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岸信介 : 権勢の政治家

はじめてできる離れ業であった。 満州国はそれが一応独立した国家の体裁を整えていたとはいえ、いかなる角度か 惜しげもな らみても、現実には日本そのものであった。擬似国家といわれるゆえんである。 くカネを : そしていやしくも国家である限り、その国家権力を事実上握る関東軍の絶大な政 治カたるや、日本本国で陸軍中央がもっ権力よりもある意味では強大であった。その関東軍と それに連なる人物、例えば岸信介がもし仮に権力とカネをほしいままにしようとすれば、それ 相当のことができるであろうことは間違いない。 もちろん岸の場合、「もし仮に」どころでは なく、それは「現実」であった。巨額のカネを動かして人脈と権力を培養し、人脈と権力を動 かしてカネを集めるという手法は、紛れもなく岸のものだったからである。彼は、その意味で もすでに「立派な政治家ーであった。 当時、岸の部下であり、戦後明治学院院長となる武藤富雄は、次のように回想している。 「私は岸さんから毎月一一〇〇円 ( 現在の約一一〇万円 ) の小遣いをもらっていたことを覚えていま す。当時の満州といえどもカネの使い方は予算で決まっていましたから、領収証のとれない使 途不明のカネを自由に捻出することは、たとえ総務庁次長でもそう簡単ではありません。私は 毎月一一〇〇円ものカネをポンと渡してくれる岸さんをみて、『これはなかなか豪気な人物だな』 と思うと同時に、『何かの名目をつけて、ある程度のカネを自由に使う方法を知っているんだ

世界 2016年07月号

一一〇一一一年大統領選挙時の一〇倍に達する。今回の大統領選 選挙資金と権力に群がる議員やロビイストたちにまみれた職 挙に投ぜられる選挙資金総額は、最終的に一〇〇億ドル ( 邦 業政治家集団への反発と、彼らがつくり増殖させた異常なま 貨で約一兆円 ) を超えると算定される。その総額は、二〇年前 での「金権政治化」への反逆と重なり合う。 ビル・クリントン再選時ーーー一九九六年大統領選挙ーーの総 確かに資本主義を国是とする米国にあって、連邦議会に巣 食う職業政治家たちは、一九世紀末当時からあった。予算分額六億ドルに比べ二桁の違いだ。 「ワイルド・ウエストの時代が再来した」。今、米国の市民 捕りと利権配分をめぐって、カネと利権を追い求めるロビイ 運動家や政治評論家のはやり言葉だ。かって、カウポーイた スト集団が暗躍する金権政治の実態は、西側先進国の中でも ちが拳銃や毒矢で暴れ回った、おなじみの西部劇のような時 異様なものではあった。 しかし一一一世紀情報技術革命の進展する中で、カネがカネ代が、一一一世紀米国政治に再登場したというのである。 を生む資本主義が、「ものづくり資本主義」から金融証券資 拳銃や毒矢の代わりにカネと利権が飛び交う。首都ワシン トンの番街にオフィスを構える登録ロビイスト数は、この 本主義へと変貌する。コンピュータを前に〇・〇〇一秒単位 で巨万の富を稼ぎ出すことのできるアルゴリズム商法が、金 三〇年間に五千人から三万五千人へと七倍に増えた。議員や 融と経済を支配し始めた。一一ユーヨークのウォール街が肥大議員秘書団と連邦官僚職や大使職などの政府役職が、政治献 化し、ワシントンの政治 ( 連邦政府や大統領府 ) とウォール街金とわいろによって取引される。原資の多くは、一般庶民が の金融が癒着を強めた。 払う税金である。民衆を踏みしだいて跋扈する金権政治の実 そして規制緩和と民営化を政策価値の中枢にすえた新自由態だ。その醜悪な首都の政治の実態が、大統領選挙戦で、首 都の政治から縁遠い候補者を浮上させている。 合主義が跋扈した。一九九〇年代以来、規制緩和の謳い文句の その意味で、トランプの台頭は、サンダースとともに、単 ラ下で、政治資金規制が緩和され続けた。一一〇一〇年の最高裁 なる一過性的な現象ではなく、変貌し「解体するアメリカ」 の「市民連合判決」によって、企業献金の上限が事実上撤廃さ れた。二〇一四年には一切の規制が撤廃され、外国からの献の構造を照射させている。 金も自由になった。 国 帝 へゲモニーの終焉 しかも、いわゆるスー ( 政治活動委員会 ) が、候 ゅ 今や、民主、共和の一一つの大政党が「民意を反映して」民 補者個人への献金とは別個に特別献金枠として、新たに設定 わ 終された。そのスー ーに投ぜられた選挙資金はすでに、 主政治をつくるという「デモクラシーの王国」の理念は、神 ばっこ 目

