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検索対象: 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩
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1. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

19 浮舟 ( 現代語訳一一五九ハー ) かに薫に世話される女君の存在。 しからぬけはひにてゐてはべる」と聞こゅ。匂宮「をかしきことかな。何心あ 宅大内記の報告に興をそそられ、 けしき りて、いかなる人をかは、さて据ゑたまひつらん。なほいと気色ありて、なべ女の素姓を確かめようとする。 一九 一 ^ 薫には謹厳ぶりながら好色の みぎのおとど ての人に似ぬ御心なりや。右大臣など、この人のあまりに道心にすすみて、山下心もあると、皮肉ったほめ言葉。 一九タ霧。真相を知らずに、薫の よる ニ 0 かろがろ 道心を批判しているとする。 寺に夜さへともすればとまりたまふなる、軽々しともどきたまふと聞きしを、 ニ 0 この「なり」は、伝聞の意。 げに、などか、さしも仏の道には忍び歩くらむ、なほ、かの古里に心をとどめニ一以下、宮自身の感想。なるほ どなぜ人に隠れ寺参りをするのか。 たると聞きし、かかることこそはありけれ。、。 しつら、人よりはまめなるとさか一三大君の思い出の地。↓一七ハー。 ニ三こんなわけだった。はじめて 薫の心の真相を見いだした思い。 しがる人しも、ことに人の思ひいたるまじき隈ある構へよ」とのたまひて、 ニ四他人よりまじめだと分別顔す おば とをかしと思いたり。この人は、かの殿にいと睦ましく仕うまつる家司の婿にる人のほうがかえって。 一宝大内記のこと。薫に親しく仕 うち なむありければ、隠したまふことも聞くなるべし。御心の中には、、かにしてえる家司 ( 家政を司る官 ) の婿。 ニ六なんとか噂の女を、過日言い ニ七 この人を見し人かとも見定めむ、かの君の、さばかりにて据ゑたるは、なべて寄った女かどうか確かめたい気持。 毛噂の女の魅力を思う。 のよろし人にはあらじ、このわたりこま、、ゝ。 レ。しカて疎からぬにかはあらむ、、いを夭中の君が薫としめし合せて、 噂の女を隠したのも悔しい。「い かにして」以下の匂宮の心中叙述 かはして隠したまへりけるも、 いとねたうおばゅ。 三 0 が、おのずと地の文に転じた。 のりゆみないえん ただ、そのことを、このごろは思ししみたり、賭弓、内宴ニ九匂宮は、ただその女のことを。 〔六〕匂宮、宇治行きの 三 0 ともに正月行事。 つかさめし 計画を大内記に相談 など過ぐして心のどかなるに、司召などいひて人の心尽く三一春の任官の公事。 ニ九 あ むつ ニ四 ニ六

2. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

られんももの騒がしく、はじめの心に違ふべし、また、宮の御方の聞き思さむ後文に、浮舟を京に迎え取る心算。 一四浮舟を宇治訪問の際の慰めに。 ことも、もとの所を際々しう率て離れ、昔を忘れ顔ならん、いと本意なし」な一五日数のかかりそうな法会など にかこつけて浮舟を訪う心づもり。 ど思ししづむるも、例の、のどけさ過ぎたる心からなるべし。渡すべき所思し一六自分のたまさかの訪問で浮舟 の心を気長になれるよう仕向けて。 まうけて、忍びてそ造らせたまひける。 宅目だたぬようにするのが得策 であろう。↓東屋二 0 〇ハー ニ四 すこし暇なきゃうにもなりたまひにたれど、宮の御方には、天急に浮舟を迎えて。 〔三〕薫なお中の君に心 かたしろ 一九薫にとって浮舟は大君の形代。 寄せる中の君の境涯 なほたゆみなく心寄せ仕うまつりたまふこと同じゃうなり。ニ 0 中の君。彼女から、大君追慕 うしな の心を喪ったかと思われたくない。 見たてまつる人もあやしきまで思へれど、世の中をやうやう思し知り、人のあ = 一以下、語り手の薫への推測。 一三浮舟を京に移すべくその邸を。 ニ七 りさまを見聞きたまふままに、これこそはまことに、昔を忘れぬ心長さのなご ニ四以下、中の君への薫の親近。 ニ八 ニ五それを拝する女房らも。 りさへ浅からぬためしなめれとあはれも少なからず。ねびまさりたまふままに、 ニ六中の君は。以下、心中叙述。 , 一と 人柄もおばえもさま異にものしたまへば、宮の御心のあまり頼もしげなき時々毛亡き大君を忘れぬ薫の誠実さ で、後々まで厚情を保ち続ける例。 は、思はずなりける宿世かな、故姫君の思しおきてしままにもあらで、かくもニ ^ 薫は新年を迎えると二十七歳。 舟 ニ九亡き大君が妹の中の君と薫の の思はしかるべき方にしもかかりそめけんよと思すをりをり多くなん。されど、結婚を望んでいたこと。 三 0 三 0 匂宮の嫉妬から薫を遠ざける。 浮たいめ かた うちうち 対面したまふことは難し。年月もあまり昔を隔てゆき、内々の御心を深う知ら三一昔の事情を知らぬ新参の女房 の思惑。並の人なら以前の交際を ぬ人は、なほなほしきただ人こそ、さばかりのゆかり尋ねたる睦びをも忘れぬ忘れずに親交するのも似合いだが。 きはぎは 一九 ニ九 たが ニ六 むつ

3. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

53 浮舟 宅薫とはじめて契り交したこと。 めより契りたまひしさまも、さすがにかれはなほいともの深う人柄のめでたき 以下、浮舟の心に即し、「かかる ニ 0 うきことあたりから直接話法。 なども、世の中を知りにしはじめなればにや。「かかるうきこと聞きつけて思 天薫を「かれ」と呼ぶのは、匂宮 に親近感を抱いているから。 ひ疎みたまひなむ世こよ、、ゝ。ゝ し。しカて力あらむ。いっしかと思ひまどふ親にも、思 一九薫が男女の仲を最初に知った はずに心づきなしとこそはもてわづらはれめ。かく心焦られしたまふ人、はた、相手だからか。挿入句的な言辞。 ニ 0 薫が、匂宮との秘事を聞いて。 ニ一早く薫に迎えられるようにと。 かかるほどこそあらめ、また、か , っ いとあだなる御心本性とのみ聞きしかば、 一三匂宮。その浮舟恋慕が「心焦 ニ六 ニ七 ニハ かず られ」の語で繰り返されてきた。 ながらも、京にも隠し据ゑたまひ、ながらへても思し数まへむにつけては、か ニ三匂宮の「あだ心」は世間の定評。 ニ四熱中している間はともかく、 の上の思さむこと。よろづ隠れなき世なりければ、あやしかりし夕暮のしるべ やがて冷めてしまうだろう。 ばかりにだに、かうたづね出でたまふめり、まして、わがありさまのともかく一宝このまま匂宮に捨てられず。 ニ六↓五一ハー二行。 きず もあらむを、聞きたまはぬゃうはありなんや」と思ひたどるに、わが心も、瑕毛末長い思い人としての世話。 夭中の君への恩義。 ありてかの人に疎まれたてまつらむ、なほいみじかるべしと思ひ乱るるをりしニ九匂宮が二条院で出会っただけ の自分 ( 浮舟 ) を見出したこと。自 分を隠れようのない存在とみる根 も、かの殿より御使あり。 拠。「 : ・たまふめり」まで挿入句。 三ニ 三 0 自分が宮にかくまわれ京のど これかれと見るもいとうたてあれば、なほ一一 = ロ多かりつるを見つつ臥したまへ こかにいても薫にすぐ知られよう。 れば、侍従、右近見あはせて、「なほ移りにけり」など、言はぬゃうにて言ふ。三一薫。次@かの殿」も薫。 三ニ匂宮の長々しい文面の手紙。 かたち 侍従「ことわりそかし。殿の御容貌を、たぐひおはしまさじと見しかど、この三三浮舟の心が薫から匂宮に。 うへ 三三 ニ九 三 0 ニ玉

4. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

君が行く越の白山知らねども雪のまにまに跡はたづねむ 蓬生 3 一五五 ( 三六七 ) 君が代は天の羽衣まれにきて撫づとも尽きぬ巌なるらむ 澪標 3 一一一 ( 三六三 ) 君恋ふる心は千々に砕くるをなど数ならぬわが身なるらん タ霧一 0 六 ( 三九五 ) 君恋ふる心は千々に砕くれど一つも失せぬものにそありける タ霧一 0 六 ( 三九五 ) 君恋ふる涙の凍る冬の夜は心とけたるいやは寝らるる 空蝉田一 0 一 ( 四四四 ) 君しのぶ草にやつるる故里はまっ虫の音そ悲しかりける 蓬生 3 一六 = ( 三六九 ) 君ならで誰にか見せむ梅の花色をも香をも知る人そ知る 梅枝 3 一八七 ( 四 0 九 ) ・紅梅三六 ( 四七三 ) ・橋姫 3 九四 ( 四七七 ) 君に逢はむその日をいっと松の木の苔の乱れてものをこそ思へ 浮舟七四 ( 四三一 ) 君見ずて程のふるやの廂には逢ふことなしの草そ生ひける 須磨 3 一一 = ( 三五 0 ) 索君をいかで思はむ人に忘らせて問はぬはつらきものと知らせむ 歌 若紫田一会 ( 四五 0 ) 語君をおきてあだし心をわが持たば末の松山波も越えなむ 物 明石 3 八八 ( 三六一 ) ・浮舟六八 ( 四三一 ) 氏 源君を惜しむ涙落ちそふこの川の汀まさりて流るべらなり 須磨 3 三三 ( 三五三 ) ・明石 3 六 0 ( 三夭 ) 霧深き雲居の雁もわがごとや晴れせず物の悲しかるらむ 少女団一一八 ( 四 = 三 ) 草枕紅葉むしろにかへたらば心をくだくものならましゃ 蜻蛉囮一 = 三 ( 四三五 ) 雲の上も物思ふ春は墨染に霞む空さへあはれなるかな 薄雲団 ( 四一五 ) 雲居にてあひ語らはぬ月だにもわが宿過ぎて行く時はなし 帚木田六三 ( 四四一 ) 雲居にもかよふ心のおくれねば別ると人に見ゅばかりなり 明石 3 八九 ( 三六一 l) くやしくぞ汲みそめてける浅ければ袖のみ濡るる山の井の水 若紫田一八八 ( 四五一 ) ・葵一 0 九 ( 一一穴一 ) くら 冥きより冥き道にぞ入りぬべきはるかに照らせ山の端の月 御法一会 ( 四 0 一 ) 苦しくも降り来る雨か三輪の崎狭野の渡りに家もあらなくに 東屋一九五 ( 一穴一 ) 紅に色をば変へて梅の花香そことごとに匂はざりける 紅梅 3 三八 ( 四七三 ) 紅の濃染の衣下に着て上に取り着ばしるからむかも 紅葉賀七三 ( 三七七 ) 紅を色濃き花と見しかども人をあくだにうつろひにけり 末摘花三九 ( 三六九 ) 黒髪に白髪交じり老ゆるまでかかる恋にはいまだあはなくに 紅葉賀六八 ( 三七四 ) くもゐ

5. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

などいとこまやかなり。かくつぶつぶと書きたまへるさまの、紛らはさん方なて許す、という論理である。 = あなたが邸から姿を隠した時 きに、さりとて、その人にもあらぬさまを、思ひのほかに見つけられきこえたの、意想外だった夢のような思い 出話を、せめて話し合いたい 三自分ながらけしからぬと思う。 らむほどの、はしたなさなどを思ひ乱れて、いとどはればれしからぬ心は、一言 相手の出家の身を思い、自省する。 ひやるべき方もなし。さすがにうち泣きてひれ臥したまへれば、いと世づかぬ一三自省心から、他人の目を顧慮。 一四仏道の師として僧都を訪ねた が、その導きで、思いもかけぬ恋 御ありさまかなと見わづらひぬ。妹尼「いかが聞こえん」など責められて、浮舟 の山に踏み迷う、の意。 一五私は小君を、行方知れずのあ 「心地のかき乱るやうにしはべるほどためらひて、いま聞こえむ。昔のこと思 なたの忘れ形見としている意。 ひ出づれど、さらにおばゆることもなく、あやしう 、、かなりける夢にかとの一六昔の自分 ( 浮舟 ) と変った尼姿。 宅今まで以上に晴れやかならず み心も得ずなん。すこし静まりてや、この御文なども見知らるることもあらむ。沈んだ心には、言い表すべき言葉 もない。、 浮舟の心に即した地の文。 ニ四たが 今日は、なほ、持て参りたまひね。所違へにもあらむこ、 しいとかたはらいたか天薫を拒みながらも、昔ながら の筆跡にやはり動揺を禁じえない るべし」とて、ひろげながら、尼君にさしやりたまへれば、妹尼「いと見苦し一九妹尼の見る浮舟像。 ニ 0 しばらく休んで、いずれ後で。 三薫の手紙の「あさましかりし 橋き御事かな。あまりけしからぬは、見たてまつる人も、罪避りどころなかるべ 世の夢語」に照応。思いあたるふ 浮 しなど言ひ騒ぐも、うたて聞きにくくおばゆれば、顔も引き入れて臥したましもないとして、必死の逃げ口上。 夢 一三理解できるようにもなろう。 へり。 ニ三手紙の主、薫に返したい気持。 っ 0 ニ四手紙の届け先のまちがいかも。 一宝僧都や尼君をさす。 ニ 0 ふ

6. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

御心にこそと聞こえ動かして、几帳のもとに押し寄せたてまつりたれば、あ一浮舟を。この几帳のすぐ外に っ 0 小君がいる。↓前ハー四行。 れにもあらでゐたまへる、けはひこと人には似ぬ心地すれば、そこもとに寄り = 人心地もないような思いで。 ひと 語 三几帳の向こうの女の気配を紛 四 五 こころ 物て奉りつ。小君「御返りとく賜りて、参りなん」と、かくうとうとしきを、心れもなく姉だと小君は直感する。 氏 四薫からの手紙を。 源憂しと思ひて、急ぐ。 五姉の他人行儀の態度が情けな 。早く返書を得て帰りたい気持。 尼君、御文ひき解きて見せたてまつる。ありしながらの御六浮舟に、薫の手紙を。 〔一 0 〕浮舟、薫の手紙を 七昔のままの薫の筆跡と思う。 見、人違いと返事せず 手にて、紙の香など、例の、世づかぬまでしみたり。ほの薫の筆跡。↓浮舟五四ハー一一行。 ^ 何にでも感心したがる出過ぎ 者。妹尼など ( ↓手習一七三ハー七 かに見て、例の、ものめでのさし過ぎ人、いとありがたくをかしと思ふべし 行 ) 。以下、浮舟の心内とは無縁 九 そうづ の妺尼を揶揄する語り手の評言。 薫さらに聞こえん方なく、さまざまに罪重き御、いをば、僧都に思ひゆるしき 0 薫の使者として立ち現れたのは ゅめがたり こえて、今ま、、ゝ。、 。しカてあさましかりし世の夢語をだにと急がるる心の、我紛れもないわが弟である。しかし 浮舟は、弟に心開けば、薫らとの ながらもどかしきになん。まして、人目はいかに。 関係を蘇らせ、忌まわしい過去に 戻りかねないことを恐れる。肉親 と、書きもやりたまはず。 への懐かしさをも抑えるほかない。 九浮舟が匂宮と密通したこと、 のり 自殺しようとして失踪したこと、 薫法の師とたづぬる道をしるべにて思はぬ山にふみまどふかな 救われても素姓を隠していたこと、 ゅ この人は、見や忘れたまひぬらむ。ここには、行く方なき御形見に見るもの無断で出家したことなど。 一 0 僧都の恩義を受け庇護されて にてなん。 いる浮舟の罪を、僧都の徳に免じ ( 現代語訳四〇八ハー ) ふみ きちゃう 六 へ

7. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

したまふ。朝夕目馴れても、なほ今見む初花のさましたまへるに、大将の君は、宅匂宮。音楽などに堪能。 天目のさめるような匂宮の美し 一九 さにいまさらながら感嘆させられ いとさしも入り立ちなどしたまはぬほどにて、恥づかしう心ゆるびなきものに る趣。女房の感想。次の薫のあり おまへ みな思ひたり。例の、二ところ参りたまひて、御前におはするほどに、かの侍方と対比。 一九親しく奥まで出入りせぬので、 従は、ものよりのぞきたてまつるに、「いづ方にもいづ方にもよりて、めでた恥ずかしく打ち解けにくい人と。 ニ 0 薫と匂宮が、中宮のもとに。 き御宿世見えたるさまにて、世にそおはせましかし。あさましくはかなく心憂三かっての浮舟づきの女房。今 は中宮の下﨟女房。↓一三五ハー末。 かりける御心かな」など、人には、そのわたりのことかけて知り顔にも言はぬ一三存命なら薫と匂宮と、この高 貴な人のどちらかと結ばれて幸運 な人生を送っていただろうに。 ことなれば、心ひとつに飽かず胸いたく思ふ。宮は、内裏の御物語などこまや ニ三自分だって下﨟女房にならず かに聞こえさせたまへば、し にすんだろうに、との無念の気持。 、ま一ところは立ち出でたまふ。見つけられたてま ニ四宇治での出来事を。 つらじ、しばし、御はてをも過ぐさず心浅しと見えたてまつらじ、と思へば隠 = 五下﨟女房に甘んじなければな らぬ不満から、自分を重んじてく れぬ。 れた浮舟を語りたいが、語れない。 一宍宮中あたりの世間話。 蛉東の渡殿に、開きあひたる戸口に人々あまたゐて、物語など忍びやかにす毛薫をさす。 ニ ^ 侍従は薫に気づかれたくない。 むつ る所におはして、薫「なにがしをそ、女房は睦ましく思すべきや。女だにかくニ九浮舟の忌明け以前の出仕を。 蜻 三 0 薫は東の渡殿で。そのあたり に女房の局がある。 心やすくはあらじかし。さすがにさるべからんこと、教へきこえぬべくもあり。 三一私のように気のおけぬ者は。 ゃうやう見知りたまふべかめれ、 しいとなんうれしき」とのたまへば、いと答 = 三女の知らぬことをも教えよう。 三 0 ひむがし すくせ あ ニ九 ニ 0 ニセ ニ四 ニ六

8. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

源氏物語 52 り来にければ、心やすくもえ見ず。かくあやしき住まひを、ただかの殿のもて一浮舟は、匂宮の手紙を。 ニ今はこんなみじめな暮しだが。 四 なしたまはむさまをゆかしく待っことにて、母君も思ひ慰めたるに、忍びたる三薫の浮舟引取りをさす。 四表だった結婚の扱いではない としても、薫の本邸三条宮近くに。 さまながらも、近く渡してんことを思しなりにければ、し 、とめやすくうれしか 五以下、母君の心情と対処。 わらは るべきことに思ひて、やうやう人もとめ、童のめやすきなど迎へておこせたま六女房や女童を雇い入れる。浮 舟の京での生活のための準備。 ふ。わが心にも、それこそはあるべきことにはじめより待ちわたれ、とは思ひセ浮舟自身も、京住いこそ。 ^ 無理押し一途のお方。匂宮。 おほむ ながら、あながちなる人の御事を思ひ出づるに、恨みたまひしさま、のたまひその宮への執着を断ち切ろうとし て断てない。「面影」「夢」に注意。 九春雨の降る晩春三月になった。 しことども面影につとそひて、いささかまどろめば、夢に見えたまひつつ、 あきら 一 0 宇治通いもかなわぬと諦めて。 まゆ = 「たらちねの親のかふ蚕の繭 とうたてあるまでおばゅ。 ごもりいぶせくもあるか妹にあは 雨降りやまで、日ごろ多くなるころ、いとど山路思し絶えずて」 ( 拾遺・恋四柿本人麿 ) 。 三 0 〕匂宮と薫から文あ 三語り手の評。宮の両親、帝と り浮舟の悩み深し てわりなく思されければ、親のかふこはところせきものに母中宮に対して畏れ多いとする。 一三「眺め」「長雨」の掛詞。「そな た」は宇治。「空さへ : こは、涙に こそと思すもかたじけなし。尽きせぬことども書きたまひて、 くれるだけでなく空までも曇る意。 一四気楽な散らし書きが、かえっ 匂宮ながめやるそなたの雲も見えぬまで空さへくるるころのわびしさ てみごと。匂宮の好色らしい美質。 筆にまかせて書き乱りたまへるしも、見どころありをかしげなり。ことにいと一五浮舟の至らぬ心には。 一六匂宮の手紙の一途な心に対し て、浮舟の恋心もつのりそうだが。 ししとかかる心を思ひもまさりぬべけれど、はじ 重くなどはあらぬ若き心地こ、、

9. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

少なにて、「聖だっといひながら、こよなかりける山伏心かな。さばかりあは一六匂宮の心中。聖ぶってはいて も途方もない山伏心というもの。 れなる人をさておきて、心のどかに月日を待ちわびさすらむよと思す。例は、薫の宇治の山里通いを皮肉って、 山野に修行する山伏だとする。 さしもあらぬことのついでにだに、我はまめ人ともてなし名のりたまふをねた宅あんなに誑わいい人、浮舟を。 天ほんの些細な機会でさえ、薫 が自分こそ謹直な人間だと。 がりたまひて、よろづにのたまひ破るを、かかること見あらはいたるをいかに 一九何かとけちをつけられるのに。 たはぶごと のたまはまし、されど、さやうの戯れ言もかけたまはず、いと苦しげに見えたニ 0 薫と浮舟との秘密を。 三どんなに言い立てたことだろ ふびん う。しかし、今はそれも憚る気持。 まへば、薫「不便なるわざかな。おどろおどろしからぬ御心地のさすがに日数 一三困ったもの。冗談の出ない匂 経るはいとあしきわざにはべる。御風邪よくつくろはせたまへ」など、まめや宮を、薫は病気の重いせいと思う。 ニ三匂宮の心中。薫は気のひける かに聞こえおきて出でたまひぬ。恥づかしげなる人なりかし、わがありさまをほど立派な人、それに比べてこの 私を、浮舟はどう見ただろう。 いかに思ひくらべけむなど、さまざまなることにつけつつも、ただ、この人をニ四浮舟の石山寺参詣が中止。 三〇ハー四行。 ニ五匂宮から浮舟への手紙。逢え 時の間忘れず思し出づ。 なくてつらいなど思いの丈を書く。 ニ六密通ゆえ文通でさえ慎重を期 しといみじき かしこには、石山もとまりて、いとつれづれなり。御文には、、 舟 さねばならない。 ニ七 ことを書き集めたまひて遣はす。それだに心やすからず、時方と召しし大夫の毛時方 ( 大夫 ) の従者。事情を知 る者では途中漏すおそれもある。 浮ずさ 従者の、心も知らぬしてなむやりける。右近「右近が古く知れりける人の、殿 = ^ 自分の昔の恋人が薫の供人で、 その手紙を受け取ると嘘をつく。 の御供にてたづね出でたる、さらがヘりてねむごろがる」と、友だちには言ひニ九女房仲間に。 ま ニ四 ニ六 ニ 0 ニ九 たいふ

10. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

おほやけわたくし とも数のみ添ひつつは過ぐせど、公私にのがれがたきことにつけてこそさも一公私につけてやむを得ない事 情からそうなっているが。前ハー ほとけせい はべらめ、さらでは、仏の制したまふ方のことを、わづかにも聞きおよばんこ 「身のおきても : ・思ひながら過ぎ 四 語 はべる」を受け、「さもはべらめ」。 あやま うちひじり 物とはいかで過たじとつつしみて、心の中は聖に劣りはべらぬものを、まして、 ニそれ以外のところでは。 氏 三仏法に禁ずる戒律。 四「俗ながら聖」 ( 橋姫 3 一〇〇 源いとはかなきことにつけてしも、重き罪得べきことはなどてか思ひたまへん、 ハー七行 ) と同じ。在家の修行者。 さらにあるまじきことにはべり。疑ひ思すまじ。ただ、いとほしき親の思ひな五男女関係をさす。以下、そう した俗情から、出家した浮舟の道 心を乱しては重い罪になるので、 どを、聞きあきらめはべらむばかりなん、うれしう心やすかるべき」など、昔 自分は犯すはずがないとする。 けが より深かりし方の心ばへを語りたまふ。 「浄戒ノ尼ヲ汗セル者」は大焦熱地 獄に堕ちる ( 往生要集 ) 。 そうづ 六母親にかこつけて、僧都の反 僧都も、げにとうなづきて、「いとど尊きこと」など聞こ 〔四〕小君、僧都の紹介 対を封する。↓二二八ハー四行。 なかやどり 状を得て帰途につく えたまふほどに日も暮れぬれば、中宿もいとよかりぬべけ 0 一面では人間的な僧都を相手に いかにも薫らしい依頼がかなえら れど、うはの空にてものしたらんこそ、なほ便なかるべけれ、と思ひわづらひれる。身上とする道心が、浮舟へ の交渉という俗情を合理化する。 せうとわらは て帰りたまふに、この兄弟の童を、僧都、目とめてほめたまふ。薫「これにつ セ僧都は、薫の仏道への関心の 深さを殊勝だとする。 ふみ ^ 帰途、小野での一泊。 けて、まづほのめかしたまへ」と聞こえたまへば、文書きてとらせたまふ。 九心も決らぬ状態で、の意。 僧都「時々は、山におはして遊びたまへよ」と、「すずろなるやうには田 5 すまじ一 0 この子に託して、とりあえす、 それとなく小野にご一報を。 おほむ きゅゑもありけり」とうち語らひたまふ。この子は、、いも得ねど、文とりて御 = 小君への一一 = 彙。 び 六