検索 - みる会図書館

全データから 28310件見つかりました。
チャタレイ夫人の恋人 : 完訳

私を忘れたの ? 私が 「ベル ! 」と彼女は大きな白いプルテリアに呼びかけた。「ベルー わからないの ? 」 よう・と 彼女は犬がきらいだった。ベルはあとずさりしてほえた。彼女は農場を通って、養兎場の 道へ出ようとしていたのだった。 フリント夫人が出てきた。彼女はコンスタンスと同年配で、以前に学校の教師をしており、 魅力もあったが、コニーにはずるい女に見えていた。 「あら、まあ ! チャタレイ奥さまではございませんか ! まあ ! ーと言ってから、改めて 人 恋フリント夫人の眼は輝き、少女のように顔を赤らめた。「ベル、ベル。なんですか ! チャ 人タレイ奥さまにほえたりして。ベル ! おやめなさい ! 」彼女は駆けよって手に持っていた イ 白い布で犬を打ち、それからコニーの方へやってきた。 レ タ 「前には犬は知っていたんですけど」と言ってコニーは握手した。フリント夫婦はチャタレ ャ チ イ家の借地人だったのである。 「もちろん奥さまのことは知っていますわ。じゃれているんでございますわーと言ってフリ ント夫人は赤くなり、混乱して、コニ 1 を見上げた。 「でもベルもずいぶん長くお目にかかっていませんでしたから。お元気になりましたか ? 「ええ、ありがとう。私、大丈夫よ 「冬じゅうお目にかかれませんでしたが。ちょっとお立ち寄りくださいまし。赤ん坊を見て いただけませんか ? 」 235

天皇の世紀 3

和宮の降嫁を申請する策を、大老に吹込んだのはどの辺の智慧だったかは、明瞭には 分らない。大老が暗殺される一一年前、安政五年の十月に井伊の公用人宇津木六之丞から、 よしと - 都で周旋に当っていた長野主膳義言に送った書中に次の文面があった。 「いよいよ関東の思召、主上へ貫通致し候えば、条約一条も穏かに相済み申すべく、そ の上にては、御所向御政道、みだりがましき事どもは、十七カ条の御法則を以て御改正、 いよいよ以て公武御合体、皇女御申し下しと申す場合に至り申さずては、後患はかり難 く、この儀は君上 ( 井伊 ) と殿下 ( 九条関白 ) 御在職にこれなくては相整い申さずとの 御見込、至極ごもっともに存じ奉り候。もとより右等のところ、君公 ( 井伊 ) の御眼目 に御座候間、何分にも御丹精下さるべく候。」 とカく 外国との条約が勅許を得られず、その後も兎角紛糾が続き面倒なのを、大老は方法を 尽して解決しようと望んでいた。公武合体の建前で、皇女の御降嫁を申請し、朝廷と幕 府との間に融和を見つけ、これを政治に利用したいと企てたのである。この政策で、天 皇の御不満をなだめて、見せかけの合体に依り古くからの幕府の権威を再び確立しよう とする。宇津木の書面に、「御所向御政道、みだりがましき事どもは、十七カ条の御法 則を以て御改正」とあるのは、徳川家康が慶長二十年七月十七日に二条城に於て二条昭 実と議定して、京都の行動を制限し、政治関係の事は一切、幕府に任せることにした十 七箇条禁中御条目である。朝廷が政治に干渉することを禁じ、一切の決定を関東に委任 した二百年の昔に立戻ることなので、条約締結についても向後は発言せられぬように封

チャタレイ夫人の恋人 : 完訳

306 「そうですか : : : ではどうぞ」と彼が言った。そしてパンとチーズをゆっくりと食べていた。 彼女は裏手の、ポンプのある差し掛け小屋になった洗い場へ行った。そこの左手に扉があ った。食料室の扉にちがいなかった。その掛け金をはずした。そして彼が食料室と言ってい たその部屋を見て、笑いだすところであった。それはただの細長い白く水漆喰を塗った戸棚 にすぎなかったのだ。それでもその中にはビールの樽もあれば、皿も幾枚かあり、食物も少 しあった。彼女は黄色い壺から牛乳を少しとった。 「牛乳はどこで手に入れますの ? 」とテープルに戻ってきて彼女が訊いた。 人 ようと 恋「フリントのところですよ。養兎場のはしのところに壜をおいてくれるんです。ほらあなた 人と逢ったあそこですよ イ それでもまだ、彼はなんとなく元気がなかった。 レ タ 彼女は茶を注いで、クリーム壺を手に持った。 ャ チ 「いりません」と彼が言った。 そのとき彼はなにか物音を聞きつけたらしく、鋭く入口の方に眼をやった。 「閉めたほうがいいねーと彼が言った。 「でも惜しいわ」と彼女が答えた。「だれも来ないんでしょ ? 「たいてい大丈夫です。でもわかりませんからねえ」 「それに来たってなんでもありませんわーと彼女が言った。「ただお茶を飲んでいるだけで すもの。スプーンはどこですの たる びん しつくい