岸信介 : 権勢の政治家

~ 序信介原彬久著 9 7 8 4 0 0 4 5 0 5 6 8 8 I S B N 4 ー 0 0 ー 4 5 0 5 6 8 ー 0 C 0 2 2 5 P 6 2 0 E 定価 620 円 ( 本体 602 円 ) 岸信介ー権勢の政治家 戦前、革新官僚として満州国の産業開発を主導、東条内閣 の商工大臣を務めた岸信介は、 < 級戦犯容疑者とされなが ら政界復帰を果たし、首相の座に就いて安保改定を強行、 退陣後も改憲をめざして隠然たる力をふるった。その九〇 年の生涯と時代との交錯を生前の長時間インタビュー、未 公開の巣鴨獄中日記や米側資料を駆使して見事に描く。 岩波新書から 戦後政治史石川真澄著 現代日本の保守政治内田健三著 一九六〇年五月一九日日高六郎編 政治とカネ広瀬道貞著 政治家の条件森嶋通夫著期 ーーイギリス、 0 、日本・ー 原彬久著 岸信介 ー権勢の政治家ー 1 91 0 2 2 5 0 0 6 2 0 0 岩波新書 岩波新書 368 368 62 ( )

岸信介 : 権勢の政治家

しかしそれをびとたびナニすると権力のための権力というもの、まあそこに政治のマキャベリ ズムというものがある」 ( 同前 ) 。彼は、「憲法改正」への執念とみずからの権力意志を結びつけ ほうしょ / 、 つつ、暗々のうちに政権再獲得を望蜀していたといえよう。 しかし、岸のこうした政権復帰への思いが政治舞台に具体的な波紋を呈して現実 岸の田中評 の政局を動かしていったという形跡はない。それよりも、彼が佐藤政権の後継首 班として実際に推したのは、福田赳夫である。岸内閣のとき福田に政調会長、幹事長を歴任さ せ、最後には農相のポストに就けて終始その成長に手を貸してきた岸は、政権を離れてからは 岸派を福田に譲ってなお彼を支えてきた。その福田が四七年七月の自民党総裁選挙で田中角栄 に完敗したとき ( 田中一一八一一票、福田一九〇票 ) ) 煢・の落胆田 ) 長女 ( 安倍 ) 洋子によれば、「見 るに忍びない」ものであった ( 『わたしの安倍晋太郎ーー・岸信介の娘として』 ) 。 「なぜ田中さんではいけないのか」と洋子が尋ねたとき、岸はこう答えている。「田中は、 湯気の出るようなカネに手を突っ込む。そういうのが総理になると、危険な状况をつくりかね ないー ( 同書 ) 。航空機購入問題などを含めて種々の嫌疑をかけられてきた岸が、カネの力を露 骨に振りかざしながら権力に猛進する田中をこう評したというのは興味深い。岸からすれば、 いいたいのかもしれない。岸が田中 同じカネを集めるにしても、田中は無警戒、不用心だ、と を首相として推さなかった理由は、もちろんほかにもある。岸は田中を評してこういう。「僕

岸信介 : 権勢の政治家

甘粕のカネ遣いは、そのスケールにおいてケタはずれであった。アヘン密売によ アヘン密売 るところが大きかったといわれる。岩見隆夫によれば、満州支配層がアヘンの密 の相関図 売によって収人を得る道には二つあった。一つは満州国政府が熱河省 ( のちに河 ・遼寧両省と内蒙古自治区に編入 ) のアヘンを南方 ( 上海、香港 ) でさばくルートであり、 いま一つ はイギリスから、上海の里見某なる人物を経由して甘粕に通じるルートである ( 同書 ) 。甘粕が 当時大規模な諜報謀略活動に従事しえたのは、莫大なカネを生むこのアヘン・ルートを彼が握 っていたからである。 しかも重要なことは、満州における岸のあのカネ離れのよさがアヘンの密売と何らかの関係 があったのかどうか、ということである。古海忠之はいう。「アヘンについては、支那とか満 州で一手にやっていた里見という男がいた。これは私のアヘンの相棒だ。アヘンは私と里見が すべて取り仕切っていたのであって、甘粕も岸さんも全く関係ないのだ」 ( 同書 ) 。 それにしても、当時満州国政府の幹部として総務庁主計処長を務めていた古海が、アヘンを 「すべて取り仕切っていた」ということは、すなわち満州国政府そのものがアヘン密売の当事 者であったことを意味する。しかも古海は岸総務庁次長の忠実な部下であったこと、岸と里見 が密接な関係にあったこと、そして岸・甘粕間に太い。ハイプがあったこと等々から割り出され るこの相関図を前にするとき、さてこの相関図から、改めて岸を捨象することはむずかしい。

