検索 - みる会図書館

検索対象: 完訳 日本の古典 第二十一巻 源氏物語 ㈧

完訳 日本の古典 第二十一巻 源氏物語 ㈧から 507件ヒットしました。

完訳 日本の古典 第二十一巻 源氏物語 ㈧


完 訳 日 本 の 古 典 21 源 氏 物 語 八 ク 0 0 小 学 館

完訳 日本の古典 第二十一巻 源氏物語 ㈧


完 訳 日 本 の 古 典 第 二 十 一 巻 源 氏 物 囚 昭 和 年 月 引 日 初 版 発 行 定 価 一 九 〇 〇 円 阿 部 秋 生 秋 山 虔 校 注 ・ 訳 者 今 井 源 衛 鈴 木 日 出 男 発 行 者 相 賀 徹 夫 印 刷 所 凸 版 印 刷 株 式 会 社 発 行 所 株 式 会 社 小 学 館 〒 東 京 都 千 代 田 区 一 ッ 橋 二 ー 三 ー 振 替 口 座 東 京 八 ー 二 〇 〇 番 電 話 編 集 ( 〇 三 ) 二 九 二 ー 四 七 六 三 業 務 ( 〇 三 ) 一 一 三 〇 ー 五 三 三 三 販 売 ( 〇 三 ) 一 一 三 〇 ー 五 七 三 九 ・ 造 本 に は 十 分 注 意 し て お り ま す が 、 万 一 、 落 丁 ・ 乱 丁 な ど の 不 良 品 が あ り ま し た ら お と り か え い た し ま す 。 ・ 本 書 の 一 部 あ る い は 全 部 を 、 無 断 で 複 写 複 製 ( コ ピ ー ) す る こ と は 、 法 律 で 認 め ら れ た 場 合 を 除 き 、 著 作 者 お よ び 出 版 者 の 権 利 の 侵 害 と な り ま す 。 あ ら か し め 小 社 あ て 許 諾 を 求 め て く だ さ い Printed in Japan ( 著 者 検 印 は 省 略 A. Abe K. Akiyama G. lmai H. Suzuki い た し ま し た ) ISBN4 ・ 09 ・ 55602L5 1987

完訳 日本の古典 第二十一巻 源氏物語 ㈧


、 こ の 「 引 歌 一 覧 」 は 、 本 巻 ( 匂 宮 ~ 総 角 ) の 本 文 中 に ふ ま え ら れ て い る 歌 ( 引 歌 ) で 、 脚 注 欄 に 掲 示 し た 歌 を ま と め た も の で あ る 。 一 、 掲 出 の 仕 方 は 、 は じ め に 、 引 歌 表 現 と み ら れ る 本 文 部 分 の ペ ー ジ 数 と 行 数 を あ げ 、 そ の 引 歌 お よ び 出 典 を 示 し 、 以 下 、 行 を 改 め て 、 歌 の 現 代 語 訳 と 解 説 を 付 し た 。 梅 の 香 の 人 に 移 っ た と す る 発 想 が 多 く 見 ら れ る が 、 こ の 歌 匂 宮 の よ う に 人 の 香 が 梅 に 移 っ た と す る 例 は 多 く な い 。 物 語 で 残 り な く 散 る そ め で た き 桜 花 あ り て 世 の 中 は て は 、 こ れ よ り 三 首 、 薫 の 身 に 備 っ た 薫 香 の す ば ら し さ を か ( 古 今 ・ 春 下 ・ 七 一 読 人 し ら ず ) の 憂 け れ ば た ど る 。 梅 の 花 も 、 薫 の 袖 か ら の 移 り 香 で 、 本 来 の 梅 の 香 何 一 つ 残 さ ず 散 る と こ ろ が す ば ら し い の だ 、 桜 の 花 は 。 世 の 以 上 の 、 か ぐ わ し さ を 発 揮 す る と す る 。 し ・ く け 、 習 い と し て 、 生 き 長 ら え て 最 後 が い や な も の に な る の だ か ら 。 ・ 四 ・ 6 匂 ふ 香 の 君 思 ほ ゆ る 花 な れ ば 折 れ る 雫 に 今 朝 そ ( 古 今 六 帖 ・ 第 一 「 雫 」 伊 勢 ) 桜 の 花 は は か な い か ら こ そ 美 し い 、 と す る 歌 。 物 語 で は 、 濡 れ ぬ る あ な た を 思 い 出 す 香 り の 花 な の で 、 今 朝 、 枝 を 折 る 時 に 、 こ 美 し い ま ま に 他 界 し た 紫 の 上 を 回 想 す る 表 現 。 な お 、 古 注 ば れ 落 ち る 雫 に も 、 流 れ 落 ち る 涙 に も 濡 れ て し ま っ た 。 以 来 、 「 散 れ ば こ そ い と ど 桜 は め で た け れ う き 世 に 何 か 久 し か る べ き 」 ( 伊 勢 物 語 ・ 八 十 二 段 ) 、 「 待 て と い ふ に 散 ら で し 『 伊 勢 集 』 に も 所 収 。 「 雫 ー は 「 君 」 を 思 う 涙 で も あ る 。 物 語 で は 、 前 歌 同 様 、 薫 の す ば ら し い 薫 香 を 表 す 。 と ま る も の な ら ば 何 を 桜 に 思 ひ ま さ ま し 」 ( 古 今 ・ 春 下 ・ 七 0 主 知 ら ぬ 香 こ そ に ほ へ れ 秋 の 野 に 誰 が ぬ ぎ か け 覧 読 人 し ら す ) な ど を 掲 げ る も の も あ る 。 い ず れ も 類 想 の 歌 ・ ふ ぢ ば か ま 一 で あ る 。 ( 古 今 ・ 秋 上 ・ = 四 一 素 性 法 師 ) し 藤 袴 ぞ も た そ で 歌 誰 が 使 っ て い る の か 分 ら ぬ 香 が た だ よ っ て い る 。 秋 の 野 に 咲 ・ 四 ・ 6 色 よ り も 香 こ そ あ は れ と 思 ほ ゆ れ 誰 が 袖 ふ れ し く 藤 袴 は 、 誰 が 脱 い で 掛 け た 袴 な の か し ら 。 ( 古 今 ・ 春 上 ・ 三 三 読 人 し ら ず ) 宿 の 梅 ぞ も 色 よ り も 香 こ そ す ば ら し く 思 わ れ る 。 誰 が 袖 を ふ れ て 、 そ の 「 藤 袴 」 の 花 か ら 「 袴 」 を 連 想 す る し ゃ れ 。 物 語 で は 、 こ 移 り 香 を わ が 家 の こ の 梅 の 花 に 残 し た の か 。 れ も 薫 の 香 を 表 現 。 前 二 首 が 春 の 花 の 香 で あ る の に 対 し て 、 471 引 歌 一 覧 た

