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検索対象: 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡
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1. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

年をとっている乞食。それはひどく寒い折でも、暑い折で 夜居の僧は、たいへん、こちらで気がひけるものだ。若 ひと も。身分のいやしい女の、身なりの悪いのが、子を背負っ い女房たちが集っては、他人のうわさをして、笑ったり、 ているの。小さい板葺の家の黒いのが、そしてきたならし悪口を言ったり、にくらしがったりするのを、静かにじっ いのが、雨に濡れているの。雨のひどく降る日に、、 と何から何まで聞き集めるのも、気がひける。「まあいや ぜんく な。やかましいこと」などと、中宮様のおそば近い女房た 馬に乗って、前駆しているの。夏は、しかしまだよい。冬 さんざん ほうしたがさね は袍も下襲も、雨のために一つにびったりくつついて着て ちが、いささか腹立ち気味で注意するのを無視して、散々 あげく しるよ , つになっている。 しゃべった揚句の果てには、すっかり気を許して寝てしま う、そのあともーー夜居の僧の思惑を考えるとーーー気がひ 一二七暑げなるもの ナる。 ずいじんおさかりぎめのう 男は、女について「困ったことに、自分の思っているよ 暑苦しそうなもの随身の長の狩衣。衲の袈裟。出居の 近衛の少将。ひどくふとった人の、髪の毛の多いの。六、 うなふうではなく、非難したいし、気に食わぬ点がある」 かじきとう ′」んぎよう あじゃり 七月の加持祈疇で、正午の勤行をつとめる阿闍梨。 と思うけれど、面と向っている女を巧みに言いくるめて機 嫌を取って、男を頼みに思わせるのこそ、女であるわたし じ・よ、つ・ ふうりゅうじん 一二八はづかしきもの は気おくれをおばえる。まして情が深く、色好みの風流人 として世間で評判の男などは、冷淡だと女が思うようなふ 段気おくれを感じるもの男の心のうち。目ざとい夜居の ものかげ 僧。こそどろが、しかるべき物陰に身を沈めて隠れていて、 うにも自分の態度を示すことはしないにきまっている。心 この どう見ているであろうかを、だれが知ろうか暗いのにま の中でだけ思っているのでなく、また、洗いざらい、 ひと 第 ぎれて、こっそりと他人の物を取る人もきっとあるだろう女の気に食わぬ点はあの女に話し、あの女の気に食わぬ点 はこの女に話して聞かせるにちがいないようであるのに、 よ。そういうしわざは、こそどろも同じ気持で、物陰で、 おそらくおもしろいと思っているであろう。 自分がしゃべられていることは知らないで、男がこんなふ このえ 、」じき いたぶき いろごの

2. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

すもう うにほかの女の悪口を自分に話して聞かせるのは、「格別 ってころがっているの。相撲取りの、負けて引っ込む後ろ に自分はこの男に愛されているのであるようだ」と、思っ姿。実力のない男が、家来を叱るの。老人の男が、烏幗子 もとどり ていることであろうか。「いやもう、ああ、二度とこの人をかぶらずに髻をむき出しているの。人の妻などが、むや 子 とは会わないことにしよう」と思う男に、その後に会うと、 みなやきもちをやいて、よそに隠れているのを、女は「必 草 ず夫が大騒ぎをするはずだ」と思っているのにもかかわら 「この男は不人情な人間であるようだ」と自然見られて、 枕 こちらとして気がひける感じなどはしないものなのだ。 ず、夫のほうはそうも田 5 っておらず、女にとっていまいま 男は、女について、ひどく身にしみじみと感じられて気しいような態度を見せているので、そんなふうにいつまで の毒な様子に見え、とても見捨てかねる、といったような も別の所に居つづけていることもできないので、自分のほ こまいめ ことなどを、少しも何とも思っていないのも、 うからのこのこ出て来ているの。狛犬や、獅子の舞をする ういう心なのかと、それこそあきれることだ。そのくせ、 者が、いい気持になって調子づいて、出て踊る足音。いず くちだっしゃ 男は、ほかの男の行為を非難し、ロ達者にしゃべることよ。れもかたなしだ。 また、身内など格別頼りになるような者を持っていない女 一三〇修法は 房などをうまくくどいて、女がただならぬ身になってしま ずほう ぶつげんしんごん っている現状などを、まったく知らないふりをしてなどい 修法は、仏眼真言などお読み申しあげているのは、優雅 るようであるよ。 で尊い。 一二九むとくなるもの ひがた かたなしなもの潮が引いた干潟にある大きな船。髪の 毛の短い女が、かもじを取りはずして髪を梳いている時。 大きな木が風に吹き倒されて、根を上に向けて横倒しにな 一三一はしたなきもの 中途半端で間の悪いものほかの人を呼ぶのに、自分か と思って顔を出している者。まして、物をくれる時には、 ばなし いっそう。たまたま他人のうわさ話などして、悪口などを ( 原文三〇ハー ) ひと

3. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

容貌がたいそうきれいで、気持も風雅を解する人が、筆持のほどがよくわかりましたとでも知ってもらいたいもの だ、といつも感じられるのである。 跡も見事に書き、歌もしみじみと詠じて、男を恨んでよこ しなどするのに、男は返事はこざかしくするものの、その 自分のことを必ず思ってくれるはずの人、自分を訪ねて 女の所へは寄りつかず、可憐なさまにため息をついて座り くれるはずの人は、それが当然のことなので、特別感激も こんでいる女を、見捨てて、ほかの女の所へ行きなどする 。しかしそんなに思ってくれるはずのない人が、ち よっとした応答をもこちらが安心するようにしてくれるの のは、全くあきれはてるばかり、公憤しきりというところ で、はたで見ている気持としても全くいやな感じがするは は、うれしい態度である。それは非常に簡単なことなのだ ずなのだけれど、男は自分の身の上のこととしてそういう けれど、実際にはほとんどあり得ないことであるよ。 ことが起った場合には、全然相手に対する気の毒さがわか 大体気だてが良い人で、ほんとうに才気がひらめくとい らないことよ。 った人は、男でも女でもめったにないことのように思われ る。しかしまた、そんな人も当然たくさんいるはずではあ 一四よろづのことよりも情あるこそ ろう。 すべてのことにまさって、情のあるのは、男はもちろん 一五人のうへ言ふを腹立つ人こそ のこと、女にも結構なことに思われる。ほんのちょっとし た言葉であるけれど、そして痛切に心の中に深くしみ通る 人のことについてうわさするのを聞いて腹を立てる人こ わけではないけれど、気の毒なことに対しては「お気の毒そ、ひどくわけがわからないものである。どうして人のこ 第 とを言わないではいられようか。自分の身のことはさてお に」とも一一 = ロ い、かわいそうなことに対しては「ほんとうに、 付 どんなに思っておいででしよう」などと言ったのを、人か き、これほど非難したくまた言いたいものが他にあろうか けれど人のことを言うのはよくないことのようでもある。 ら伝え聞いたのは、面と向って言うのを聞くよりもうれし いものだ。どうかしてこの言葉を言ってくれた人に、お気また言われた人は自然とその悪口を聞きつけて恨んだりす

4. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

りさせられた気分であったことよ。 仲の男などは、まして、人目のあることを考えて、寄るに しても近くも寄ることができず、思い嘆いているのこそお 三〇五病は もしろい。とてもきちんと長い髪をひき結んで、物を吐く ものけ 病気は胸。物の怪。あしの気。ただ何となく食物を食といって、起きあがっている様子も、ひどくいじらしく、 かれん べないの。これらは心配なものだ。 可憐に見える。 しゅじよう みどきよう 十八、九歳ぐらいの女で、髪がとてもきちんと整って、 主上におかせられてもそれをお聞きあそばして、御読経 すそ 背丈ほどの長さがあり、裾の方がふさふさしている女、そ の僧の、声のよい人を、おくだしになっているので、見舞 あいき・よ・つ してとてもよく太って、たいへん色が白く、顔は愛嬌があ の女房たちもたくさんそれを見にやって来て、経を聞きな って、美人だと見える女、そうした女が、歯をひどく病みどする姿も、隠れなく見えるので、その女房たちに目を配 ひたいがみ わずらって、額髪もじっとりと涙で泣き濡らし、髪の乱れり配り、僧が経を読んで座っているのこそ、そんな僧では ぶつばっ かかるのも気づかず、顔が赤くなって、痛むところを押え多分仏罰をこうむっているのであろうと思われることだ。 て座っているのこそ、風情がおもしろい ひとえ はかま 三〇六心づきなきもの 八月のころに、白い単衣の、しなやかなのに、袴はよい しおんうわぎ さんけい 具合なのをつけて、紫苑の表着の、とてもま新しく鮮やか 気にくわないものどこかへも行き、寺へも参詣する日 の雨。自分が召し使う人が、「わたしのことは、人は思っ 段なのを上に羽織っている人が、胸をひどく病んでいるので、 友だちである女房たちなどが、かわるがわる見舞にたずねてくれない。たれそれこそが、現在のお気に入りの人」な どと言うのを、小耳にはさんだの。ほかの人よりはやはり て来て、「何ともお気の毒なことですね。いつもこんなに 第 しいかげん お苦しみになるのですか」などと、通りいつべんにたずね少しにくらしいと思う人が、当推量をしたり、 3 る人もいる。その女に思いをかけている男は、、いの底から な物恨みをしたりして、自分だけえらそうにふるまってい たいへんなことだと思ってため息をつき、また、人知れぬるの。 せたけ

5. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

にのみもあらず、またみな、これが事はかれに語り、かれが事はこれに言ひ聞一女は自分のことが他の女に話 されているということは知らず。 ニ他の女のことを男が自分に語 かすべかンめるを、わが事をば知らで、かく語るをば、「こよなきなンめり」 子 って聞かせるのを。 三自分はやはり格別なのだろう。 草と、思ひやすらむ。「いであはれ、また会はじ」と思ふ人に会へば、「心はなき 四と女が思う男に会えば。 枕 五そのくせ男は他の男の身の上 者なンめり」と見えて、はづかしくもあらぬものぞかし。 を非難し。一説、女の身の上。 いみじくあはれに心苦しげに見捨てがたき事などを、いささか何事とも思は六ロ達者で立派な口をきく。 セ妊娠する。 五 うへ ぬも、 いかなる心ぞとこそあさましけれ。さすがに人の上をばもどき、物をよ〈やや疑わしい。きれいさつば り知らぬふりをすることか みやづか く言ふよ。ことにたのもしき事もなき宮仕へ人などを語らひて、ただにもあら九立派な、権威あるはずのもの が、みつともないさまをあらわす もの。さまにならないもの。 ずなりにたるありさまなどを、清うしてなどもあンめるは。 一 0 かもじ。添え髪。 = 宮中で行われた相撲の節 ( 七 月諸国から召集され天皇の前で相 一二九むとくなるもの 撲を取る行事 ) の相撲取り。 三勘当する。叱りつける。 もレ」レ」り むとくなるもの潮干の潟なる大きなる船。髪短き人の、かづら取りおろし一三冠や烏幗子をかぶらすに髻 ( 髪を頭上に束ねたもの ) をむき出 ふ たふ て髪けづるほど。大きなる木の風に吹き倒されて、根をささげて横たはれ伏せしにすること。一説、束ねた元結 を切って乱髪になること。 おきなもとどり すまひ る。相撲の、負けて入るうしろ。えせ者の、従者かんがふる。翁の、髻放ち高「人の妻」で一語。 一五はっきりした根拠もない嫉妬 ゑん たる。人の妻などの、すずろなる物怨じして隠れたるを、「かならずさわがむをして。 ( 現代語訳一一四六ハー ) 一四め し 四 六

6. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

四二本牛飼はおほきにてといふ次 に〕法師は : 女は : 女の遊びは 五いみじう暑き昼中に : 六南ならずは 七大路近なる所にて聞けば : ・ 八森は 九九月二十日あまりのほど : ・ 一〇清水などにまゐりて、坂もとのば るほど 、いにくきものの下〕 夜居にまゐりたる僧を : 一二世ノ中になほいと心憂きものは : : : 一一一六 : 三巻本系統諸本逸文 一たちは 二職におはしますころ ・ : 三璧 ・ : 三五五 ・ : 三五七 ・ : 三五七 ・ : 三五七 ・ : 三五七 ・ : 三五八 一三男こそ、なほいとありがたく : 一四よろづのことよりも情あるこそ : : : 一二八 : 一五人のうへ言ふを腹立つ人こそ 一六古代の人の指貫着たるこそ : 一七成信の中将こそ 一八左右の衛門の尉を 一九〔一本きよしとみゆるものの次 に〕夜まさりするもの : 二〇ひかげにおとるもの : 二一聞きにくきもの・ 二二文字に書きてあるやうあらめど心 得ぬもの : 二三下の心かまへてわろくてきょげに 見ゆるもの : 二四女のうは着は : 二五汗衫は : 一一六薄様色紙は : 二七硯の箱は : ・ : 三五八 ・ : 三五九 ・ : 三五九

7. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

つばさうぞく まう 詣でつらむ」とまで、涙落ちてやすむに、三十あまりばかりなる女の、壺装束一三巻本「四十よばかりなる女」。 うわぎ 五 ニ当時の女子の旅行の姿。表着 ななたび などにはあらで、ただ引きはこえたるが、「まろは七度詣でしはべるぞ。三度を腰にはさみ、単衣の衣をかぶり、 いちめがさ 子 その上に市女笠をかぶる。 ひつじ たび すそ 三着物の裾をたくし上げること。 草は詣でぬ。いま四度はことにもあらず。未には下向しぬべし」と、道に会ひた 四男女ともに用いる自称代名詞。 ゅ 五上中下の三社を一日に七度参 る人にうち言ひて、くだり行きしこそ、ただなる所にては、目もとまるまじき 詣し、七日詣での代りとする。 六午後二時ごろ。 事の、かれが身に、ただいまならばやとおばえしか 七参拝して下山すること。 」も 男も、女も、法師も、よき子持たる人、いみじううらやまし。髪長くうるは ^ あの女の身に。 九整った端麗なうつくしさ。 ひたいがみ しう、さがりばなどめでたき人。ゃんごとなき人の、人にかしづかれたまふも、一 0 額髪の左右に垂下がった末端。 = 大切に仕えられていらっしゃ いとうらやまし。手よく書き、歌よくよみて、物のをりにもまづ取り出でらるるのも。 三ます選び出される人。 一三「つかはす」は尊敬動詞。お届 る人。 けになる。 おまへ よき人の御前に、女房いとあまた候ふに、、いにくき所へつかはすべき仰せ書一四高貴な方が女房に代筆させる 手紙。 などを、たれも鳥のあとのやうには、などかはあらむ。されど、しもなどにあ一五下手な文字の形容。鳥の足跡 のように一字ずつ書く文字。 すずり るを、わざと召して、御硯取りおろして書かせたまふ、うらやまし。さやう一六「などかは書きてあらむ」の約 とみる。下手な字を書く人はいる た 4 一には 一 ^ おとななに はすはない の事は、所の大人何となりぬれば、まことに難波わたりの遠からぬも、事にし しもつぼね 宅下局。女房の自室。 かんだちめ たがひて書くを、これはさはあらで、上達部のもと、また、はじめてまゐらむ天年功のある先輩の女房たち。 キ ) ぶら 一四がき たび たんれい

8. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

なっておいでなのは、たいへん心にしみておもしろい。業 二九二大納一一 = ロ殿まゐりて、文の事など奏した 平がその便りをひきあけて見ていたであろう気持こそ、自 ( ふに 然と想像されることだ。 子 しゅじよう 大納言様が参上して、漢詩文の事など主上に奏上なさる 草 ふ 二九〇をかしと思ひし歌などを草子に書きて 。いつものように、夜がひどく更けてしまったので、 枕 ひとりふたり おきたるに 御前にいる女房たちは、一人、二人ずつ姿を消して、御 びようぶきちょうしも こべや おもしろいと思った歌などを帳面に書きつけておいたの屏風、几帳の下の方へ、小部屋などにみな隠れて寝てしま がまん げすおんな ったので、わたしはただ一人になって、眠たいのを我慢し に、下衆女が、その歌をうたっているのこそ、いやなもの てそのまま伺候していると、「丑四つ」と時刻を奏上する だ。それどころか、やたらと歌を作りもするよ。 ようである。「どうやら明けてしまったようでございます」 いまさらぎよしん 二九一よろしき男を、下衆女などのめで と独り言を言うと、大納言様は、「今更に御寝あそばすこ 相当な身分の男を、下衆女などがほめて、「たいへん親とよ」と言って、寝るべきものとも思っていらっしやらな いのを、「まあいやだこと、何だってこんなことを申しあ しみの感じられる方でいらっしやる」などと言うと、人は げてしまっているのだろう」と思うけれども、また、人が そのままさっそくその男を自然軽蔑するようになってしま うに違いない悪口を言われるのは、かえってよい。下衆ほかにもいるのならばこそは、何とかごまかしもしようが しゅじよう 主上が柱に寄りかかって、少しお眠りあそばしてい の者にほめられるのは、女でさえあまりよくない。また、 らっしやるのを、大納一 = ロ様は中宮様に「あれをお見申しあ 下衆の者はほめるうちに、言いそこなってしまうものなの ぎよ だから。 げなさいませ。もう夜は明けてしまったのに、こんなに御 しん 寝あそばしてよいものでしようか」と申しあげなさる。 「いかにも」などと、中宮様におかせられてもお笑い申し けいべっ

9. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

りになってしまったので、その家では万事につけてひどく としても、まだ年が若くて男女の間柄についてひどく気楽 めのと な 言い立てて騒ぎ、女の乳母などというような者は、婿に対 に物馴れないような女は、やはりひたすら : して不吉な事をいろいろ言う者もいるのに、その翌年の正 くろ、つ一 二五四うれしきもの 月にその男は蔵人になってしまった。世間の人が「『意外 にも、こうした間柄なのに、どうして昇進したのか』とこ うれしいものまだ見ない物語のたくさんあるの。また、 そみんな人は思っているようだよ」などと言ってかれこれ 一つを見て、ひどく読みたく思われる物語の、二つ目を見 とうわさするのは、男もきっと聞いているだろうよ。 つけたの。ところが予想外に劣るようなこともあるよ。 ほっけはっ第 : っ 二月にあるお人が法華八講をなさった所に、人々が集っ 人の破り捨ててある手紙を拾って見る時、それのつづき てそれを聞いた折に、この蔵人になっている婿が、ロウの をたくさん見つけたの。 はかますおうがさねくろはんび 上の袴、蘇芳襲、黒半臂など、たいへん鮮やかな服装で、 どういうことなのだろうかと、夢を見て、恐ろしいこと とみお ゅめと 自分のすっかり忘れた女の車の鴟の尾を、あやうく自分の だと胸がつぶれる折に、夢解きの者が何でもないことのよ うに合せなどしたのは、ひどくうれしい 着物にひっかけてしまうぐらいの近さで居座っていたのを、 「どう思って見ているだろう」と、車に乗っている人をそ 身分の高い方の御前に人々がたくさん伺候している折に、 の女と知っている人はすべて気の毒がるのを、そうとは知昔あったことであれ、今お聞きあそばし、世間で話題にな ったことであれ、お話しあそばされることを、自分にお目 対らなかったその他の人たちも、「よくも平気で座っていた ~ ものだな」と、あとでも言った。 をお見合せになって、仰せあそばし、またはお言い聞かせ になっていらっしやるのは、とてもうれしい やはり男というものは、何かにつけて気の毒だと思う気 第 持とか、人がどう思おうかというようなことはわからない 遠い所はもちろんのこと、同じ都のうちながらでも、自 分の身にとっては大切な人と思う人が病気であるのを聞い 8 のであるようだ。 みやづか うぶな娘の場合は言うまでもない、たとい宮仕えをする て、どうだろうか、どうだろうかと不安にため息をついて かた

10. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

ひとがた 一人形、解き縄、散米など、祈 ひ出でて、祈りの物ども作るに、紙あまた押し重ねて、いと鈍き刀して切るさ 疇に用いるもの。 ニ御幣の類であろう。 ま、一重だに断つべくも見えぬに、さる物の具となりにければ、おのが口をさ こういう時に用いるものと決 子 っているものなので。 へ引きゅがめて押し切り、目おほかる物どもして、かけ竹うち切りなど、うら のこぎり 草 四鋸か。一説、竹を裂くのに かうがう いとさかし。かつは「何の宮の、用いる刃のたくさんついた工具。 枕に神々しうしたてて、うちふるひのる事ども、 五御幣をかける竹。 うら 六「うらに」不審。「占にと解く。 その殿の若君の、いみじうおはせしを、かいのごひたるやうに、やめたてまっ の 七「告る」で述べる、告げる意か。 りたりしかば、禄おほく給はりし事。その人々召したりけれど、しるしもなか〈祈る一方では以下のように語 って聞かせる。 とく 九私がお治し申しあげたので。 りければ、今に女をなむ召す。御徳を見ること」など語るもをかし。 一 0 誰それの人々。他の祈疇師。 一一底本原本「女」。このお婆さん 下衆の家の女あるじ、痴れたる者そ。それ、をかし。 を、と自称したものとする。 三「女あるじ」で切る説もある。 まことにさかしき人をかしなどすべし。 一三三位以上の人。公卿。以下名 門の官のうち特に名誉のある兼官 をあげる。次段も同じ。 二三五上達部は 一四東宮坊の長官。摂関の子息、 一九 大臣の子孫で大・中納言の兼任。 とうぐうの とうぐうのだいぶさうのだいしゃうごんだいなごんさいしゃうのちゅうじゃうさんみの 上達部は春宮大夫。左右大将。権大納言。宰相中将。三位中将。春宮従四位下相当。 一五近衛府の長官。大納言・大臣 ごんのだいぶじじゅうのさいしゃう の兼任。名門の人が任ぜられる。 権大夫。侍従宰相。 一六定員外の大納言。大臣に昇る べき人が任じられる重職 かんだちめ ひとへ た ろく し かさ 五 にぶかたな とう