今 - みる会図書館


検索対象: リング
287件見つかりました。

1. リング

「調べるって、一体、その女の何を調べればいいんだ ? 」 ・ : 昭和四十年に入団 ? 冗談じゃねえ、今から二十五年も昔のことじゃねえか。 吉野は心の中で毒突いていた。 : 一年前の犯人の足取りを追うだけでもかなりやっかいだというのに、二十五年とは。 「なんでもいい、わかること全て。僕たちは、その女がどういう人生を送り、今現在、何 をして、何を望んでいるのか、そういうことを知りたいんです」 吉野は溜め息をつく他なかった。受話器を耳と肩で押さえながら、机の端のメモ用紙を 手前に引きつける。 「 : : : で、その女の当時の年齢は ? ひしよう 「十八歳、大島の高校を卒業すると同時に上京し、そのまま劇団飛翔に入団してます」 「大島 ? 吉野はペンを走らすのを止めて、顔をしかめた。「おまえさん、今、どこから グ電話かけてるんだい ? 「伊豆大島、差木地からです いっ帰る予定だ ? 」 「なるべく早くー 「知ってるのか、台風が接近してるってこと : : : 」 193

2. リング

「いいかい、今から言うことをよく聞くんだ。義父さん、義母さんにぜひ見てもらいた いものがある。しかも、今すぐにだ。だから、オレがそっちに着くまで、ふたりをどこ にも出さないでくれ、 いいかい、わかったね、とっても重要なことだ」 ・ : ああ、自分は悪魔に魂を売ろうとしているのか、妻と娘を助けるために、義父と 義母を一時的な危険に陥れようとしている。しかし、娘と孫を救うためなら、ふたりは 喜んで協力するに違いない。彼らもまた、ダビングして他のだれかに見せれば、それで 、その先はフ 危険を回避できるのだ。でも、その先は : 「どういうことなのか、さつばりわからないわ 「いいから、言われた通りにするんだ。今からすぐそっちに向かう。ああ、そうだ。そ こにビデオデッキあるかい ? 」 「あるわよ」 「べータかか」 「わかった、すぐに向かう。絶対こ、 冫しいか絶対にどこにも行くな」 「ちょっと、待って。ねえ、お父さんとお母さんに見せたいものって、例のビデオじゃ ない ? 」 浅川は返事に窮し、黙り込んだ。 「そうなの ? 」 と

3. リング

301 リング ポチ、その時刻になろうとしていることはわかる。今、身に迫るこの気配が、偽物でない ことくらい竜司は承知の上だ。想像によって恐怖を増大させてしまったのとはわけが違う。 想像妊娠ではあり得ない。確かに、ソレはヒタヒタと近づきつつあった。たた、わからな いのは : : なぜオレのところにだけやってくるんだ ? という疑問。 : オレのところにだけ来て、なぜ、浅川のところには来なかったんだ ? おい、不公 平じゃねえか。 とめどもなく溢れる疑問。 ・一体どういうことだ ? オレたちはオマジナイの謎を解いたわけではないのか ? だとすればな・せ ? なぜ ? なぜ ? 胸は早鐘を打った。何者かの手が胸の中にまで伸び、ぎゅっと心臓を掴まれたような気 分であった。背骨がキリキリと痛んだ。首筋に冷たい感触があり、竜司は驚いて椅子から 立ち上がりかけたが、腰から背中にかけての激しい痛みに襲われていて床に倒れ込んだ。 ・ : 今から何をすべきか考えろー どうにか保ち続けている意識が、肉体に命令を下している。立て ! 立ち上がって考え ろ ! 竜司は畳の上を這って、ビデオデッキにたどり着いた。エジェクトボタンを押して、 ただ、今、他にできる 中から例のテープを引き出す。なぜ、こんな行動を取るのか : ことはなかった。張本人であるこのテープを念入りに調べる以外、この場で何ができる ? あふ つか

