力 - みる会図書館


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1. リング

227 いい力い、貞子はその当 「母にできなくて、娘にでぎるのがそんなに不思議なのかい ? りようが 時まだ七歳だったけれど、母をはるかに凌駕する能力を備えていたんだ。百人の人間の 意識の念の力などものともしない程のな。考えてもみろよ、・フラウン管に映像を送り込む んだ・せ。フィルムに光を当てるのとはまったく異なる仕組みでテレビは映像を写し出す。 五百二十五本の走査線を走査するって方法でな。貞子にはそれができゑ桁外れの力だ」 浅川はどうも釈然としない。 「それほどの能力があるなら、三浦博士のもとに送られた念写フィルムに、もっと高度な 図柄が写っていてもいいはずじゃないか やっ 「おまえも鈍い奴だな。いいか、母の志津子は超能力を人に知られたが故に、不幸な生涯 てつ を送らざるを得なかった。娘に同じ轍は踏ませたくなかったんだろ。能力を隠し、ごく平 凡に生きること、母は娘にそう言い聞かせたに違いない。貞子は力をぐっと押さえ、ごく 一般的な念写になるよう調整したのさ」 山村貞子は、劇団員が帰った後もひとり稽古場に残り、当時まだ貴重であったテレビに グ向かって、自分の力を試していたのだ。けっして自分の能力を人に知られないよう、注意 ンしながら。 「次のシーンに登場する老婆はだれだ ? 浅川が聞いた。 「だれかはわからねえ、おそらく、あのばーさん、貞子の夢かなにかに現れて、予言めい

2. リング

279 「バカヤロウ ! オレを殺す気か ! 竜司はロープをつたって上った。 「交替だ : : 交替ー 浅川はびつくりして身体を起こし、その拍子に頭を強く床板に打ちつけてしまった。 「待て、竜司、だいじようぶ、まだ、オレだって、カが残ってる」 浅川は言葉を短く区切って言った。竜司は井戸の上に顔を出した。 「カなんてどこにも残ってやしねえよ。さ、交替だ」 「ちょ、ちょっと、待ってくれよ。少し休めば、回復する」 「おまえの筋力が回復するのを待っていたら夜が明けるぜ」 竜司は浅川の顔にサーチライトを当てた。浅川の目つきが少し変わっている。死の恐怖 が冷静な思考力を奪い去ってしまったのだ。一見して、正常な判断力を欠いていることが わかゑスコツ。フで泥水をすくい上げる作業と、重いバケツを四、五メートル引き上げる グ作業と、どちらが力を使う作業なのか考えなくてもわかりそうなものだ。 ン「さあ、さっさと下に降りろ ! 竜司は、浅川の身体を井戸の縁に押し込んだ。 「ちょっと、待て。なあ、マズイんだ : ・ 「なにが ? からだ

3. リング

224 当日、百人近い報道人と学者の見守る中、志津子はいやいやながら実験台に登った。息 子を死なせて以来、精神的に参っていたこともあり、とてもベストコンディションとはい えない状態であった。実験はごく簡単な方法で行われようとしていた。鉛の容器に入れら れた二つのサイコロの目を言い当てさえすればいいのだ。普段の力を発揮すれば、全く 題はないはずであった。しかし、志津子は、彼女を取り囲む百人がすべて、自分の失敗を 待ち望んでいることを「知って」しまう。志津子は体を震わせ、床に身をこごめ、「こん なこと、もういや ! ーと悲痛な叫びを上げた。志津子の釈明はこうであった。人間はだれ でも少なからず「念」の力を持っている。私はただその力が人よりも勝っているだけ。百 人もの人が失敗を念じている中にあっては、私の力なんて妨害され働かなくなってしまう。 その後を引き継いだのは伊熊平八郎であった。「いや、百人ではない。今や、日本の国民 全てが、私の研究の成果を踏みにじろうとしている。マスコミにあおられ、世論が一方向 に流れ始めると、マスコミは多くの国民が望むこと以外口にしなくなる。恥を知れ ! 」結 局、透視能力の公開実験は、伊熊平八郎のマスコミ批判によって幕を閉じた。 マスコミ関係者は、伊熊平八郎の怒号を、実験が失敗した原因を敵であるマスコミにな : やはりイ すりつけるための言い掛かりと受け止め、翌日の紙面で一斉に書き立てた。 ンチキ、 ・ : 化けの皮はがれる、 : ペテン師 e 大助教授、 : : : 五年に及ぶ議論に終止符、 ・ : 現代科学の勝利。志津子と伊熊平八郎を擁護する記事はひとっとしてなかったのだ。 その年の暮れ、伊熊平八郎は妻と離婚し、大を辞職した。この頃から志津子の被害妄