チャタレイ夫人の恋人 : 完訳

てある程度の金がいる。胃のやつがゆるさなくなるからね。 だがセックスからはレッテ ルをはがしたっていいと思うね。われわれはだれと話をしたって自由なのだ。だからわれわ れを引きつける婦人とはだれとだって恋愛関係に陥っていいわけでもある」 「それは好色なケルト民族 ( 現 訳注古代 , ー 0 ッパの中・西部に住んだ民族。 ) の言だね」とクリフォー ドが一 = ロった。 「好色だって ! それでいいじゃないか ? 僕は婦人と寝ることは、いっしょにダンスをし たり : : : 天候の話をしたりすることと同じで、少しも彼女に害を及ばさないものだと思う。 人 恋意見の交換か感覚の交換か、ということにすぎないよ。かまわないじゃないか , うさぎ 人「兎のように手当たりしだいにやるさ」とハモンドが言った。 けんおかん イ 一どうしていけないんだ ? 兎のどこが悪いのかね ? 神経質な嫌悪感に満たされた、過敏 ヤな革命好きな人類よりも悪いとでも言うのかね ? 」 チ 「しかしだね、僕らは兎じゃないよ」とハモンドが言った。 「全くだ ! 僕には精神というやつがある。僕の仕事は、天文学上のある計算をしなければ ならないことで、それは僕にとっては生死を超えた問題なのだ。ときどき消化不良のために それがじゃまされる。飢餓はもっとひどいじゃまになるだろう。それと同じことでセックス の飢餓は僕の仕事のじゃまをする。だけどそれがどうだというんだ ? 「きみの場合は、過剰なセックスからくる性的消化不良のほうが、もっと深刻なじゃまをし ていると思うね , とハモンドが皮肉を言った。

如月 柴田美佐句集

白鷺の鏡の水の余寒かな 淡雪に眼上げたるゆりかもめ Ⅳ

世界 2016年08月号

銃の宣伝です。 8 ようせんで、去年も一日に八九人銃殺されたというんです。 大量殺戮は朝飯前。一年にすれば、わたしの計算が正しけれ 日本にアメリカの進駐軍が占領してたとき、銃の規制を完 ば三万二四八五人。戦争で戦死する数と大して変わりません。 どうして銃規制をせんのか : : : ( 全米ライフル協会 ) が全にしました。戦後すぐは復員兵なんかも職がなかったし、 いろんな危ない犯罪もありました。ところが、進駐軍が銃規 世政治家に選挙資金 ( 賄賂 ) をたんまりと寄付して手懐けて 制をしたんです。 る ? 彼らに反対をすると撃たれることもあるから反対しな 兎に角、彼らは金儲けをしたいからです。世界中に銃 一軒一軒、彼らは銃を取り上げに来ました。あの頃、戦線 を売ってます。敵と味方が同じアメリカ製の武器を使てるん から隠し持って帰ってきた復員兵もいたかもしれませんが、 ですから。 普通の家庭には狩人でない限りそんなもんはありませんよ。 でも屋根裏に至るまで隈なく調べたんです。そして、時たま 今は亡き友達、『ゴッドファーザー』を書いたマリオ・プ、伝家の宝刀にぶつつかり、押収したアメリカ兵も沢山いたと ーゾがよう話してましたなあ。もう三十何年昔になりますか 思います。それをアメリカに帰ってから、骨董屋に売ったん でしよう。ニューヨークに来てから日本刀を骨董屋でよう見 ・ : 毎冬東部から避寒のために、いろんな有名なプロデュー かけました。 サーや俳優の夏の家を安く借りてマリオが滞在してたところ 一九六〇年にフェローシップを貰てニューハ ンプシャー州 に、わたし達はよくケンを連れて訪れてたんです。このお陰 でバージェス・メレディスやウィリアム・ワイラーの夏の家 にあった芸術家村に初めて行ったとき、当時ベストセラーを 書 いたリック・フリードという作家が彼のスタジオでバーテ が見られました。わたしはケンの世話で忙しく、はっきりと 聞いてませんでしたが、カショギという名前がよう出て来て イをしたんです。机上のタイプライターの横にピストルが剥 ました。この人をマリオは知ってたらしいです。武器商人で き出しで置いてあったのを見て身が竦みました。戦中、鉄砲 凄くお金を持ってた、それから映画の製作にも資金を出して 担いだ兵隊さんが行進してるのを見ましたが、すぐ手に取れ たと : : : わたしは自分の耳を疑いましたが、本当やったらし る眼前に見たのは生まれて初めてですもん。どうして作家 いです。マリオの映画やったか、それは知りません。こんな が ? と疎ましく思いました。あまり英語が自由に喋れんか ったわたしは彼をアキューズ ( 非難 ) できませんでした。持 男は暴力的な映画に資金を出してたんに違いありませんねえ。 もろ

