四人 - みる会図書館


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1. リング

然、大石智子と岩田秀一も恋人どうしではないかという疑問も出てくるが、いくら調べて もそれを裏づける事実は出てこない。ひょっとしたら、大石智子と岩田秀一は一面識もな いかもしれない。とすると、この四人をつなぐ糸は一体どこにあるのか。正体不明の存在 がアトランダムに犠牲者をつまみ上げたにしては、四人の関係はあまりに親し過ぎる。た とえば、この四人は他の人間が知らない秘密を持っていて、その秘密のせいで殺されたと か : : : 。浅川は、もう少し科学的に考えた。四人は、ある時同時に、ある場所にいて、心 臓を冒すウイルスに感染した。 ・ : おいおい 浅川は歩きながら首を振った。 ・ : 急性心不全を起こさせるようなウイルスなんてあるのかよ。 ウイルス、ウイルスと、浅川は階段を上りながら一一度つぶやいた。そして、やはりまず 第一に科学的な説明を試みることが先決ではないかと思い直す。ここで、急激な心臓発作 い ) 、ら - 、刀 を生じさせるウイルスの存在を仮定したとしよう。超自然の力を仮定するより、 現実的であり、他人に話して笑われる心配も少ないように思われゑ現在まだ地球上で発 見されていないにしても、隕石の内部に閉じ込められてごく最近宇宙から飛来したとも限 らない。あるいは、細菌兵器として開発されたものが漏れた可能性もないとはいえない。 そうだ。まず、これをウイルスの一種と考えることにしてみよう。もちろん、そうするこ きようがく とによって全ての疑問点に答えられるものでもないが。四人が四人とも驚愕の表情を浮か いんせき

2. リング

111 たのか。それとも、単に、オマジナイを実行しなかったから殺されたのか。いや、それ以 こ、オマジナイを消してしまったのが本当に例の四人かどうか、その確認が必要だ。ひ よっとして、四人が見た時もう既にオマジナイが消されていたってこともある」 「確認するっていっても、どうやって ? 四人に聞くことはできないぜ」 浅川は冷蔵庫からビールを取り出し、グラスについで竜司の前に置いた。 「まあ、見てみろや」 竜司はビデオのラストを再生し、オマジナイを消している蚊取り線香のの終わる瞬 ねら 間を狙って一時停止させ、ゆっくりとコマ送りをしていった。行き過ぎ、戻し、また停止、 。すると、ほんの一瞬、テーブルを囲んで座る三人の人間のシーンが現れた。 コマ送り : すんでの所で、 0 のはさまれた番組のシーンが引っ掛かっていたのだ。その番組は夜十 一時から放送される全国ネットのナイトショウで、三人のうちのひとりはだれもが知って いる白髪の流行作家、ひとりは若く美しい女性、そしてもうひとりは関西を中心に活躍す る若手落語家であった。浅川は画面に顔を近づけた。 グ「おまえ、この番組知ってるだろ」 ン 竜司が聞いた。 「 Z で放送中のナイトショウだ」 「だろ ? 流行作家は司会者、女はアシスタント、でもって、落語家はこの日のゲストっ てわけだ。だからよ、この落語家をゲストに迎えた日がいつなのかわかれば、四人がオマ