4. リング

274 迫るだけで息苦しいというのに、ひょっとしたら、もっと深い闇に支配された井戸の底に 降りなくてはならないかもしれないのだ。 : かもしれない、ではない。山村貞子をひき ずり出すためには、ほとんど確実に井戸の中に入っていかなければならない。 「おい、手を貸してくれー 竜司が言った。竜司は、コンクリート製の蓋の裂け目からのぞいた鉄骨に手をかけて、 蓋を谷側の地面に引き落とそうとしたが、なにせ天井が低く思うように力が入らない。べ ンチプレス百一一十キロの竜司でも、足場が悪ければ力は半減してしまう。浅川は山側に回 からだ って仰向けにひっくりかえった。そして、両手を柱にそえて身体を固定し、両足で蓋を押 した。コンクリ ートと石がこすれて、耳障りな音が響いた。浅川と竜司は声を掛け合って リズミカルに互いの力を一致させた。蓋が動いた。井戸のロが顔を出すのは何年ぶりだろ う。井戸が閉ざされたのは、ビラ・ロッグキャビンが建てられた時か、南箱根パシフィッ クランドが造られた時か、あるいは結核療養所の時代か : コンクリートと石の密着の 具合から、あるいは、引き離されるときの嘆きにも似たきしみ音から、井戸が口を閉ざし ていた期間を推し量る他ない。半年とか二年という歳月ではなさそうだ。最長なら二十五 すきま 年間。とにかく、今ようやく井戸はロを開きかけた。竜司は、できた隙間にスコップを差 し込んでグリグリと押してみる。 「いいか、オレが合図したら、スコップの柄に体重をかけろ」 浅川は身体の向きを変えた。 ふた

5. リング

265 分だけ助かろうとしているのではないかと : 「おい、くだらねえこと考えてんじゃねえそ竜司は笑った。「第一な、もし、本気で山 村貞子の恨みをかったとしたら、長尾なんてもうとっくに死んでいるよ」 確かにそれだけの力を彼女は持っている。 「じゃあ、なぜ、山村貞子はむざむざ長尾に殺された ? 」 「なんともいえねえ。ただな、彼女の回りでは身近な人間の死と挫折がひしめいていたも んな。劇団からプイといなくなっちまったのも、ようするに挫折じゃねえのか。高原の結 核療養所に父を見舞い、そこで父の死が近いことを知ってしまったしよお : ってわけか 「現世を悲観する人間は、殺した人間に対して恨みを抱かない : 「いや、というよりも、山村貞子自身が、長尾のおっさんをその気にさせた : とも考えられるだろ。つまり、長尾の手を借りた自殺かもしれねえってことさ 三原山の噴火口に飛び込んだ母、肺結核で残り少ない命の父、女優への夢とその挫折、 生まれながらの肉体的 ( ンデ : : : 、数えあげればきりがないほど自殺の動機はある。実際、 つじつま グ自殺と考えないと辻褄が合わなくなることがあった。吉野が送ってきたレポートに登場す ひしよう ン を襲い、その翌日心 る劇団飛翔の創立者の重森は、酒に酔った勢いで山村貞子のアパート 臓麻痺で死んでしまう。山村貞子がある特殊な能力を使って重森を殺したことはほ・ほ間違 いない。貞子にはそれだけの力があった。男のひとりやふたり、なんの証拠も残さず簡単 に殺してしまう力。なら、どうして長尾は生きていられる ? 長尾の意思に働きかけての ぎせつ

6. リング

176 封状態のままで送り返してもらう方法であゑこれならば、相手が遠隔地にいても能力を 試すことができる。しかも、念写能力というのはかなり基本的な力であって、この能力を 持つ者は同時に予知あるいは透視能力を持っことが多い。一九五六年、三浦博士は出版社 や新聞社にいる教え子たちの力を借りて、全国から広く能力者を募集し始めた。教え子た うわさ ちはネットワークを張り巡らし、能力のありそうな人間の噂を聞きつけると、それを三浦 博士に報告した。しかし、送り返された封書を調べても、確かに能力ありと思われたのは 全体の約一割に過ぎず、ほとんどのフィルムは封をじようずに切って擦り替えられていた。 明らかにトリックとわかるものはその場で破り捨て、どちらとも疑わしいものはなるべく 保管することにしたのだが、その結果ご覧の通り収拾のつかない程のコレクションが出来 上がってしまった。その後、マスメディアの発達と教え子の数の増加により、このネット ワークはより完備され、データの数は年を追うごとに増え、博士の亡くなる年まで続いた のだ。 「なるほどね : : : 」浅川はつぶやいた。「このコレクションの意味はわかった。でも、こ の中にオレたちが追っている人間の名前があると、どうしてわかるんだい ? 」 「確実にこの中にあるとは言ってないぜ。ただ、可能性として極めて強いってだけだ。い やっ いか、あれだけのことをした奴なんだ、おまえだってわかるだろ、念写のできる奴はまあ 実際何人かいるだろう。しかしなあ、なんの装置も使わず。フラウン管に映像を送り込める 超能力者はそうザラにはいねえ。超ド級の力だ。それたけの能力者となると、普通に生活