完訳 日本の古典 第二十一巻 源氏物語 ㈧


方 丈 記 神 田 秀 夫 ( 武 蔵 大 学 ) 日 本 の 古 典 」 全 巻 の 内 容 永 積 安 明 ( 神 戸 大 学 ) 徒 然 草 荻 原 浅 男 ( 千 葉 大 学 ) 国 古 事 記 国 国 と は ず カ た り ・ 久 保 田 淳 ( 東 京 大 学 ) 小 島 憲 之 ( 大 阪 市 立 大 学 ) 佐 竹 昭 広 ( 成 城 大 学 ) 小 林 智 昭 ( 専 修 大 学 ) ー 萬 葉 集 7 内 木 下 正 俊 ( 関 西 大 学 ) 囮 回 宇 治 拾 遺 物 語 圄 小 林 保 治 ( 早 稲 田 大 学 ) 中 田 祝 夫 ( 筑 波 大 学 ) 回 日 本 霊 異 記 市 古 貞 次 ( 東 京 大 学 ) 囮 ー 囮 平 家 物 語 小 沢 正 夫 ( 中 京 大 学 ) 回 古 今 和 歌 集 囮 謡 曲 集 三 道 小 山 弘 志 ( 国 文 学 研 究 資 料 館 ) 佐 藤 健 一 郎 ( 武 蔵 野 美 術 大 学 ) 表 章 ( 法 政 大 学 ) 回 謡 曲 集 0 風 姿 花 伝 佐 藤 喜 久 雄 ( 学 習 院 大 学 ) 竹 取 物 語 片 桐 洋 一 ( 大 阪 女 子 大 学 ) 福 井 貞 助 ( 静 岡 大 学 ) 画 伊 勢 物 語 北 川 忠 彦 ( 京 都 女 子 大 学 ) 安 田 章 ( 京 都 大 学 ) 松 村 誠 一 ( 成 蹊 大 学 ) 囮 狂 言 集 土 佐 日 記 大 島 建 彦 ( 東 洋 大 学 ) 国 御 伽 草 子 集 伊 牟 田 経 久 ( 鹿 児 島 大 学 ) 木 村 正 中 ( 学 習 院 大 学 ) 回 蜻 蛉 日 記 好 色 一 代 男 康 隆 ( 早 稲 田 大 学 ) 永 井 和 子 ( 学 習 院 大 学 ) 松 尾 聰 ( 学 習 院 大 学 ) 回 囮 枕 草 子 冒 好 色 五 人 女 阿 部 秋 生 ( 東 京 大 学 ) 東 明 雅 ( 信 州 大 学 ) 今 井 源 衛 ( 梅 光 女 学 院 大 学 ) 国 回 ー 四 源 氏 物 語 7 田 秋 山 虔 ( 東 京 女 子 大 学 ) 鈴 木 日 出 男 ( 東 京 大 学 ) 好 色 一 代 女 和 泉 式 部 日 記 谷 協 理 史 ( 筑 波 大 学 ) 藤 岡 忠 美 ( 神 戸 大 学 ) 国 日 本 永 代 蔵 中 野 幸 一 ( 早 稲 田 大 学 ) 紫 式 部 日 記 大 養 窿 ( お 茶 の 水 女 子 大 学 ) 万 の 文 反 古 更 級 日 記 神 保 五 彌 ( 早 稲 田 大 学 ) 世 間 胸 算 用 鈴 木 一 雄 ( 明 治 大 学 ) 3 夜 の 寝 覚 井 本 農 一 ( 実 践 女 子 大 学 ) 中 村 俊 定 ( 早 稲 田 大 学 ) 図 芭 蕉 句 集 堀 信 夫 ( 神 戸 大 学 ) 堀 切 実 ( 早 稲 田 大 学 ) 堤 中 納 言 物 語 稲 賀 敬 一 ズ 広 島 大 学 ) 栗 山 理 一 ( 成 城 大 学 ) 久 保 木 哲 夫 ( 都 留 文 科 大 学 ) 芭 蕉 文 集 ・ 去 来 抄 顰 ( 実 践 女 子 大 学 ) 無 名 草 子 森 修 ( 大 阪 市 立 大 学 ) 鳥 越 文 蔵 ( 早 稲 田 大 学 ) 近 松 門 左 衛 門 集 橘 健 一 ズ 岐 阜 女 子 大 学 ) 四 大 鏡 冒 雨 月 物 語 高 田 衛 ( 都 立 大 学 ) 今 昔 物 語 集 7 国 馬 淵 和 夫 ( 中 央 大 学 ) 国 東 文 管 ( 早 稲 田 大 学 ) 中 村 博 保 ( 静 岡 大 学 ) 今 野 達 ( 横 浜 国 立 大 学 ) 本 朝 世 俗 部 春 雨 物 語 栗 山 理 一 ( 成 城 大 学 ) 新 間 進 一 ( 青 山 学 院 大 学 ) 国 外 村 南 都 子 ( 白 百 合 女 子 大 学 ) 囮 蕪 村 集 ・ 一 茶 集 暉 埈 康 隆 ( 早 稲 田 大 学 ) 梁 廛 秘 抄 圈 古 典 詞 華 集 冒 山 本 健 吉 ( 文 芸 評 論 家 ) 国 新 古 今 和 歌 集 峯 村 文 人 ( 国 際 基 督 教 大 学 ) 松 田 成 穂 ( 金 城 学 院 大 学 ) 石 埜 敬 子 ( 跡 見 学 園 短 期 大 学 ) 増 古 和 子 ( 上 野 学 園 大 学 ) 丸 山 一 彦 ( 宇 都 宮 大 学 ) 松 尾 靖 秋 ( 工 学 院 大 学 )