3. リング

130 「ふたつございました」 「メーカ 1 名とテープの種類が記されているはずですが : : : 」 「えーと、ひとつは、パナビジョン ?-« 12 0 。もうひとつは、フジテックス 浅川の手にあるビデオテープとまったく同じ名称である。フジテックスのビデオテープ は無数に売られているはずだから、これで確証を得たとは言い難い。しかし、一歩近づい たことだけは確かだ。この悪魔のテープは、もとはと一一一一口えば小学校六年生の男の子が持ち 込んだもの。どうだろう、そう考えてほぼ間違いないのではないか。浅川は丁寧にお礼を 述べて受話器を置いた。 八月一一十六日、四人が宿泊する三日前の日曜日の夜八時から、ー 4 号棟のビデオデッ キは録画状態になっていたのだ。そして、忘れたまま金子一家は帰ってしまう。次にやっ て来たのは、例の四人。その日もやはり雨が降っていた。ビデオでも見ようかと操作する と、中にはテープが入ったまま、なんの気なしに見てみる。わけのわからない不気味な内 のろ 容。しかも、ラストにある脅し文句。四人は悪天候を呪うあまり、たちの悪いイタズラを 考えついた。死の運命から逃れる方法を消した上で、次に泊まるグルー。フに見せて脅して やれ。もちろん、内容を信じていたわけではない。もし信じていたら、恐くてイタズラな んてできるはずがない。果たして四人は死の瞬間、このテープの内容を思い出しただろう か。それとも、そんな暇もなく死神に連れ去られたか。他人事ではない。浅川はぶるっと

4. リング

べて死んでいたのはなぜか、辻遥子と能美武彦が狭い車の中で、互いに相手から離れるよ うにして死んでいたのはなぜか。検死の結果何も発見できなかったのはなぜか。もし、細 菌兵器が漏れ出たとすれば三番目の疑問には容易に答えることができる。その筋からの箝 こうれい ロ令が敷かれたのだ。 さて、この仮定のもとに論を進めると、被害者がこれ以上現れないという事実からも、 このウイルスが空気感染をしないということは明らかである。ェイズのように血液感染す るモノなのか、あるいは極めて感染しにくいモノなのか。そして、もっとも肝心なのは、 四人はソレを一体どこで拾ったのかということ。八月から九月にかけての四人の行動をも ふさ う一度洗い直し、共通する時間と場所を探り出さなければならない。当事者のロが塞がれ た今となっては、そう簡単に発見することはできないだろう。四人だけの秘密として、両 親や友人のだれ一人知らないことであれば探りようがない。しかし、必ず、この四人はあ る時、ある場所で、あるモノを共有したはずである。 いったん 浅川はワープロの前に座ると、正体不明のウイルスを一旦頭から払い退けた。今取材し 。記事は今日 グたばかりのノートを取り出し、カセットテープの内容を素早くまとめていく ン中に完成しなければならない。明日の日曜日は妻の静とともに義姉の大石良美宅を訪ねる ことになっていた。智子が死んだ場所を実際に目で確かめ、雰囲気がまだ残っていればそ れを肌で感じたかった。ひとり娘を亡くしたばかりの姉を慰める意味もあって静は本牧に 行くことに同意したが、 , 彼女はもちろん夫の真意を知らない。 かん

5. リング

浅川は、仕事の合間を縫って死亡した四人の若者の身辺を探ろうとしたが、仕事に追わ れてなかなか思うようにはかどらなかった。そうこうするうちに一週間が過ぎて月も改ま り、雨の降り続いた八月の蒸し暑さも、夏を取り戻したような九月の炎暑も、深まりゆく 秋の気配に押し流されるように過去の記憶となっていった。ここしばらく何も起こっては いない。あれ以来、新聞の社会面には隅々まで目を通すようにしているが、類似した事件 には出合わない。それとも、浅川の目に触れないところで、恐ろしい何かが着々と進行し ているのだろうか。ただ、時がたつほどに、四人の死は単なる偶然であって、なんの関連 グ性もないのかもしれないと思うことが多くなった。吉野にもあれ以来会ってはいない。彼 ンも、もう忘れてしまったのだろう。覚えていれば、浅川に連絡をとってくるはずである。 浅川は、事件への情熱が遠のくといつも、四枚のカードをポケットから取り出し、偶然 であるはずがないという思いを新たにすゑカードの上には名前や住所等の必要事項が記 入され、その下の空白には八月から九月にかけての四人の行動、あるいは生い立ちなど、 「いいよ。でも、おまえ、約束、忘れるなよ」 浅川が笑いながらうなずくのを見て、吉野は立ち上がった。そのひょうしに、テープル が揺れてコーヒーが受け皿にこぼれた。吉野はコーヒーカップに一度も口をつけていなか

