三日 - みる会図書館


検索対象: アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1
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1. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

られたんだろうということになったわけですよ。」 「なるほど。」エルキールⅱボワロはいった。「きわめてかんたんーーー事故死ですな。」 「そうです。」 「親族はありましたか ? 」 しいましてね。 「甥がひとりいます。月に一度ぐらい会いにきていたようです。ラムジーと、 どうぎよう しゃ ジョージ日ラムジー。わたしと同業の医者でして、ウインブルドンに住んでいます。 しら 「あなたがガスコインさんの遺体を調べられたのは、死後、どれくらいたってからでし せいかく 「ああ、その点に関しては、正確にお答えしなきゃなりませんな。」マカンドリュー医師 いじよ、つ はいった。「死後四十八時間以内ではなく、七十二時間以上ではないといったところでしょ はん はつけん うか。発見されたのは六日の朝ですが、じっさいにはこの範囲をもっとせばめることがで 簿 きましたよ。ガウンのポケットに手紙がはいっていましてね。これが三日に書かれ、その件 とうかん の 日の午後、ウインブルドンで投函されているので、だいたい夜の九時二十分ごろ配達され ワ たはすです。 しばうじこく ないようぶっしようか 4 したがって、死亡時刻は三日の夜九時二十分以降と推定でき、これは胃の内容物の消化 しんぞく かん いこうすいてい はいたっ し

2. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

じようたい こじん しばう 状態とも一致します。故人は死亡する約二時間まえに食事をとっているのです。わたしが けんし しば、つ 検死をしたのは六日の朝ですが、死体の状況からして、死亡したのはそれより約六十時間 まえと見ていいでしようーーー・つまり、三日の午後十時ごろということになります。」 「なるほど、びったり一致するようですな。それで、生きているところを最後に目撃され たのは、いつごろです ? 」 「そのおなじ夜ーーっまり三日の木曜日の午後七時ごろ、キングズ・ロードを歩いている のを見られています。そして七時半には、〈ギャラント・エンデヴァー〉レストランで食事 しゅうかん をしている。どうやら木曜日には、いつもそこで食事をする習慣だったようです。 「ほかに親族はいないのですか ? その甥だけですか ? 」 きようだい 「ふたごの兄がいました。それがおかしな話でしてね。兄弟はもう数十年来、行き来がな わか しばう がか かったんですよ。ヘンリーというのは、若いころ、画家を志望していたんですが、これが えか せいこう 箸にも棒にもひっかからないへつ。ほこ絵描きで、とうとう成功しませんでした。兄のアン しばう かねも 日ガスコインのほうも、おなじ志望をもっていましたが、こちらは金持ちの女と結 しようとっ がぎよう 婚して、画業をすててしまったようです。これがもとで兄弟は衝突しましてね、それ以 来、一度も会っていないというわけです。 こん しんぞく いっち したい じようきよう

3. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

親愛なるヘンリー伯父さん ざんねん きたい アントニー伯父さんについてのご依頼の件、まことに残念ながら、ご期待にそえな ほ、つこく ほ、つ。もん いラ」、つ かったことをご報告いたします。あちらをご訪問なさりたいという伯父さんのご意向 しめ にたいし、アントニー伯父さんはなんら熱意を示されなかったばかりか、過去のこと は水に流そうという伯父さんからのおことづけには、返事もしてくださいませんでし ようだい わる た。もとより、かなり容態がお悪いので、とりとめのないことしかおっしやらぬのは むりからぬこと、おそらくはお命もそう長くはないのではないかと思います。じっさ 実の弟である伯父さんのことも、ろくにおぼえておられないようでした。 やく さいぜん お役にたてなかったことは申しわけありませんが、。ほくとしては最善をつくしたこ りようかい とをご諒解いただきたいとそんじます。 ちゅうじっ あなたの忠実なる甥 ジョージ日ラムジー ふ、つと、つ けしいん いちべっ 手紙の日付は十一月三日になってした。。、 、 - ホワロは封筒の消印を一暼したーー午後四時三 十分。 しんあい ひづけ いのち ね けん

4. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

イをもっていなくてはならない。 きそくてき ヘンリ ーが週に二回、規則的にレストランへ食事こ、 をしくことが、ジョージにアリ、、ハイエ しんちょう よこうえんしゅう 作を思いっかせる。彼は慎重な男なので、ますためしに予行演習をやってみる。伯父に変 装して、ある月曜日に問題のレストランへいってみるわけです。 よこうえんしゅう みせ 予行演習はとどこおりなくおこなわれる。店のものはみな彼を伯父と思いこむ。彼は満 足する。あとはただ、アントニー伯父がいよいよいけなくなるのを待つばかり。 ひづけ やがて時がくる。彼は十一月二日の午後に伯父に手紙をだすが、日付は三日としておく。 ほ、つもん けいかくじっこう お そして三日の午後、ロンドンへでてきて、伯父を訪問し、計画を実行する。強いひと押し、 おじかいだん そしてヘンリー伯父は階段をころげおちる。 ぜんじっ そのあとジョージは、前日だした自分の手紙をさがして、それを伯父のガウンのポケッ トにつつこむ。七時半には〈ギャラント・ エンデヴァー〉にあらわれるが、そのときには、 かんぜん あごひげや、もじゃもじゃのまゆげその他で、完全に伯父になりすましている。これでう し オカい、もなく、ヘンリー Ⅱガスコイン氏は七時半には生きていたことになる。それから、 べんじよ ふんそう きゅ、つこ、つ 便所にでもとびこんで、大いそぎで扮装をとくと、車でウイン。フルドンに急行し、ブリッ かんべき ジの会に顔をだす。どうです、完璧なアリバイでしよう ? 」 た まん こう

5. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

ところが、ここにふしぎなことがありまして、兄弟がおなじ日に死亡しているんですよ。 きようだい 兄のほうは、三日の午後一時に亡くなっています。ふたごの兄弟がおなじ日に、まったく しぼう べつべつの場所で死亡したという例を、一度だけ聞いたことがありますがね ! おそらく あんごう ただの偶体でしようが、ふしぎな暗合もあればあるものです。」 「で、その兄のほうの細君というのは、生きているんですか ? ・」 「いや、数年まえに亡くなりました。」 じゅうしょ 「アントニ 日ガスコインの住所は ? 」 やしき 「キングストン・ヒルに屋敷をかまえていました。どうもラムジー医師の話から察するに、 ばっこうしよう いんとんせいかっ せけん 世間とは没交渉、まったくの隠遁生活をおくっていたようです。」 しあん エルキュールⅡボワロは思案げにうなすいた。 スコットランド人の医師は、さぐるように彼を見つめていたが、やがてすばりと、「いっ しつもん たいなにを考えておられるのです、ボワ口さん ? 」とたずねた。「わたしはあなたの質問に件 はいけ・ーん けんし しようめいしょ お答えしたーーーあなたのおもちになった証明書を拝見したので、検死に立ちあったものとロ ぎむ がてん いったいなんのた しての義務をはたしたわけです。それにしても、合点がゆかないのは、 ちょうさ めのご調査なのかということでしてね。」 さいくん

6. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

ポニントン氏は彼を見つめた。 けしいん 「しかし、手紙の消印は ? たんじゅん 「ああ、あれはきわめて単純なトリックですよ。消印は、すれて、よごれていました。な ぜでしよう ? 日付が黒インキで十一月二日から三日にかえてあったからですよ。その気 になって見ないことには、とうてい気がっかないでしよう。そしてもうひとつ、黒っぐみ のことがあります。」 「黒っぐみ ? 」 わ 「二十四羽の黒っぐみ、パイに入れて焼かれたー いや、正確にいえば黒いちごですが やくしゃ ね ! 要するに、ジョージというのは、けつきよく、たいした役者ではなかったのですよ。 ふんそう 彼は伯父そっくりの扮装をして、伯父そっくりに歩き、伯父そっくりにしゃべった。そし て伯父そっくりのひげをつけ、まゆげをつけたが、伯父そっくりに食べることはわすれて す りようりちゅうもん しまった。自分の好きな料理を注文してしまったのです。 したい へんしよく 黒いちごを食べると、歯が青く染まります。死体の歯は変色していなかった。ところが その夜、この〈ギャラント・ エンデヴァー〉で、ヘンリー 日ガスコインは黒いちごを食べ ているのです。それでいて、胃のなかにも黒いちごはなかった。けさ、それをたしかめま し ひづけ は そ や けしいん せいかく

7. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

についた。給仕の娘はモリーではなかった。その娘のいうところによると、モリーはきょ きゅうか うは休暇だということだった。 じこく ちょうど七時、まだこみあう時刻ではなかったので、その娘を相手に、ガスコイン老人 わだい の話題をもちだすのは、むずかしくはなかった。 「ええ。あのかたは、ずいぶん長いあいだ、つづけてお見えになっていましたわ。」彼女は いった。「でも、わたしたち店のものは、だれもあのかたのお名前をそんじあげなかったん しんぶんけんししんもん です。たまたま新聞に検死審問のことがでて、そこにあのかたのお写真がのっていました ろうじん の。『ねえ、これ、例の〈ひげのご老人〉じゃなくって ? 』って、わたし、モリーにいいま した。うちでは〈ひげのご老人〉でとおっていましたの。」 な 「亡くなった晩に、ここで食事をしていったそうだね ? 」 「そうですわ。三日の木曜日でした。いつでも木曜日にはおいでになるんです。火曜日と 木曜日ーー時計みたいに正確に。」 「ひょっとして、そのときなにを食べたかおぼえていないかね ? 」 A 一り・に′、い 「ええと、ちょっとお待ちくださいましよ。はじめは鶏肉入りのカレースー。フでした。ま ちがいありません。それから、ビーフステーキ・プディングーーそれともマトンだったか きゅうじむすめ ばん せいかく みせ むすめあいて しやしん ろうじん 51 ボワロの事件簿

8. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

ようじ 「さあて、たいした用事とも思わなかったがーーあのときはだ。そうだ ! 思いだしたそ 郵便だ。みんな、おぼえていないかーーーあの威勢の、 しいベルの音がして、いあわせた かっき ものみんなが活気づいたのを ? なにしろ三日も雪に降りこめられていたんだからね。何 きろくてき どうろ ふつうしんぶん 年来という記録的な大雪でさ。道路は不通。新聞はこない。郵便もこない。それが、やっ となにかとどいたというんで、ケイベルが見にいった。 ゅうびんたば とどいたのは、山のような新聞と郵便の束だった。彼は新聞をひらいて、なにかニュー じゅうせい スはないかと目をとおした。それから、手紙をもって二階へあがった。三分後にーーー銃声 ふかかい だ。わからんーーーまったく不可解だ。」 ふかかい 「不可解とはいえないんじゃないかな。」そういったのはポータルだった。「あきらかに彼 は、手紙でなにか思いがけない知らせをうけたんだ。もちろんそうだよ、そうにきまっ てる。」 「やれやれ ! そんなわかりきったことを、われわれが見のがすと思うのか ? 検死官が 最初にたずねたのもそれさ。ところがケイベルは、まだ一通も手紙を開封していなかった けしようだい んだ。うけとったのが、そっくりそのまま化粧台の上にのっていたよ。」 ポータルは見るからにがっかりした顔をした。 ゅうびん いせい ゅうびん けんしかん 132

9. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

わ 「けっこうです。ついでにおききしますが、ワイングラスが割れたとおっしゃいましたか な ? エヴァンはまたしても目を見はった。 「そのとおりです。テーブルから落ちたところを、だれかに踏まれて、こなごなになりま した。 「やっかいなものですな、ガラスのかけらというのは。」 「で、どなたのグラスでした、それは ? 「たしかあの娘の , ーーイーヴのだったと思います。」 「なるほどー で、そのとなりの、グラスのあった側にいたのは ? き、よ、つ 「ジョージマロウェイ卿です。」 「二人のうちどちらがグラスを落としたか、ごらんにはならなかったでしような ? 」 「残念ながら見ていませんでした。それがなにか と、立ちあがって 「いや、べつに。ついでにうかがってみただけですよ。では そくろう 「きようはこれでけっこうです。三日のうちに、もういちどご足労ねがえませんか ? そ のときまでには、 いっさいをご満足のいくように解決してさしあげられるつもりです。」 ざんねん こ まんぞく かいけっ がわ 。ハイン氏はいっこ。 230

10. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

はっぴょう 「みなさんは夕食の席にいます。ケイベルが婚約を発表します。そのときはみなさんは、 かくしん その相手をマージョリーⅡディルクだと思う。だがいまは、それほどの確信はおありにな こうふん うんめい ちょうせん らない。彼はそわそわした、興奮したようすをしていて、さながら運命に挑戦して、まん あっとうてき まと成功した男のようだったーーーみなさんのことばをかりれば、圧倒的なハンディをくっ おおあな がえして、みごと大穴をあてた男です。それから、ベルが鳴りひびく。彼は席を立って、 はいたっ ゅうびんぶつ かいふう ひさしぶりに配達された郵便物をうけとりにゆく。うけとった手紙を開封はしないが、ど なたかがおっしやったとおり、その場で新聞をひろげて、ニュースを読む。 これは十年まえのことですーーしたがって、その日のニ = ースがなんであったか、いま えんばう じしん てぢかせいじきき では知るよしもありません。遠方の地震かもしれないし、手近な政治危機かもしれない。 しめん とにかくわれわれにわかっているのは、その紙面に小さな記事がのっていたということだ けーーーっまり、三日まえに、アプルトン氏の死体発掘許可を内務省がくだしたという記事 です。」 「なんですって ? 」 クイン氏はかまわずつづけた。 じしつ 「デレクⅱケイベルは二階の自室へ あいて せいこう し せき まど いく。そしてそこから、窓の外に、あるものを見る。 こんやく せき 142