完訳 日本の古典 第二十一巻 源氏物語 ㈧


・ 明 け ぬ 夜 の 心 な が ら に や み に し を あ く ぞ と 言 ひ じ み し た も の と 見 る こ と だ 。 絽 し 声 は 聞 き き や ( 河 海 抄 ) 鹿 と 萩 は 伝 統 的 な 組 合 せ 。 物 語 で は 、 匂 宮 の 、 姫 君 へ の 手 お う せ 明 け る こ と の な い 夜 の 暗 闇 の ま ま の 心 で 逢 瀬 が 終 っ た の だ か 紙 の 言 葉 に 、 こ れ を 用 い た 。 「 枯 れ ゆ く 野 べ 」 は 、 晩 秋 か 語 ら 、 夜 が 明 け る と 言 っ た 声 は 聞 い た の だ ろ う か ら 冬 に か け て の 、 生 命 の 死 滅 を 象 徴 す る 語 句 で あ る 。 八 の 物 せ き 。 り ト - う 氏 出 典 未 詳 。 夜 が 明 け て も 、 心 の 暗 闇 は 明 け な い と し た 歌 。 宮 死 後 の 寂 寥 の 宇 治 に ふ さ わ し い 表 現 と も い え よ う 。 や ま し な こ は た 源 『 後 拾 遺 』 ( 雑 四 ・ 一 0 〈 = 読 人 し ら ず ) に は 、 第 二 句 「 心 地 な が ・ ・ 2 山 科 の 木 幡 の 里 に 馬 は あ れ ど 徒 歩 よ り そ 来 る 君 ら に 」 、 第 四 句 「 朝 倉 と 言 ひ し 」 と あ る 。 物 語 で は 、 八 の を 思 へ ば ( 拾 遺 ・ 雑 恋 ・ 一 = 四 三 柿 本 人 麿 ) う し な 宮 を 喪 っ た 姫 君 た ち の 深 い 悲 嘆 を か た ど る 。 恋 の 心 の 暗 闇 山 科 の 木 幡 の 山 を 、 馬 は あ る け れ ど も 、 私 は 歩 い て や っ て 来 を 、 死 へ の 悲 嘆 の 暗 闇 に 転 じ た 表 現 で あ る 。 る 。 あ な た の こ と を 思 う と : 0 4 わ が 世 を ば 今 日 か 明 日 か と 待 っ か ひ の 涙 の 滝 と も と も と 『 万 葉 集 』 巻 十 一 ・ 一 一 四 一 一 五 の 人 麻 呂 歌 集 の 歌 。 た だ 、 一 は た あ い づ れ 高 け む ( 伊 勢 物 語 ・ 八 十 七 段 ) し 歌 句 は 「 : ・ 木 幡 の 山 を ・ : 徒 歩 よ り 我 が 来 し 汝 を 思 ひ か ね 私 の 栄 え る 時 が 今 日 来 る か 明 日 来 る か と 待 っ て き た が 、 そ れ て 」 。 『 古 今 六 帖 』 ( 第 二 「 国 」 ) は 、 「 山 城 の 木 幡 の 森 に ・ : 思 め の び き を 待 っ か い も な く 流 れ 落 ち る 涙 の 滝 と 、 こ の 布 引 の 滝 と ど ち ふ が た め は 歩 み て そ 来 る 」 。 歌 詞 の 変 化 か ら も 、 伝 承 性 の ら が 高 い だ ろ う か 濃 さ が う か が わ れ る 。 「 木 幡 」 は 宇 治 市 北 部 の 平 尾 山 ・ 御 布 引 の 滝 ( 神 戸 市 葺 合 区 布 引 町 ) の ほ と り で 詠 ん だ 歌 。 物 語 蔵 山 な ど 一 群 の 丘 陵 地 。 「 山 科 」 は 古 く 、 そ の 木 幡 山 か ら で は 、 八 の 宮 の 死 に 遭 っ た 姫 君 た ち の 悲 嘆 。 こ の あ た り 、 現 在 の 京 都 市 山 科 区 一 帯 を も 呼 ん だ ら し い 。 物 語 で は 、 匂 落 葉 の 音 、 宇 治 の 川 音 な ど 宇 治 の 静 寂 悲 哀 の 景 を か た ど り 宮 の 使 者 の 、 宇 治 へ の 往 来 を 語 る の に 、 こ の 歌 を 用 い た 。 な が ら 、 涙 に 明 け 暮 れ る 姫 君 た ち の 悲 し み の 心 象 風 景 と し 下 句 に 「 : ・ 君 を 思 へ ば 」 と あ る だ け に 、 匂 宮 の 熱 つ ば い 恋 ほ う ふ つ て い る 。 宇 治 川 の 「 水 の 響 き 」 か ら 、 こ の 歌 の 「 涙 の 滝 」 情 を さ え 彷 彿 と さ せ る 。 く ま ひ の く ま が 連 想 さ れ る 趣 で あ る 。 ・ ・ 3 さ さ の 隈 檜 隈 川 に 駒 と め て し ば し 水 か へ 影 を だ は ぎ LO ・ 11 鹿 の す む 尾 の 上 の 萩 の 下 葉 よ り 枯 れ ゆ く 野 べ も に 見 む ( 古 今 ・ 神 遊 び の 歌 ・ 一 0 八 0 読 人 し ら す ) と も ひ ら あ は れ と そ 見 る ( 新 千 載 ・ 秋 下 ・ 五 一 一 六 具 平 親 王 ) 笹 の 茂 る 奥 ま っ た 、 檜 隈 川 に 馬 を と め て 、 し ば ら く 水 を 飲 ま 鹿 の す む 尾 根 の 萩 の 下 葉 よ り も 、 枯 れ て い く 野 辺 の 趣 も し み せ て や っ て く れ 、 せ め て 、 そ こ か ら 帰 る あ な た の 後 ろ 姿 な り へ く ら お

