少佐 - みる会図書館


検索対象: アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1
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1. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

なると、クレイトンは、これからユーストン駅へいくとちゅうで、リッチ少佐のところへ よってゆくつもりだといいだした。 し 「そのとき、クレイトン氏のそぶりはどんなでしたか ? ふさいでいるようでしたか、そ れとも、元気だった ? しよ、つさ 少佐は考えた。もともとロの重い男とみえて、答えたのはかなりたってからだった。 じよう 「かなり上きげんに見うけられましたがね。」 あいだがら 「リッチ少佐と気まずい間柄になっているというようなことは、 か ? 」 「とんでもない。あの二人は親友どうしでした。 しようさ なかしっと 「奥さんとリッチ少佐の仲を嫉妬しているようなことは ? しようさ か 少佐はみるみる顔をまっ赤にした。 簿 しんぶんきじ 「あんたは新聞記事なんかを信じるんですか ? あんなのは、うそっぱちとあてこすりば件 の かりだ。むろんあの男は嫉妬なんかしていなかった。あのときだって、こういったほどで ワ しゆっせき すーー・『当然マーガリータは出席するが』とね。 しようさ いつもとかわりありません 「わかりました。で、その夜のリッチ少佐のようすですが とうぜん しようさ しっと しんゅう えき いっていませんでした しようさ

2. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

ぎろん いな点はほとんどなかったから、議論をたたかわせても無意味と思われたのである。 じけん しようさ ふさい クレイトン夫妻とリッチ少佐は、かなり長いあいだのつきあいだった。事件の起きた三 うちわあっ 月十日に、クレイトン夫妻はリッチ少佐の家にまねかれ、内輪の集まりに顔をだすことに しようさ さけ なっていた。ところが、その日の七時半ごろ、べつの友人のカーティス少佐というのと酒 をくみかわしていたクレイトンは、思いがけない急用ができてスコットランドにいくこと いいだした。 になり、八時の汽車でたっと じじようせつめい 「そんなわけだから、とちゅうでちょっとジャックのところに立ちょって、事情を説明す とうぜんしゆっせき るだけの時間しかないんだ。もっともマーガリータは、当然、出席するがね。・ほくだけが しつれい 失礼することになるが、ジャックはわかってくれるだろう。」 クレイトンはそのことばどおりに、八時二十分まえにリッチ少佐の家をおとずれた。あ しようさがいしゆっさき いにく少佐は外出先からもどっていなかったが、クレイトン氏をよく知っている少佐の じゅうばく 従僕は、おはいりになってお待ちになっては、とすすめた。それにたいしクレイトン氏件 いっぴっ ざんねん は、残念ながら時間がないので、ちょっと入れてもらって、少佐に一筆書きのこしてゆく口 えき だけにすると答え、駅へいくとちゅうで立ちょったのだとつけくわえた。 きやくまあんない じゅうばく そこで従僕は、彼を客間へ案内した。 きゅ、つよ、つ ゅうじん しようさ

3. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

ことだけである。 けいしちょう けいぶ でんわ その日の朝、もっと早い時刻に、ボワロはロンドン警視庁のジャップ警部と電話でうち しようさ けつか あわせていた。その結果、わたしたちがリッチ少佐の住まいをおとずれたときには、従僕 ほ、つもん ーゴインがわたしたちの訪問を待っていた。 ようりようえ しようげん めいかい 彼の証言は、きわめて要領を得ていて、明快そのものだった。 しようさ クレイトン氏がたずねてきたのは、八時二十分まえ。 リッチ少佐はあいにく外出中で、 の 、 . し・・カ子 / . し クレイトン氏は、このあとすぐ汽車に乗らねばならぬので、待っているわけこま、 きやくま 一筆書きのこしたいといって、客間にとおされた。 ふろ ーゴインは風呂のしたくにとりかかったので、水音のため、じっさいにはあるじの帰っ しようさ てきたのを聞いていない。それにもちろんリッチ少佐は、自分の鍵をもっているから、そ おもてど きおく れで表戸をあけてはいったのにちがいない。バ ーゴインの記憶では、クレイトン氏をとお してからおよそ十分ほどして、リッチ少佐によばれ、タバコを買ってくるようこ、 冫ししつかっ しようさ きやくま た。いや、そのときは客間にははいっていない。 リッチ少佐が戸口に立っていて、そこで 用をいいつけたからだ。 きやくま 五分後にタ。ハコを買って帰り、こんどは客間にはいったが、そのときは主人のほかには いっぴっ し かぎ しゅじん がいしゆっちゅう じゅうほく

4. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

「なぜです ? 」 「なぜ、とおっしゃいますと ? 」 びしよう 彼女のかるい狼狽ぶりに、ボワロはうっすら微笑をもらした。 「なぜ殺してはいないのです ? 彼はくりかえした。 「おっしやる意味がよくわかりませんけど。」 たんじゅんしつもん けいさっ べんごし 「単純な質問ですよ。警察、弁護士、だれもがおなじことをきくでしよう なぜリッチ しようさ し ころ せいはんたい 少佐はクレイトン氏を殺したのか ? だからわたしは正反対のことをおたずねするので すーーーなぜリッチ少佐はクレイトン氏を殺さなかったのか、とね。」 かくしん りゅう 「つまりーーーあたくしがそう確信する理由はなにかとおっしやるんですの ? そのーー・あ しようさ たくしは知っているんです。それだけよくリッチ少佐というかたを知っているんです。」 しようさ 「それだけよくリッチ少佐というかたをごそんじ、とね。」 むひょうじよう ボワロは無表情にくりかえした。 彼女のほおの赤みがいっそう濃くなった。 「そうですわ、みんながそういうにちがいありませんーーーだれもがそう思うでしようー ええ、わかっていますわー ころ ろうばい こ 79 ボワロの事件簿

5. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

「さよう、じつのところスペンス夫妻は、もつばら夫婦で踊りたがりましてね。あの二人、 もっか ねっちゅう 目下ダンスに熱中しているんです・ーーーこったステップとかなんとか、いろいろやってま すよ。」 「すると、クレイトン夫人はおもにリッチ少佐と踊ったことになりますな ? 」 「そういうわけです。」 「で、そのあとポーカーをなさった ? 「ええ。」 「おひらきになったのは ? 」 「わりと早い時間でしたね。十二時ちょっとすぎだったかな。 「みなさん、いっしょにお帰りになった ? 」 あいの 「ええ。じつのところ、タクシーに合乗りしましてね。まずクレイトン夫人をおろし、つ ふさい ぎにわたし、最後にスペンス夫妻がケンジントンまでいったはすです。」 ざいたく つぎにわたしたちがたずねたのは、スペンス家だった。在宅していたのは夫人のほうだロ しようさ けだったが、 / 彼女の話は、カーティス少佐のそれとこまかなところまで一致した。ちがっ しようさ うん ていた点といえば、リッチ少佐のカード運の強さを、いくらかいやみまじりに聞かされた ふじん ふさい しようさ おど ふうふおど ふじん ふじん

6. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

しようさ 「リッチ少佐です。あたくしがいちばん負けて、カーティス少佐がそのつぎ、スペンスさ が ふさい んご夫妻がちょっと勝ってーーーでも、ほとんどリッチ少佐のひとり勝ちでしたわ。」 ーティーがおひらきになったのは、何時ごろ ? 」 しつれい 「十二時半ごろだったと思います。みんなそろって失礼しましたの。」 「なるほど。」 しあん ボワロはだまりこみ、思案にふけった。 やく 「もっとお役にたてればいいんですけどーと、クレイトン夫人はいった。「なにしろお話し できることがあまりございませんようで。 「現在に関してはね、たしかにそうかもしれません。ですが、過去に関してはいかがです、 おく ・奥さま ? ・ 「過去ですって ? 」 「そうです。なにかお心あたりのある出来事はありませんでしたか ? ー 彼女はほおを赤らめた。 じさっ 「。ヒストル自殺をしたあのいやらしい小男のことをおっしやってるんですの ? あれはあ たくしのせいではありませんわ、ボワ口さん。ほんとにあたくしの責任じゃないんです。 げんざい かん か でき ) 」と ふじん せきにん 85 ボワロの事件簿

7. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

でしたか ? 」 「せんぜんかわったようすは見えませんでした。」 「で、クレイトン夫人は ? やはりふだんのとおりでしたか ? 」 しよ、つさ しあん 「さよう」と、少佐は思案して、「そういわれてみれば、ふだんよりいくらかロ数がすくな かった。つまり、なにかほかのことを考えているような : : : 」 しようさ 「最初にリッチ少佐の家についたのは ? 」 ふさい 「スペンス夫妻です。わたしがいったときには、もうきていました。じつをいうと、わた ふじん しはクレイトン夫人をさそっていこうとして、そっちへまわってみたんですが、もうでか けたあとでした。ですからわたしはちょっとおくれていったのです。」 「で、なにをしてすごされました ? みなさん、ダンスをなさった ? ポーカーは ? 「両方ともです。ダンスがさきでしたが。」 「おあつまりになったのは五人でしたな ? 「そうです。しかし、その点はかまわんのです、わたしはダンスはやりませんから。それ れんちゅうおど でレコード係にまわって、ほかの連中が踊りました。」 「だれとだれが、おもに組みましたか ? 」 がかり ふじん くちかず

8. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

しようさ きやくま じゅうばく その五分後、客間のドアがあいて、従僕をよぶ声がした。あるじのリッチ少佐で、従僕 の気がっかないうちに帰ってきていたものらしく、ちょっとひと走りしてタバコを買って じゅうほく きやくま きてくれないかというのだった。 / 従僕がそれを買ってもどってきてみると、客間にはある じゅうばく じひとりがいた。当然クレイトン氏はもう帰ったのだろうと従僕は考えた。 しよう きやく ふじん そのうち、客たちがあつまってきはじめた。顔ぶれは、クレイトン夫人、カーティス少 ふじん いちどう 佐、スペンス氏とその夫人で、一同はレコードをかけてダンスをし、ポーカーをしてその 夜をすごした。十二時ちょっとすぎに、客はひきあげた。 そうじ じゅうばく よくあさきやくま かっしよく 翌朝、客間の掃除をはじめて、従僕はぎようてんした。じゅうたんが濃い褐色のしみで しようさ と、つよ、つ 変色していたからだ。その場所は、リッチ少佐が東洋から買ってき、バグダッドの櫃とよ ぜんめん んでいる箱の下と、その前面にあたるところだった。 じゅうばく ほんのうてきひっ 本能的に櫃のふたをあけてみた従僕は、おどろいて腰をぬかしそうになった。箱のなか お しんぞう っ には、心臓をひと突きにされた男の死体が、二つ折りの形でおしこまれていたのだ。 じゅうばく けいかん きようふ じゅんかい 恐怖にあえぎながら、従僕は外へとびだすと、おりから近くを巡回していた警官をつ し はんめい し。よ、つさ たいほ かまえてきた。死体はじきにクレイトン氏と判明し、そのあとすぐにリッチ少佐が逮捕さ れた。 へんしよく さ し とうぜん し したい ふた こし ひっ

9. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

じんころ しようさ はんこうしめ 人を殺してはいない。しかし、あらゆる証拠が少佐の犯行を示していることはごそんじで けつかん しよう。あなた個人として、その証拠になにか欠陥があるとお思いですかな ? 、え。あるとは思いません。」 しゅじん 「ご主人がスコットランドにいくことを、最初にあなたに告げられたのは、いつでした か ? 」 ちゅうしよく 冫をし力ないと申しておりま 「昼食のすぐあとです。気がすすまないが、いかないわけこま、 ようけん ひょうかがく した。なにか土地の評価額についての用件だったようですわ。」 「で、そのあとは ? 」 クラプへいったんだと思います。それきり 「外出しました せん。」 しようさ 「さて、ではリッチ少佐ですがーーーその夜のようすはどんなでしたか ? い ありませんでしたかな ? 」 「ええ、そう思います。」 「はっきりおっしゃれませんか ? マーガリータはまゆをよせた。 がいしゆっ こじん しようこ しようこ っ 一度も会っておりま つもとかわり 83 ボワロの事件簿

10. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

づくえ た。むろん即死だったと思われる。ナイフはリッチ少佐のもので、いつもは書きもの机に もち しもん おいてあった。指紋はなく、ぬぐったか、でなくば、あらかじめ柄にハンカチをまいて用 いたものと思われる。死亡時刻は、七時から九時までのあいだであろう。 はんこう 「たとえば、十二時すぎの犯行と考えるのはむりですかな ? 」と、ボワロはたずねた。 「それは考えられないとはっきり申しあけられます。せいぜいおそくても十時まででしょ だとう うが、まず七時半から、八時までというのが、もっとも妥当でしような。」 じきょ きたく 医者のところを辞去して帰宅すると、ボワロはいった。 「どうやら第二の仮説がうかびあがってきたようだよ。きみにそれがわかったかな、ヘイ ねん ねん スティングズ。わたしにはひじようにはっきりしてるんだが、念には念をいれろで、あと ひとつだけ、たしかめておかなきゃならないことがある。」 「くやしいが、さつばりわからないな。」わたしはいっこ。 どりよく 「努力したまえ、ヘイスティングズ。考えてみるんだ。」 「よかろう。ーわたしはいった。「ではとーー・ー七時四十分には、クレイトン氏は生きてびん しようさ びんしていた。最後に生きている彼を見たのは、リッチ少佐で 「ということになっているだけだ。」 いしゃ そくし かせつ しようさ