出 - みる会図書館


検索対象: 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩
469件見つかりました。

1. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

あまごろも 一「かけて」は、衣を掛けて、昔 浮舟尼衣かはれる身にゃありし世のかたみに袖をかけてしのばん のことを心にかけて、の両意。尼 のち の身に、往時の形見として華麗な と書きて、「いとほしく、亡くもなりなん後に、ものの隠れなき世なりければ、 衣の袖を掛けて昔を偲ばうか。忘 一 = ロ四 物聞きあはせなどして、疎ましきまで隠しけるとや思はんなど、さまざま思ひれたはずの昔日が懐かしまれる。 氏 ニこれも手習歌であろう。 源つつ、浮舟「過ぎにし方のことは、絶えて忘れはべりにしを、かやうなることを = 不憫なことに。以下、浮舟の、 妹尼への思い 四他人から私 ( 浮舟 ) のことを。 思しいそぐにつけてこそ、ほのかにあはれなれ」とおほどかにのたまふ。妺尼 五自分が、尼君たちに疎々しく ′ : 」ろう 「さりとも、思し出づることは多からんを、尽きせず隔てたまふこそ心憂けれ。し、素姓などを隠していた意。 六漠然とした懐旧の念、の趣 ここには、 かかる世の常の色あひなど、久しく忘れにければ、なほなほしくはセ動揺を見透かされぬため。 ^ あなたが隠しだてなさるのが。 九私 ( 妺尼 ) などは。 べるにつけても、昔の人あらましかばなど思ひ出ではべる。しかあっかひきこ 一 0 世俗の人の着る華麗な色合い = 縫い方や染色など、平凡にし えたまひけん人、世におはすらんや。かく亡くなして見はべりしだに、なほい かできない意。 一ニ亡き娘をさす。 づこにあらむ、そことだに尋ね聞かまほしくおばえはべるを、行く方知らで、 一三あなたをそのようにお世話し てあげた人。浮舟の母を暗に言う。 思ひきこえたまふ人々はべらむかし」とのたまへば、浮舟「見しほどまでは、 一四私のように娘を死なせてしま ひとり 一人はものしたまひき。この月ごろ亡せやしたまひぬらん」とて、涙の落つるった母親でさえも。 一五やはりどこかに生きているだ を紛らはして、浮舟「なかなか思ひ出づるにつけて、うたてはべればこそ、えろう、せめてどこなりとその場所 を知りたいと思われるのに。 一六まして、あなたは行方不明で。 聞こえ出でね。隔ては何ごとにか残しはべらむ」と、言少なにのたまひなしつ。 五 六 そで ゅ へ

2. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

出づるにとどめられて、物語しめやかにしたまふ。「言ふかひなくなりにし人一五中将。「蓮の実」は酒の肴。 一六接待にも遠慮のいらぬ気持。 よりも、この君の御心ばへなどのいと思ふやうなりしを、よそのものに思ひな宅にわか雨。涙をも暗示するか。 一 ^ 亡き娘。以下、妹尼の心中。 したるなん、いと悲しき。など忘れ形見をだにとどめたまはずなりにけん」と、一九申し分なかったものを。 ニ 0 せめて忘れ形見の子なりと。 恋ひぶ心なりければ、たまさかにかくものしたま〈るにつけても、めづらし = 一中将が久方ぶりに。 一三妹尼は、田 5 いもかけぬことと くあはれにおばゅべかめる問はず語りもし出でつべし。 感動しているはすの浮舟のことを、 問われすとも語り出したい気持だ 姫君は、我は我と思ひ出づる方多くて、ながめ出だしたまへるさまいとうつろう。語り手の推測による。 ニ三浮舟の呼称として「姫君」は初 なさけ はかまひはだいろ くし。白き単衣の、いと情なくあざやぎたるに、袴も檜皮色にならひたるにや、出。恋物語の女主人公の趣。 ニ四自分なりにわが身の上に田 5 い 光も見えず黒きを着せたてまつりたれば、かかることどもも、見しには変りてを馳せる。↓澪標 3 一一四ハー二行。 一宝若い女が着るには不似合い ニセ ニ ^ 一宍多く出家の人がつける袴の色。 あやしうもあるかなと思ひつつ、こはごはしういららぎたるものども着たまへ 毛浮舟は。 おまへ るしも、いとをかしき姿なり。御前なる人々、「故姫君のおはしまいたる、い地 = 〈ごっごっ肌わりのよくない 着物。「いら」は刺の意。 、とあはれにこそ。同じくは、ニ九昔のように婿君として。この 習のみしはべるに、中将殿をさへ見たてまつれば、し あたり、タ霧〔 = 六〕・総角 3 〔六〕 ニ九 昔のさまにておはしまさせばや。いとよき御あはひならむかし」と言ひあへるなどに見えた女房と同趣。 手 三 0 以下、浮舟の心中。人並に男 と縁を結ぶのはまっぴらとする。 を、「あないみじゃ。世にありて、いかにもいかにも人に見えんこそ。それに 三一薫と匂宮の板挟みになった、 えんお つけてぞ昔のこと思ひ出でらるべき。さやうの筋は、思ひ絶えて忘れなん」と過往の厭悪すべき思い出。 ニ三 し 三 0 ニ五ひとへ ニ四 かた ニ六

3. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

一薫も、何かあるなと察して。 と思ひて、かしこまりてをり。殿もしか見知りたまひて出でたまひぬ ニ明石の中宮。しばしば発病。 宮、例ならずなやましげにおはすとて、宮たちもみな参りたまへり。上達部三中宮所生の親王たち。 語 四格別心配される病状でない意。 四 物 など多く参り集ひて騒がしけれど、ことなることもおはしまさず。かの内記は五大内記は太政官の役人。文書 氏 作成などに忙しかったらしく遅参。 ふみ だいはんどころ 源じゃうぐわん 政官なれば、おくれてそ参れる。この御文も奉るを、宮、台盤所におはしま六浮舟からの返書。大内記は前 に使者から渡されていた。↓前ハ おまへ して、戸口に召し寄せて取りたまふを、大将、御前の方より立ち出でたまふ側セ六条院南の町の女房の詰所。 ^ 薫は、中宮の御前から。 せち 目に見通したまひて、切にも思すべかめる文のけしきかなと、をかしさに立ち九匂宮が深く執心しているらし い女の手紙。薫は浮舟の手紙とは くれなゐうすやう とまりたまへり。ひき開けて見たまふ。紅の薄様にこまやかに書きたるべしと夢にも思わず、遠目に眺めている。 一 0 匂宮が。 おとど 見ゅ。文に心入れて、とみにも向きたまはぬに、大臣も立ちて外ざまにおはす = 紅の薄い鳥の子紙。 一ニ薫の推測。 さうじ れば、この君は、障子より出でたまふとて、「大臣出でたまふ」と、うちしは一三手紙に夢中の宮は気づかない。 一四右大臣。タ霧。 一五薫は、自分も襖から出て、匂 ぶきておどろかいたてまつりたまふ。ひき隠したまへるにぞ、大臣さしのぞき 宮にタ霧の退出を気づかせる。舅 ひも に宮の恋文を見せまいと配慮。 たまへる。おどろきて御紐さしたまふ。殿ついゐたまひて、タ霧「まかではべ 一六直衣の襟元の紐を解いてくっ 一 ^ じやけ ろいでいた。はっと気づいた宮は りぬべし。御邪気の久しくおこらせたまはざりつるを、恐ろしきわざなりや。 いれひも その入紐をさし込み威儀を整える。 さう 一九ざす 宅タ霧。六条院の主という呼称。 山の座主ただ今請じに遣はさん [ と、いそがしげにて立ちたまひぬ。 ひざまずいて宮に敬意を表す。 天「邪気は物の怪。中宮の病気 夜更けて、みな出でたまひぬ。大臣は、宮を先に立てたてまつりたまひて、 め 一六 一 0 あ 一七

4. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

一せつかくのすばらしい夜を。 るに、尼君、「など、あたら夜を御覧じさしつる」とてゐざり出でたまへり。 「あたら夜の月と花とを同じくは 心知れらむ人に見せばや」 ( 後撰・ 中将「何か。をちなる里も、こころみはべりぬれば」と言ひすさみて、「いたう 語 春下源信明 ) 。 びん 物すきがましからんも、さすがに便なし 。、とほのかに見えしさまの、目とまりニあちら ( 浮舟 ) の気持も分った ので。「をち」は宇治の地名 ( ↓浮 源しばかり、つれづれなる心慰めに思ひ出でつるを、あまりもて離れ、奥深なる舟五四注一 = ) 。引歌があるか。 三あまり好色がましくふるまう セね のも。以下、中将の心中。 けはひも所のさまにあはずすさまじ」と思へば、帰りなむとするを、笛の音さ 四浮舟の。 へ飽かずいとどおばえて、 五所在ない気持の慰めとして。 六あまりによそよそしく奥深く 引き籠ったきりの態度も、山里の 妹尼ふかき夜の月をあはれと見ぬ人や山の端ちかき宿にとまらぬ 風情には不似合いでしらけた感じ。 セ中将のみならず笛の音にまで。 と、なまかたはなることを、「かくなん聞こえたまふ」と言ふに、、いときめき ^ 「ふかき夜」は前の「あたら夜」 して、 に照応。「月」は浮舟。深夜の月に 感動せぬ人は月の入る山の端近い ねゃいたま この家に泊らぬのか、と恨んで、 中将山の端に入るまで月をながめ見ん閨の板間もしるしありやと 中将の求婚を受諾しようとする歌。 など言ふに、この大尼君、笛の音をほのかに聞きつけたりければ、さすがにめ九浮舟の気持を無視して、代作。 一 0 「板間」は粗末な板葺きの家の ねや 板と板の隙間。ここは、その閨の でて出で来たり。 隙間からさし込む月光の風情。月 を眺め続け、閨に近づきたい気持。 ここかしこうちしはぶき、あさましきわななき声にて、な 〔一六〕母尼和琴を得意げ = 僧都の母尼君。 たれ に弾き、一座興ざめる かなか昔のことなどもかけて言はず。誰とも思ひわかぬな三八十余歳の老齢なのに。 ( 現代語訳三六九ハー )

5. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

少なにて、「聖だっといひながら、こよなかりける山伏心かな。さばかりあは一六匂宮の心中。聖ぶってはいて も途方もない山伏心というもの。 れなる人をさておきて、心のどかに月日を待ちわびさすらむよと思す。例は、薫の宇治の山里通いを皮肉って、 山野に修行する山伏だとする。 さしもあらぬことのついでにだに、我はまめ人ともてなし名のりたまふをねた宅あんなに誑わいい人、浮舟を。 天ほんの些細な機会でさえ、薫 が自分こそ謹直な人間だと。 がりたまひて、よろづにのたまひ破るを、かかること見あらはいたるをいかに 一九何かとけちをつけられるのに。 たはぶごと のたまはまし、されど、さやうの戯れ言もかけたまはず、いと苦しげに見えたニ 0 薫と浮舟との秘密を。 三どんなに言い立てたことだろ ふびん う。しかし、今はそれも憚る気持。 まへば、薫「不便なるわざかな。おどろおどろしからぬ御心地のさすがに日数 一三困ったもの。冗談の出ない匂 経るはいとあしきわざにはべる。御風邪よくつくろはせたまへ」など、まめや宮を、薫は病気の重いせいと思う。 ニ三匂宮の心中。薫は気のひける かに聞こえおきて出でたまひぬ。恥づかしげなる人なりかし、わがありさまをほど立派な人、それに比べてこの 私を、浮舟はどう見ただろう。 いかに思ひくらべけむなど、さまざまなることにつけつつも、ただ、この人をニ四浮舟の石山寺参詣が中止。 三〇ハー四行。 ニ五匂宮から浮舟への手紙。逢え 時の間忘れず思し出づ。 なくてつらいなど思いの丈を書く。 ニ六密通ゆえ文通でさえ慎重を期 しといみじき かしこには、石山もとまりて、いとつれづれなり。御文には、、 舟 さねばならない。 ニ七 ことを書き集めたまひて遣はす。それだに心やすからず、時方と召しし大夫の毛時方 ( 大夫 ) の従者。事情を知 る者では途中漏すおそれもある。 浮ずさ 従者の、心も知らぬしてなむやりける。右近「右近が古く知れりける人の、殿 = ^ 自分の昔の恋人が薫の供人で、 その手紙を受け取ると嘘をつく。 の御供にてたづね出でたる、さらがヘりてねむごろがる」と、友だちには言ひニ九女房仲間に。 ま ニ四 ニ六 ニ 0 ニ九 たいふ

6. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

じつらん」と一言ふ。かかることこそはありけれとをかしくて、何人ならむ、げ宅中将の目ざとさをからかう。 天以下、中将の心に即した叙述。 にいとをかしかりつと、ほのかなりつるを、なかなか思ひ出づ。こまかに問へ意外な所に意外な美女が、の思い 一九ちらとかいま見た相手だけに、 かえって印象が鮮明。 ど、そのままにも言はず、少将の尼「おのづから聞こしめしてん」とのみ言へば、 ニ 0 帰京を促す言葉。一七〇ハー一 うちつけに問ひ尋ねむもさまあしき心地して、供人「雨もやみぬ。日も暮れぬ四行・前ハー一一行に続く雨の様子。 時間の経過をも巧みに語りこめる。 べし」と言ふにそそのかされて、出でたまふ。 ニ一前出の女郎花。↓一六九ハー。 一三「ここにしも何にほふらむ女 をみなへし 前近き女郎花を折りて、中将「何にほふらん」と口ずさびて、独りごち立て郎花人のもの言ひさがにくき世 に」 ( 拾遺・雑秋僧正遍照 ) 。女郎 と・か り。「人のもの言ひを、さすがに思し咎むるこそ」など、古代の人どもはもの花は女を象徴する歌語。尼たちの 中にあんなに美しい女が、の気持。 めでをしあへり。妹尼「いときょげに、あらまほしくもねびまさりたまひにけ = 三人のロの端をやはり気にかけ るとは奥ゆかしい、と中将の深慮 るかな。同じくは、昔のやうにても見たてまつらばや」とて、「藤中納言の御をほめる。引歌の下の句による。 ニ四古風な尼君たち。 ニ七 あたりには、絶えず通ひたまふやうなれど、心もとどめたまはず、親の殿がち一宝中将は現在、この人の姫君の ニ ^ もとに婿として通っている。中納 - : ンっう 習になんものしたまふとこそ言ふなれ」と尼君ものたまひて、妹尼「心憂く、も言は従三位相当。素姓は不明。 ニ六夫婦仲の絶えない程度に。 ニ九 のをのみ思し隔てたるなむいとつらき。今は、なほ、さるべきなめりと思しな毛中将の両親の邸にいることが うわさ 手 多いと、世間では噂している意。 いっとせむとせ 三 0 して、はればれしくもてなしたまへ。この五六年、時の間も忘れず、恋しくか = 〈以下、浮舟にむかっての言葉。 00 ニ九これも宿縁だと考えて。 のち 三 0 亡き娘のこと。 なしと思ひつる人の上も、かく見たてまつりて後よりは、こよなく思ひ忘れに ニ六 一九 ニ 0 ニ四 なにびと ニ五 とう

7. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

一驚くほどっらい気持だが て、御馬に乗りたまふほど、引き返すやうにあさましけれど、御供の人々、 ニまったく冗談ではない。 三匂宮は、魂の抜けた思いで。 と戯れにくしと思ひて、ただ急がしに急がし出づれば、我にもあらで出でたま 語 四大内記と時方。大内記は式部 物ひぬ。この五位二人なむ、御馬のロにはさぶらひける。さかしき山越えはてて少輔 ( 従五位下 ) を兼任。↓四五【。 時方は大夫 ( 五位 ) 。↓三四ハー。 源 ぞ、おのおの馬には乗る。水際の氷を踏みならす馬の足音さへ、心細くもの悲五木幡山を越えて、二人が乗る。 六宮が中の君のもとに通った道。 六 やまぶみ し。昔も、この道にのみこそは、かかる山踏はしたまひしかば、あやしかりけセ不思議な宿縁に結ばれた宇治 の山里であるよ。 0 前段から匂宮ど浮舟の情痴の姿 る里の契りかなと思す。 が克明に語られる。かっての惟光 こころう うそ ほうふつ 二条院におはしまし着きて、女君のいと心憂かりし御ものの姿をも彷彿とさせる時方、嘘で 〔一三〕匂宮ニ条院に戻り、 この場を切り抜けようとする右近、 中の君に恨み言をいう 隠しもつらければ、心やすき方に大殿籠りぬるに、寝られいずれも端役として生彩がある。 〈中の君が水臭くも浮舟のこと を隠していたことも恨めしいので。 たまはず、いとさびしきにもの思ひまされば、、い弱く対に渡りたまひぬ。何心 九気楽な自室。寝殿である。 しときょげにておはす。めづらしくをかしと見たまひし人よりも、ま一 0 中の君のいる西の対に。 = 中の君は、何があったとも知 た、これはなほありがたきさまはしたまへりかしと見たまふものから、いとよらす、まことにきちんとした姿で。 三浮舟よりも。 み たぐいまれ く似たるを思ひ出でたまふも胸ふたがれ、 しいたくもの思したるさまにて、御一三中の君の類稀な美質をさす。 一四浮舟が中の君に。宮は二人が ちゃう 帳に入りて大殿籠る。女君をも率て入りきこえたまひて、匂宮「、い地こそいと姉妹と知らぬ。二人ともその関係 を知らせてくれぬのが不満である。 あしけれ。いかならむとするにかと心細くなむある。まろは、いみじくあはれ一五御帳台 ( 寝台 ) に。逢瀬の名残 たはぶ む みぎは 九 い 0

8. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

21 浮舟 とて、かへすがヘすあるまじきことにわが御、いにも思せど、かうまでうち出での下心から匂宮におもねっている 大内記の設定に注意。物語がおの ずと、宮と薫との浮舟にかかわる たまへれば、え思ひとどめたまはず。 新しい競合の関係へと進む。 一四中の君に通った往時の供人。 御供に、昔もかしこの案内知れりし者二三人、この内記、 〔を匂宮、大内記の案 一五乳母子で蔵人 ( 六位 ) から叙爵 一五めのとご くらうど むつ 内により宇冶に赴く して従五位下に叙せられた若い男。 さては御乳母子の蔵人よりかうぶり得たる若き人、睦まし 二七ハー末では「時方」と呼ばれる。 え きかぎりを選りたまひて、大将、ムフ日明日はよもおはせじなど、内記によく案一六薫は今日明日は宇治に赴くま 、とする推測 ない 宅中の君のもとに通った往時。 、いにしへを思し出づ。あやしき 内聞きたまひて、出で立ちたまふにつけても 一 ^ 心を合せては自分を伴ってく あり まで心をあはせつつ率て歩きし人のために、うしろめたきわざにもあるかなと、れた人、薫に対して。以下、浮舟 に近づいて薫を裏切る、自責の念。 うち 一九 思し出づることもさまざまなるに、京の中だにむげに人知らぬ御歩きは、さは一九いかに好色の人とはいえ。 ニ 0 普通なら牛車。道が険しく、 ニ 0 むま 言へど、えしたまはぬ御身にしも、あやしきさまのやつれ姿して、御馬にておしかも人目をきびしく忍ぶため。 三気が咎める気持。 はする、心地ももの恐ろしくややましけれど、もののゆかしき方は進みたる御一三女への好奇心。 ニ三早く着きたい。以下、「あや しかるべけれ」まで、匂宮の心中。 、いなれば、山深うなるままに、、 しっしか、いかならん、見あはすることもなく 一西↓東屋 3 一九七ハー注一三。 ほふ一う て帰らむこそさうざうしくあやしかるべけれと思すに、、いも騒ぎたまふ。法性一宝前の「御馬にて : こを詳述。 ニ六「亥子の刻」の予定よりも、や むま や早い。道中を急いだらしい 寺のほどまでは御車にて、それよりぞ御馬には奉りける。 毛大内記は、邸内をよく知る薫 急ぎて、宵過ぐるはどにおはしましぬ。内記、案内よく知れるかの殿の人にの従者から、様子を探っておいた。 ニ六 よひ ゐ ニ五 あない ニ七 あない あ

9. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

は一薫との関係での不都合を思う。 ならず見苦しきこと取り出でたまひてむ。外より伝へ聞きたまはんはいかが ニ匂宮が浮舟の噂を他の人から。 三薫にも、浮舟にも。 せん、いづ方ざまにもいとほしくこそはありとも、防ぐべき人の御心ありさま 語 四夫の浮気の相手が妹とあって 物ならねば、よその人よりは聞きにくくなどばかりぞおばゅべき。とてもかくては、他人の場合よりも、外聞の悪 し思いをさせられることになろう。 源 も、わが怠りにてはもてそこなはじ」と思ひ返したまひつつ、いとほしながら五自分の不注意から、匂宮に真 相を知られ不都合な事態にならぬ ようにしょ , つ、と思い返した。 え聞こえ出でたまはず、ことざまにつきづきしくは、え言ひなしたまはねば、 六一声いとほしく」とも照応。 れんびん ゑん ここは恋に心を砕く匂宮への憐憫。 おしこめてもの怨じしたる世の常の人になりてそおはしける。 セ嘘をもっともらしくつけない かの人は、たとしへなくのどかに思しおきてて、待ち遠なので。高貴な女君の上品な素直さ。 〔ニ〕薫、悠長にかまえ 〈黙りとおして、夫の浮気に嫉 て、浮舟を放置する りと思ふらむと、心苦しうのみ思ひやりたまひながら、と妬しがちな平凡な女を装う。 0 匂宮の異常なまでの好色癖と、 ころせき身のほどを、さるべきついでなくて、かやすく通ひたまふべき道ならそれゆえの浮舟執心。巻頭のこの 設定が、浮舟の物語を新たに導く。 ねば、神のいさむるよりもわりなし。されど、「いまいとよくもてなさんとす。九薫の、悠長にかまえた態度。 一 0 宇治の浮舟が。 山里の慰めと思ひおきてし心あるを、すこし日数も経ぬべきことどもっくり出 = 薫は権大納言兼右大将に昇進 して公務多端 ( ↓宿木一一一ハ 一二行 ) 、また女二の宮も降嫁。 でて、のどやかに行きても見む。さて、しばしは人の知るまじき住み所して、 一ニ「恋しくは来ても見よかしち ゃうやう、さるかたにかの心をものどめおき、わがためにも、人のもどきあるはやぶる神のいさむる道ならなく に」 ( 伊勢物語七十一段 ) 。 とが なにびと 一七 まじく、なのめにてこそよからめ。にはかに、何人そ、いつよりなど聞き咎め一三地の文から薫の心中に転ずる。 一四 五 かた 六 うそ うわさ

10. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

一自分は生前、修行を励んだ法 もあらず。昔は、行ひせし法師の、いささかなる世に限みをとどめて漂ひ歩き 師。以下、物の怪が、素姓を告白。 『河海抄』は、染殿の后 ( 藤原明子、 しほどに、よき女のあまた住みたまひし所に住みつきて、かたへは失ひてしに、 文徳帝の后、清和帝の母 ) に憑い 語 こん 物この人は、心と世を恨みたまひて、我いかで死なんといふことを、夜昼のたまた紀僧正真済の話 ( 古事談 ) や、紺 じよ′を ~ 青鬼となった行者が同じ后を悩ま 源ひしに頼りを得て、いと暗き夜、独りものしたまひしをとりてしなり。されどせた話 ( 今昔物語集 ) を掲げる。 ぜんけひき 『善家秘記』所収の染殿の后をめぐ くわんおん そうづ る怪聞に発する伝承群である。 観音とざまかうざまにはぐくみたまひければ、この僧都に負けたてまつりぬ。 九 ニ現世に恨みを残して死んで。 っ 今はまかりなん」とののしる。僧都「かく言ふは何ぞ」と問へば、憑きたる人女人〈の執着で純 0 たか。 三成仏できず中有に迷ううちに。 四宇治の八の宮邸。 ものはかなきけにや、はかばかしうも言はず。 五大君。物の怪が憑いて死んだ ) うじみ とするが、総角巻とは異なる趣。 冫いささかものおばえて見まはし 正身の、い地はさはやかこ、 〔 ^ 〕浮舟意識を回復し、 六浮舟。以下、浮舟巻後半の、 ひとり 失踪前後のことを回想 たれば、一人見し人の顔はなくて、みな老法師、ゆがみお浮舟の死の決意と照応。 七浮舟は幾度も長谷寺に参詣。 とろへたる者どものみ多かれば、知らぬ国に来にける、い地していと悲し。あり ^ 物の怪が捨てぜりふを残して 退散。柏木二八ハー四行と類似。 たれ 4 りま・ー ) 力しカ九物の怪を駆り移された憑坐。 し世のこと思ひ出づれど、住みけむ所、誰といひし人とだにたしかにはゝゝ 一 0 浮舟。物の怪退散後の爽快感。 いくらか意識を取り戻して。 しうもおばえず。ただ、我は限りとて身を投げし人ぞかし、いづくに来にたる = 三別世界に蘇生した不安な感じ。 みなひと にかとせめて思ひ出づれば、「いといみじとものを思ひ嘆きて、皆人の寝たり一三以下、回想の助動詞「き」が多 用。かすかな記憶を呼び戻しなが つまど ら、一つ一つを確かめていく趣。 しに、妻戸を放ちて出でたりしに、風ははげしう、川波も荒う聞こえしを、 四 よるひる あ