完訳 日本の古典 第二十一巻 源氏物語 ㈧


十 月 と も な る と 、 毎 年 毎 年 時 雨 は 降 っ た け れ ど も 、 こ ん な に 逢 は ぬ こ ろ か も 」 。 物 語 で は 、 匂 宮 の 宇 治 行 を 邪 魔 だ て る -4 も 袖 の 濡 れ る 時 は な か っ た 。 支 障 の 多 い こ と を い う 。 カ カ い し レ - う ・ み あ 出 典 末 詳 。 前 出 ( ↓ 葵 三 八 四 ハ ー 上 段 な ど ) 。 『 河 海 抄 』 な ど ・ ・ 2 水 ご も り の 神 に 問 ひ て も 聞 き て し が 恋 ひ つ つ 逢 語 ( 古 今 六 帖 ・ 第 四 「 片 恋 」 ) 古 注 の 一 部 に は 、 「 い に し へ も 今 も 昔 も 行 く 末 も か く 袖 ひ は ぬ 何 の 罪 ぞ と 物 水 中 に 隠 れ て い る 神 に た ず ね て 聞 き た い も の だ 。 恋 し い 恋 し 氏 つ る 折 は な か り き 」 ( 出 典 末 詳 ) を も 掲 げ る 。 物 語 で は 、 匂 い と 思 い 続 け な が ら も 逢 え な い の は 、 何 の 罪 に よ る の か と 。 源 宮 が 中 の 君 へ の 「 な が む る は : ・ 」 の 歌 に さ ら に 付 け 加 え た 言 葉 。 折 か ら 時 雨 の 時 節 で あ る と こ ろ か ら 、 こ ん な 時 雨 は 物 語 で は 、 薫 が 大 君 に 、 大 君 の 病 気 は ど ん な 罪 の 報 い な の か と 問 う 言 葉 。 引 歌 と し な く て よ い か も し れ な い が 、 次 に は じ め て と 思 わ れ る ほ ど 悲 し み の 涙 に 濡 れ た と す る 。 し か し 姫 君 た ち は こ れ を 、 「 耳 馴 れ に た る 」 こ ん な 折 の 常 薫 が 冗 談 め か し く 、 「 人 の 嘆 き 負 ふ こ そ か く は あ む な れ 」 套 表 現 に す ぎ な い と 受 け と め る 。 と 言 う 文 脈 の 流 れ か ら 、 引 歌 の あ る 表 現 と み て お き た い 。 う っ せ み か ら あ ら れ み や ま け ぶ り っ ー 0 霰 降 る 深 山 の 里 の わ び し き は 来 て た は や す く ・ ・ 7 空 蝉 は 骸 を 見 つ つ も 慰 め つ 深 草 の 山 煙 だ に 立 て ( 後 撰 ・ 冬 ・ 四 六 九 読 人 し ら ず ) ( 古 今 ・ 哀 傷 ・ 八 三 一 僧 都 勝 延 ) 訪 ふ 人 も な し 霰 の 降 る 深 山 の 里 の 寂 し さ は 、 こ こ を 容 易 に 訪 ね て 来 る 人 も は か な い 蝉 で も 、 そ の 脱 け 殻 を 見 て は 慰 め ら れ る も の 。 同 じ な キ 一 が ら い な い と い う こ と で あ る 。 よ う に 亡 き 人 も 、 そ の 亡 骸 を 見 て は 慰 め ら れ た 。 深 草 の 山 よ 、 せ め て 今 は 、 煙 だ け で も 立 ち の ば っ て 、 私 の 心 を 慰 め て く れ 。 物 語 で は 、 中 の 君 の 、 匂 宮 へ の 返 歌 「 あ ら れ ふ る ・ : 」 に ふ ま え ら れ る 。 匂 宮 の い う 時 雨 の 悲 し み を 、 こ の 歌 の 霰 降 る 前 出 ( ↓ 御 法 四 〇 一 ハ ー 下 段 ) 。 物 語 で は 、 薫 が 大 君 の 亡 骸 を 悲 し み で 切 り 返 し た こ と に な る 。 そ の ま ま 虫 の 脱 け 殻 の よ う に し て お き た い と 願 う 一 一 = ロ 葉 。 薫 あ し わ を ぶ ね さ は っ ー っ の 限 り な い 執 着 を か た ど る 。 み な と 入 り の 葦 分 け 小 舟 障 り 多 み わ が 思 ふ 人 に い り あ ひ あ は ぬ こ ろ か な ( 拾 遺 ・ 恋 四 ・ 会 三 柿 本 人 麿 ) ・ ・ 6 山 寺 の 入 相 の 鐘 の 声 ご と に 今 日 も 暮 れ ぬ と 聞 く ( 拾 遺 ・ 哀 傷 ・ 一 三 = 九 読 人 し ら ず ) 葦 の し げ み を か き 分 け て 港 に 入 っ て 来 る 小 舟 が 邪 魔 さ れ る こ そ 悲 し き と の 多 い よ う に 、 、 し と し く 思 う 人 に 逢 え ぬ 日 々 の 続 く 今 日 こ 山 寺 の 夕 暮 時 の 鐘 の 音 を 聞 く た び ご と に 、 今 日 も 一 日 が 暮 れ の ご ろ で あ る よ 。 て し ま っ た と 思 う 、 そ れ が ど う に も 悲 し い の で あ る 。 も と も と は 万 葉 歌 ( 巻 十 一 ・ = 七 四 五 ) で 、 下 句 「 あ が 思 ふ 君 に 前 出 ( ↓ 澪 標 3 三 六 六 ハ ー 下 段 ) 。 物 語 で は 、 大 君 の 死 後 の 一 日 ゅ が ら

