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検索対象: 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩
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1. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

( 現代語訳三九四ハー ) 一九 大将は、このはてのわざなどせさせたまひて、はかなくて宅俗世にいた時は。「一人」は母。 三九〕浮舟の一周忌過ぎ、 天六 ~ 4 尽きせず隔て : ・ーに照応。 ニ 0 ひたち 薫、中宮に悲愁を語る か一九浮舟の一周忌。三月末である。 もやみぬるかなとあはれに思す。かの常陸の子どもは、 ニ 0 常陸介の子ら。浮舟の異母兄 ニニつかさぞう 。、、たはりたまひ弟。彼らの仕官への協力を約束し うぶりしたりしは蔵人になし、わが御衛府の将監になしなと ( 蜻蛉一一八ハー三行 ) 、それが実現。 な ニ一六位の蔵人であろう。 けり。童なるが、中にきょげなるをば、近く使ひ馴らさむとそ思したりける。 ニ四 一三右近衛府の三等官。正六位上。 キ、き」い おまへ 雨など降りてしめやかなる夜、后の宮に参りたまへり。御前のどやかなる日ニ三元服前の子。後に登場の小君。 ニ四明石の中宮。 ニ五 ひな にて、御物語など聞こえたまふついでに、薫「あやしき山里に、年ごろまかり = 五鄙びた山里。宇治をさす。 ニ六正室女二の宮の側近者が非難 ニ六そし ニ七 がましかったか。↓浮舟五六 通ひ見たまへしを、人の譏りはべりしも、さるべきにこそはあらめ、誰も心の 毛前世の因縁であろうが。以下、 三 0 寄る方のことはさなむあると思ひたまへなしつつ、なほ時々見たまへしを、所薫らしい冷静な判断が目だっ。 ニ ^ 自分を納得させては。 のち のさがにやと心憂く思ひたまへなりにし後は、道も遥けき、い地しはべりて、久 = 九浮舟に逢っていた意。 三 0 「憂し」に通う土地柄のせいか しうものしはべらぬを、先っころ、もののたよりにまかりて、はかなき世のあ大君、浮舟のうち続く死を思う。 三一浮舟の一周忌をばかして言う。 だうしん ことさら道心をおこすべく造りおきたりけ三 = 大君の死と浮舟の死を重ねて。 習りさまとり重ねて思ひたまへしに、 三四 三三人 ( 私 ) に道心を起させるよう ひじりす に。薫らしい感懐。↓蜻蛉九九ハー。 る聖の住み処となんおばえはべりし」と啓したまふに、かのこと思し出でて、 手 三四八の宮の邸。 うわ寺一 三五中宮は、横川の僧都の噂した 、といとほしければ、中宮「そこには恐ろしき物や住むらん。いかやうにてか、 浮舟のことを想起する。 三六 かの人は亡くなりにし」と問はせたまふを、なほ、うちつづきたるを思し寄る三六大君・浮舟の引き続いての死。 三五 ニ九 たれ

2. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

ごとも御宿世にこそあらめ。ただ、 , 御心の中に、すこし思しなびかむ方を、さ匂宮のほうへと。↓五六 ~ 七ハー ニ一侍従。匂宮びいきの女房。 るべきに思しならせたまへ。いでや、いとかたじけなく、いみじき御気色なり一三ただ、浮舟の胸中で。気持の 傾く相手を、宿縁と考えよとする。 ニ四 しかば、人のかく思しいそぐめりし方にも御心も寄らず。しばしは隠ろへても、ニ三匂宮のたいそうなご執心ぶり。 一西薫が浮舟を迎えるべく何かと 心づ - もりしていたらしいことにも。 御思ひのまさらせたまはむに寄らせたまひねとぞ思ひはべる」と、宮をいみじ 一宝当分は身を隠してでも。 ニ六気持のまさっている方。匂宮。 くめできこゆる心なれば、ひたみちに言ふ。 0 右近の姉をめぐって二人の男が 右近「いさや。右近は、とてもかくても、事なく過ぐさせ争う悲話は、浮舟を震えあがらせ おとめづか 〔毛〕警固の厳重なるを る。後掲の処女塚伝説 ( 七五ハー ) と ぐわん ニ九 聞き、浮舟の苦悩ます たまへと、初瀬、石山などに願をなむ立てはべる。この大も類似。浮舟入水の伏線でもある。 毛薫、匂宮のどちらでも。 さう ふだう 将殿の御庄の人々といふ者は、いみじき不道の者どもにて、一類この里に満ち天浮舟の信心する観音の寺。 ニ九薫の荘園の家来という人々は、 やまと りゃう てはべるなり。おほかた、この山城、大和に、殿の領じたまふ所どころの人な大変な乱暴者たちで。 三ニ 三 0 中務省に属し貴人の護衛など うどねり うこんのたい む、みなこの内舎人といふ者のゆかりかけつつはべるなる。それが婿の右近大にあたる。四、五位の子弟。 三一内舎人をさす。 夫といふ者を本として、よろづのことを掟て仰せられたるななり。よき人の御 = 三右近衛将監 ( 正六位相当 ) で特 舟 に五位に叙せられた者。右大将で なさけ ゐなかびと 仲どちは、情なきことし出でよと思さずとも、ものの心得ぬ田舎人どもの、宿ある薫の直属の下僚。 三三このあたりの警護など万端を。 浮ゐびと 直人にてかはりがはりさぶらへば、おのが番に当たりていささかなることもあ = 西薫と匂宮の間柄をさす。 三五匂宮に危害の加わるのを危惧。 あり しとこそむくつけく三六対岸の家での逢瀬。↓〔一七〕。 らせじなど、過ちもしはべりなむ。ありし夜の御歩きは、、 ふ ニ六 もと 三 0 三五 三三 はっせ 三六 おき ばん よ うち ニ七 ニ五 ひとるい 三四 けしき との

3. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

して世を背きにけるなど、おのづから隠れなかるべきを」など、あやしくかへちででもあるかのように。 天もの狂おしいほど気持が高ま るのを気どられては困るので。 すがヘす思ふ。「尼なりとも、かかるさましたらむ人はうたてもおばえじーな 一九名を知られた身分ある誰かれ。 ニ 0 夫が女をもうけたのを恨む例 ど、「なかなか見どころまさりて心苦しかるべきを、忍びたるさまに、なほ語 あきら ニ一尼となれば諦めて当然。以下 ニ五 レレ。カ らひとりてん」と思へば、まめやかに語らふ。中将「世の常のさまには思し憚の中将の心は異常なまでの高ぶり。 一三四 ( 思へば」に続く ニセ ニ六 ニ三尼になって、かえって。 ることもありけんを、かかるさまになりたまひにたるなん、心やすく聞こえっ 一西妹尼に、真剣に相談しかける。 べくはべる。さやうに教へきこえたまへ。来し方の忘れがたくて、かやうに参ニ五俗人だった時は気がねをなさ る子細もおありだったろうが。 り来るに、また、い ま一つ心ざしを添へてこそ」などのたまふ。妹尼「いと行「思し憚る」は、前の男への遠慮。 ニ六出家したことをいう。 三 0 く末心細く、うしろめたきありさまにはべるめるに、まめやかなるさまに思し毛気がねなく話も申せよう。 ニ〈亡き妻のことが忘れられす。 のち 忘れずとはせたまはん、いとうれしくこそ思ひたまへおかめ。はべらざらむ後ニ九もう一つ、浮舟への気持も。 三 0 浮舟の気がかりな身なので。 なん、あはれに思ひたまへらるべき」とて、泣きたまふに、この尼君も離れぬ三一色恋沙汰でなく、誠実に浮舟 を後援してもらいたい気持。 うしろみ 習人なるべし、誰ならむと心得がたし。中将「行く末の御後見は、命も知りがた = 三前にも、自分の余命が長から ぬと危ぶんだ。↓二〇〇ハー一行。 く頼もしげなき身なれど、さ聞こえそめはべりなばさらに変りはべらじ。尋ね三三妺尼が浮舟の遠縁かと推測 手 三四浮舟の行方を捜すようなお方。 きこえたまふべき人は、まことにものしたまはぬか。さやうのことのおばっか浮舟の前の男をさす。 0 三五色恋なしの後援なら、何も気 がねせずともよいが、の気持。 なきになん、憚るべきことにははべらねど、なほ隔てある心地しはべるべき」 ニ九 ニ四 ニ八 三三 三四

4. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

35 浮舟 一九はばか ばや。いかがすべき。かうつつむべき人目も、え憚りあふまじくなむ。大将も報告をそのまま伝える。 一六都ではどんなに騒いでいよう。 むつ ↓三三ハー四行。 いかに思はんとすらん。さるべきほどとはいひながら、あやしきまで昔より睦宅 一 ^ 身軽に動ける身分の。 一九浮舟ゆえに構ってはいられぬ。 ましき中に、かかる心の隔ての知られたらむとき、恥づかしう、また、いカレ ニ 0 薫も、これを知ったら。 ぞや、世のたとひにいふこともあれば、待ち遠なるわが怠りをも知らず、恨みニ一親しくて当然の間柄ながら。 ニ三薫への背信の行為。 られたまはむをさへなむ思ふ。夢にも人に知られたまふまじきさまにて、ここ ニ七 一西翻って、薫批判に転ずる。 ゐ こも ならぬ所に率て離れたてまつらむ」とぞのたまふ。今日さへかくて籠りゐたまニ五自分のことは棚に上げて他人 ことわ、 を責めたがる、ぐらいの諺による。 まれ ふべきならねば、出でたまひなむとするにも、袖の中にぞとどめたまひつらむニ六稀にしか訪れず浮舟を待ち遠 しく思わせている薫は、その怠慢 かーし。 を顧みず、浮舟が他に心を移した として恨むだろう、の意。 明けはてぬさきにと、人々しはぶきおどろかしきこゅ。妻一尸にもろともに率毛今日で三日目になる。 ニ ^ 語り手の推測。「飽かざりし 袖のなかにや入りにけむわが魂の ておはして、え出でやりたまはず。 みちのく なき心地する」 ( 古今・雑下陸奥 ) 。 ニ九 ニ九「夜」「世」の掛詞。「まどふ」 匂宮世に知らずまどふべきかなさきに立っ涙も道をかきくらしつつ 「立つ」「道」が縁語 三 0 「ほどなき袖」は、狭い袖、人 女も、限りなくあはれと思ひけり。 数ならぬいやしい身、の両意。 三 0 しののめ 三一「東雲のほがらほがらと明け 浮舟涙をもほどなき袖にせきかねていかに別れをとどむべき身ぞ ゆけばおのがきぬぎぬなるぞ悲し おと あら 風の音もいと荒ましく霜深き暁に、おのがきぬぎぬも冷やかになりたる心地しき」 ( 古今・恋三読人しらず ) 。 ニ五 ニ八 そで つまど ニ四 ニ 0

5. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

出づるにとどめられて、物語しめやかにしたまふ。「言ふかひなくなりにし人一五中将。「蓮の実」は酒の肴。 一六接待にも遠慮のいらぬ気持。 よりも、この君の御心ばへなどのいと思ふやうなりしを、よそのものに思ひな宅にわか雨。涙をも暗示するか。 一 ^ 亡き娘。以下、妹尼の心中。 したるなん、いと悲しき。など忘れ形見をだにとどめたまはずなりにけん」と、一九申し分なかったものを。 ニ 0 せめて忘れ形見の子なりと。 恋ひぶ心なりければ、たまさかにかくものしたま〈るにつけても、めづらし = 一中将が久方ぶりに。 一三妹尼は、田 5 いもかけぬことと くあはれにおばゅべかめる問はず語りもし出でつべし。 感動しているはすの浮舟のことを、 問われすとも語り出したい気持だ 姫君は、我は我と思ひ出づる方多くて、ながめ出だしたまへるさまいとうつろう。語り手の推測による。 ニ三浮舟の呼称として「姫君」は初 なさけ はかまひはだいろ くし。白き単衣の、いと情なくあざやぎたるに、袴も檜皮色にならひたるにや、出。恋物語の女主人公の趣。 ニ四自分なりにわが身の上に田 5 い 光も見えず黒きを着せたてまつりたれば、かかることどもも、見しには変りてを馳せる。↓澪標 3 一一四ハー二行。 一宝若い女が着るには不似合い ニセ ニ ^ 一宍多く出家の人がつける袴の色。 あやしうもあるかなと思ひつつ、こはごはしういららぎたるものども着たまへ 毛浮舟は。 おまへ るしも、いとをかしき姿なり。御前なる人々、「故姫君のおはしまいたる、い地 = 〈ごっごっ肌わりのよくない 着物。「いら」は刺の意。 、とあはれにこそ。同じくは、ニ九昔のように婿君として。この 習のみしはべるに、中将殿をさへ見たてまつれば、し あたり、タ霧〔 = 六〕・総角 3 〔六〕 ニ九 昔のさまにておはしまさせばや。いとよき御あはひならむかし」と言ひあへるなどに見えた女房と同趣。 手 三 0 以下、浮舟の心中。人並に男 と縁を結ぶのはまっぴらとする。 を、「あないみじゃ。世にありて、いかにもいかにも人に見えんこそ。それに 三一薫と匂宮の板挟みになった、 えんお つけてぞ昔のこと思ひ出でらるべき。さやうの筋は、思ひ絶えて忘れなん」と過往の厭悪すべき思い出。 ニ三 し 三 0 ニ五ひとへ ニ四 かた ニ六

6. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

じくおばっかなきことどもをさへ、かたがた思ひまどひたまふさまは、すこし相手の宮の高貴さを思う。 一九真相を明らかにしえない不安 あきらめさせたてまつらん。亡くなりたまへる人とても、骸を置きてもてあつまで加わり、母君があれこれ見当 違いの想像をしていること。 ニ 0 「明らむ」で、明らかにする意。 かふこそ世の常なれ、世づかぬけしきにて日ごろも経ば、さらに隠れあらじ。 ニ一遺骸を安置し弔うのが常だが なほ聞こえて、今は世の聞こえをだにつくろはむと語らひて、忍びてありし = = 葬送の営みのないさま。 ニ三躊躇もあるが、やはり母君に。 、つ。わ寺、 一西噂の立たぬうちに早く葬送し さまを聞こゆるに、言ふ人も消え入り、え言ひやらす、聞く心地もまどひつつ、 ニ六 て世間体をとりつくろおうとする。 あら さば、このいと荒ましと思ふ川に流れ亡せたまひにけりと思ふに、 いとど我もニ五「一一 = ロふ人も : ・」「聞く心地も ・ : 」の対句的な文脈。 ニ七 落ち入りぬべき心地して、母君「おはしましにけむ方を尋ねて、骸をだに、は = 六↓浮舟六〇ハー一二行。 毛流れて行かれた所を捜して、 なきがら かばかしくをさめむ」とのたまへど、「さらに何のかひはべらじ。行く方も知せめて亡骸なりと弔いたいもの。 夭それなのに、リ , 捜しなどで人 が噂を立てるようになっては。 らぬ大海の原にこそおはしましにけめ。さるものから、人の言ひ伝へんことは ニ九浮舟の行方をあれこれ想像。 ニ九 いと聞きにくしと聞こゆれば、とざまかくざまに思ふに、胸のせきのばる、い三 0 右近と侍従 三一浮舟のいた部屋の前に。以下、 三 0 ふたり 遺骸を運び出すように装い、遺骸 地して、いかにもいかにもすべき方もおばえたまはぬを、この人々二人して、 蛉 の代りに身辺の物品を集める。 おまし 車寄せさせて、御座ども、け近う使ひたまひし御調度ども、みなながら脱ぎお三 = そっくり脱いで置かれた夜着。 三三浮舟の乳母の子である僧。以 蜻 ふすま めのとごだいとこ きたまへる御衾などやうのものをとり入れて、乳母子の大徳、それが叔父の阿下の僧たちは、すべて乳母の血縁 者、近親者。秘事漏洩を防ぐため。 ざり むつ おいほふし 三四いみこも 三四近親者などの三十日間の籠り。 闍梨、その弟子の睦ましきなど、もとより知りたる老法師など、御忌に籠るべ おほうみ ニ四 三三 へ から から

7. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

65 浮舟 あまたの御子どもの上達部、君たちをひきつづけてあなたに渡りたまひぬ。こ↓東屋 3 〔一セ〕〔一九〕〔 = 0 〕〔 = 六〕。 一九比叡山の天台座主に加持祈疇 ずいじん ごぜん に来てもらうため使者を遣わそう。 の殿はおくれて出でたまふ。随身気色ばみつる、あやしと思しければ、御前な ニ 0 同じ六条院内の東北の町。匂 ど下りて灯ともすほどに、随身召し寄す。薫「申しつるは何ごとぞ」と問ひた宮の正室六の君がいる。 ニ一薫は、随身のいわくありげだ いづものごんのかみときかたのあそむ をとこ まふ。随身「今朝、かの宇治に、出雲権守時方朝臣のもとにはべる男の、紫のったのが不審だったので。 一三前駆の者が引きさがり、松明 うすやう ニ五つまど 薄様にて桜につけたる文を、西の妻戸に寄りて、女房にとらせはべりつる見たをともして退出の用意をする間。 ニ三左衛門大夫時方が出雲権守を ニセ ことたが まへつけて、しかじか問ひはべりつれば、言違へつつ、そらごとのやうに申し兼任していることが初めて記され た。遥任であろう。事の重大さか わらは ひやうぶきゃうのみや はべりつるを、いかに申すそとて、童べして見せはべりつれば、兵部卿宮に参ら、正確な官職名を用いた。 ニ四桜襲 ( 表白、裏紫 ) の縁から、 しきぶのせふみちさだのあそむ りはべりて、式部少輔道定朝臣になむ、その返り事はとらせはべりけると申紫の料紙の文を桜の枝に結んだか。 一宝宇治の山荘の寝殿の西の妻戸。 兵私 ( 随身 ) が。 す。君、あやしと思して、「その返り事は、いかやうにしてか出だしつる」、 毛時方に仕える下男に。以下、 し - もびと 六一一ハー末の随身と下男の質疑応答。 随身「それは見たまへず。異方より出だしはべりにける。下人の申しはべりつ 夭童による探索。↓六三ハー しきし るは、赤き色紙のいときよらなる、となむ申しはべりつる」と聞こゅ。思しあ = 九宇治の山荘では、どんなふう に渡したのか。恋文に熱中する匂 はするに、違ふことなし。さまで見せつらむを、かどかどしと思せど、人々近宮を見た薫は、料紙など知りたい。 三 0 私のいた所とは異なる所から。 ければ、くはしくものたまはず。 三一前出の童であろう。 = 三宮が見ていた紅の薄様と直感。 三三随身が見届けさせたのを。 ひ たが 三 0 ことかた 三三 ニ九 ニ 0 ニ六

8. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

69 浮舟 ( 現代語訳一一九四ハー ) まほならねどほのめかしたまへる気色を、かしこにはいと一九道を踏みはずして妙な結果を 三六〕右近東国の悲話を 迎えることになろう。薫から嫌わ 一九 語る侍従匂宮を勧む ど思ひそふ。つひに、わが身はけしからずあやしくなりぬれて母の期待に背く結果を思う。 ニ 0 手紙を返すのは禁物とされる。 べきなめりと、 いとど思ふところに、右近来て、「殿の御文は、などて返した相手を傷つけ、絶交を意味する。 ニ一まちがいのあるような文面だ ニ 0 てまつらせたまひつるぞ。ゅゅしく、忌みはべるなるものを」、浮舟「ひが事のったので、宛先が違ったかと。 一三右近は、浮舟がなぜ手紙を返 たが あるやうに見えつれば、所違へかとて」とのたまふ。あやしと見ければ、道にすのか不審に思ったので。 ニ三語り手の評言。 ニ四薫にも浮舟にも難儀なことに。 て開けて見けるなりけり。よからずの右近がさまやな。見つとは言はで、右近 一宝右近は、薫の歌から、薫が浮 「あないとほし。苦しき御事どもにこそはべれ。殿はもののけしき御覧じたる舟と匂宮の秘事を知ったと察した。 ニセ ニ六浮舟は。恥すかしさに動揺。 ふみ べし」と言ふに、おもてさと赤みて、ものものたまはず。文見つらむと思はね毛右近が文を見たとも知らぬ浮 舟は、別の筋から薫を知る人が右 たれ ば、異ざまにて、かの御気色見る人の語りたるにこそはと思ふに、「誰かさ言近に教えたのだと思う。不倫が歴 然と知れわたったかと愕然とする。 ふぞ」などもえ問ひたまはず、この人々の見思ふらむことも、いみじく恥づか = 〈右近や侍従など女房たち。 ニ九自ら進んで始めたのでないが。 こころうすくせ し。わが心もてありそめしことならねども、心憂き宿世かなと思ひ入りて寝た三 0 右近姉妹が母 ( 浮舟の乳母 ) と ともに常陸介に従って下った時分。 ひたち るに、侍従と二人して、右近「右近が姉の、常陸にて人二人見はべりしを、ほ三一男を一一人持ったが。 三ニ身分は違っても、恋とはこん どほどにつけてはただかくぞかし、これもかれも劣らぬ心ざしにて、思ひまどなもの。挿入句。 三三二人の男はそれぞれ。 三四 ひてはべりしほどに、女は、今の方にいますこし、い寄せまさりてぞはべりける。 = 西新しい男のほうに。 あ こと ニ九 ニ四 ニ六 三 0 けしき

9. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

( 現代語訳三五四ハー ) かかる人なん率て来たるなど、法師のあたりにはよからぬニ 0 女を自分の娘にしたいので、 〔六〕女依然として意識 その血縁の者が捜し出して連れ戻 不明、妹尼ら憂慮する ことなれば、見ざりし人にはまねばず。尼君も、みな口がすのではないかと、気が気でない。 ニ一以下、妹尼の推測 しづごころ ゐなか ひと 一三高貴な身分に思えるこの女。 ためさせつつ、もし尋ね来る人もやあると思ふも静心なし。 いかで、さる田舎 ニ三宇治は初瀬・奈良への物詣で びと ものまうで 人の住むあたりに、かかる人落ちあぶれけん、物詣などしたりける人の、心地の途中にあるので、こう推測する。 ニ四 一西継母などが、悪だくみをして ままはは などわづらひけんを、継母などやうの人のたばかりて置かせたるにゃなどそ思置き去りにさせたのだろうか。 ↓一五六ハー一三行。 第一と ひ寄りける。「川に流してよ」と言ひし一言よりほかに、ものもさらにのたま = 六女への敬語の初出。身分ある 女と察する妹尼の気持の反映。逆 はねば、し に妹尼に敬語がっかないのは、彼 、とおばっかなく思ひて、いっしか人にもなしてみんと思ふに、つく 女の心中に即した語り口による。 づくとして起き上がる世もなく、いとあやしうのみものしたまへば、つひに生毛妹尼は、どうにも不安に思い 三 0 夭人並の健康状態に。 す ゅめがたり くまじき人にやと思ひながら、うち棄てむもいとほしういみじ。夢語もし出で = 九以下、女のさま。後文による と、物の怪のため。↓一六二ハー あぎり 三 0 長谷寺で見た夢 ( ↓一五五ハー ) て、はじめより祈らせし阿闍梨にも、忍びやかに芥子焼くことせさせたまふ。 の内容を、ここで人々に明かす。 うちはヘ、 かくあっかふほどに、四五月も過ぎぬ。いとわ三一護摩をたく意。 習〔を僧都の加持により、 三ニ浮舟が入水をはかったのは三 物の怪現れ、去る 月末。一一か月が経過。 びしうかひなきことを思ひわびて、僧都の御もとに、 手 三三看護、祈疇の効果が見えない。 お 妹尼なほ降りたまへ。この人助けたまへ。さすがに今日までもあるは、死ぬ三四死ぬはずのない運命の人に、 深く取り憑き正気を失わせた魔物。 りゃう まじかりける人を、憑きしみ領じたるものの去らぬにこそあめれ。あが仏、 = 宝懇願しての呼びかけ。 ニ七 っ 三三 ニ八 三五 三四 ニ九

10. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

23 浮舟 つかさめし せたまはじを。殿は、この司召のほど過ぎて、朔日ごろにはかならずおはしま一五一夜の女主人。浮舟である。 一六中の君に。浮舟が中の君の異 ニ 0 つかひ しなむと、昨日の御使も申しけり。御文にはいかが聞こえさせたまへりけむ」母妹だと、匂宮はまだ知らない。 宅裁縫で反物に折り目をつける。 けしき と言へど、答へもせず、いともの思ひたる気色なり。右近「をりしも這ひ隠れ一 ^ 浮舟が。彼女がどこかに外出 する話。後文によれば中将の君と 、つしょに石山詣でをする前夜。 させたまへるやうならむが見苦しさ」と言へば、向かひたる人、「それは、か 一九二月初め。 せうそこ かるがる いかニ 0 京の薫からの使者。 くなむ渡りぬると御消息聞こえさせたまへらむこそよからめ。軽々しう、 ニ一薫への返事には。 ニ五 ものまうでのち でかは、音なくては這ひ隠れさせたまはむ。御物詣の後は、やがて渡りおはし一三浮舟は。 ニ三薫来訪の折、身を隠すような のも。すねたと見られては不都合。 ましねかし。かくて心細きゃうなれど、心にまかせてやすらかなる御住まひに ニ四後文で侍従と呼ばれる女房。 ニ七 一宝薫への挨拶なしには。 ならひて、なかなか旅心地すべしや」など言ふ。また、あるは、女房「なほ、 ニ六そのままこちらに帰られよ。 ニ九 毛京の母の邸はかえって他人の しばし、かくて待ちきこえさせたまはむぞ、のどやかにさまよかるべき。京へ 家のようで落ち着かないだろう。 のち三 0 など迎へたてまつらせたまへらむ後、おだしくて親にも見えたてまつらせたま夭薫の来訪を。 ニ九薫が浮舟を京に迎えるつもり へかし。このおとどのいと急にものしたまひて、にはかにかう聞こえなしたまでいる。↓一二ハー一〇行。 三 0 気がねもなく。 ふなめりかし。昔も今も、もの念じしてのどかなる人こそ、幸ひは見はてたま三一あの乳母殿が実にせつかちな 人。「おとど」は女房などの敬称 ふなれ」など言ふなり。右近、「などて、このままをとどめたてまつらずなり三ニ参詣を母君に勧めたのだろう。 三三「まま」は乳母。その乳母の上 めのと にけむ。老いぬる人は、むつかしき心のあるにこそと憎むは、乳母やうの人京を止めるべきだったとする。 三三 ついたち 一九 ニ四 ニ六