4. リング

リング するのだ。今も陽子は、暗い部屋の中で母に抱かれて眠っている。

5. リング

206 くて、今私たちがいるこの部屋は事務所として使われていたんです。あそこにロッカーが あって、ここにすりガラスのつい立てが置かれ そして、そう、ちょうど今テレビが ある同じ場所にやはりテレビが置かれていた」 有馬は言いながら、手でその場所を示していった。 「テレビ ? 」 吉野はさっと目を細めペンを構え直した。 「ええ、古い型の、白黒のね」 「それで ? 」 吉野は先を促した。 「稽古が終わり、もうほとんどの劇団員が帰った後のこと、私は自分のセリフでどうして も納得できないところがあり、もう一度読み直そうとこの部屋に入ってきたのです。ほら、 そこ : : : 」有馬は入口のドアを指差した。 のぞ 「そこに立って部屋の中を覗くと、すりガラスを通してテレビ画面がチカチカと揺れてい たのです。わたしは、あ、だれかがテレビを見ているんだな、と思いました。いいですか、 決して見まちがいではありません。すりガラス越しで、ブラウン管の映像を直接見たわけ ではありませんが、確かに白黒の光がぼんやりと揺れていたのです。音は出てなかった : ・ 部屋の中は薄暗く、私はすりガラスを回りながら、テレビの前にいるのはだれだろう と、その顔をのそきこみました。山村貞子でした。でも、すりガラスを回り込んで彼女の

6. リング

リング らねえ。 「ようするに個人差じゃねえのか。数学の問題が解けないで頭かきむしる奴もいれば、 煙草をふかす奴もいる。腹に手をあてる奴だっているかもしれねえ」 小栗は言いながら椅子を回転させた。 「とにかく、今の段階では、まだ何も言えねえじゃねえか。載せるスペースはないよ。わ かってるだろ、二年前のことがあるからな。こういった類のことにはうかつに手を出せね え。思い込みで書こうと思えば、書けてしまうものさ そうかもしれない。本当に編集長の言う通り、ただ単に偶然が重なっただけかもしれな 。しかし、どうだろう、最終的に医者は首をかしげるのみであった。心臓発作で頭の毛 、こ、医者は顔をしかめて「うー をごっそりと抜いてしまうことがあるのですかというし冫 うな んと唸っただけであった。その顔は告げている、少なくとも彼の診た患者にそういった 例がなかったことを。 「わかりました」 今は素直に引き下がる他なかった。このふたつの事故の間にもっと客観的な因果関係が 発見できなければ、編集長を説得するのはむずかしい。もし、何も発見できなかったら、 その時は黙って手を引こう、浅川はそう心に決めていた。 やっ

7. リング

325 これからの歴史 接潜り込む。これがどういう結果を生むか、今はまだ知りようがない。 に、いや人類の進北にどう係わってくるのか : : オレは、家族を守るために、人類を滅ぼすかもしれない疫病を世界に解き放とう としている。 浅川はこれからやろうとすることの意味を恐れた。ほんのかすかな囁き声もあるには ある。 ・ : 妻と娘を防波堤にすれば、それですむことじゃないか。宿主を失えばウイルスは 滅ぶ。人類を救うことができるんだそ。 しかし、その声はあまりに小さい。 車は東北自動車道に入った。混雑はなかった。このまま行けば、充分に間に合う。浅 川は肩に力を込め、ハンドルにしがみつく格好で車を運転していた。「後悔なんてしな 。オレの家族が防波堤になる義理などどこにもない。危機が迫った以上、どんな犠牲 を払ってでも守らねばならないものがある」 グ決意を新たにするためもあり、浅川はエンジン音に負けぬ声でそう言った。果たして ン竜司ならば、こんな場合どうするか。その点について、彼は自信があった。竜司の霊は 浅川にビデオテープの謎を教えたのだ。つまり、妻と娘を救え、と示唆したことになる。 そのことが心強い。竜司ならこう言うだろう。 ・ : 今、この瞬間の自分の気持ちに忠実になれ ! オレたちの前にはあやふやな未来 ささや