完訳 日本の古典 第二十一巻 源氏物語 ㈧


と の 物 言 い だ が 、 必 ず し も 引 歌 と 認 め る 必 も 時 節 し だ い 、 こ の 歌 を 謡 っ て い た こ と に な る 。 や み . 0 春 の 夜 の 闇 は あ や な し 梅 の 花 色 こ そ 見 え ね 香 や 要 も な い か も し れ な い 。 ( 古 今 ・ 春 上 ・ 四 一 凡 河 内 躬 恒 ) 1 0 桜 色 に 衣 は 深 く 染 め て 着 む 花 の 散 り な む の ち の は か く る る き の あ り と も ( 古 今 ・ 春 上 ・ 六 六 紀 有 朋 ) 形 見 に 前 出 ( ↓ 四 七 二 ハ ー 下 段 な ど ) 。 物 語 で は 、 蔵 人 少 将 の 歌 に 私 の 着 物 を 桜 色 に 色 濃 く 染 め て 着 よ う 。 花 の 散 っ て し ま っ た 「 春 の 夜 の 闇 」 と 引 い て 、 恋 に 惑 う 心 の 闇 を か た ど る 。 後 ま で の 形 見 に な る よ う に 。 1 7 3 桜 花 散 り か ひ く も れ 老 い ら く の 来 む と い ふ な る 道 ま が ふ が に ( 古 今 ・ 賀 ・ 三 四 九 在 原 業 平 ) 物 語 で は 、 蔵 人 少 将 が 、 恋 慕 す る 大 君 を か い ま 見 て の 思 い の ち 桜 花 よ 、 散 り 交 っ て 空 を 曇 ら せ よ 。 老 齢 の 訪 れ 来 る と 人 々 の 参 院 を 間 近 に 控 え て い る 大 君 で あ る だ け に 、 少 将 に は 「 後 言 う 道 が 、 そ れ に よ っ て 隠 さ れ て 分 ら な く な る よ う に 。 の 形 見 に 」 も し た い 気 持 で あ る 。 折 り て み ば 近 ま さ り せ よ 桃 の 花 思 ひ ぐ ま な き 桜 詞 書 に よ れ ば 、 太 政 大 臣 藤 原 基 経 の 四 十 賀 で の 歌 。 「 散 る 」 ( 紫 式 部 集 ) 「 曇 る 」 「 老 い ら く 」 な ど 不 吉 な 語 を 否 定 的 に 用 い て 、 祝 賀 惜 し ま じ 手 折 っ て み た ら 近 ま さ り す る よ う で あ っ て ほ し い 、 桃 の 花 よ 。 の 気 持 を 表 し た 歌 で あ る 。 華 麗 さ の 中 に 一 抹 の 憂 愁 を 封 じ ひ と す ぐ 散 る よ う な 、 他 人 の 心 を 思 い や ら ぬ 桜 は 惜 し む ま い こ め た 表 現 に 注 意 さ れ よ う 。 物 語 で は 、 桜 の 咲 き 散 る 三 月 - も . ど の ぶ た か の 風 情 を か た ど り 、 桜 花 の 下 で の 姫 君 た ち の 囲 碁 に 興 ず る 夫 宣 孝 へ の 贈 歌 で あ る 。 「 近 ま さ り 」 は 近 づ け ば 近 づ く ほ 場 面 へ と 連 な る 。 な お 、 『 源 氏 釈 』 な ど 古 注 の 一 部 は 、 「 桜 ど す ぐ れ て 見 え る 意 。 「 思 ひ ぐ ま な し 」 は 相 手 の 気 持 を 顧 み な い 意 。 和 歌 に は あ ま り 詠 ま れ な い 桃 を 、 開 花 期 間 の 長 咲 く 桜 の 山 の 桜 花 散 る 桜 あ れ ば 咲 く 桜 あ り 」 ( 出 典 未 詳 、 さ ゆ え に 称 揚 し た 歌 で あ る 。 物 語 で は 、 大 君 の 歌 の 、 桜 を 四 八 〇 ハ ー 下 段 ) を 掲 げ る 。 ・ ・ 川 花 鳥 の 色 を も 音 を も い た づ ら に も の う か る 身 は 「 思 ひ ぐ ま な き 」 花 と 見 る 発 想 が 、 こ の 歌 と 共 通 し て い る 。 覧 90 . ワ ( 後 撰 ・ 夏 ・ = 一 = 藤 原 雅 正 ) 一 す ぐ す の み な り 枝 よ り も あ た に 散 り に し 花 な れ ば 落 ち て も 水 の す が の の た か よ ゅ う う つ 歌 ( 古 今 ・ 春 下 人 一 菅 野 高 世 ) 花 の 色 を も 見 ず 鳥 の 声 を も 聞 か ず 、 ど こ と な く 憂 鬱 な わ が 身 泡 と こ そ な れ は 、 せ つ か く の 季 節 を む だ に 過 す ば か り で あ る 。 枝 か ら も む だ に 散 っ て し ま っ た 花 だ か ら 、 流 れ に 落 ち て か ら れ い ぜ い い ん も 水 の 泡 と な っ て む な し く 消 え る ほ か な い 前 出 ( ↓ 薄 雲 団 四 一 七 ハ ー 上 段 な ど ) 。 物 語 で は 、 大 君 が 冷 泉 院 に 入 る こ と に 賛 成 し か ね る 兄 た ち の 一 一 = ロ 葉 。 花 の 色 、 鳥 の 声 「 あ た 」 は む だ の 意 。 こ こ で は 、 実 を 結 ぶ こ と な く 散 る の

