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検索対象: 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡
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1. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

枕草子 330 かたの ひさしま ようのが、すばらしかろうそ。いかにも、交野の少将を非 に、ただ「あらずとも」と書いてあるのを、廂の間に差し 難した落窪の少将などは、雨夜に女を訪うて、足を洗って入れてあるのを、月の光に当てて見たのこそおもしろかっ いるのは、不愉快だ。汚いことだった。交野は馬のムクル た。雨が降るような折には、そんなふうにはできようか ニもおもしろい。しかしそれも、昨夜、一昨夜、つづけて 二七二常に文おこする人 通って来ていたのだからこそおもしろいのだった。そうで きぬぎぬ なん ちぎ なくては、雨の夜が何だっておもしろかろう。 いつも後朝の手紙をよこす人が、「何であなたと契りを あれもよう 風などが吹いて、荒模様の夜に、男が通って来ているの かわしたのだろう。今はもう言ってもどうしようもない おとさた は、頼りになる感じで、きっとおもしろくもあろう。 今はもう」などと言って帰って、翌日音沙汰もないので、 のうし めしつかい 雪の夜こそすばらしい。直衣などは言うまでもなく、狩とは言いながら、夜がすっかり明けてみると、召使の差し ぎめ、、、くろうど 衣やウへノ蔵人の青色の袍が、とても冷たく濡れていよう出す手紙の見えないことこそ物足りない感じがすることだ、 けじめ のは、たいへんおもしろ、こ違、よ、 しし、しオし。たとい六位の着る と思って、「それにしてもまあ、きつばりと区別のついた ろうそう 緑衫の袍であっても、雪にさえ濡れてしまうなら、不愉快あの人の心だったことよ」などと言って、日をおくってし なものではあるまい。昔の蔵人などが、女のもとなどに青まった。 ひなか 色の袍を着て、雨に濡れて来て、それをしばりなどしたと その翌日、雨がひどく降る日中まで音沙汰もないので、 かという話だ。今は昼でさえ着ないようである。ただ緑衫 「あの人はすっかり思いきってしまったのだった」などと えふ はしぢか かさ わらわ をばかりこそ引っかぶっているようだ。 , 衛府の役人などの 言って、端近の所に座っていたタ暮に、傘をさしている童 着ているのは、ましてとてもおもしろかったものだのに。 が手紙を持って来ているのを、いつもよりも急いであけて 雨の夜にやって来るのを、こうわたしが非難するのを聞見ると、「水増す雨の」と書いてあるよ。たいへんたくさ いたからとて、雨の夜に歩かない男があろうはすはなかろ ん何首も何首も詠んだ歌よりは、おもしろい くれないぞめ う。だが、月のとても明るい夜、紅染の紙の非常に赤いの かよ おちくば と

2. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

話の種として笑う。この女は容姿も格別のこともない。兵れは、権の中将でこそあるようだ。「これはいったい何事 をこうは話すのでしよう」と言って、ただひそかに笑うの 部といって軽快なおもしろさの方面などもほとんど持ち合 あかっき をも、あちらではどうして知ろうか。権の中将は暁まで座 せないこの女が、そうはいうもののやはりいつばし人など 子 り明かして帰った。「この中将の君は、たいへんけしから に仲間入りしたい気持などがあるのは、中宮様あたりにお 草 かせられては、「見苦しい」などと仰せになるけれど、意んお人だった。あらためておいでになろう時には、ロをき 枕 くまい。いったい何事を、あんなに語り明かすのか」など 地悪く、それを知って当人に告げる人もない。 ひとま と笑っていると、引戸をあけて、兵部は入って来た。 一条院、それのお造りになってある一間の所には、気に 一一び ) し ひがしみかど その翌朝、いつもの小廂で、人が話をしているのを聞く くわない人は絶対に寄せつけず、東の御門にじっと向って、 - 一びさし と、「雨のひどく降る日にやって来ている人は、とても身 しゃれた小廂に式部のおとどとわたしは一緒に、夜も昼も しゅじよう ものみ にしみて感じられる。日ごろ、はっきりしなくて気がかり いるので、主上もいつも物見をあそばしにここへお出まし で、相手の薄情に苦しむことがあるとしても、そんなふう あそばす。「今晩はみな中で寝よう」と言って、南の廂の ふたり にして濡れてやって来ているのならば、つらいこともすっ 間に二人寝てしまったあとで、ひどく一尸をたたく人がある かり忘れてしまうに違いない」とは、どうしてそんなふう ので、「面倒だわ」などと、二人とも同じように言って、 に言うのであろうか。そうではあろうが、今朝までの夜、 寝ているようなふりをしていると、やはりやかましく呼ぶ きのう おとと そらね のを、中宮様も「あれを起せ。空寝であろう」と仰せられ更に昨日の夜も、一昨日の夜も、そのまた前日の夜も、す ひんばん ひょうぶ たので、この兵部がわたしたちを起すけれど、寝ている様べてこのごろは頻繁に見える男が、今夜もひどかろう雨に ひとばん めげないでやって来ていよう場合は、その男は一晩も隔て 子なので、「いっこうにお起きにならないのでした」と、 ないようにしようと思うのであるようだと、女もしみじみ その戸をたたいた人のもとに言いには行ったのが、そのま とわたしは思 , つ。ところ と身にしみて感じるに違いない、 まそこに座り込んで話をしているのである。それもしばら が、そういうふうにして日ごろも見えないで、女は不安に くの間のことかと思うと、夜がひどく更けてしまった。そ ま たね ふ ひさし ひょう ごん ひきど

3. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

ずいじんをさかりぎめなふけさ ずほう 暑げなるもの随身の長の狩衣。衲の袈裟。出居の少将。いみじく肥えたるをいう。ただし修法をする僧をさ す例があり、ここも学位とは関係 につちゅうじおこ あざり なく称したものか 人の髪おほかる。六七月の修法の、日中の時行なふ阿闍梨。 一〈こちら ( 自分 ) に不足な点があ ることを意識して気おくれを感じ 一二八はづかしきもの るもの。気がおけるもの。 一九目がさめやすい夜居の僧。夜 よゐ はづかしきもの男の心のうち。いさとき夜居の僧。みそか盗人、さるべき居の僧は貴人の家に伺候して終夜 加持を行う僧。 隈に隠れゐて、いかに見るらむ、たれかは知らむ。暗きまぎれに、しのびやかニ 0 「みそか盗人ーで一語。こそど ろ。 三 - - 隠れるのに都合のよい物陰。 に物取る人もあらむかし。それは、同じ心に、をかしとや思ふらむ。 一三宮廷内の共同生活では、現在 夜居の僧は、、 しとはづかしきものなり。若き人々のあつまりては、人の上をの寄宿舎のように紛失事件など多 かったことを示す好例といわれる。 ニ三「らむ」は、盗人がひそんで見 言ひ、笑ひそしり、にくみもするを、つくづくと聞きあつむるもはづかし。 ている時点で現在として推量した 「あなうたて。かしがまし」など、御前近き人々の物けしきばみ言ふを聞き入もの。その場で思っているだろう。 ニ四静かにじっと。夜居の僧の詰 のち 所と女房のいる場所は隣り合って 暇れず、言ひ言ひの果ては、うち解けて寝ぬる後もはづかし。 いるので聞えるのである。 いささか腹を立ててとがめる。 男は、「うたて思ふさまならず、もどかしう、心づきなき事あり」と見れど、 ニ六以下、男性一般に対する論。 第ニ七むか なさ さし向ひたる人をすかしたのむるこそはづかしけれ。まして情けあり、好まし毛面と向っている女性をだまし てご機嫌を取って。 き人に知られたるなどは、おろかなりと思ふべくももてなさすかし。心のうち = ^ 冷淡な男だと女が思うように。 をと , ) あっ ずほふ 一九 ニ四 いでゐ めすびとニ一 この うへ

4. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

ふえ せい・一う 来などするはずがあろうか。しかし、生まじめな性向の人時などは、ましてたいへんおもしろい。客が笛などを吹い て帰って行ってしまったのに、自分は、急にも寝られず、 は、「夜が更けてしまった。御門も不用心のようです」と 言って帰って行く人もある。ほんとうにこちらに対する志人のうわさ話などもし、歌など話したり聞いたりするまま に、寝入ってしまうのこそおもしろい が特別な人は、「早くお帰りください」などと何度も追い 払われると、それでもやはり座ったままで夜を明かすので、 一七九雪のいと高くはあらで 門番はたびたび見てまわるのに、夜が明けてしまいそうな 雪がたいして深くはなくて、うっすらと降っているのな 様子を、異常なことに思って、「たいへん大事な御門を、 どは、たいへんおもしろい 今晩はライサウとあけひろげて」と客のお耳にはいるよう いまキ一ら また、雪がとても深く降り積っているタ暮時から、部屋 に申しあげて、今更そうしてもはじまらないことながら ひおけ はしぢか あかっき の端近な所で、気の合った人が二、三人ぐらい、火桶を中 暁になってからしめるようである。その態度はどんなに にすえて、話などをするうちに、暗くなってしまったので、 にくらしいことか。でも、親が一緒に住んでいる人の場合 こちらには火もともさないのに、あたりいったい雪の光が、 は、やはりこういうふうなものなのだ。まして、ほんとう ひばしはい かよ とても白く見えているなかで、火箸で灰などをわけもなく の親でない人は、女のもとに通って来る男の客のことをど おとこきようだい んなに思っているだろうとまで遠慮されて。男兄弟の家な掻きながら、しんみりした事もおもしろい事も、話し合う のこそおもしろい 段ども、愛想がない間柄の場合では、同様であろう。 宵も過ぎてしまっているだろうと思うころに、沓の音が 夜中、暁を問わず、門はたいして気をつけてきびしくし めるというのでもなく、何の宮様、宮中、あるいは殿たち近く聞えるので、変だなと思って外を見ていると、時々、 やしき 第 こうした折に、思いがけなく現れる人なのだった。「今日 のお邸にお仕えする女房たちが応対に出て、格子なども上 なん げたままで、冬の夜を座り明かして、客が退出したあとも、の雪をどう御覧になるかとお思い申しあげながら、何とい さまた ありあけ うこともないことで、お伺いすることが妨げられて、その 部屋の中から見送っているのこそおもしろい。有明の月の ふ くっ

5. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

一清少納言の歌。『後拾遺集』雑 「夜をこめて鳥のそら音ははかるとも世に逢坂の関はゆるさじ -4 二。「夜をこめて」は、夜を明け方 せきもり 近くにまで籠らせて、夜の明けぬ 心かしこき関守侍るめれ」と聞ゅ。立ち返り、 子 うちに、の意。下句は私はあなた にだまされて逢うことを許すよう 草逢坂は人越えやすき関なれば鳥も鳴かぬにあけて待っとか なことはしないつもりだ、の意。 ふみ かんこくかん 枕 ニ函谷関とは違って利ロな関守 とありし文どもを、はじめのは、僧都の君の額をさへつきて取りたまひてき。 六 がここにはおり - ます . よ , つです・。 おまへ のちのち 三実際はあなたは容易に人に逢 後々のは、御前は、「さて逢坂の歌はよみへされて、返事もせずなりにたる、 , っとい , つ、つわさです - よ、とからか った。逢坂の関は『文徳実録』天安 いとわろし」と笑はせたまふ。 元年 ( 八毛 ) の条にすでに旧関のた てんじゃうびと さて、「その文は、殿上人みな見てしは」とのたまへば、「まことにおばしけめ出入り自由になって久しいとあ る。 りとは、これにてこそ知りぬれ。めでたき事など、人の言ひ伝へぬは、かひな四行成の「後のあしたは」の手紙。 五定子の弟隆円。能書の行成の きわざぞかし。また、見苦しければ、御文はいみじく隠して、人につゆ見せは手紙であるから人気があった。 六「孟嘗君の」と「逢坂は」の手紙。 べらぬ心ざしのほどをくらぶるに、ひとしうこそは」と一一 = ロへば、「かう物思ひ七詠み口によって圧倒されて。 〈行成が。 一ぐま 九私の手紙を人に見せたこと。 知りて言ふこそ、なほ人々には似ず思へ」と、「『思ひ隈なく、あしうしたり』 一 0 私のはすばらしいので人にお 見せになったのでしよう、の意で、 など、例の女のやうに言はむとこそ思ひつるに」とて、いみじう笑ひたまふ。 下手な歌を人に見せた思いやりの なさからみて、本当は私のことな 「こはなぞ。よろこびをこそ聞えめ」など言ふ。「まろが文を隠したまひける、 ど思ってくださらないことがわか りました、という裏の意があろう。 。、かに、い憂くつらからまし。今よりもさをたのみ また、なほうれしき事なり 五 そうづ ぬか かへり′ ) と

6. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

中納言の君の、忌の日とて、くすしがり行なひたまひしを、「給べ、その数一中宮付きの女房。二五六段に ただ一み 「右兵衛督忠君と聞えけるが御む 六 珠しばし。行なひてめでたき身にならむと借る」とて、あつまりて笑へど、なすめ」とある「中納言の君」と同人 子 ほとけ ほいとこそめでたけれ。御前に聞しめして、「仏になりたらむこそ、これよりニ親族の命日。 三奇特な態度で。 枕 四関白の言葉。一説、女房。ま はまさらめ」とて、ゑませたまへるに、まためでたくなりてそ見まゐらする。 た一説、作者。いずれをとるかに 大夫殿のゐさせたまへるを、かへすがヘす聞ゆれば、「例の思ふ人」と笑はせよって以下の解釈も変ってくる。 仮に関白の冗談とみる。 のち たまふ。まして後の御ありさま見たてまつらせたまはましかば、ことわりとお五「とて」を仮に「ということな ので」の意として下文に続けた。 六関白以上の身分はないから。 ばしめされなまし。 セ仏になったら関白以上の身分 となることをさす。 ^ 「思ふ」対象は道長。一説、道 一三三九月ばかり夜一夜降り明かしたる雨の 隆。ひいきの人。 九道長は、長徳元年 ( 究五 ) 四月 あ 九月ばかり夜一夜降り明かしたる雨の、今朝はやみて、朝日のはなやかにさ十日に道隆、五月八日に道兼の二 人の兄が没すると、五月十一日に せんぎい せんじ こうむ 内覧の宣旨を蒙り、六月右大臣、 したるに、前栽の菊の露こばるばかり濡れかかりたるも、いとをかし。透垣、 以後左大臣、太政大臣、摂政、と くもす すすき らんもむ、薄などの上にかいたる蜘蛛の巣のこばれ残りて、所々に糸も絶えざ栄達を極めた。 一 0 「ましかば・ : まし」は仮定。長 まに雨のかかりたるが白きを、玉をつらぬきたるやうなるこそ、いみじうあは保二年 ( 一 000 ) 定子没後の執筆であ ることを一小す。 = 庭先の植込みの草木。 れにをかしけれ。 ず よひとよ うへ きこ 四 た すいがい

7. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

よべ ば、憂き事もみな忘れぬべし」とは、などて言ふにかあらむ。さらむを、昨夜、一そうではあろうが。以下兵部 の、雨の日に来た人はしみじみと 1 きのふ をととひ 昨日の夜も一昨日の夜も、それがあなたの夜も、すべてこのごろは、うちしき感じられる、という言に反論する。 ニ今朝、明ける前の夜、とみる。 子 ひとよ こよひ り見ゆる人の、今宵もいみじからむ雨にさはらで来たらむは、一夜もへだてじ三下に「私は思う」の意省略。 草 四雨のひどく降る折。 枕と思ふなンめりと、あはれなるべし、と。さて日ごろも見えず、おばっかなく五愛情があるものとすることは でキ、亠まい え て過ごさむ人の、かかるをりにしも来むをば、さらにまた、心ざしあるには得六「心え」不審。人それぞれの理 解の仕方なのだろうか、とみる。 セ元来の本妻。 せじとこそ思へ。人の心えなればにゃあらむ。物見知り、思ひ知りたる女の、 ^ 「さりし」を「さありし」の意に 心ありと見ゆるなどをば語らひて、あまた行く所もあり、もとのよすがなども仮に解く 九事などについても、とみる。 あれば、しげうしもえ来ぬを、なほさりしいみじかりしをりに来たりし事など一 0 男のすることなのだろうか。 = 無理なことを作為してまで。 にも、語りつぎ、身をほめられむと思ふ人のしわざにや。それもげに心ざしな三「わりなき所なりとも」の意と からむには、何しにかは、さも作り事しても見むとも思はむ。されど、雨の降一三「ありとも」の意とみる。 一四ただちょっと話をして帰し。 る時は、ただむつかしう、今朝まで晴れ晴れしかりつる空ともおばえず、いみ一五とどまってもよさそうな男を ひきとめなどきっとするにちがい ほそどの じき細殿のめでたき所ともおばえず。ましていとさらぬ家などは、「とく降り 一六散逸物語。↓ 一九五段。 宅「思ひ忘れにける人のもとに やみねかし」とそおばゆる。月の明かきに来たらむ人はしも、十日、二十日、 まかりて / タ闇は道も見えねどふ 一月、もしは一年にても、まして七八年になりても、思ひ出でたらむは、いみるさとはもとこし駒にまかせてそ ひととせ 四 き みる。

8. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

段 よそ目よりほかに、ほむるたぐひおほかれ」とのたまふ。「それがにくからず一六自分が愛する人のわずかな欠 点を他人が言うと。 かた 宅藤原行成。 こそはあらめ。男も女も、け近き人を方ひき、思ふ人のいささかあしき事を言 ものいみ 天宮中の御物忌なので殿上にこ へば、腹立ちなどするがわびしうおばゆるなり」と言へば、「たのもしげなのもらなければいけないから。 一九午前二時頃から四時頃まで。 ニ 0 宮中に。 事や」とのたまふも、をかし。 かんやがみ ニ一紙屋紙。紙屋院で反故紙をす き返して作った官用紙。 一三後朝の文めかして書いたもの。 一三九頭弁の、職にまゐりたまひて ニ三裏表に。一夜契ったかのよう に多く書いたことをいう。 とうのペん あす もうー ) 編つくん 頭弁の、職にまゐりたまひて、物語などしたまふに、夜いとふけぬ。「明日一西『史記』孟嘗君列伝に見える かんこくかん 一九 故事。孟嘗君は夜半函谷関に至っ こも 一 ^ ものいみ ニ 0 たが門は閉じていた。鶏鳴によっ 御物忌なるに籠るべければ、丑になりなばあしかりなむ」とてまゐりたまひぬ。 て開門と定められていたため、上 くらうどどころニ一がみ のち か * 一 っとめて、蔵人所のかや紙ひき重ねて、「後のあしたは、残りおほかる心地手な者に鶏鳴をまねさせて通るこ とができ得たという話。「孟嘗君 きこあ なむする。夜とほして、昔物語も聞え明かさむとせしを、鶏の声にもよほされのかや」は、定めし本当の鶏では なくてにせの鶏でしよう、の気持。 て」と、いみじう清げに、うらうへにことおほく書きたまへる、いとめでたし。一宝折返し。 ニ六中国河南省北西部にあった。 まうさうくん 毛孟嘗君は食客三千人をかかえ 御返りに、「いと夜深くはべりける鳥の声は、孟嘗君のかや」と聞えたれば、 ニ六 ていたと伝に見えるが、函谷関同 にはとりかんこくくわん ニセ かくニ ^ 行のことは見えない 立ち返り、「『孟嘗君の鶏函谷関をひらきて、三千の客わづかに去れり』とい ニ九 夭かろうじて。 あふさかせき あ 堯あなたと逢った夜のことです。 ふ。これは逢坂の関の事なり」とあれば、 しき ぢか とり きこ きぬぎぬ

9. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

凡例 : ・ 一一八常よりことに聞ゆるもの 一一九絵にかきておとるもの : 一二〇かきまさりするもの 一二三あはれなるもの : 一二四正月寺に籠りたるは : 一二五いみじく心づきなきものは・ 一二六わびしげに見ゆるもの : 一二七暑げなるもの 一二八はづかしきもの・ 一二九むとくなるもの 一三〇修法は : 目次 原文現代語訳 一三一はしたなきもの : 一三二関白殿の、黒戸より出でさせたま ふとて 一三三九月ばかり夜一夜降り明かしたる 雨の : 一三四七日の若菜を・ : 一三五二月官の司に : 一三六頭弁の御もとよりとて : ・ 一三七などて官得はじめたる六位笏に : : : 三八 : ・ 一三八故殿の御ために、月ごとの十日 : : : 三九 : ・ 一三九頭弁の、職にまゐりたまひて : 一四〇五月ばかりに、月もなくいと暗き 原文現代語訳 ・ : 一一四六 一一四九

10. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

枕草子 126 一三九星は 四 ひこばし五 星はすばる。彦星。みやう星。タづつ。よばひ星をだになからましかば、 まして。 一空に月のあるまま夜の明ける ころ。陰暦十六日以後の月。 かげん ニ「ほそうて出づる」のは下弦の 月、二十日余の月は夜十時半ころ、 二十三夜の月は零時半ころに出る。 三『和名抄』に「昴」を「須波流」と 読む。古くは六星、のちに七曜星 をいう。牡牛座に属する。 四『和名抄』に「牽牛」を「比古保 之」と読む。七夕の星。 五金星。暁に東の空に輝いてい る折にはこの名がある。明星。 六同じく金星であるが、日没後 耀 - ノ、折にはこのよ、つにい , つ。 セ『和名抄』に流星を「与波比保 之」と読む。「よばひ」は、呼び続 ける意から求婚の意となる。 〈「尾」だに、とみる。流星の光 跡を気味の悪いものとしたか。 雲は白き。紫。黒き雲あはれなり。風吹くをりのあま雲。 九ばちばちはねる炭火。 一 0 「たつる」は「たてる」の誤りか。 とき = 斎」僧の正式の食事。 二三一さわがしきもの 一ニ生飯。飯の一部を衆生に施す が、屋根などにまいておくのを鳥 からす一一 がついばむ光景。 さわがしきもの走り火。板屋の上にてたつる烏、時のさば食ふ。十八日に 一三毎月十八日は観音の縁日 くら さんろう きよみづこも 清水に籠り合ひたる。暗うなりて、まだ火ともさぬほどに、ほかほかより人の一四清水寺観音への参籠は普通の ありあけひんがし 月は有明。東の山の端に、ほそうて出づるほどあはれなり。 二三〇雲は 九び いたやうへ じゃう六 ヒコボ