岸信介 : 権勢の政治家

折のことを語り居れり」。 満州の三年間は、確かに岸を「立派な政治家」にした。商工省の官僚時代すでに 「濾過器」論 政治家でもあった岸は、満州に来て「立派な政治家」へと「成長」した。中央官 庁としての商工省から放たれて、満州の荒野に躍りでた岸は、「政治的なるもの」が含むあら ゆる要素をみずからの血肉とした。後進的な政治土壌にとりわけ有効に働く「裸の権力」 ( 関東 軍 ) を懐柔し、そして、同じく未成熟な政治土壌に特別の効能を発揮するカネを駟使するとい う手法は、いまや岸のものとなった。 かん 彼はこうした「学習」の成果を証明してみせるかのように、満州を去る前夜、武藤富男、菅 太郎 ( 国務院企画処参事官 ) ら友人たちに語っている。有名な「濾過器」論である。「諸君が選挙 に出ようとすれば、資金がいる。如何にして資金を得るかが問題なのだ。当選して政治家にな つまりきれいな金 った後も同様である。政治資金は濾過器を通ったものでなければならない。 ということだ。濾過をよくしてあれば、問題が起こっても、それは濾過のところでとまって、 政治家その人には及ばぬのだ。そのようなことを心がけておかねばならん」 ( 『私と満州国』 ) 。 岸は、いまや宿願の政治家になる時機まさに到来したことを悟る。彼は日本への帰路、「満 州は私が描いた作品だ」と豪語するが、その「私の作品」満州をあとにして、岸はいよいよ戦 時体制下日本の中枢部に舞い戻るのである。 ろか

週刊東洋経済 2017年12月31日 1月7日号

特集 / 2017 年大予測 世界政治・経斉 I 混沌へと向かう未来 ポピュリズムの怪人トランプの手腕 欧州最強・独メルケル首相の死角 英国・ EU 離脱の着地点は 仏・ルペン政権が誕生 ? Ⅱ失速は避けられるか 工コノミスト、株専門家に聞く 景気、為替、消費、株価 黒田日銀・金融政策は限界に 北方領上間題先行き見えす Ⅲこの国は変われるか 官邸 1 強状態はいつまで続く 東京五輪迷宮の中で費用膨張 天阜′・前退位の影響は 進まない外国ノ 0 ーー・、 スマホ後の新潮流 special 1 ク 大企業も熱視線 ロ伸びる VR と音声認識 ~ ポケモン GO 』開発者が語る Ⅳ 2017 年注目の企業とトップ 四季報記者か総力取材 トヨタ、ソフトバン久東芝なと 注Ⅱペンチャー 10 女性経営者 10 P108 学び直す健康とおカネ 健 康 糖質制限プーム続く ぉ 腰痛の新常識 カお宝銘柄ランキング 最高益更新企業、株価上昇率なと I) 1-48 29 週刊東洋経済 2016.12.31-201 /. 17 2017 special 2 20 破壊され生

