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検索対象: 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩
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1. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

一九 ままはは この春亡せたまひぬる式部卿宮の御むすめを、継母の北の一九式部卿宮の後妻。話題の「御 〔を宮の君、女一の宮 むすめ」は先妻腹であろう。 せうとむまのかみニ一 に出仕匂宮懸想する 方ことにあひ思はで、兄の馬頭にて人柄もことなることな = 0 北の方の兄弟で。 ニ一身分はもちろん人柄も。 き心かけたるを、いとほしうなども思ひたらで、さるべきさまになん契ると聞 = = 宮家の姫君が平凡な中流の男 ふびん と結婚するのを不憫とも思わない。 こしめすたよりありて、中宮「いとほしう。父宮のいみじくかしづきたまひけ = 三中宮の耳に入った。 一西前行の「いとほしう」と照応。 る女君を、いたづらなるやうにもてなさんことなどのたまはせければ、し 、とニ五式部卿宮の生前の姫君寵愛を 回顧し、それが無為に帰せられる ニ七 、い細くのみ思ひ嘆きたまふありさまにて、「なっかしう、かく尋ねのたまはすとして同情を寄せる。 ニ六姫君。孤立する身の上である。 ニ ^ せうと 三 0 るを」など御兄の侍従も言ひて、このごろ迎へとらせたまひてけり。姫宮の御毛おやさしくも。 夭姫君の兄弟で、侍従。姫君と 具にて、いとこよなからぬ御ほどの人なれば、やむごとなく心ことにてさぶら同腹であろう。侍従は中務省に属 し、帝に近侍。名門出身が多い ひたまふ。限りあれば、宮の君などうち言ひて、裳ばかりひき懸けたまふそ、 ニ九中宮方で女房として引き取る。 三 0 女一の宮の格好の話し相手だ いとあはれなりける。 とする。姫君と中宮は従姉妹関係。 三一女房として出仕したが身分上 蛉兵部卿宮、この君ばかりや、恋しき人に思ひょそへつべきさましたらむ、父の決りがあり、女房名がつけられ、 裳・唐衣の正装をする。 はらから 三ニ匂宮。「恋しき人」は浮舟。 親王は兄弟そかしなど、例の御心は、人を恋ひたまふにつけても、人ゆかしき 三三式部卿宮と八の宮は兄弟。 三四 御癖やまで、いっしかと御心かけたまひてけり。大将、「もどかしきまでもあ = 西宮家の姫君の身の落しように 非難がましくなる気持。 きのふけふ とうぐう けしき るわざかな。昨日今日といふばかり、春宮にゃなど思し、我にも気色ばませた三 = ↓東屋一五〇【 , ぐ 三ニ ニ四 ニ九 三五 ニ六 三三

2. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

夜、召して、夜居にさぶらはせたまふ。日ごろいたうさぶらひ困じたる人はみ一六寝所近くで終夜加持すること。 宅この何日間か、一品の宮の看 一 ^ み おまへ な休みなどして、御前に人少なにて、近く起きたる人すくなきをりに、同じ御病に伺候して疲れた女房たち。 一 ^ 中宮が一品の宮と同じ御帳台 ちゃう に。その病状を見にきた。 帳におはしまして、中宮「昔より頼ませたまふ中にも、このたびなん、いよい 一九中宮自身の言葉に、語り手の よ後の世もかくこそはと頼もしきことまさりぬるーなどのたまはす。僧都「世中宮への尊敬語「たまふ」も加わる。 ニ 0 来世もこのとおり救ってくれ うち・ るものと。僧都によって極楽往生 の中に久しうはべるまじきさまに、仏なども教へたまへることどもはべる中に、 もかなえられよう、との期待。 ニ一私の寿命もそう長くはあるま 今年来年過ぐしがたきゃうになむはべりければ、仏を紛れなく念じっとめはべ いと、仏などが教えてくださるこ こも おほ′一と とも数々あるが。仏のお告げで命 らんとて、深く籠りはべるを、かかる仰せ言にてまかり出ではべりにし」など 終の時期を予知する話は、高僧伝 などに多い。朝廷の召しにも容易 啓したまふ。 に出仕しなかった言い訳でもある。 しふね 一三僧都に調伏された物の怪が、 御物の怪の執念きこと、さまざまに名のるが恐ろしきことなどのたまふつい 正体を明らかにすること。 ニ五 でに、僧都「いとあやしう、稀有のことをなん見たまへし。この三月に、年老ニ三中宮が。物の怪について話す 中宮の言葉に、僧都は浮舟に憑い まう なかやどり うぢのゐん ぐわん た物の怪を想起。浮舟紹介の契機 習いてはべる母の、願ありて初瀬に詣でてはべりし、帰さの中宿に、宇治院とい 一西僧侶らしい漢語の用法。 ひはべる所にまかり宿りしを、かくのごと、人住まで年経ぬるおほきなる所は、一宝以下、巻頭の宇治院でのこと。 手 一宍漢文訓読語。僧侶らしい言葉。 ニ ^ びやうぎ よからぬ物かならず通ひ住みて、重き病者のためあしきことどもやと思ひたま毛妖怪変僊や狐など。 夭母尼のこと。「病者」も漢語。 ニ九浮舟を発見した経緯を。 へしもしるく」とて、かの見つけたりしことどもを語りきこえたまふ。中宮 ニ七 ものけ よゐ ニ九 はっせ ニ四 一九 へ

3. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

方と思ひて、薫「さもはべらん。さやうの人離れたる所は、よからぬ物なんか一中宮の言う「恐ろしき物や住 むらん」 ( 前ハー ) を受ける。 ならず住みつきはべるを。亡せはべりにしさまもなんいとあやしくはべる」と = 亡くなられた事情も、実に不 1 = ロ 可解。具体的な事実にはふれない 物て、くはしくは聞こえたまはず。なほかく忍ぶる筋を聞きあらはしけりと思ひ三以下、中宮の心中。 氏 四こちらで一部始終を聞き知っ ているのだと、薫のお思いになる 源たまはんがいとほしく思され、宮の、ものをのみ思して、そのころは病になり ことがお気の毒で。 六 五浮舟失踪当時、匂宮が消沈し たまひしを思しあはするにも、さすがに心苦しうて、かたがたにロ入れにくき て病気になったのを想起する。 六匂宮の横恋慕が原因とはいえ、 人の上と思しとどめつ。 やはり心痛む。母としての責任感。 ト宰相に、忍びて、中宮「大将、かの人のことを、いとあはれと思ひてのたセ薫の立場からも、匂宮の立場 からも、自分 ( 中宮 ) からロ出しし ひしこ、 にくい人 ( 浮舟 ) のこと。 しいとほしうてうち出でつべかりしかど、それにもあらざらむものゆ ^ 薫の愛人 ( ↓二〇二ハー ) 。自分 ゑとつつましうてなむ。君そ、ことごと聞きあはせける。かたはならむことは、の口からは言いにくいので、薫に 親しい小宰相に言わせようとする。 そうづ 九薫が、浮舟のことを。 とり隠して、さることなんありけると、おはかたの物語のついでに、僧都の言 一 0 薫への憐憫から彼に話そうと。 おまへ ひしこと語れ」とのたまはす。小宰相「御前にだにつつませたまはむことを、ま = その人かどうか分らぬのに。 一ニ小宰相は事情に詳しいとする。 ことひと して別人はいかでか」と聞こえさすれど、中宮「さまギ、まなることにこそ。ま横川の僧都の話以外に、姉からも 伝え聞いている。↓二〇三ハー四行。 一七 た、まろはいとほしきことそあるや」とのたまはするも、心得て、をかしと見一三薫に対して、不都合と思われ ることは、話さずに。 たてまつる。 一四中宮様でさえ遠慮なさるよう ・ ) さいしゃう うへ れんびん

4. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

と、似つかはしく思ひたまへらるるーとて、いますこし聞こえ出でたまふ。宮で。中宮が匂宮と浮舟との関係を どう思い、どう処理するかなど。 一ニ中宮をさす。 の御事を、いと恥づかしげに、さすがに限みたるさまには言ひなしたまはで、 一三以下、中宮への言葉。浮舟の 薫「かのこと、またさなんと聞きつけたまへらば、 かたくなにすきすきしくも入水を、意外な死に方とばかす。 一四「まねぶ」は、伝え言う意。 一九 一五自ら進んで大胆なことをし、 思されぬべし。さらに、さてありけりとも、知らず顔にて過ぐしはべりなん」 私から離れていくことはあるまい そうづ と啓したまへば、中宮「僧都の語りしに、 入水を念頭に置き、明言はしない。 いともの恐ろしかりし夜のことにて、 一六人の語ってくれたような事情 耳もとどめざりしことにこそ。宮はいかでか聞きたまはむ。聞こえん方なかり ならありうる、の意。気弱な性分 から投身はありえないが、物の怪 のせいというのなら合点できる。 ける御心のほどかなと聞けば、まして聞きつけたまはんこそ、いと苦しかるべ 宅いかにも憚りありげに、それ けれ。かかる筋につけて、、 でも恨んでいる言い方はされす。 しと軽くうきものにのみ世に知られたまひぬめれば、 天浮舟のことを私が尋ね出した 心憂くなむ」とのたまはす。いと重き御心なれば、かならずしも、うちとけ世と匂宮がまた聞かれたならば。 一九浮舟の生存を知らなかったこ がたり 語にても、人の忍びて啓しけんことを漏らさせたまはじなど思す。 とにして。暗に中宮のロも封ずる。 ニ 0 詳細を聞いていないとする。 「住むらん山里はい・ っこにかあらむ。いかにして、さまあ三匂宮が知るはずもない、の意。 習〔三一〕薫、僧都を訪い浮 一三匂宮の了簡を論外とする。母 舟との再会を用意する しからず尋ね寄らむ。僧都にあひてこそは、たしかなるあとして詫びる気持。 手 ニ三女性関係で。↓蜻蛉一三二ハー りさまも聞きあはせなどして、ともかくも問ふべかめれ」など、ただ、このこ ニ四中宮の慎重な性格 ニ五浮舟が住んでいるという山里 とを起き臥し思す。 は。以下、薫の心中。 、ご一ろう ニ 0 ニ四

5. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

あり 尋ね歩かんもかたくなしなどや人言ひなさん。また、かの宮も、聞きつけたま一愚かしく見苦しいの意。世評 を気づかう。 さまた へらんには、 ニ匂宮が知ったら、と想像する。 かならず思し出でて、思ひ入りにけん道も妨げたまひてんかし。 三浮舟がせつかく決意して入っ 語 た仏道をもじゃまするに違いない 物さて、さなのたまひそなど聞こえおきたまひければや、我には、さることなん 氏 四匂宮はそのつもりで、中宮に、 源聞きしと、さるめづらしきことを聞こしめしながら、のたまはせぬにゃありけ薫にはお 0 しやるななどと申しお かれたので。このあたり、中宮が 薫に浮舟の噂を詳しく言わなかっ ん。宮もかかづらひたまふにては、いみじうあはれと思ひながらも、さらに、 た理由を推測しようとする。 やがて亡せにしものと、思ひなしてをやみなん。うっし人になりて、末の世に五浮舟の一件を聞いたと。「の たまはせぬにや : ・」に続く。 六中宮のみならす、匂宮も。 は、黄なる泉のほとりばかりを、おのづから語らひ寄る風の紛れもありなん。 セ自分は、浮舟をせつなくいと しいと思いながらも、以下、浮舟 わがものにとり返し見んの心はまたっかはじなど思ひ乱れて、なほのたまは を死んだものと諦めようとする。 一一けしき ずやあらんと思へど、御気色のゆかしければ、大宮に、さるべきついでつくり〈浮舟がこの世の人として立ち 戻ったとあれば、遠い将来には、 来世のことぐらいを。「黄泉」 ( 冥 出でてそ啓したまふ。 途の意 ) の和風訓みによる。 いっかは再会して語り合う機 薫「あさましうて失ひはべりぬと思ひたまへし人、世に落ちあぶれてあるや九 会もあろう、の意。「風の紛れ」は、 うに、人のまねびはべりしかな。いかでかさることははべらんと思ひたまふれ風の戯れのような、ふとした機会。 浮舟を断念しようとしながらも、 ど、心とおどろおどろしうもて離るることははべらすやと思ひわたりはべる人彼女への愛憐が底流する気持 一 0 中宮が私には、やはり。 のありさまにはべれば、人の語りはべりしゃうにては、さるやうもやはべらむ = 薫は中宮の真意が知りたいの あキ一ら・

6. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

すずろなる嘆きのうち忘れてしつるも、あやしと思ひ寄る人もこそと紛らはし一わけもない嘆息。 四 りちしら 薫は、女一の宮への思慕を人 に気どられぬよう警戒する。 に、さし出でたる和琴を、ただ、さながら掻き鳴らしたまふ。律の調べは、あ 語 三御簾の中からさし出した。 物やしくをりにあふと聞こゆる声なれば、聞きにくくもあらねど、きはてたま 0 秋の調子。女の調子とも。 氏 五音楽に熱心な女房は、薫が弾 源はぬを、なかなかなりと心入れたる人は消えかへり思ふ。「わが母宮も劣りた奏を中止したのを心底残念がる。 六わが母女三の宮も、女一の宮 きさいばら みかどみかど に負けをとる身分でないとする。 まふべき人かは。后腹と聞こゅばかりの隔てこそあれ、帝々の思しかしづきた 以下、薫の心中。 こと′一と るさま、異事ならざりけるを。なほ、この御あたりはいとことなりけるこそあセ女一の宮は后 ( 中宮 ) 腹、女三 の宮は女御腹。その相違はあるが、 それそれの父帝の愛育は同じ。だ やしけれ。明石の浦は、いにくかりける所かな」など思ひつづくることどもに、 が女一の宮の高貴さは格別とする。 九すくせ わが宿世はいとやむごとなしかし、まして、並べて持ちたてまつらばと思ふそ ^ 明石の中宮一族の幸運を思う。 九女二の宮を妻にいただく自分 いと難きや。 の異数な宿運に思いを致し、さら に女一の宮をも加えて二人の皇女 を妻とすることを夢想する。あま 宮の君は、この西の対にそ御方したりける。若き人々のけ 三一〕薫、宮の君を訪い りにもしたたかな願望である。語 世間の無常を思う はひあまたして、月めであへり。「いで、あはれ、これも り手の「いと難きや」とするゆえん。 一 0 式部卿宮の姫君。↓一三七ハー また同じ人そかし」と思ひ出できこえて、親王の、昔心寄せたまひしものをと = 局 ( 自分の部屋 ) としていた。 三宮の君も同じ皇族の血筋で、 わらは とのゐ あり 父宮に愛育されたのに。薫の心中。 言ひなして、そなたへおはしぬ。童のをかしき宿直姿にて、二三人出でて歩き 一三亡き式部卿宮の生前の厚志。 などしけり。見つけて入るさまどももかかやかし。これそ世の常と思ふ。南面薫を婿に所望。↓東屋一五〇ハー かた わごん か ひ

7. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

まひきかし。かくはかなき世の衰へを見るには、水の底に身を沈めても、もど一宮の君のにわかな零落に世の 無常を思う。薫らしい感懐である。 ニ浮舟のように水底に身を投げ かしからぬわざにこそ」など思ひつつ、人よりは心寄せきこえたまへり。 ても。宮の君が「もどかしきまで 語 四 ・と非難されるのとは対照的。 物この院におはしますをば、内裏よりも広くおもしろく住みよきものにして、 氏 三同情に発した好意である。 きようぶく 源常にしもさぶらはぬ人どもも、みなうちとけ住みつつ、はるばると多かる対ど四明石の中宮が、軽服で、六条 院に里下りしている。↓一一三 らうわたどの も、廊、渡殿に満ちたり。左大臣殿、昔の御けはひにも劣らず、すべて限りも五大勢の女房たちが、春の町 ( かっての紫の上の居所 ) の諸所を なく営み仕うまつりたまふ。いかめしうなりにたる御族なれば、なかなかいに局として、逗留している。 六「右大臣」とあるべきか。タ霧。 九 しへよりもいまめかしきことはまさりてさへなむありける。この宮、例の御心六条院の現在の主である。 セ亡き光源氏の威勢にも劣らず。 ならば、月ごろのほどに、、かなるすき事どもをし出でたまはまし、こよなく ^ かえって光源氏の昔よりも。 九普通なら匂宮は、その好色な しづまりたまひて、人目にはすこし生ひなほりしたまふかなと見ゆるを、この本性から宮の君などを相手に、浮 気沙汰を引き起していたはず。 あり ほんじゃう 一 0 浮舟の死で、好色癖も沈静。 ごろそ、また、宮の君に本性あらはれてかかづらひ歩きたまひける。 = よからぬ癖がなおったと。 一四うち 涼しくなりぬとて、宮、内裏に参らせたまひなんとすれば、三浮舟死後、三か月ほど経過。 〔一 0 六条院の秋薫、 一三三行前。「例の御心」に照応。 もみぢ 女房らと戯れる 「秋の盛り、紅葉のころを見ざらんこそ」など、若き人々一四中宮は、式部卿宮の軽服 ( 三 か月間 ) も明けて、宮中に帰参。 一六な は口惜しがりて、みな参り集ひたるころなり。水に馴れ月をめでて御遊び絶え三六条院の秋の風情を満喫しな いまま帰参するのを残念がる気持。 ず、常よりもいまめかしければ、この宮そ、かかる筋はいとこよなくもてはや一六池上の船遊び。 ( 現代語訳三四一ハー ) ぞう たい

8. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

宅「左」は「右」とあるべきか。タ ちなどゐて、もの言ふけはひすれば、妻戸の前にゐたまひて、薫「おほかたに 霧の子息たち。常に親しく交流し おきな かた 一九 げぎんい 、とおばえなく翁合っている。↓一二七ハー注一一 0 。 は参りながら、この御方の見参に入ることの難くはべれば、し 天寝殿の西南の角。廂にいる女 びはてにたる心地しはべるを、今よりはと思ひおこしはべりてなん。ありつか房を相手に恋の風情を楽しむ趣。 一九女一の宮の女房たちとは、親 をひ ずと若き人どもそ思ふらんかし」と、甥の君達の方を見やりたまふ。女房「今しく会うことも容易でないとする。 いつの間にか年寄じみたとし て、親交を求める。恋の下心もな よりならはせたまふこそ、げに若くならせたまふならめ」など、はかなきこと いとしながらの屈曲した物言い を言ふ人々のけはひも、あやしうみやびかにをかしき御方のありさまにぞある。ニ一女房たちを相手にする若々し い振舞を、不相応なこととする。 そのこととなけれど、世の中の物語などしつつ、しめやかに、例よりはゐたま一三タ霧の子息たちをさす。 ニ三女房の声や衣すれの音などか ら女一の宮方のみやびやかな風情 へり。 に感じ入る。主君の高雅な人柄が 姫宮は、あなたに渡らせたまひにけり。大宮、「大将のそ女房たちの挙措に表れる。 〔一巴中宮、浮舟入水の ニ四女一の宮は、中宮のもとに。 真相を聞き驚愕する なたに参りつるは」と問ひたまふ。御供に参りたる大納言中宮は寝殿の東面にいる。 一宝女一の宮づきの上﨟女房。 こさいしゃう 蛉の君、「小宰相の君に、もののたまはんとにこそははべめりつれーと聞こゆれ兵思いを寄せて言いかける意。 毛気のきかない女だったら。 ニ七 ニ六 ば、中宮「まめ人の、さすがに人に心とどめて物語するこそ、心地おくれたら「まめ人」薫だけに、相手の教養趣 味の高尚さが要求されるとする。 夭中宮と薫は姉弟の関係だが。 む人は苦しけれ。、いのほども見ゆらんかし。小宰相などはいとうしろやすし」 ニ九女房も不用意に応対しないで ほしい、と願う気持 とのたまひて、御はらからなれど、この君をばなほ恥づかしく、人も用意なく ニ八 ニ四 つまど ニ 0 ニ九

9. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

せうそこ す 御方より御消息もはべらぬを、かく品定まりたまへるに思し棄てさせたまへる一臣下の妻という身分に。 こうした絵 ( 物語絵 ) など。 けしき 三薫が持参するのではその絵も ゃうに思ひて、心ゆかぬ気色のみはべるを、かやうのもの、時々ものせさせた 見るかいがないとする。女一の宮 語 から直接贈られ、その手紙などに 物まはなむ。なにがしがおろして持てまからん、はた、見るかひもはべらじか 氏 触れたいとする下心がある。 源し」と聞こえたまへば、中宮「あやしく。などてか棄てきこえたまはむ。内裏四薫の言う「思し棄て : こに反発。 五宮中での過往の姉妹の親しい にては、近かりしにつけて、時々聞こえ通ひたまふめりしを、所どころになり文通。女二の宮の居所は藤壺。 六女二の宮が、薫の三条宮に移 った折をさす。 たまひしをりに、とだえそめたまへるにこそあらめ。いま、そそのかしきこえ セ女二の宮からも。 ん。それよりもなどかはと聞こえたまふ。薫「かれよりはいかでかは。もと ^ 女二の宮には遠慮がある趣。 九 九近親の者と考えがたい人でも。 かず より数まへさせたまはざらむをも、かく親しくてさぶらふべきゅかりに寄せて、中宮と女二の宮には血縁がない。 一 0 中宮と薫は姉弟。その縁故で じっこん 思しめし数まへさせたまはんこそ、うれしくははべるべけれ。まして、さも聞女二の宮への眤懇を求める。 = かって宮中にあって姉妹が親 な しく文通していたというのだから。 こえ馴れたまひにけむを、今棄てさせたまはんは、からきことにはべり」と啓 三語り手の批評をこめた言辞。 けしき 中宮が薫の下心に気づかぬとする。 したまふを、すきばみたる気色あるかとは、思しかけざりけり。 一三小宰相。↓一二五ハー注三三。 わたどの ひとよ 一四八講の折に女一の宮をかいま 立ち出でて、一夜の心ざしの人に逢はん、ありし渡殿も慰めに見むかしと思 見た西の渡殿。恋情を慰める意図。 みすうち 一五まへあゆ して、御前を歩み渡りて、西ざまにおはするを、御簾の内の人は心ことに用意一五中宮のいる寝殿の南面の簀子 を通って、西面の方に行く。 一セおほとの す。げにいとさまよく、限りなきもてなしにて、渡殿の方は、左の大殿の君た一六廂の簾中にいる女房たち。 あ

10. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

一九 な話題を、まして私など他の者は。 立ち寄りて物語などしたまふついでに、言ひ出でたり。め 〔三 0 〕薫、小宰相の話を 一五時と場合で対処は異なる意。 聞いて驚き中宮に対面 づらかにあやしと、 いかでか驚かれたまはざらむ。「宮の一六自分には不都合な事情がある。 匂宮の横恋慕を念頭に言う。 問はせたまひしも、かかることをほの思し寄りてなりけり。などかのたまはせ宅小宰相は中宮の真意を感取。 一 ^ 薫が、小宰相のもとに。 一九小宰相が、浮舟の一件を。 はつまじき」とつらけれど、「我も、また、はじめよりありしさまのこと聞こ ニ 0 以下、薫の驚くさま。 のち ニ一中宮が自分に浮舟のことを尋 えそめざりしかば、聞きて後もなほをこがましき、い地して、人にすべて漏らさ ねられたのも。以下、薫の心中。 一三どうして全部を話してくれな ぬを、なかなかほかには聞こゆることもあらむかし、現の人々の中に忍ぶるこ いのだろう、と恨めしいが とだに、隠れある世の中かはなど思ひ入りて、この人にも、さなむありしなニ三下に、中宮が話してくれぬの もいたしかたない、ぐらいの意。 ど明かしたまはんことは、なほロ重き心地して、薫「なほ、あやしと思ひし人ニ四小宰相から聞いた後も、やは り自らの愚かしさが自覚される意。 ニセ のことに、似てもありける人のありさまかな。さてその人はなほあらんや」と = 五自分が誰にも漏さないので、 かえって世間の噂にもなるとする。 ニ六死に方に不審を抱いた相手。 のたまへば、小宰相「かの僧都の山より出でし日なむ、尼になしつる。いみじう ニ九 毛今も無事でいるのか。 さうじみほい 習わづらひしほどにも、見る人惜しみてせさせざりしを、正身の本意深きよしを = 〈以下、僧都の話を伝える。↓ 二〇二ハー 言ひてなりぬるとこそはべるなりしか」と言ふ。所も変らず、そのころのありニ九本人が出家の意思の深い由を 手 僧都に訴えて、尼になった意。 三 0 ひと 三 0 その女が浮舟であると。以下、 さまと思ひあはするに違ふふしなければ、「まことにそれと尋ね出でたらん、 薫の心中。 お いとあさましき心地もすべきかな。いかでかはたしかに聞くべき。下り立ちて三一自分が直接のり出して。 ニ四 たが うつつ ニ五