完訳 日本の古典 第二十一巻 源氏物語 ㈧


491 引 歌 一 覧 あ さ け 眺 め た 戸 外 の 光 景 を 、 こ の 歌 を ふ ま え て 「 例 の 、 柴 積 む 舟 我 が 背 子 が 朝 明 の 姿 よ く 見 ず て 今 日 の 間 を 恋 ひ ワ 3 1 ( 万 葉 ・ 巻 十 一 一 ・ 天 四 一 作 者 不 明 ) の か す か に 行 き か ふ 跡 の 白 波 」 と 叙 述 。 「 例 の 」 と あ る よ 暮 ら す か も あ の 人 の 、 夜 明 け 方 帰 っ て 行 く 姿 を よ く も 見 な か っ た の で 、 つ に 、 か っ て 薫 も 「 あ や し き 舟 ど も に 柴 刈 り 積 み : ・ 」 ( 橋 今 日 は 一 日 中 恋 い 暮 す こ と だ 。 姫 一 一 七 ハ ー ) と 眺 め た 、 宇 治 固 有 の 、 世 の 無 常 を 直 感 さ せ お う せ る よ う な 光 景 で あ る 。 し か し 、 薫 の 場 合 が 「 : ・ 誰 も 思 へ ば 前 出 ( ↓ タ 顔 田 四 四 六 ハ ー 上 段 ) 。 物 語 で は 、 中 の 君 と の 逢 瀬 を 同 じ ご と な る 世 の 常 な さ な り 」 と 無 常 が 強 調 さ れ る の に 対 終 え て 帰 る 匂 宮 の 麗 姿 。 こ こ で そ れ に 見 と れ る の は 、 中 の し て 、 こ の 匂 宮 の 場 合 は 「 目 馴 れ ず も あ る 住 ま ひ の さ ま か 君 本 人 で は な く 、 女 房 た ち で あ る 。 伊 勢 の 海 に 釣 す る 海 人 の 泛 子 な れ や 心 ひ と つ を な 」 と 、 耽 美 的 な 感 動 が 強 調 さ れ て い る 。 匂 宮 の 「 色 な る ( 古 今 ・ 恋 一 ・ 五 0 九 読 人 し ら ず ) 御 心 に は を か し く 」 思 わ れ た と さ れ る 。 定 め か ね つ る な れ . 1 私 は 伊 勢 の 海 で 釣 を す る 海 人 の 浮 子 で で も あ ろ う か 、 た っ た ち は や ぶ る 宇 治 の 橋 守 汝 を し ぞ あ は れ と は 思 ふ ( 古 今 ・ 雑 上 ・ 九 0 四 読 人 し ら ず ) 一 つ の 心 を ふ ら ふ ら さ せ て 、 決 心 の つ き か ね る こ と だ 。 年 の 経 ぬ れ ば 宇 治 の 橋 守 よ 、 特 に あ な た は 親 し み を お ば え る こ と だ 。 知 り 前 出 ( ↓ 葵 三 八 一 ハ ー 下 段 ) 。 物 語 で は 、 微 行 を 禁 じ ら れ て 合 っ て か ら で も 、 た い そ う 年 月 が た っ て し ま っ た の だ か ら 。 い る 匂 宮 が 、 宇 治 訪 問 へ と 心 は や る 気 持 を 語 る 。 訪 ね る べ き か ど う か 「 心 ひ と っ 」 を 定 め か ね る 心 境 で あ る 。 長 寿 を 祝 う 歌 。 「 ち は や ぶ る 」 は 枕 詞 。 「 宇 治 の 橋 守 」 は 、 そ で は っ し ぐ れ 奈 良 朝 以 前 か ら 置 か れ て い た と い う 。 物 語 で は 、 匂 宮 の 眺 ・ ・ 5 初 時 雨 ふ る の 山 里 い か な ら む 住 む 人 さ へ や 袖 の ( 新 千 載 ・ 冬 ・ 五 究 読 人 し ら ず ) め る 夜 明 け の 宇 治 の 光 景 の 一 環 と し て 叙 述 。 こ の 歌 を ふ ま 濡 る ら む ふ る 初 時 雨 の 降 る 今 日 、 布 留 の 山 里 は ど ん な だ ろ う か 。 そ れ を 想 え て い る だ け に 、 古 び た 宇 治 橋 の 哀 趣 が 表 現 さ れ て い る 。 む し ろ こ ろ も か た し . 0 像 す る 者 は も ち ろ ん 、 そ こ に い つ も 住 ん で い る 人 ま で が 、 物 さ 筵 に 衣 片 敷 き 今 宵 も や 我 を 待 つ ら む 宇 治 の 橋 ワ し 1 ( 古 今 ・ 恋 四 ・ 六 八 九 読 人 し ら ず ) 思 い の 涙 で 袖 が 濡 れ て い る こ と だ ろ う 。 前 出 ( ↓ 四 七 九 ハ ー 上 段 ) 。 物 語 で は 、 匂 宮 の 、 中 の 君 へ の 贈 「 降 る 」 「 布 留 」 の 掛 詞 。 「 布 留 」 は 大 和 国 の 歌 枕 で 、 訪 ね 歌 「 中 絶 え む ・ : 」 に 、 こ れ が ふ ま え ら れ た 。 匂 宮 に と っ て る 人 も ま れ な 古 び た 山 里 を 連 想 さ せ る 。 物 語 で は 、 薫 が 匂 中 の 君 は 、 宇 治 を 代 表 す る 女 君 「 宇 治 の 橋 姫 」 と な っ て い 宮 に 、 宇 治 訪 問 を け し か け る 叙 述 。 折 か ら 「 時 雨 め き て か る 。 前 項 の 引 歌 と も ひ び き あ う 表 現 で あ る 。 き く ら 」 す こ ろ 、 山 里 の 女 君 が ど ん な に 物 思 い で あ ろ う か こ よ ひ つ り