6. リング

186 わめ せて、『幽霊を見た ! 』って大声で喚きやがった。トイレのドアを開けようとしたら、流 しの横のごみ箱の影に小さな女の子の泣き顔を見たんだとよ。その場にいたオレ以外の十 人はどんな反応をしたと思う ? 「半分信じて、半分は笑った、そんなところじゃないか。 竜司は首をふる。 「怪奇映画とかテレビの世界だとそうなる。最初は皆信じなくて、そのうち一人一人怪物 というパターンだ。しかしなあ、現実は違う。だれひとり例外なく、彼 に襲われて・ : とんなグループ の話を信じたんだ。十人ともな。十人が特別に弱虫だったからじゃない。・ で実験しても、同じ結果が出るに決まってる。根源的な恐怖心、こいつは人間の本能の中 に組み込まれてる 「例の四人がビデオを信じなかったのはおかしい、そう言いたいのか ? 」 竜司の話を聞くうちに、浅川はふと鬼の面を見て泣き出した娘の顔を思い出していた。 そして、あの時の当惑、な・せ、鬼の面が恐いってことをこの子は「知ってーいるのか。 「うーん、いや、あの映像はストーリー性もないし、見ただけではそれほど恐いものでは ない。だから、信じないこともあるだろう。しかし、あの四人はなんとなく心に引っ掛か らなかっただろうか。どうだ、おまえなら、オマジナイを実行すれば、死の運命から逃れ られる、としたら、たとえ信じなくとも実行してみようかという気にならないか。第一 やっ ひとりくらい抜け駆けする奴がいてもおかしくない。その場は他の三人の手前強気を装っ

7. リング

してそうするのか、偶然が導くのかは知らないが、足元にぼっかりと穴が開いたような底 なしの恐怖を人に与えることができるのだ、とぼくは考えを変えざるをえなかった。それ ほどまでに、『リング』という物語は恐い物語だったのである。 実際の話、『リング』を読み終わったのは梅雨のまっ盛りの午後十時過ぎだったのだが そのときのことは、いまだによく覚えているーーーぼくは、一人で部屋にいることに耐 えられなくて、新宿までタクシーを飛ばして仲間がたむろする飲み屋へ駆けつけた。一人 でいることがなんだか無性に恐く、一人でトイレヘ行くのが怖くてしかたのなかった子供 の時のように、他人のぬくもりを求めてしまったのだ。そう、理性ではなく本能を直撃す るような恐さが、『リング』にはあったのだ。こんなこと、恥ずかしながら、初めての体 験だっこ。 それほどまでの恐怖を、『リング』よ、 をしかにしてぼくに与えたのか ? それはひとえに、 鈴木光司が生みだした、新しいモンスターのせいである。そのモンスターは、活字の合間 から姿を現すやいなや、たちまちのうちに・ほくの理性を食い破り、長いこと忘れていた恐 怖の謝罘を暗示してい 0 たのだ。 物語の発端は、四人の少年少女たちのの突然死にはじまゑ四人とも、同じ日の同じ 時刻に申し合わせたように心不全で死ぬ。死んだ少女の父に当たる主人公が原因を調べ はじめ、見た人間の一週間後の死を予告する恐怖の ( まさしく恐怖の ! ) ヴィデオ・テー プを見てしまう。そのテープの末尾には死を回避するための方法が描かれているはずなの