物語ビルマの歴史 : 王朝時代から現代まで

9 軍事政権とアウンサンスーチー 国軍による統治②

世界 2016年07月号

の民主主義のあり方に対する、広汎な民衆の不満と反発が、 半は荒廃し、全米第二位の危険都市にランクされ続けている。 そして、廃墟と化した駅舎や病院、美術館が「都市再生ッ職業政治家と縁の遠い候補者たちを、大統領候補に押し上げ しいかえてもよい ているのである。それを大衆の反逆と、 アー」の目玉商品と化して、凄惨な醜悪ぶりを晒しものにし リーマンショックから七年有余、三度にわたる金融量的緩 ている。「ものづくり」で米国の経済基盤をつくり上げた繁 和とゼロ金利政策が効を奏し、大統領選挙を前に市場は活況 世栄の日々は、昨日の世界に消えたままだ。 を取り戻したと報道される。確かに失業率は五・〇 % まで改 民衆の反逆 善した。しかしその陰で、若者の非正規雇用が増え、所得と そして三つ目の衝撃は、首都のワシントンに入って見た大資産の格差が拡大し、景気回復の実感は、中間層以下の民衆 に広がっていない。 統領選挙の異様な光景だ。 しかも貧富の差が、グローバル企業や金持ちたちによる租 この半世紀、ほとんどの大統領選挙を現地で取材した私に とって、見たこともない大統領候補者たちの光景が広がって税回避地 ( タックス・ヘイプン ) への税金逃れによって、特に リーマンショック後、加速されてきた。その実態が、バナマ いる。既存政治を罵倒する共和党候補で富豪のトランプも、 文書で明らかにされている。 民主党候補で「社会主義ーを標榜するサンダースも、党員歴 「イエス、ウィー・キャン」「チェンジ ! 」を絶叫してホワ を持っていない。 イトハウス入りしたオバマ大統領の下でも、格差は縮まるこ 共和党有力候補だったランド・ポールは小児眼科医、べ となく広がっている。そのため、八年間のオバマ政権への失 ン・カーソンは黒人の神経外科医で、ともに ( 二月と三月に撤 退したが ) 既存政治家とは異質な出自だ。トランプを追い切望感が、若者や広汎な市民層に広がっている。 大衆の反逆の源は、二つのキャピタルーーー資本と首都 れず五月に撤退したテッド・クルーズは、ワシントン政治を のありようにある。それが今、米国大統領選挙の潮流をつく バーティー ) 」の代表候 非難する草の根保守、「茶会 ( ティー・ っている。 補である。伝統的共和党主流派からほど遠い政治家だ。 一つは、カネがカネをつくる金融カジノ資本主義への反発 いったい米国政治に何が起こっているのか。 である。それがつくり加速させる超格差社会への反逆である。 つめていえばそれは、既存政治のあり方そのものに対する 二つは、連邦議会と大統領府に象徴される首都ワシントン 民衆の反発と反逆である。デモス ( 民衆 ) のクラティア ( 権 カ ) としてのデモクラシーが、十分に機能していない。今日特別区で展開される政治に対する反発と反逆である。それが、

文藝春秋2016年8月号

と言ってきたのを覚えている。進次郎はまた、自民党の田中の時代、政治力とはカネ、ポスト配分、選挙応援 「二〇二〇年以降の経済財政構想小委員会」の中心メンの三点セットだった。今の時代、国会議員を動かせるほ ーとして、四月に社会保障制度の見直しなどを柱としどのカネを集められる議員はおらず、進次郎にはポスト た提言をまとめた。五月には厚生労働省を一一つか三つの配分権もない。強みは選挙応援だけだ。選挙応援も、進 新省庁に分割する案を提言した。 次郎は「演説に行ったから貸し借りだとかは今の政治に その考え方は「人口減少を強みに変えて新たな社会づ僕はないと思います。もっと、ドライじゃないですか」 くりをする」ことだ。右肩上がりの時代の田中と、人口と割り切る。 減少社会のまっただ中にいる進次郎とは自ずと発想が違ならば、どうやって仲間の政治家を動かしていくの か。進次郎はこう言う。 「やつばり最後は共鳴、共感でしようね。こいつがやろ うとする方向、それに『乗った』と。また、『頼りない 田中には魔力があった けれどもカ貸してやろう』と、そういう風な形で。同志 政策は努力を重ねれば今後、もっと身についてくるだというのかな。志を同じくする者ね。そういった人たち ろう。問題は政治力、すなわち、人を動かす力だ。演説とどうやって思いを調整しながら一緒に歩んでいける で大衆を動かすことはできる。進次郎が動けばメディアか。派閥はあんまり関係ないですね : : : 」 は注目し、それらを見て動く議員もいる。 そうかもしれない。それでいいのかもしれない。だ 齋藤は進次郎を見る党内の雰囲気をこう解説する。 が、政治は人と人との信頼関係の積み重ねだ。田中がロ 「私が農林部会長の時とは部会の雰囲気が変わった。進ッキード事件で逮捕、起訴され激しい非難を浴びている 次郎さんには皆悪態をつかないわけ。発言するけど、ソのに、八五年二月に病いに倒れ、復帰困難と分かるまで フトなんですよ。喧嘩して気分悪くして、応援に来ても一人として田中の元を離れなかったのは、田中と百人を らえなくなったらどうしようっていう潜在意識が恐らく超す田中派議員が強い紐帯で結ばれていたからだ。田中 働いている。そういう『進次郎効果』は大きい」 と進次郎を直に知る数少ない議員の一人である石破は田 ( 102 )