三浦 - みる会図書館


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1. リング

197 に調べ上げることができただろう。自分は東京に残り、竜司からの連絡を待って吉野とふ たりで取材に回ったほうがずっと効率がよかったに違いない。 「やるだけはやってみる。しかしよお、ちょっと、人手が足りなくないかい ? 」 「小栗編集長に電話して、何人か回してもらうよう頼んでみますよ」 「ああ、そうしてくれ」 をししが、浅川には自信がなかった。いつも編集部員が足りないと・ほゃいている 言ったま、 編集長が、こんなことに貴重な人員をさくとは思えない。 「さて、母親に自殺された貞子はそのまま差木地に残って母の従兄弟の世話になることに なった。その従兄弟の家というのが現在民宿をやっていて : : : 」 浅川は、竜司と共に今まさにその民宿に泊まっていることを言おうとしてやめた。余分 なことと思われたからだ。 「小学校四年の貞子は翌年すぐ、三原山の噴火を予言して、校内で有名になります。いい ですか、一九五七年、三原山は貞子の予一一一口通りの日時に噴火しているんですー グ「そいつは、すごい。こういう女がいれば、地震予知連なんていらねえな」 うわさ ン 予一一一一口が的中したという噂が島中に広まり、それが三浦博士のネットワークにひっかかっ リたことも、やはり、ここでは言う必要もないだろう。ただ、ここで、重要なのは : 「そのことがあって以来、貞子はよく島の人々から予言してくれるよう頼まれた。でも、 彼女は決してそれに答えたりはしなかった。まるで自分にそんな能力はないとばかり : とこ

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280 「オレ、閉所恐怖症なんだ」 気力もやすみやすみ言え」 浅川は身をすくめたまま、動こうとしない。井戸の底で水面が揺れている。 「無理だ、オレにはできないよ 竜司は浅川の胸倉をつかんで顔を引き寄せ、一発二発と平手で張った。 「どうだ、少しは目が覚めたか。オレにはできないだと ? ハカ言ってんじゃねえそ。死 を前にして、助かる方法があるかもしれないってのになにもしねえ奴は人間のクズだ。お まえが抱えているのは自分の命だけじゃねえんだそ、さっきの電話を忘れたか ? え、か わいいべイビーちゃんが暗いところに連れていかれてもいいのかい ? 妻と娘の運命を思うと、臆病に身をすくめているわけこよ、 冫をしかない。確かにふたりの命 からだ は自分の手にある。しかし、どうも身体がいうことをきかない。 「なあ、本当に、こんなことをして意味があるのか ? いまさらこんな質問をしても無意味と知りつつ、カなく浅川は聞く。竜司は胸倉を掴む 手の力を抜いた。 おんねん 「三浦博士の理論をもう少し詳しく教えてやろうか。現世に怨念が強烈に残るには三つの 条件が必要なんだ。閉ざされた空間、水、そして死に至るまでの時間。この三つだ。つま り水のある閉ざされた空間でゆっくり時間をかけて死に至った場合、死者の怨念がその場 ひょうい に憑依してしまうことが多いってわけさ。ほら、この井戸を見ろよ。閉ざされた狭い空間 やっ つか

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281 だ。そして、水。ビデオの中で、ば 1 さんがなんと言っていたか思い出せ」 : その後からだの具合はどうじゃ。水遊びばかりしているとぼうこんがくるそ。 水遊び、水遊び、そうだ、山村貞子はあそこの真っ黒な泥水に浸かって今も水遊びを続 けている。いっ終わることもなく、延々と続く地下水との戯れ。 「山村貞子はな、井戸に落とされた時、まだ生ぎていたんだ。そして、死が訪れるのを待 彼女の場合、三つの条件はそろってい ちながら、井戸の内側に怨念を塗り込めていった。 , たんだよ」 : どから ? のろ 「だから : ・ 三浦博士が言うにはよ、呪いをとく方法なんて簡単なんだ。ようするに、 解放してやればいい。遺骨を、狭い井戸の底から拾い上げ、供養を済ませた後に故郷の地 に埋葬してやればいい。広く明るい世界に引きずり出してやるんだ」 さっき、・ ( ケツを取りに縁の下からい出た時、浅川はなんともいえない解放感を味わ った。同じことを山村貞子にしてあげればいいというのか ? 彼女はそんなことを望んで グいるのかフ ン 「それが、オマジナイの中身だっていうのかい ? 」 「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」 「あやふやだな」 竜司はもう一度浅川の胸倉を引いた。