完訳 日本の古典 第二十一巻 源氏物語 ㈧


175 総 一 風 が 秋 の 到 来 を 告 げ る 。 そ の 秋 は 悲 哀 の 季 節 。 故 八 の 宮 の 一 周 忌 近 い 今 年 の 秋 は と り わ け 悲 し い 。 ニ 宮 の 死 は 昨 年 八 月 二 十 日 ご ろ 。 ↓ 椎 本 〔 七 〕 。 一 周 忌 の 法 会 の 準 備 。 三 故 宮 の 法 の 友 薫 、 師 の 阿 闍 梨 。 み み な あ ま た 年 耳 馴 れ た ま ひ に し 川 風 も 、 こ の 秋 は い と は し た な 四 姫 君 た ち を さ す 。 一 〕 八 の 宮 の 一 周 忌 近 五 経 机 の 覆 い や 経 典 の 装 飾 。 し 薫 、 大 君 に 訴 え る く も の 悲 し く て 、 御 は て の こ と い そ が せ た ま ふ 。 お は か た 六 薫 や 阿 闍 梨 な ど 、 他 か ら の お 世 話 が な か っ た と し た ら 。 あ ざ り セ 薫 自 身 も 。 の あ る べ か し き こ と ど も は 、 中 納 一 一 一 一 口 殿 、 阿 闍 梨 な ど そ 仕 う ま つ り た ま ひ け る 。 五 〈 今 日 を 限 り に 喪 服 を 脱 が れ る 。 四 き ゃ う こ こ に は 法 服 の こ と 、 経 の 飾 り 、 こ ま か な る 御 あ っ か ひ を 、 人 の 聞 こ ゆ る に 従 薫 は 、 新 し い 衣 装 な ど を 贈 る か 。 九 名 香 ( 仏 に 奉 る 香 ) を 供 え た 机 い と な う し ろ み ひ て 営 み た ま ふ も い と も の は か な く あ は れ に 、 か か る よ そ の 御 後 見 な か ら ま し の 四 隅 に 垂 す 組 糸 。 ま た は 名 香 を 紙 に 包 み 、 そ の 上 を 結 ぶ 五 色 の 糸 。 す か ば と 見 え た り 。 み づ か ら も 参 で た ま ひ て 、 今 は と 脱 ぎ 棄 て た ま ふ ほ ど の 御 と 一 0 「 身 を 憂 し と 思 ふ に 消 え ぬ も の な れ ば か く て も 経 ぬ る 世 に こ そ あ み や う が う り け れ 」 ( 古 今 ・ 恋 五 読 人 し ら ず ) 。 ぶ ら ひ 浅 か ら ず 聞 こ え た ま ふ 。 阿 闍 梨 も こ こ に 参 れ り 。 名 香 の 糸 ひ き 乱 り て 、 = 糸 繰 り 台 。 角 「 か く て も 経 ぬ る 」 な ど 、 う ち 語 ら ひ た ま ふ ほ ど な り け り 。 結 び あ げ た る た 三 名 香 の 糸 を 作 っ て い る の だ と 。 一 三 「 よ り あ は せ て 泣 く な る 声 を 糸 す だ れ き ち ゃ う に し て わ が 涙 を ば 玉 に ぬ か な む 」 た り の 、 簾 の つ ま よ り 几 帳 の 綻 び に 透 き て 見 え け れ ば 、 そ の こ と と 心 得 て 、 ( 伊 勢 集 ) 。 作 者 伊 勢 は 古 今 集 時 代 ず 薫 「 わ が 涙 を ば 玉 に ぬ か な ん 」 と う ち 誦 じ た ま へ る 、 伊 勢 の 御 も か う こ そ は あ の 女 流 歌 人 。 ↓ 桐 壺 田 二 七 ハ ー 注 一 一 。 一 四 御 簾 の 中 の 姫 君 た ち 。 一 五 「 わ が 涙 を ば : ・ 」 の 歌 に つ い て 。 り け め と を か し く 聞 こ ゆ る も 、 内 の 人 は 、 聞 き 知 り 顔 に さ し 答 へ た ま は む も っ あ げ ま き ほ ふ ぶ く ほ こ ろ 六 の り