8. リング

それ以外、一体なんと言ったらいいのか。意味不明なシーンの連続、しかし、たったひ とつだけ理解できたのは、コレを見た者はちょうど一週間後に死ぬということ。そして、 それを避ける方法が記されている個所が、テレビのによって消されてしまっているこ と。 : だれが消したんだ ? この四人かフ 顎ががくがくと震えた。もし、四人の若者たちが同時刻に死んだことを知らなければ、 こんな馬鹿なことがと笑い飛ばすことができただろう。ところが、彼は知っている、言葉 通り、四人が謎の死を遂げたことを。 その時、電話が鳴った。浅川はその音に心臓が飛び出す思いであった。受話器を取って 耳にあてる。ナニモノかが身をひそめ、じっと闇の中でこちらをうかがっている気配がす る。 「 : : : もしもし」 浅川は、震える声でやっとそれだけ言った。返事はない。暗く狭い場所で、なにかが渦 グを巻いている。地鳴りに似たゴーツという低い音と、湿った土の匂いがあった。耳もとに ン伝わる冷気に、うなじのあたりが総毛立つのがわかる。胸への圧迫は強くなり、地中深く おも 逾い回る虫が足首や背中にくねくねとまとわりついてくすぐっている。言うに言われぬ想 いと、時をかけて熟成した憎しみが、受話器の中を伝ってすぐそこにまで上ってきた。浅 川はがしゃんと受話器をたたきつけた。ロもとを押さえながら、トイレに走る。背筋を走 あご

9. リング

できなかった。見つめているうちに、イメージが形となって現れそうでしかたない。 外から冷たい風が強く吹き込んだ。窓を閉め、カーテンを引こうとして、チラッと外の 闇に目をやる。すぐ前にはー 5 号棟の屋根があり、その影になっている部分が一際濃い 闇を作っていた。テニスコートにも、レストランにも、人は大勢いた。なのに、なぜか、 ここには、浅川ひとりだった。カーテンを引き、時計を見る。八時五十六分。この部屋に 入ってまだ三十分もたってなかった。ゅうに一時間が過ぎたように感じる。ここに居るこ とが、そのまま、危険につながるわけではない。なるべくそう考えて、気持ちを落ち着け た。というのも、ビラ・ロッグキャビンができてもう半年、ー 4 号棟に泊まった客の数 もかなりの人数に上るはずであった。ところが、泊まった人間が皆、変死しているわけで はない。今までの調べでは、死んだのはあの四人だけ。時間をかけて調べればもっと出て くるかもしれないが、△フのところ他には見当らなかった。ようするに、ここにいることが ここで何をしたのか、である。 問題なのではない。 : 彼らは、ここで一体、何をしたのだ ? グ浅川は微妙に質問の仕方を変えた。 いや、この部屋でできることは何だ ? トイレにも、浴室にも、押し入れにも、冷蔵庫にも、手がかりらしきものはない。仮に あったとしても、さっきの管理人が片付けてしまっただろう。とすれば、こんなところで のんびりウイスキーなど飲んでいるより、管理人にあたったほうが早くはないか。

10. リング

110 「子供の遊びじゃねえのか 「ガキの頃、よくこんなことしなかったか ? 恐い絵かなにかを見せて、コレを見た者は 不幸になるとか言って友達を脅すャツ。あるいは不幸の手紙とかよお」 もちろん、浅川にも経験があった。夏の夜に聞かされた怪談にも、似た。ハターンのもの があった。 「だから ? 「いや、別に。ただ、ちょっと、そんなふうに感じただけだ」 「他に何か気付いたことがあったら言ってくれ」 「そうだな、映像自体はそれほど恐いものじゃねえな。現実的なものと、抽象的なものと が混ざり合っているように見える。もし、四人の男女がこの言葉通りに死んでしまったっ て事実がなければ、〈ンこんなモンと鼻であしらうことができる。そうだろ ? 」 浅川はうなずいた。どうしようもなくやっかいなのは、ビデオの言葉が嘘でないことを 知っていることである。 「まず、第一に、四人の馬鹿がなぜ死んでしまったか、その理由を考えてみよう。ふたっ 考えられるだろ。ビデオのラストで『これを見た者全ては死ぬ運命にあり』と言い、その 後すぐオマジナイ : 、おい、これから、死の運命から逃れる方法のこと、オマジナイと 呼ぶことにしようぜ。さて、四人はそのオマジナイの部分を消してしまったから、殺され