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「なあ、よく考えてみろ。オレたちの将来にはなあ、確実なものなんて何もねえんだ。常 に、あやふやな未来が待ち構えている。それでも、おまえは生きていくだろ。あやふやだ という理由だけで生命活動を停止することはできねえ。可能性の問題よ。オマジナイ 山村貞子の望むものはもっと他にあるのかもしれない。しかし、彼女の遺骨をここから拾 のろ い出すことによってビデオに込められた呪いそのものが消失する可能性だって高い 浅川は顔を歪め、声を出さずに叫んだ。 そろ ・ : 閉ざされた空間と水と死に至るまでの時間だと ? この三つの条件が揃った場合も 0 とも強い怨学が残 0 てしまうだと ? 三浦とか 0 ていうインチキ学者のそんな戯一言が真 実だという根拠が一体どこにあるフ 「さあ、わかったら、おまえ、下に降りろ : わかってねえ、オレにはそんなことわからねえよー 「ぐずぐずしてる場合しゃないだろ。おまえの締め切り時間はすぐそこだそ 竜司の声が次第に優しくなっていった。 「戦わずに人生を乗り切れると思うなよ」 ハカヤロ ! てめえの人生観なんて聞きたくもねえ。 浅川はそれでも井戸の縁から身を乗り出していった。 「そうだ、やっとその気になったかい」 浅川はロープにしがみついて井戸の内側にぶら下がった。竜司の顔がすぐ目の前にある。 ゆが

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175 「住所と名前をよく注意しろ。この中から伊豆大島の女をビックアップする」 「女 ? 」 浅川は不思議そうに首をかしげる。 「ばーさんは、だれに向かって、うぬはだーせんよごらをあげると言ったと思うんだ ? 確かに、男に子供が産めるわけがない。 ふたりはともかくも調べ始めた。単純な作業を繰り返しながら、竜司は浅川に聞かれる ままこんなファイルがなぜ存在するのか、その理由を説明した。 超自然現象に興味を抱いた三浦博士は、一九五〇年代に入ってから、超能力を使った実 験を試みるが、なかなか安定した結果が出ないために科学的な理論を生むに至らないでい た。透視能力においても、今さっきまでできたことが公衆の面前ではできなくなったりと 力なりの集中力が必要なのはわかる。しか むらが多い。こういった能力を発揮するには、、 し、三浦博士が求めているのはいつどのような場合においても能力を発揮できる人物であ った。ちゃんとした立ち会い人の前で失敗などしたら、三浦自身がペテン師呼ばわりされ グるのは目に見えている。そこで、三浦博士は、世の中にはまだ埋もれている超能力者がい ン るに違いないという確信のもと、超能力者の発見に努めることにしたのだ。ところで、ど んな方法でこれを捜せばいいのか。まさか、ひとりひとり面会して、透視能力、予知能力、 念動能力などを調べるわけにもいかない。そこで彼が考え出したのは、可能性があると思 われた人物のもとに厳重に封印されたフィルムを郵送し、そこに指定した図柄を念写し密

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171 : このふたりは自分のいる側の人間であって、攻撃をしかけようとしているのではな いらしい 「どうも、失礼しました。わたくし、三浦哲明と申します、すみません、あいにくと名刺 をきらせまして : : : 」 「と、おっしゃいますと、先生の : : : 」 「ええ、不肖のひとり息子ってやつですよ」 「そうですか、いやー、三浦先生にこんなりつばなお子さんがいらしたとは : 浅川は吹き出しそうになるのをこらえた。自分より十歳は年上であろう人間に向かって、 りつばなお子さんはないだろう。 三浦哲明は簡単にこの記念館の紹介をした。教え子たちが力を合わせて、父の残した家 を記念館として一般開放し、収集した資料の整理にあたったこと。そして、自分はといえ ば、父の希望した研究者の道を歩まず、記念館と同じ敷地内にペンションを建て、その経 じちょう 営に当っていることなどを自嘲気味に話すのだった。 グ「やはり、オヤジの名声と残してくれた土地を利用してるんですから、不肖の息子と言わ ざるを得ないですねえ」 哲明はそう言って、照れたように笑った。 , 彼のペンションは、よく高校の合宿などに利 用される。利用者のほとんどは物理、生物クラ。フなどの科学系のクラブであって、中には 超心理研究会なる名前もあった。高校生の合宿には常に名目が必要である。ようするに、

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169 浅川はハンドルを切り返しながら聞いた。 「決まってるじゃねえか、空飛ぶ夢だよ。オレは空飛ぶ夢が大好きでねえ」 竜司はさもうれしそうに鼻を鳴らし、両唇をベチャベチャと舌で舐め回した。 三浦哲三記念館なる建物に人の影はなかった。一階の十坪ほどのスペースに、写真や書 籍類が額に入れられたり、ガラスケースに入れられたりして飾られ、中央の壁には三浦哲 三なる人物の略歴が貼られている。浅川はそれを読むことによって、ようやくこの人物が 何者であるか知った。 「すみません、だれかおりませんか 竜司は奥に向かって声をかける。返事がなかった。 三浦哲三は大学教授を退官後、二年前に七十一一歳で亡くなっている。専門は理論物理 学、特に物性理論や統計力学に詳しい。しかし、小さくはあっても記念館なるものが建て られたのは、専門の物理学による業績のためではない。超常現象の科学的解明。略歴には、 氏の理論は世界的な関心を引いたとあるが、注目したのはもちろん一部の人だけであろう。 グその証拠に、浅川はこれまでに彼の名前を聞いたことがなかった。さて、氏の発見した理 ・ : 念はエネルギーを持ち、 ン論とは何か。浅川はその答えを、壁や陳列ケースに捜した。・ そのエネルギーは : 。そこまで読んだところで、階段を駆け降りる音が奥から響き、引 くちひげ ぎ戸を開けて四十過ぎのロ髭のある男が顔を出した。名刺を手にその男に近づく竜司を見 習って、浅川も胸のポケットから名刺入れを取り出した。