天皇の世紀 3

して訣飲す。各、詩歌を賦し、以て慷慨の情懐をのぶ。朗吟快飲、頗る盛んなり。流石 すくな に大事の前なれば、兎角打寄り、密語するもの尠からねば、自然異状の外観もありしな らん。この夜会合するもの、野君 ( 野村 ) 、木村、関、佐野、黒沢、大関、斎藤、山口、 稲田、蓮田、広岡、森、鯉淵、岡部、杉山、広木、森山、海後及び余 ( 佐藤 ) 等なり。 出府以来同志の一席に会宴する、この時を以て初めとし、またこの夜を以て終りとせ 「二日夜同志の者十七人、品川に集り、各、暇乞いの心得にて快く酒酌みかわし、早夜 半過ぎぬれば、食事などしまい、兎角する内、しらみたる景色なれば、戸を明けて、空 の模様を見れば、雪殊の外降り出したり。こは、くつきようの事と、互いに顔を見合わ せ、心の内に悦びぬ。やがて宿を立出で、人目を忍ぶ身にあれば、或いは三人、二人、 或いは六人、五人と打連れて、兼て約束せし愛宕山に赴きぬ。我等山に登り見れば、皆 揃いて、有村に対面せよと同志のもの言うにつき、一大事を思い立ちし我等なれば、容 易に人に対面はすまじと云う理にはあれど、無二の志の者なれば苦しからずと勧むるに 因って、初めて対面せり。」 動 これは雄介の弟、有村次左衛門のことであって、薩摩の人間として、唯一人水戸の同 反志に義理を立てて一挙に加わった。これで人数は十八人となった。 夜が明けてからも雪は降りしきった。桜田門外に行って、地方から見物に出て来た者

クインテット! 1

728 のだ。 むすっとした表情で敬介はツバメの手を引き、手近な眼鏡専門店に入った。 中に入ると広々とした店内にズラリと眼鏡が陳列されていた。眼鏡の専門店なのだから当た り前のことなのだが、生まれてこの方眼鏡のお世話になったことがない敬介にとってそれはか なり異様な光景だった。一瞬世界中の眼鏡がこの場所に集中しているんじゃあないだろうかと 思った。これだけ眼鏡人口がいるならば眼鏡民族が辺境のコロニーで独立を宣言し、眼鏡公国 を建国するのもそう遠い未来ではないかもしれない。 「いらっしゃいませー、どのような眼鏡をお探しですかー ? と、敬介が圧倒されていると、早速店員が声をかけてきた。ご多分に漏れず眼鏡をかけた若 い男の店員だった。 : って、あれ ? 敬介じゃん。何してんの ? 」 ゃなぎもんど というか店員は、クラスメートの柳主水だった。 「眼鏡屋にプラモ買いに来る奴がいるか。眼鏡買いに来たんだよ。っ 1 か、お前こそなんでこ こにいんだよ ? 「ふつふつふ、それを説明するには三時間映画一本、を制作するほどの時間が必要になるがそ れでも聞きたいか ? 「バイトだな。わかった、も、ついし

チャタレイ夫人の恋人 : 完訳

レクレス 「向こう見ず、とル 1 クは呼んでいますの」と言ってフリント夫人は笑った。「少しお持ち くださいまし そして彼女はビロードのような薄浅黄の花を熱心に摘んだ。 「もうたくさん、もうたくさん」とコニ 1 が言った。 二人は庭園の小さな門のところまで来た。 「どちらからお帰りになります ? とフリント夫人が言った。 「養兎場を抜けて行きます」 人 恋「そうですか ! そうそう、牛が囲いの中に入ってますわ。でもまだこっちにはおりません。 人ただ木戸に鍵がかかっているから攀じ登って越さなければなりませんが」 「越せます」とコニーが言った。 レ タ 「では、囲いの端までお送りします」 ャ うさぎ チ 二人は兎にかじり荒らされた貧弱な草地を通って行った。森の中では、小鳥がタ暮れの歌 さえず を元気よく囀っていた。男が一人、遅れた牛を呼びたてていた。牛は踏み荒らされた牧場を のろのろと歩いてきた。 ちちしぼ 「今晩は乳搾りが遅れているんです」とフリント夫人が厳しく言った。「ルークが暗くなる まで戻らないことを知っていてのことでございますの」 しげ もみ かきね 二人は垣根のところまで来た。その向こう側には樅の若木が深く繁っていた。小さな門が から あったが鍵がかかっていた。その内側の芝草の上に空の壜が置いてあった。 239

図説 ロンドン 都市と建築の歴史

ロンドン はじめに ロンドン建築・都市史略年表 主な参考文献・図版引用文献 建築と人間の連鎖 建築と時間の連鎖 建築と芸術の連鎖 第七章つなぐ眼 厳かな空間 円環する場 地下世界 第六章潜入する眼 偉大なるアマチュア 動物園 博物館というコレクション 第五章縮小する眼 都市を生物として見る モダニズム建築の装飾性 神は細部に宿る 第四章拡大する眼 ゴシック・リバイバルという変換 ビクチャレスク 遠近法 第三章離れた眼 組織としてのロンドン 博物誌と百貨店という見世物 壁と断面 第ニ章切断する眼 記憶から記録へ 都市計画という神の眼 庶民のための地図 第一章俯瞰する眼 図説 目次 都市と建築の歴史 あとがき 052 058 005 008 008 012 022 030 031 035 039 043 064 065 069 073 078 078 084 089 094 095 100 105 109 110 114 118 139 140 143