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検索対象: 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡
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1. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

すもう うにほかの女の悪口を自分に話して聞かせるのは、「格別 ってころがっているの。相撲取りの、負けて引っ込む後ろ に自分はこの男に愛されているのであるようだ」と、思っ姿。実力のない男が、家来を叱るの。老人の男が、烏幗子 もとどり ていることであろうか。「いやもう、ああ、二度とこの人をかぶらずに髻をむき出しているの。人の妻などが、むや 子 とは会わないことにしよう」と思う男に、その後に会うと、 みなやきもちをやいて、よそに隠れているのを、女は「必 草 ず夫が大騒ぎをするはずだ」と思っているのにもかかわら 「この男は不人情な人間であるようだ」と自然見られて、 枕 こちらとして気がひける感じなどはしないものなのだ。 ず、夫のほうはそうも田 5 っておらず、女にとっていまいま 男は、女について、ひどく身にしみじみと感じられて気しいような態度を見せているので、そんなふうにいつまで の毒な様子に見え、とても見捨てかねる、といったような も別の所に居つづけていることもできないので、自分のほ こまいめ ことなどを、少しも何とも思っていないのも、 うからのこのこ出て来ているの。狛犬や、獅子の舞をする ういう心なのかと、それこそあきれることだ。そのくせ、 者が、いい気持になって調子づいて、出て踊る足音。いず くちだっしゃ 男は、ほかの男の行為を非難し、ロ達者にしゃべることよ。れもかたなしだ。 また、身内など格別頼りになるような者を持っていない女 一三〇修法は 房などをうまくくどいて、女がただならぬ身になってしま ずほう ぶつげんしんごん っている現状などを、まったく知らないふりをしてなどい 修法は、仏眼真言などお読み申しあげているのは、優雅 るようであるよ。 で尊い。 一二九むとくなるもの ひがた かたなしなもの潮が引いた干潟にある大きな船。髪の 毛の短い女が、かもじを取りはずして髪を梳いている時。 大きな木が風に吹き倒されて、根を上に向けて横倒しにな 一三一はしたなきもの 中途半端で間の悪いものほかの人を呼ぶのに、自分か と思って顔を出している者。まして、物をくれる時には、 ばなし いっそう。たまたま他人のうわさ話などして、悪口などを ( 原文三〇ハー ) ひと

2. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

容貌がたいそうきれいで、気持も風雅を解する人が、筆持のほどがよくわかりましたとでも知ってもらいたいもの だ、といつも感じられるのである。 跡も見事に書き、歌もしみじみと詠じて、男を恨んでよこ しなどするのに、男は返事はこざかしくするものの、その 自分のことを必ず思ってくれるはずの人、自分を訪ねて 女の所へは寄りつかず、可憐なさまにため息をついて座り くれるはずの人は、それが当然のことなので、特別感激も こんでいる女を、見捨てて、ほかの女の所へ行きなどする 。しかしそんなに思ってくれるはずのない人が、ち よっとした応答をもこちらが安心するようにしてくれるの のは、全くあきれはてるばかり、公憤しきりというところ で、はたで見ている気持としても全くいやな感じがするは は、うれしい態度である。それは非常に簡単なことなのだ ずなのだけれど、男は自分の身の上のこととしてそういう けれど、実際にはほとんどあり得ないことであるよ。 ことが起った場合には、全然相手に対する気の毒さがわか 大体気だてが良い人で、ほんとうに才気がひらめくとい らないことよ。 った人は、男でも女でもめったにないことのように思われ る。しかしまた、そんな人も当然たくさんいるはずではあ 一四よろづのことよりも情あるこそ ろう。 すべてのことにまさって、情のあるのは、男はもちろん 一五人のうへ言ふを腹立つ人こそ のこと、女にも結構なことに思われる。ほんのちょっとし た言葉であるけれど、そして痛切に心の中に深くしみ通る 人のことについてうわさするのを聞いて腹を立てる人こ わけではないけれど、気の毒なことに対しては「お気の毒そ、ひどくわけがわからないものである。どうして人のこ 第 とを言わないではいられようか。自分の身のことはさてお に」とも一一 = ロ い、かわいそうなことに対しては「ほんとうに、 付 どんなに思っておいででしよう」などと言ったのを、人か き、これほど非難したくまた言いたいものが他にあろうか けれど人のことを言うのはよくないことのようでもある。 ら伝え聞いたのは、面と向って言うのを聞くよりもうれし いものだ。どうかしてこの言葉を言ってくれた人に、お気また言われた人は自然とその悪口を聞きつけて恨んだりす

3. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

段「ほんとうですか、カウャへくだるとは」と言った人に 思ひだにかからぬ山のさせもぐさたれかいぶきのさと はっげしそ 第 ( そんなことは考えもしていないのに、いったいだれがそう 告げたのですか ) 手にはおばしめしておいでになるのに、男はやはり常に何 となく嘆息しがちで、世の中が自分の心に合わない気持が して、一方、好き好きしい心が、異常なまでにあるようだ。 かんだちめ この上もない立派な上達部に、妻として大切にかしずか きようだい れている姉妹が一人いる、せいぜいその姉妹ぐらいに。 田 5 っていることを親しく話して、なぐさめ所とし : 二九五定て僧都に袿なし 、、、、きみあこめ 、、そうずうちき 「定テ僧都に袿なし。スヒセイ君に衵なし」と言ったとい う人もおもしろい。「見シアワウ」とはだれが言ったのだ ろう。 二九六まことや、かうやヘくだると言ひける 人に 二九七ある女房の、遠江の守の子なる人を語 らひてあるが とおつおうみかみ ある女房で、遠江の守の息子である人をねんごろにして いた者が、その相手の男がその女房と同じ宮に仕える女を ねんごろにしていると聞いて恨んだところ、「『親なども証 いつわごと とんでもない偽り言 人としてわたしに誓わせてください あ です。夢の中でさえ逢ったことはない』とその男が言うの です。どう言ってやったらいいでしよう」とその女房が言 うと聞いたので、わたしは、代りにこう詠んだ。 ちかへ君とほっあふみのかみかけてむげに浜名の橋見 ぎ、りきや ( それならば、あなたの親の遠江の「守」、その「神」を証 人として、誓いなさい。全く浜名の橋を見なかったーその女 に逢わなかったーのか ) 二九八便なき所にて、人に物を言ひけるに 具合の悪い場所で、ある男と話をしたのだった時に、胸 がひどくどきどきしたのだった。「どうしてそんななのか」 と男が言った応答に、

4. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

って来ていよう場合は、非常におもしろいと感じられて、 思って過すであろうような男が、こうした雨のひどく降る とてもそこでは逢えそうもないような無理な場所であって っこうに、また、真実志が 折などに限って来ようのは、い も、人目をはばからなければならないわけがあっても、必 あるものとは、とてもすることはできまいと、わたしは思 うのだ。だが、人それぞれの理解の仕方なのだからだろうず、ちょっと話をして帰し、また、残りとまってもよさそ うな男は、引き止めなどもきっとするに違いない か。物事を見知り、またわきまえ知っている女で、情趣も 月の明るいのぐらい、遠く物が自然思いやられて、過ぎ 解するとみえる、そういう女とねんごろになって、ほかに かよ たくさんの通い所もあり、また元来の本妻などもあるので、去ったこと、それの情けなかったことも、うれしかったこ かよ とも、晴れやかに快いと感じられたことも、たった今のよ 頻繁にも通って来られないのに、やはりそんなだった、ひ うに感じられる折が、ほかにあろうか。こま野の物語は、 どかった雨の折に、やって来ていたことなどについても、 どれほどおもしろいこともなく、ことばも古めかしく、見 人が語り継ぎ、人にわが身をはめられようと思う男のする どころ ことなのであろうか。それだって、なるほど、志がなかろ所が多くないけれど、月に昔を思い出して、虫の食ってい かわばりおうぎ る蝙蝠扇を取り出して、「もとこしこまに」と男が歌を口 う場合には、なんで、そんなに作り事をしてまで、逢おう にして立っている女の家の門の光景が、しみじみと心にし 、。けれど、雨が降る時は、わ とも田むお , つか、田 5 いはし ( みるのである。 たしは、ただ気がむしやくしやして、今朝まで晴れ晴れと ′一てん 雨は、早くやめばよいとじれったいものとしてわきまえ していたのだった空とも感じられず、御殿の中の立派な細 段どの 殿のすばらしい所とも感じられない。まして、全くそんな知っているせいであろうか、しばらくの間降るのもひどく にくらしい。宮中での高貴な儀式、晴れ晴れと明るくたの ふうでない、つまらぬ家などにおいては、「早く降りゃん 第 でしまえ」と感じられる。それにひきかえ、月の明るい夜しいはすの、あるいは尊くすばらしいはずの催し事も、雨 ひとっき が降りさえすると、一一一口うかいもなく残念なのに、どうであ に来ていよう男は、十日、二十日、一月、あるいは一年で も、まして七、八年たってからでも、思い出して逢いにやるからとて濡れてそれに愚痴をこばしながらやって来てい っ ほそ み

5. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

年をとっている乞食。それはひどく寒い折でも、暑い折で 夜居の僧は、たいへん、こちらで気がひけるものだ。若 ひと も。身分のいやしい女の、身なりの悪いのが、子を背負っ い女房たちが集っては、他人のうわさをして、笑ったり、 ているの。小さい板葺の家の黒いのが、そしてきたならし悪口を言ったり、にくらしがったりするのを、静かにじっ いのが、雨に濡れているの。雨のひどく降る日に、、 と何から何まで聞き集めるのも、気がひける。「まあいや ぜんく な。やかましいこと」などと、中宮様のおそば近い女房た 馬に乗って、前駆しているの。夏は、しかしまだよい。冬 さんざん ほうしたがさね は袍も下襲も、雨のために一つにびったりくつついて着て ちが、いささか腹立ち気味で注意するのを無視して、散々 あげく しるよ , つになっている。 しゃべった揚句の果てには、すっかり気を許して寝てしま う、そのあともーー夜居の僧の思惑を考えるとーーー気がひ 一二七暑げなるもの ナる。 ずいじんおさかりぎめのう 男は、女について「困ったことに、自分の思っているよ 暑苦しそうなもの随身の長の狩衣。衲の袈裟。出居の 近衛の少将。ひどくふとった人の、髪の毛の多いの。六、 うなふうではなく、非難したいし、気に食わぬ点がある」 かじきとう ′」んぎよう あじゃり 七月の加持祈疇で、正午の勤行をつとめる阿闍梨。 と思うけれど、面と向っている女を巧みに言いくるめて機 嫌を取って、男を頼みに思わせるのこそ、女であるわたし じ・よ、つ・ ふうりゅうじん 一二八はづかしきもの は気おくれをおばえる。まして情が深く、色好みの風流人 として世間で評判の男などは、冷淡だと女が思うようなふ 段気おくれを感じるもの男の心のうち。目ざとい夜居の ものかげ 僧。こそどろが、しかるべき物陰に身を沈めて隠れていて、 うにも自分の態度を示すことはしないにきまっている。心 この どう見ているであろうかを、だれが知ろうか暗いのにま の中でだけ思っているのでなく、また、洗いざらい、 ひと 第 ぎれて、こっそりと他人の物を取る人もきっとあるだろう女の気に食わぬ点はあの女に話し、あの女の気に食わぬ点 はこの女に話して聞かせるにちがいないようであるのに、 よ。そういうしわざは、こそどろも同じ気持で、物陰で、 おそらくおもしろいと思っているであろう。 自分がしゃべられていることは知らないで、男がこんなふ このえ 、」じき いたぶき いろごの

6. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

みやづか めのと 宮仕えをしている人の所に訪れなどする男が、そこで食 心のよくない乳母が養っている子を見る時にいやな感じ し、よギ - う なのは、その子の罪でもないけれど、よりによってこんな物を食べるのこそは、ひどく劣った所業だ。食べさせる女 人に養ってもらっているとは、と感じられるためなのだろ房もとてもにくらしい。自分を思ってくれる女房が、「何 子 めのと うか。乳母は「たくさんお子様がある中で、この君は御両はさておいてどうぞ」などと、好意があって言おうのを、 草 まるで忌み嫌っているかのように、ロをふさいで、顔をそ 親が見下げていらっしやるのだろうか、おにくまれになる ことよ」などと荒つばく言う。幼児はこんな者とは思い知むけるわけにもゆくまいから、かしこまって食べているの ではあろうけれども。ひどく酔いなどして、どうしようも らないのだろうか、乳母を求めて泣き騒ぐ、それが乳母に おとな ゅづけ なく夜が更けてから男が泊ったとしても、決して湯漬だっ は気に入らないのであろう。そんな子は大人になっても、 てわたしは食べさせないつもりだ。そうして、男がわたし まわりの者が大切に世話をやいて大騒ぎするうちに、かえ のことを自分に好意を持っていない女なのだったと思って、 ってやっかいなことこそ多いようだ。 こちらでうっとうしくにくらしい人と思う人が、その人以後来ないのなら、それはそれでいいだろう。里で、奥の にとって間の悪いことをこちらが言って困らせても、びつ方から食事をととのえて出した場合には、これはしかたが ない。それでさえ、気がきいたことではない。 たりとこちらにくつついて馴れ親しむ態度をとっているの。 「少し気分が悪い」などと言うと、いつもよりも近くに臥 三〇八初瀬に詣でて、局にゐたるに して、物を食べさせ気の毒がり、別に何ということもなく さんけい つばね ついしよう 初瀬に参詣して、局に座っている時に、身分の低い下衆 思っているのに、まとわりついて追従をし、世話を引き受 たちが、それそれ着物の後ろを入れまぜにして並んで座っ けて大騒ぎするの。 ているありさまこそ、だらしないものだ。 三〇七宮仕へ人のもとに来などする男の、そ たいへんな決心をして参詣している時、河の音などが恐 ろしく聞える中に、くれ階を、やっとの思いでのばり、早 ( 原文一九四ハー ) かた はっせ

7. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

んでのことで焼けてしまいそうになりまして。少しも、家ているのか」と言って、みな笑って、あわてて参上してし まったところ、「あの歌を人に見せてしまっているのだろ 財道具も取り出しません」などと言ってかしこまっている みくしげどの うか。これこれの意味だと聞いて、どんなに腹が立つだろ のを、御匣殿がお聞きになって、たいへんお笑いになる。 子 めのと う」などと、中宮様の御前に参上して、乳母が申しあげる わたしが、 草 みまくさをもやすばかりの春のひによどのさへなど残ので、またあらためて笑い騒ぐ。中宮様におかせられても、 らざるらむ 「どうしてこんなにそなたたちは気違いじみているのだろ よどの ( 御うまやの草を萌え出させる程度の春の日で、淀野の草ま う」とお笑いあそばされる。 でが、どうしてすっかり萌えているのでしようーみまくさを よどの 二九四男は、女親亡くなりて、親一人ある 燃やすわずかな火で夜殿までがどうして残らず焼けてしまっ ひとり ているのでしよう ) 男は女親が亡くなって、一人ある父親が、たいへんその と書いて、「これをお与えください」と言って、遠くに投息子をかわいがるけれども、父親にめんどうな北の方がで きてからは、室内にも入れてもらえず、装束などのことは、 げたので、女房たちは笑い騒いで、「こんなにたくさんい 父親が乳母とか、また、亡き北の方付きの女房たちなどに らっしやる方々が、お前の家が焼けたということで、気の 毒がって、くださるようだよ」と言って男に与えたところ、世話をさせる。 男は、西や東の対のあたりに、客間などがたいへんおも 「何の御書付なのでございましよう。何か物をどのくらい しようじ みどころ しろみがあって、室内の屏風、ふすま障子の絵も見所があ いただけますので」と言うので、「何より先に読め」と言 てんじようびと るように整えて、風流に住っている。殿上人としての勤務 う。「どうして読めましよう。片目だってあいてはおりま あきめくら の具合も、まんざらではないように他の人たちも思ってい せん明盲では」と言うので、女房たちは「人にでも見せよ。 しゅじよう たった今中宮様がお召しなので、急のことで御殿へ参上する。主上におかせられても、お気にめされて、いつもしき かんげん りにお召し寄せになって、管絃などの御遊びなどのよい相 るぞ。それほどすばらしい物をもらっておいて、何を考え ( 原文一八七ハー ) おんかきつけ な たい びようぶ かた

8. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

枕草子 312 もない。 りぬべきかな もしも届け場所をまちがえて持って来などしたの ( 口に出して申しあげるのも恐れ多い「神」ー御下賜の であるのなら、自然とまたきっと言いに来ることだろう。 「紙」のおかげによりまして、鶴のように千年も生きられそ中宮様のあたりに内情を問いに人を参上させたいけれど、 うでございますよ ) やはりだれがいいかげんにこうしたことはするだろうか ) 一んじよう おおげさ あまり大袈裟でございましようかと言上なさってくださ中宮様の御命令なのだろうと、ひどくおもしろい だいばんどころぞうし い」と書いて、差しあげた。台盤所の雑仕を御使いとして 二日ばかり、これについて何の音沙汰もないので、疑い さきよう・ ひとえ 御便りが来ているのだ。禄として青い単衣などを与えて。 もなくて、中宮様からの御品だと思って、左京の君のもと そうし ほんとうに、この紙を、草子に作って騒いでいると、わ に、「こうこうい , っことがあるのです。そうしたことにつ ずらわしいこともまぎれるような気持がして、おもしろく いてそれらしい様子を御覧になりましたか。こっそりそち 心の中も感じられる。 らの様子をわたしにおっしやってくださって、もしそうし 二日ほどたって、赤い着物を着た男が、畳を持って来て、 たことが見えないのなら、わたくしがこうあなたにお話し 「これを」と言う。「あれはだれだ。無遠慮なこと」などと、 申しあげたとも、どうか他人にはお洩らしにならないでく 取っつき悪く言うので、男は畳を置いて立ち去る。「どこ ださい」と言いに、使いを送ったところ、返事に「中宮様 からなのか」とたずねると、「帰ってしまいました」と言 がひどくお隠しあそばされたことなのです。決して決して ごぎ って、取り入れたところ、特別に , 御座という畳のようになわたしがこうあなたに申しあげたと、あとでもおっしやら こうらいべり っていて、高麗縁などがきれいだ。心の中では、中宮様で ないで」とあるので、やはりそうだったよと、思ったとお 。オしかと田む , つので・ーーーしかしやはりはっきりしないから りで、おもしろくて、手紙を書いて、またひそかに中宮様 - 一うらん さが 人々を出して探させたところ、その使いの男は消え失の御前の高欄に置かせたところが、その手紙は、使いの者 があわててまごまごしていたうちに、そのまま下にかき落 せてしまったのだった。妙なことだといぶかしがって笑う みはし けれど、使いの男がいないのだから、言ってもどうしよう して、御階の下に落ちてしまったのだった。

9. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

よ」などと言って、木に登っている子が桃の木をおろすと、 一四九碁をやんごとなき人の打っとて 2 下の子どもたちが走りちがい、取って分けて、「わたしに のうしひも むぞうさ 碁を貴い人が打っといって、直衣の紐を解き、無造作な たくさん」などと言うのこそおもしろい。黒い袴を着てい 子 る男が走って来て頼むのに、木の上の子が「待てよ」など様子で、石を拾って置くのに、身分の低い人が、じっと座 草 っている態度も恐れつつしんでいる様子で、碁盤よりは少 と一言うと、木のもとに寄って幹をゆすぶるのであぶながっ そで さる し遠く離れて、及び腰をしいしい、袖の下をもう片方の手 て、猿のようにしがみついてうずくまっているのもおもし で引きのけ引きのけ、打っているのもおもしろい ろい。梅などの実がなっている折にも、こうした光景であ ることだ。 一五〇おそろしげなるもの つるばみ 一四八清げなるをのこの、双六を 見た目に恐ろしいもの橡のかさ。焼けた所。水ふふ くり す′一ろく き。菱。髪の多い男が頭を洗って乾す間。栗のいが。 見た目のきれいな男が、双六を一日中打って、それでも やはり満足しないのだろうか、背の低い灯台に火を明るく さい のろ 一五一清しと見ゆるもの かき上げて、相手が賽を強って祈り呪って、特に急いでも かわらけ わん どう 清らかに美しいと見えるもの土器。新しい金属製の碗。 筒の中に入れないので、男は筒を盤の上に立てて待ってい 畳として刺して作る薦。水を何かに入れる時に光に透いて る。狩衣の襟が顔にかかるので、片手でそれを押し入れて、 ひどく固くはない、烏帽子を首を振って向こうに振りやつ見える影。新しい細櫃。 て、「たとい賽をひどく呪っても、打ちはずしてしまうは 一五二きたなげなるもの ずがあろうか」と、待ち遠しげに見守っているのこそ、誇 見た目にきたならしいもの鼠のすみか。翌朝に手をお らしげに見えることだ。 そく洗う人。白い痰。鼻すすりをして歩きまわる子ども。 ( 原文五九ハー ) えり ひし たっと ほそびつ たん

10. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

にのみもあらず、またみな、これが事はかれに語り、かれが事はこれに言ひ聞一女は自分のことが他の女に話 されているということは知らず。 ニ他の女のことを男が自分に語 かすべかンめるを、わが事をば知らで、かく語るをば、「こよなきなンめり」 子 って聞かせるのを。 三自分はやはり格別なのだろう。 草と、思ひやすらむ。「いであはれ、また会はじ」と思ふ人に会へば、「心はなき 四と女が思う男に会えば。 枕 五そのくせ男は他の男の身の上 者なンめり」と見えて、はづかしくもあらぬものぞかし。 を非難し。一説、女の身の上。 いみじくあはれに心苦しげに見捨てがたき事などを、いささか何事とも思は六ロ達者で立派な口をきく。 セ妊娠する。 五 うへ ぬも、 いかなる心ぞとこそあさましけれ。さすがに人の上をばもどき、物をよ〈やや疑わしい。きれいさつば り知らぬふりをすることか みやづか く言ふよ。ことにたのもしき事もなき宮仕へ人などを語らひて、ただにもあら九立派な、権威あるはずのもの が、みつともないさまをあらわす もの。さまにならないもの。 ずなりにたるありさまなどを、清うしてなどもあンめるは。 一 0 かもじ。添え髪。 = 宮中で行われた相撲の節 ( 七 月諸国から召集され天皇の前で相 一二九むとくなるもの 撲を取る行事 ) の相撲取り。 三勘当する。叱りつける。 もレ」レ」り むとくなるもの潮干の潟なる大きなる船。髪短き人の、かづら取りおろし一三冠や烏幗子をかぶらすに髻 ( 髪を頭上に束ねたもの ) をむき出 ふ たふ て髪けづるほど。大きなる木の風に吹き倒されて、根をささげて横たはれ伏せしにすること。一説、束ねた元結 を切って乱髪になること。 おきなもとどり すまひ る。相撲の、負けて入るうしろ。えせ者の、従者かんがふる。翁の、髻放ち高「人の妻」で一語。 一五はっきりした根拠もない嫉妬 ゑん たる。人の妻などの、すずろなる物怨じして隠れたるを、「かならずさわがむをして。 ( 現代語訳一一四六ハー ) 一四め し 四 六