完訳 日本の古典 第二十一巻 源氏物語 ㈧


目 の 前 に こ ば れ 落 ち た の だ っ た 。 新 妻 の 手 枕 を し は じ め た 今 、 一 夜 で も 逢 わ ず に い る こ と が で き よ う か 。 憎 く も な い の に 。 前 出 ( ↓ 須 磨 3 三 五 一 ハ ー 上 段 ) 。 物 語 で は 、 薫 の い や み な 言 前 出 ( ↓ 葵 三 八 五 ハ ー 上 段 ) 。 『 古 今 六 帖 』 ( 第 五 「 一 夜 隔 て た い 方 を 受 け 流 す 大 君 の 言 葉 。 薫 の 強 調 す る 宿 世 を 否 定 的 に 語 と ら え 、 こ の 歌 に よ っ て 「 知 ら ぬ 涙 の み 霧 り ふ た が る 心 る 」 ) に は 第 五 句 「 憎 か ら な く に 」 。 物 語 で は 、 中 の 君 と の 物 は じ め て の 逢 瀬 か ら 帰 る 匂 宮 の 心 を か た ど る 。 氏 地 」 だ と し 、 将 来 の こ と は 分 ら ぬ と 言 い こ め た 。 や ま し な こ は た 0 源 あ し び き の 山 鳥 の 尾 の し だ り 尾 の 長 々 し 夜 を ひ ワ 0 1 ・ ・ 7 山 科 の 木 幡 の 里 に 馬 は あ れ ど 徒 歩 よ り ぞ 来 る 君 ( 拾 遺 ・ 雑 恋 ・ 一 一 一 四 三 柿 本 人 麿 ) ( 拾 遺 ・ 恋 三 ・ 七 天 柿 本 人 麿 ) と り か も 寝 む を 思 へ ば 山 鳥 の 尾 の 、 そ の 垂 れ さ が っ た 尾 の 長 々 し い よ う に 、 秋 の 前 出 ( ↓ 四 八 二 ハ ー 下 段 ) 。 物 語 で は 、 匂 宮 の 宇 治 行 を 勧 め る 長 々 し い 夜 を 、 た っ た ひ と り で 寝 る こ と に な る の だ ろ う か 。 薫 の 言 葉 。 馬 で は ど う か と 勧 め た こ と に よ る 。 こ こ ろ ) 一 こ ろ ワ 朝 1 世 の 人 の 心 々 に あ り け れ ば 思 ふ は つ ら し 憂 き は 前 出 ( ↓ タ 霧 三 九 九 ハ ー 上 段 ) 。 物 語 で は 、 薫 が 大 君 に 近 づ き ( 古 今 六 帖 ・ 第 五 「 相 思 は ぬ 」 ) な が ら 、 何 事 も な い ま ま に 夜 明 け を 迎 え よ う と す る 状 況 を 頼 ま る 世 の 人 の 心 は さ ま ざ ま な も の だ っ た か ら 、 自 分 の 頼 み に 思 う 薫 の 気 持 に 即 し て 「 山 鳥 の 心 地 し て 明 か し か ね た ま ふ 」 と 相 手 は 恨 め し く 、 つ ら く 思 う 相 手 が 頼 み に 思 わ れ た り す る 。 す る 。 一 本 、 結 句 「 頼 ま ず 」 。 物 語 で は 、 薫 が 、 中 宮 方 の 女 房 た ・ 跚 ・ 明 け ぐ れ の 空 に そ 我 は ま よ ひ ぬ る 思 ふ 心 の ゆ か ( 拾 遺 ・ 恋 一 一 ・ 七 三 六 源 順 ) ぬ ま に ま に ち の 多 様 な 心 々 を 思 う 気 持 。 な お 引 歌 と し て 認 め ら れ な い 夜 明 け 前 の 薄 暗 い 空 の も と で 私 は 心 ま ど っ て し ま う 。 満 た さ か も し れ な い が 、 女 房 た ち の さ ま ざ ま な 内 心 を 「 を か し く れ ぬ 思 い の た め に 。 も あ は れ 」 と す る 点 で 、 引 歌 表 現 と み た い 。 詞 書 に 「 女 の も と よ り 暗 き に 帰 り て 遣 は し け る 」 と あ り 、 ・ ・ 5 世 の 中 を 何 に た と へ む 朝 ば ら け 漕 ぎ ゅ く 舟 の あ き め ぎ め し や み ま ん せ い ( 拾 遺 ・ 哀 傷 ・ 一 三 一 一 七 沙 弥 満 誓 ) と の 白 波 後 朝 の 歌 。 物 語 で は 、 薫 の 「 し る べ せ し : ・ 」 の 歌 に ふ ま え こ の 世 の 中 を 何 に 喩 え よ う か 。 朝 ほ の ば の と 明 け か か る こ ろ 、 ら れ 、 匂 宮 の 案 内 役 で あ る 自 分 の ほ う が か え っ て 心 ま ど う 水 の 上 を 漕 い で 行 く 小 舟 の 跡 に 残 る 白 波 の よ う に 、 生 れ て は と す る 。 こ れ は 、 逢 わ ざ る 恋 ゆ え の 「 ま よ ひ 」 で あ る 。 に ひ た ま く ら す ぐ 消 え る は か な さ で あ る 。 ・ ・ 9 若 草 の 新 手 枕 を ま き そ め て 夜 を や 隔 て む 憎 く あ ら な く に ( 万 葉 ・ 巻 十 一 ・ 一 一 五 四 一 一 作 者 不 明 ) 物 語 で は 、 匂 宮 が 中 の 君 と 一 夜 を と も に 過 し 、 た と