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172 三浦哲三記念館は高校生の団体を引きつけるための格好のエサとなっていたのだ。 「ところで : : : 」 竜司は、居ずまいを正して話の核心に導こうとした。 「あ、どうもすみません。ついペラベラと余計なことを : ところで、どういったご用 件で ? こうして見る限り、哲明には科学者としての才能はないように見受けられる。相手の出 けいべっ 方次第で態度をコロコロ変える商人が似合ってるぜと、竜司は横顔に軽蔑の色を浮かべる のだった。 「実は、我々はある人物を捜してます 「だれですフ 「いえ、その名前を知るために、私はここに来たのです 「はあ、どういうことなのか : どう、も、よく : : : 」 哲明は困ったように顔をしかめ、順序だてて話してくれるようそれとなく促した。 「その人物が現在生きているのか、それとももう死んでしまったのか、まだなんとも言え ません。しかし、明らかに常人にはない力を秘めていますー そこで竜司は一呼吸置き、哲明を見据えた。哲明は常人にはない力が何を意味するか、 すぐにわかったらしい。「三浦先生はおそらくこの分野にかけては日本一の収集家です。 以前先生から、独自に張り巡らせたネットワークによって日本中に居る超能力者をリスト

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176 封状態のままで送り返してもらう方法であゑこれならば、相手が遠隔地にいても能力を 試すことができる。しかも、念写能力というのはかなり基本的な力であって、この能力を 持つ者は同時に予知あるいは透視能力を持っことが多い。一九五六年、三浦博士は出版社 や新聞社にいる教え子たちの力を借りて、全国から広く能力者を募集し始めた。教え子た うわさ ちはネットワークを張り巡らし、能力のありそうな人間の噂を聞きつけると、それを三浦 博士に報告した。しかし、送り返された封書を調べても、確かに能力ありと思われたのは 全体の約一割に過ぎず、ほとんどのフィルムは封をじようずに切って擦り替えられていた。 明らかにトリックとわかるものはその場で破り捨て、どちらとも疑わしいものはなるべく 保管することにしたのだが、その結果ご覧の通り収拾のつかない程のコレクションが出来 上がってしまった。その後、マスメディアの発達と教え子の数の増加により、このネット ワークはより完備され、データの数は年を追うごとに増え、博士の亡くなる年まで続いた のだ。 「なるほどね : : : 」浅川はつぶやいた。「このコレクションの意味はわかった。でも、こ の中にオレたちが追っている人間の名前があると、どうしてわかるんだい ? 」 「確実にこの中にあるとは言ってないぜ。ただ、可能性として極めて強いってだけだ。い やっ いか、あれだけのことをした奴なんだ、おまえだってわかるだろ、念写のできる奴はまあ 実際何人かいるだろう。しかしなあ、なんの装置も使わず。フラウン管に映像を送り込める 超能力者はそうザラにはいねえ。超ド級の力だ。それたけの能力者となると、普通に生活

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168 浅川が肩を揺すると、竜司は猫のように体を伸ばし、手の甲で目をこすり、ブルブルツ と顔を横に振った。 「せつかくいい夢を見ていたのによお、ふあーああ」 「これからどうするんだ ? 」 竜司は体を起こし、自分のいる位置を確認するために、窓の外をぐるっと見回した。 「この道をまっすぐ行って、一ノ鳥居のところを左に曲がったところでストップ」 竜司はそれだけ言うと、「へへへ、夢の続きを見させてもらうぜ」 とまた横になろうとした。 「なあ、あと五分もかからない。寝る間があったら、ちゃんとオレに説明しろよ」 「行きゃあわかる ひざ 竜司はダッシュポードに膝を当て、再度眠りに落ちていった。 左に曲がったところで車を止めた。すぐ先に、「三浦哲三記念館 . と小さく書かれた二 階建ての古い民家がある。 「そこの駐車場に入れろ いつの間にか、竜司は薄目を開けていた。その顔は満足気で、芳香を嗅ぐように鼻孔を 広げている。 「へへへ、おかげでどうにか夢の続きを見ることができたよ」 「どんな夢だった ?