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311 リング 「いくらわたしが呼んでも、先生、返事してくれなくて : : : 」 浅川は舞に泣く暇を与えなかった。 「その時、部屋の様子で何か変わったところは ? 」 舞は首を横に振った。 : ただ、受話器がフックからはずれて耳障りな音を出していました」 : 。なんのために ? 浅川はもう一 竜司は死の瞬間、舞のところに電話をかけていた : ・ 度念を押した。 「本当に竜司君はあなたに何も言い残してないんですね ? たとえば、ビデオテープのこ ととか : 「ビデオ ? 舞は、先生の死とビデオと一体どんな関係があるのとばかり顔をしかめた。死の直前に なって、竜司がオマジナイの真の意味を解き明かしたかどうか、浅川には知りようがなか 果たして、竜司はなぜ高野舞に電話をかけたのだろうか。あいつは、自分の死が近 : 。ただ単に、死ぬ前に愛す いことを知って、彼女のもとに電話したに違いないのだが : る者の声を聞きたかったっていうのか。こうは考えられないか、竜司はオマジナイの謎を 解き明かし、それを実行するために高野舞の力を借りようとした。だから、彼女のもとに 電話を入れた。つまり、オマジナイを実行するには第三者の力が必要となる。

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寄ったりであった。カップルでここを利用した連中は、その思い出を多少あてつけ気味に、 おも そうでなかった連中は相手が欲しいよという想いを、ノートにぶつけている。 しかし、読んでいて退屈はしない。時計の針はようやく九時を回った。 そして、次のページ。 八月三十日木曜日 ごくつ。警告。度胸のない奴は、コレを見るべからず。後悔するよ。ヘッヘッへ。 たったそれだけである。八月三十日というのは、四人が泊まった翌朝。・—・という イニシャルは岩田秀一と思われる。彼が書いたページだけは、他のものと違っている。ど いったん ういうことなのだろう。コレを見るべからず ? コレ、とは一体何だ ? 浅川は一旦 / ー すきま トを閉じて、横から見た。小さな隙間ができている。浅川はそこに指を入れ、ページを開 : ごくつ。警告。度胸のなし々を 、又ま、コレを見るべからず。後悔するよ。ヘッヘッ へ。・—・という文字が目に飛び込む。なぜ、このページに自ら開こうとする力がある のだ ? 浅川は考えた。おそらく、あの四人はページを開き、その上に何かを乗せておい たのだ。その重しのせいで、このページは開こうとする力を今だに維持している。そして、 ここに乗せたモノは、コレを見るべからず、の「コレ」とイコールで結ばれるに違いない。 やっ

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262 抱かせないほう力いいのだ。 「事件のほう、もうかたづきそうなの ? 「そろそろねー 「約束よ、すべて終わったら、最初から順を追って話してくれるって : : : 」 妻との約束。一切、この件に関して質問するな、そのかわり一段落したら全部話してあ げるよ。妻は忠実に約束を守っていた。 おい、いつまで話してやがる」 後ろから、竜司の声がした。振り返ると、彼はトランクを開けて購入した道具を放り込 むところであった。 「また電話するよ。今晩はもうできないかもしれない 浅川はフックに手をかけた。押せば、電話は切れてしまう。なんのために電話をかけた のかわからなかった。ただ声を聞くためなのか、それとももっと重要なことを伝えるため なのか。しかし、今仮に、延々と一時間会話したとしても、電話を切る時になれば、言い たいことの半分も伝えてないなあというもどかしさが強く残るに違いな、。結局同じこと なんだ。浅川はフックに指を乗せ、力を抜いた。とにかく、今晩の十時にはすべて決着が つく。今晩の、十時には : あや こうやって昼のさ中に上ると、以前来た夜の妖しげなムードは日差しに隠れ、南箱根。ハ

10. リング

172 三浦哲三記念館は高校生の団体を引きつけるための格好のエサとなっていたのだ。 「ところで : : : 」 竜司は、居ずまいを正して話の核心に導こうとした。 「あ、どうもすみません。ついペラベラと余計なことを : ところで、どういったご用 件で ? こうして見る限り、哲明には科学者としての才能はないように見受けられる。相手の出 けいべっ 方次第で態度をコロコロ変える商人が似合ってるぜと、竜司は横顔に軽蔑の色を浮かべる のだった。 「実は、我々はある人物を捜してます 「だれですフ 「いえ、その名前を知るために、私はここに来たのです 「はあ、どういうことなのか : どう、も、よく : : : 」 哲明は困ったように顔をしかめ、順序だてて話してくれるようそれとなく促した。 「その人物が現在生きているのか、それとももう死んでしまったのか、まだなんとも言え ません。しかし、明らかに常人にはない力を秘めていますー そこで竜司は一呼吸置き、哲明を見据えた。哲明は常人にはない力が何を意味するか、 すぐにわかったらしい。「三浦先生はおそらくこの分野にかけては日本一の収集家です。 以前先生から、独自に張り巡らせたネットワークによって日本中に居る超能力者をリスト