8. リング

264 竜司が言った。彼は二人ぶんの弁当を買い込んでいた。浅川は食欲があまりないらしく、 時々箸を止めて室内の様子をじっとうかがったりしていたが、ふと思いついたように竜司 にいた。 「なあ、はっきりさせようじゃないか。オレたちは今から何をしようとしてるんだい ? 」 「決まってる。山村貞子を捜し出すんだよ 「捜し出してどうするフ 「差木地に運んで供養してもらう」 「つまり、オマジナイとは : 、山村貞子が望んでいることは、それだと言うんだな」 そしやく 竜司は、ロの中いつばいの御飯をくちゃくちゃと時間をかけて咀嚼しながら、焦点の定 まらぬ目でじっと一点を見つめた。自分でも納得しきっていないことが、その表情から読 み取れる。浅川は恐くなった。ラストチャンスには確たる根拠が欲しい。やり直しはきか ないのだ。 「オレたちに今できることは、これ以外にない 竜司はそう言って、空になった弁当箱を投げ出した。 「こういう可能性はどうだ ? 自分を殺した人間への恨みを晴らしてもらいたい : やっ 「長尾城太郎か : : : 、奴をバラせば、山村貞子の気がおさまるとでも言うのかい ? 」 浅川は、竜司の目の奥にある本心を探った。遺骨を掘り上げて供養してもなお浅川の命 を救えなかった場合、竜司は長尾医師を殺すつもりではないか、浅川を試金石にして、自 こわ

9. リング

137 馬鹿らしく思えた。 「とにかく、今から行く。待ってろ 浅川は受話器を置いた。 を東中野で降り、上落合に向かって十分ばかり歩いた。歩きながら浅川は、夜は酒 を飲み歩いていても竜司のことだ。きっと何か掴んだに違いないと、彼に対してささやか な期待を抱いた。ひょっとして謎が解けたんじゃないのか、だから、あいつは、平気で夜 遅くまで飲み騒いだのかもしれないと。竜司のア。ハートが近づくにつれて楽天的な気分に なり、浅川はいくぶん足を速めた。不安と期待、悲観と楽観、感情はコロコロと揺れ動き、 そのことがかえって浅川の精神を疲れさせた。 ぶしようひげ まさに今起きたばかりらしく、無精髭に。ハジャマ姿で、竜司は玄関のドアを開けた。浅 Ⅱは靴を脱ぐのももどかしく、「何かわかったかい ? 」と聞く。 「いや、べつに : 。ま、上がれよ 言いながら、竜司はポリポリと頭をかく。ぼうっとして目の焦点が定まらず、まだ脳細 りようぜん グ胞が起きてないことは一目瞭然であった。 ン 「コーヒーでも飲んで目を覚ませよ 期待を裏切られた浅川は、不機嫌そうにガチャガチャ音をたててャカンを火にかけた。 時間に対する強迫観念が突然に湧き起こる。 壁一面に本が積まれた六畳間で、ふたりはあぐらをかいて座った。 つか

10. リング

123 : 見ようと思えば今すぐにでも再生できる。おまえにはそれができるのだ。いつもの ように、くだらねえと笑い飛ばして、あそこのデッキにこいつを押し込めばいいじゃねえ か。やれよ、さあ、やってみろよ。 小栗の理性は自分の肉体に命令を下す、 : : : こんな馬鹿なことはあり得ないんだから、 さっさと見ちまえと。見ることは、ようするに浅川の言葉を信じないということだろうが。 冫ししか、よく考えてみろよ、見ることを拒めば、こいつのヨタ話を信じることにな 逆こ、 おび るんだぜ。だから、さっさと見てしまえ。おまえは現代科学の信奉者だろう。幽霊に怯え るガキじゃあるまいし。 実のところ、九十九パーセントまで、小栗はこの話を信じてはいなかった。しかし、心 の奥にほんの少し、ひょっとしたらという思いがあった。ひょっとして、本当だったら : 、世界にはまだ現代科学の及ばない領域があるのかもしれないと。その危険性がある限 いくら理性が働きかけたところで、肉体は拒否するに決まっている。現に、小栗は椅 や、動けなかったのだ。頭での理解以上に、体が 子に座ったまま、動こうともしない。い グ いうことをきかない。危険の可能性が少しでもある以上、肉体は正直に防衛本能を働かせ ンる。小栗は顔を上げ、乾ききった声で言った。 「で、どうしてもらいたいんだね、君は ? 」 ・ : 勝った、と浅川は確信した。 「今の仕事からはずしてください。このビデオに関して徹底的に究明したいんです。お願