち天浮舟の信心する観音の寺。 ニ九薫の荘園の家来という人々は、 やまと りゃう てはべるなり。おほかた、この山城、大和に、殿の領じたまふ所どころの人な大変な乱暴者たちで。 三ニ 三 0 中務省に属し貴人の護衛など うどねり うこんのたい む、みなこの内舎人といふ者のゆかりかけつつはべるなる。それが婿の右近大にあたる。四、五位の子弟。 三一内舎人をさす。 夫といふ者を本として、よろづのことを掟て仰せられたるななり。よき人の御 = 三右近衛将監 ( 正六位相当 ) で特 舟 に五位に叙せられた者。右大将で なさけ ゐなかびと 仲どちは、情なきことし出でよと思さずとも、ものの心得ぬ田舎人どもの、宿ある薫の直属の下僚。 三三このあたりの警護など万端を。 浮ゐびと 直人にてかはりがはりさぶらへば、おのが番に当たりていささかなることもあ = 西薫と匂宮の間柄をさす。 三五匂宮に危害の加わるのを危惧。 あり しとこそむくつけく三六対岸の家での逢瀬。↓〔一七〕。 らせじなど、過ちもしはべりなむ。ありし夜の御歩きは、、 ふ ニ六 もと 三 0 三五 三三 はっせ 三六 おき ばん よ うち ニ七 ニ五 ひとるい 三四 けしき との

2. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

右近出でて、このおとなふ人に、右近「かくなむのたまはするを、なほ、、 天二七ハー八 ~ 4 御供の人来て声 づくる」の人。大内記であろう。 ニ 0 一九今日は居とどまるとする匂宮 とかたはならむとを申させたまへ。あさましうめづらかなる御ありさまは、さ の言葉を伝える。 思しめすとも、かかる御供人どもの御心にこそあらめ。いかで、かう心幼うは = 0 あなたがたから、宮に。 ニ一宮がそう望まれても、あなた がた従者のお考えしだいだろう。 率てたてまつりたまひしそ。なめげなることを聞こえさする山がつなどもはべ 一三大内記らへの非難。どうして 、ら士小 1 レかま、 。いかならまし」と = = ロふ。内記は、げにいとわづらはしくもあるか無分別にも宮をお連れしたのか。 ニ三途中で盗賊など現れでもした ニ四 たれ な、と思ひ立てり。右近「時方と仰せらるるは、誰にか。さなむ」と伝ふ。笑らどうするか、と脅した。匂宮の ニ五 言葉 ( 一一六ハ 二行 ) を逆手に用いた。 カう・カ ニ六 ひて、時方「勘〈たまふことどもの恐ろしければ、さらずとも逃げてまかでぬ一 = ↓一一七←末。 一宝あなたのお叱りの数々が。 ニ七 けしき べし。まめやかには、おろかならぬ御気色を見たてまつれば、誰も誰も身を棄「勘ふ」は叱り責める意。 ニ六宮の仰せがなくとも。 とのゐびと 毛匂宮の浮舟への執心ぶり。 ててなむ。よしよし、宿直人もみな起きぬなり」とて急ぎ出でぬ。 夭夜番の者に気づかれぬ配慮。 右近、人に知らすまじうよ、 : ゝ 。しカカはたばかるべきとわりなうおばゅ。人々起ニ九困りきっている。 三 0 殿 ( 薫 ) は子細があって、きび きぬるに、右近「殿は、さるやうありて、いみじう忍びさせたまふ、気色見たしく人目につくのを避けている意。 舟 匂宮に気づかれぬ配慮である。 三一匂宮の当初の口実を利用。 てまつれば、道にていみじきことのありけるなめり。御衣どもなど、夜さり忍 三三 三ニ夜になって内々に京の邸から。 浮 ごたち びて持て参るべくなむ仰せられつる」など言ふ。御達、「あなむくつけや。木三三年配の女房たち。 三四薫のいつもの徴行。人目を忍 2 はたやま 一き 幡山はいと恐ろしかなる山ぞかし。例の、御前駆も追はせたまはず、やつれてぶため供人も少数である。 - も 三 0 三四 ニ九 三ニ

3. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

( 現代語訳三五四ハー ) かかる人なん率て来たるなど、法師のあたりにはよからぬニ 0 女を自分の娘にしたいので、 〔六〕女依然として意識 その血縁の者が捜し出して連れ戻 不明、妹尼ら憂慮する ことなれば、見ざりし人にはまねばず。尼君も、みな口がすのではないかと、気が気でない。 ニ一以下、妹尼の推測 しづごころ ゐなか ひと 一三高貴な身分に思えるこの女。 ためさせつつ、もし尋ね来る人もやあると思ふも静心なし。 いかで、さる田舎 ニ三宇治は初瀬・奈良への物詣で びと ものまうで 人の住むあたりに、かかる人落ちあぶれけん、物詣などしたりける人の、心地の途中にあるので、こう推測する。 ニ四 一西継母などが、悪だくみをして ままはは などわづらひけんを、継母などやうの人のたばかりて置かせたるにゃなどそ思置き去りにさせたのだろうか。 ↓一五六ハー一三行。 第一と ひ寄りける。「川に流してよ」と言ひし一言よりほかに、ものもさらにのたま = 六女への敬語の初出。身分ある 女と察する妹尼の気持の反映。逆 はねば、し に妹尼に敬語がっかないのは、彼 、とおばっかなく思ひて、いっしか人にもなしてみんと思ふに、つく 女の心中に即した語り口による。 づくとして起き上がる世もなく、いとあやしうのみものしたまへば、つひに生毛妹尼は、どうにも不安に思い 三 0 夭人並の健康状態に。 す ゅめがたり くまじき人にやと思ひながら、うち棄てむもいとほしういみじ。夢語もし出で = 九以下、女のさま。後文による と、物の怪のため。↓一六二ハー あぎり 三 0 長谷寺で見た夢 ( ↓一五五ハー ) て、はじめより祈らせし阿闍梨にも、忍びやかに芥子焼くことせさせたまふ。 の内容を、ここで人々に明かす。 うちはヘ、 かくあっかふほどに、四五月も過ぎぬ。いとわ三一護摩をたく意。 習〔を僧都の加持により、 三ニ浮舟が入水をはかったのは三 物の怪現れ、去る 月末。一一か月が経過。 びしうかひなきことを思ひわびて、僧都の御もとに、 手 三三看護、祈疇の効果が見えない。 お 妹尼なほ降りたまへ。この人助けたまへ。さすがに今日までもあるは、死ぬ三四死ぬはずのない運命の人に、 深く取り憑き正気を失わせた魔物。 りゃう まじかりける人を、憑きしみ領じたるものの去らぬにこそあめれ。あが仏、 = 宝懇願しての呼びかけ。 ニ七 っ 三三 ニ八 三五 三四 ニ九

4. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

( 現代語訳三三四ハー ) よ。右の大殿の君達ならん。疎き人、はた、ここまで来べきにもあらす。もの一九前の「几帳どもの立てちがヘ たる : こに照応。奥がまる見え。 き一うじ あ ひとへ ニ 0 この六条院の主のタ霧の子息 の聞こえあらば、誰か障子は開けたりしとかならず出で来なん。単衣も袴も、 たち。六条院に疎遠な人でないと すし いう見当だけはつく。 生絹なめりと見えつる人の御姿なれば、え人も聞きつけたまはぬならんかし」 うわさ ニ一男にかいま見られたという噂。 ひじり たが と思ひ困じてをり。かの人は、「やうやう聖になりし心を、ひとふし違へそめ一三生絹は薄く軽く、衣ずれの音 も軽いので接近に気づかない。 ニ五かみ て、さまざまなるもの思ふ人ともなるかな。その丑日世を背きなましかば、ムフはニ三薫の視線に沿って語ってきた 語り手は、「かの人」として距離を 深き山に住みはてて、かく心乱らましや」など思しつづくるも、安からず、置き、その心中を語り直す。 ニ四八の宮との親交以来しだいに 大君との 「などて、年ごろ、見たてまつらばやと思ひつらん。なかなか苦しうかひなか道心を固めてきたのに、 一件から物思う身になった意。 るべきわざにこそ」と思ふ。 ニ五大君との死別の当座。その時、 出家遁世していたならと仮想。 かたち っとめて、起きたまへる女宮の御容貌いとをかしげなめるニ六女一の宮を。年来の憧れ。 〔三〕薫、女一の宮と女 毛女一の宮をなまじかいま見て、 ニ九 ニの宮とを比べて嘆く は、これよりかならずまさるべきことかは、と見えながら、かえって近寄りがたい貴人と実感。 夭正室、女二の宮。 三 0 蛉「さらに似たまはすこそありけれ。あさましきまであてにかをりえも言はざり = 九女二の宮より女一の宮が。 三 0 この姉妹は似ていないとする。 し御さまかな。かたへは思ひなしか、をりからか」と思して、薫「いと暑しゃ。三一女一の宮の驚くべき美貌。 蜻 一つには自分の気のせいか れい これより薄き御衣奉れ。女は、例ならぬもの着たるこそ、時々につけてをかし三三薫の母女三の宮づきの女房。 三四 = 西かいま見た女一の宮と同じ衣 うすものひとへ けれ」とて、薫「あなたに参りて、大弐に、薄物の単衣の御衣縫ひてまゐれと装をわが正室に着せようとの魂胆。 ニ 0 」う ニ四 はかま あこが

5. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

65 浮舟 あまたの御子どもの上達部、君たちをひきつづけてあなたに渡りたまひぬ。こ↓東屋 3 〔一セ〕〔一九〕〔 = 0 〕〔 = 六〕。 一九比叡山の天台座主に加持祈疇 ずいじん ごぜん に来てもらうため使者を遣わそう。 の殿はおくれて出でたまふ。随身気色ばみつる、あやしと思しければ、御前な ニ 0 同じ六条院内の東北の町。匂 ど下りて灯ともすほどに、随身召し寄す。薫「申しつるは何ごとぞ」と問ひた宮の正室六の君がいる。 ニ一薫は、随身のいわくありげだ いづものごんのかみときかたのあそむ をとこ まふ。随身「今朝、かの宇治に、出雲権守時方朝臣のもとにはべる男の、紫のったのが不審だったので。 一三前駆の者が引きさがり、松明 うすやう ニ五つまど 薄様にて桜につけたる文を、西の妻戸に寄りて、女房にとらせはべりつる見たをともして退出の用意をする間。 ニ三左衛門大夫時方が出雲権守を ニセ ことたが まへつけて、しかじか問ひはべりつれば、言違へつつ、そらごとのやうに申し兼任していることが初めて記され た。遥任であろう。事の重大さか わらは ひやうぶきゃうのみや はべりつるを、いかに申すそとて、童べして見せはべりつれば、兵部卿宮に参ら、正確な官職名を用いた。 ニ四桜襲 ( 表白、裏紫 ) の縁から、 しきぶのせふみちさだのあそむ りはべりて、式部少輔道定朝臣になむ、その返り事はとらせはべりけると申紫の料紙の文を桜の枝に結んだか。 一宝宇治の山荘の寝殿の西の妻戸。 兵私 ( 随身 ) が。 す。君、あやしと思して、「その返り事は、いかやうにしてか出だしつる」、 毛時方に仕える下男に。以下、 し - もびと 六一一ハー末の随身と下男の質疑応答。 随身「それは見たまへず。異方より出だしはべりにける。下人の申しはべりつ 夭童による探索。↓六三ハー しきし るは、赤き色紙のいときよらなる、となむ申しはべりつる」と聞こゅ。思しあ = 九宇治の山荘では、どんなふう に渡したのか。恋文に熱中する匂 はするに、違ふことなし。さまで見せつらむを、かどかどしと思せど、人々近宮を見た薫は、料紙など知りたい。 三 0 私のいた所とは異なる所から。 ければ、くはしくものたまはず。 三一前出の童であろう。 = 三宮が見ていた紅の薄様と直感。 三三随身が見届けさせたのを。 ひ たが 三 0 ことかた 三三 ニ九 ニ 0 ニ六

6. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

ゐなかびと らば、何か、隠れもはべらじをや。田舎人のむすめも、さるさましたるこそはニ 0 田舎娘にも美女はいよう。 一 = 『法華経』提婆達多品第十一一に りゅう む しとみえる竜女成仏の話。竜女が変成 はべらめ。竜の中より仏生まれたまはずはこそはべらめ、ただ人にては、、 男子によって成仏したように、女 人も往生しうる。 罪軽きさまの人になんはべりける」など聞こえたまふ。 一三普通の身分の人としては実に ニ四おまへ そのころかのわたりに消え失せにけむ人を思し出づ。この御前なる人も、姉前世の罪業が軽そうで美しい人。 前世の功徳で美人に生れた人。 君の伝へに、あやしくて亡せたる人とは聞きおきたれば、それにゃあらんとはニ三宇治で行方不明になった人 ( 浮舟 ) の話は、すでに中宮の知る 思ひけれど、定めなきことなり、僧都も、「かの人、世にあるものとも知られところ。↓蜻蛉一三三ハー ニ四宰相の君。その姉が何らかの かたき じと、よくもあらぬ敵だちたる人もあるやうにおもむけて、隠し忍びはべるを、事情で浮舟の死を知っていた。 ニ五よからぬ敵のような人もいる ニ六 らしく。僧都は浮舟を、継母に迫 事のさまのあやしければ啓しはべるなり」と、なま隠す気色なれば、人にも語 害された娘か本妻に脅迫された愛 ニ ^ らず。宮は、「それにもこそあれ。大将に聞かせばや」と、この人にぞのたま人ぐらいに解しているか。 ニ六事情をはっきりさせない。 三 0 はすれど、いづ方にも隠すべきことを、定めてさならむとも知らずながら、恥毛話題の「消え失せにけむ人、 ( 四行 ) だったら大変、の気持。 ニ ^ 宰相の君が薫と親しいので。 習づかしげなる人に、うち出でのたまはせむもつつましく思して、やみにけり。 ニ九薫も浮舟も秘密にしようと。 姫宮おこたりはてさせたまひて、僧都も登りたまひぬ。か三 0 いかにも気づまりな薫に。 三巴僧都、帰山の途中 手 三一僧都が小野の山里に。 立ち寄り浮舟を励ます = 三浮舟の尼姿。若い女の出家は しこに寄りたまへれば、いみじう恨みて、妹尼「なかなか、 かえって罪つくりになりかねない。 かかる御ありさまにて、罪も得ぬべきことを、のたまひもあはせずなりにける三三私にご相談もなかったとは。 ニ五 ニ九 ニセ ニ 0 三三 けしき

7. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

23 浮舟 つかさめし せたまはじを。殿は、この司召のほど過ぎて、朔日ごろにはかならずおはしま一五一夜の女主人。浮舟である。 一六中の君に。浮舟が中の君の異 ニ 0 つかひ しなむと、昨日の御使も申しけり。御文にはいかが聞こえさせたまへりけむ」母妹だと、匂宮はまだ知らない。 宅裁縫で反物に折り目をつける。 けしき と言へど、答へもせず、いともの思ひたる気色なり。右近「をりしも這ひ隠れ一 ^ 浮舟が。彼女がどこかに外出 する話。後文によれば中将の君と 、つしょに石山詣でをする前夜。 させたまへるやうならむが見苦しさ」と言へば、向かひたる人、「それは、か 一九二月初め。 せうそこ かるがる いかニ 0 京の薫からの使者。 くなむ渡りぬると御消息聞こえさせたまへらむこそよからめ。軽々しう、 ニ一薫への返事には。 ニ五 ものまうでのち でかは、音なくては這ひ隠れさせたまはむ。御物詣の後は、やがて渡りおはし一三浮舟は。 ニ三薫来訪の折、身を隠すような のも。すねたと見られては不都合。 ましねかし。かくて心細きゃうなれど、心にまかせてやすらかなる御住まひに ニ四後文で侍従と呼ばれる女房。 ニ七 一宝薫への挨拶なしには。 ならひて、なかなか旅心地すべしや」など言ふ。また、あるは、女房「なほ、 ニ六そのままこちらに帰られよ。 ニ九 毛京の母の邸はかえって他人の しばし、かくて待ちきこえさせたまはむぞ、のどやかにさまよかるべき。京へ 家のようで落ち着かないだろう。 のち三 0 など迎へたてまつらせたまへらむ後、おだしくて親にも見えたてまつらせたま夭薫の来訪を。 ニ九薫が浮舟を京に迎えるつもり へかし。このおとどのいと急にものしたまひて、にはかにかう聞こえなしたまでいる。↓一二ハー一〇行。 三 0 気がねもなく。 ふなめりかし。昔も今も、もの念じしてのどかなる人こそ、幸ひは見はてたま三一あの乳母殿が実にせつかちな 人。「おとど」は女房などの敬称 ふなれ」など言ふなり。右近、「などて、このままをとどめたてまつらずなり三ニ参詣を母君に勧めたのだろう。 三三「まま」は乳母。その乳母の上 めのと にけむ。老いぬる人は、むつかしき心のあるにこそと憎むは、乳母やうの人京を止めるべきだったとする。 三三 ついたち 一九 ニ四 ニ六

8. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

じくおばっかなきことどもをさへ、かたがた思ひまどひたまふさまは、すこし相手の宮の高貴さを思う。 一九真相を明らかにしえない不安 あきらめさせたてまつらん。亡くなりたまへる人とても、骸を置きてもてあつまで加わり、母君があれこれ見当 違いの想像をしていること。 ニ 0 「明らむ」で、明らかにする意。 かふこそ世の常なれ、世づかぬけしきにて日ごろも経ば、さらに隠れあらじ。 ニ一遺骸を安置し弔うのが常だが なほ聞こえて、今は世の聞こえをだにつくろはむと語らひて、忍びてありし = = 葬送の営みのないさま。 ニ三躊躇もあるが、やはり母君に。 、つ。わ寺、 一西噂の立たぬうちに早く葬送し さまを聞こゆるに、言ふ人も消え入り、え言ひやらす、聞く心地もまどひつつ、 ニ六 て世間体をとりつくろおうとする。 あら さば、このいと荒ましと思ふ川に流れ亡せたまひにけりと思ふに、 いとど我もニ五「一一 = ロふ人も : ・」「聞く心地も ・ : 」の対句的な文脈。 ニ七 落ち入りぬべき心地して、母君「おはしましにけむ方を尋ねて、骸をだに、は = 六↓浮舟六〇ハー一二行。 毛流れて行かれた所を捜して、 なきがら かばかしくをさめむ」とのたまへど、「さらに何のかひはべらじ。行く方も知せめて亡骸なりと弔いたいもの。 夭それなのに、リ , 捜しなどで人 が噂を立てるようになっては。 らぬ大海の原にこそおはしましにけめ。さるものから、人の言ひ伝へんことは ニ九浮舟の行方をあれこれ想像。 ニ九 いと聞きにくしと聞こゆれば、とざまかくざまに思ふに、胸のせきのばる、い三 0 右近と侍従 三一浮舟のいた部屋の前に。以下、 三 0 ふたり 遺骸を運び出すように装い、遺骸 地して、いかにもいかにもすべき方もおばえたまはぬを、この人々二人して、 蛉 の代りに身辺の物品を集める。 おまし 車寄せさせて、御座ども、け近う使ひたまひし御調度ども、みなながら脱ぎお三 = そっくり脱いで置かれた夜着。 三三浮舟の乳母の子である僧。以 蜻 ふすま めのとごだいとこ きたまへる御衾などやうのものをとり入れて、乳母子の大徳、それが叔父の阿下の僧たちは、すべて乳母の血縁 者、近親者。秘事漏洩を防ぐため。 ざり むつ おいほふし 三四いみこも 三四近親者などの三十日間の籠り。 闍梨、その弟子の睦ましきなど、もとより知りたる老法師など、御忌に籠るべ おほうみ ニ四 三三 へ から から

9. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

53 浮舟 宅薫とはじめて契り交したこと。 めより契りたまひしさまも、さすがにかれはなほいともの深う人柄のめでたき 以下、浮舟の心に即し、「かかる ニ 0 うきことあたりから直接話法。 なども、世の中を知りにしはじめなればにや。「かかるうきこと聞きつけて思 天薫を「かれ」と呼ぶのは、匂宮 に親近感を抱いているから。 ひ疎みたまひなむ世こよ、、ゝ。ゝ し。しカて力あらむ。いっしかと思ひまどふ親にも、思 一九薫が男女の仲を最初に知った はずに心づきなしとこそはもてわづらはれめ。かく心焦られしたまふ人、はた、相手だからか。挿入句的な言辞。 ニ 0 薫が、匂宮との秘事を聞いて。 ニ一早く薫に迎えられるようにと。 かかるほどこそあらめ、また、か , っ いとあだなる御心本性とのみ聞きしかば、 一三匂宮。その浮舟恋慕が「心焦 ニ六 ニ七 ニハ かず られ」の語で繰り返されてきた。 ながらも、京にも隠し据ゑたまひ、ながらへても思し数まへむにつけては、か ニ三匂宮の「あだ心」は世間の定評。 ニ四熱中している間はともかく、 の上の思さむこと。よろづ隠れなき世なりければ、あやしかりし夕暮のしるべ やがて冷めてしまうだろう。 ばかりにだに、かうたづね出でたまふめり、まして、わがありさまのともかく一宝このまま匂宮に捨てられず。 ニ六↓五一ハー二行。 きず もあらむを、聞きたまはぬゃうはありなんや」と思ひたどるに、わが心も、瑕毛末長い思い人としての世話。 夭中の君への恩義。 ありてかの人に疎まれたてまつらむ、なほいみじかるべしと思ひ乱るるをりしニ九匂宮が二条院で出会っただけ の自分 ( 浮舟 ) を見出したこと。自 分を隠れようのない存在とみる根 も、かの殿より御使あり。 拠。「 : ・たまふめり」まで挿入句。 三ニ 三 0 自分が宮にかくまわれ京のど これかれと見るもいとうたてあれば、なほ一一 = ロ多かりつるを見つつ臥したまへ こかにいても薫にすぐ知られよう。 れば、侍従、右近見あはせて、「なほ移りにけり」など、言はぬゃうにて言ふ。三一薫。次@かの殿」も薫。 三ニ匂宮の長々しい文面の手紙。 かたち 侍従「ことわりそかし。殿の御容貌を、たぐひおはしまさじと見しかど、この三三浮舟の心が薫から匂宮に。 うへ 三三 ニ九 三 0 ニ玉

10. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

して世を背きにけるなど、おのづから隠れなかるべきを」など、あやしくかへちででもあるかのように。 天もの狂おしいほど気持が高ま るのを気どられては困るので。 すがヘす思ふ。「尼なりとも、かかるさましたらむ人はうたてもおばえじーな 一九名を知られた身分ある誰かれ。 ニ 0 夫が女をもうけたのを恨む例 ど、「なかなか見どころまさりて心苦しかるべきを、忍びたるさまに、なほ語 あきら ニ一尼となれば諦めて当然。以下 ニ五 レレ。カ らひとりてん」と思へば、まめやかに語らふ。中将「世の常のさまには思し憚の中将の心は異常なまでの高ぶり。 一三四 ( 思へば」に続く ニセ ニ六 ニ三尼になって、かえって。 ることもありけんを、かかるさまになりたまひにたるなん、心やすく聞こえっ 一西妹尼に、真剣に相談しかける。 べくはべる。さやうに教へきこえたまへ。来し方の忘れがたくて、かやうに参ニ五俗人だった時は気がねをなさ る子細もおありだったろうが。 り来るに、また、い ま一つ心ざしを添へてこそ」などのたまふ。妹尼「いと行「思し憚る」は、前の男への遠慮。 ニ六出家したことをいう。 三 0 く末心細く、うしろめたきありさまにはべるめるに、まめやかなるさまに思し毛気がねなく話も申せよう。 ニ〈亡き妻のことが忘れられす。 のち 忘れずとはせたまはん、いとうれしくこそ思ひたまへおかめ。はべらざらむ後ニ九もう一つ、浮舟への気持も。 三 0 浮舟の気がかりな身なので。 なん、あはれに思ひたまへらるべき」とて、泣きたまふに、この尼君も離れぬ三一色恋沙汰でなく、誠実に浮舟 を後援してもらいたい気持。 うしろみ 習人なるべし、誰ならむと心得がたし。中将「行く末の御後見は、命も知りがた = 三前にも、自分の余命が長から ぬと危ぶんだ。↓二〇〇ハー一行。 く頼もしげなき身なれど、さ聞こえそめはべりなばさらに変りはべらじ。尋ね三三妺尼が浮舟の遠縁かと推測 手 三四浮舟の行方を捜すようなお方。 きこえたまふべき人は、まことにものしたまはぬか。さやうのことのおばっか浮舟の前の男をさす。 0 三五色恋なしの後援なら、何も気 がねせずともよいが、の気持。 なきになん、憚るべきことにははべらねど、なほ隔てある心地しはべるべき」 ニ九 ニ四 ニ八 三三 三四