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検索対象: 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡
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1. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

枕草子 1 一「ありく」は移動してまわるこ 思へば、舟に乗りてありく人ばかりゆゅしきものこそなけれ。よろしき深さ と。漕ぎまわる、往来する。 ニ並一通りの深さ。 にてだに、さまはかなきものに乗りて、漕ぎ行くべきものにそあらぬゃ。まし 四 三何とも頼りない様子のものに みづぎは ちひろ てそこひも知らず、千尋などあらむに、物いと積み入れたれば、水際は一尺ば乗って。 ひろ 四一尋は両手をひろげた長さ。 約六尺 ( 約一・八 ) 。 かりだになきに、下衆どもの、いささかおそろしとも思ひたらず走りありき、 五舟べりから海面までの間が一 っゅあらくもせば沈みやせむと思ふに、大きなる松の木などの、一一三尺ばかり尺 ( 約〇・三 ) にも足りないほど 舟が沈み入っているさま。 やかた いつつむつ七 六現代語の「大きい」に当る中古 にてまろなるを、五六ほうほうと投げ入れなどするこそいみじけれ。屋形とい 語は「おほきなり」。 かた 。しささかたのもし。端に立てる者セ「ばんばん」という擬声語。 ふものの方にておはす。されど、奥なるま、、 ^ 舟の中に投げ入れる、とみる。 、一こち・ はやを 九舟上に設けた屋根付きの部屋。 どもこそ、目くるる心地すれ。早緒つけて、のどかにすげたる物の弱げさよ。 「おはす」は唐突すぎて不審。仮に、 絶えなば、何にかはならむ。ふと落ち入りなむ。それだにいみじう太くなども主語を「尊い御方は」とみる。 一 0 目がくらむような気持。「端 に立てる者どもではなく作者が あらず。 「目くるる」のか。 もかうすきかげつまどかうし = 櫓に付ける綱。一端を舟べり わが乗りたるは、清げに、帽額の透影、妻戸、格子上げなどして、されど、 に結び付け一端を櫓の柄にかける。 三「すぐ」は、穴に緒などを通し ひとしうおもげになどもあらねば、ただ家の小さきにてあり。 て結ぶこと。 こと舟見やるこそいみじけれ。遠きは、まことに笹の葉を作りてうち散らし一三この一文わかりにくい 「わたしの乗っているのは、見た 目がきれいに作ってあって、帽額 たるやうにそ、いとよく似たる。とまりたる所にて、舟ごとに火ともしたる、 おく

2. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

を ようがいす う見えたるに、半臂の緒の、瑩じたるやうにかかりたる、すり袴の中より氷か一瑩貝で摺り磨き光沢を出す。 すりばかま ニ舞人のつける摺袴。左右の股 うちめ とおどろくばかりなる打目など、すべてめでたし。いますこしわたらせまほし立ちを縫わずかがってある。 三摺袴のかがり目から見える下 子 きに、使はかならず、にくげなるもあるたびは、目もとまらぬ。されど、藤の袴の光沢をいう。 ほ - っへいーレ 草 四祭の奉幣使。殿上人または受 領。 枕花に隠されたるほどは、をかし。 六 五「かならず」は「目もとまらぬ」 ぺいじゅう ゃなぎ なほ今過ぎぬる方見送らるるに、陪従のしなおくれたる、柳に、かざしの山 六舞人に従う地下の役人。 やしろ ゃなぎがさね 吹、面なく見ゆれども、あふひいと高く打ちて、「賀茂の社のゆふだすき」とセ表白、裏青の柳襲の下襲。 〈ふさわしくないようで厚かま うたひたるは、、 しとを一かし。 しい、の意か。 あふり 九不審。三巻本「泥障 ( 騎乗の泥 行幸になずらふる物、何かあらむ。御輿に奉りたるを見まゐらせたるは、明よけ ) いと高ううち鳴らして」。 一 0 「ちはやぶる賀茂のやしろの かうがう け暮れ御前に候ひっかうまつる事もおばえず、神々しういつくしう、常は何と木綿襷ひと日も君をかけぬ日はな し」 ( 古今・恋一 ) による。 もなきっかさ、ひめまうち君さへぞ、やんごとなうめづらしうおばゆる。御綱 = 以下一説別段とする。 ほうれん そうかれん 三鳳輦または葱花輦。 すけ ぐぶ 一三馬に乗って供奉する女官。 の助の中少将など、いとをかし。 みこし かよちょう 一四御輿の綱をとる駕輿丁の側に きのふ 祭のかへさ、いみじうをかし。昨日はよろづの事うるはしうて、一条の大路供奉する近衛中・少将。 一五三巻本にはこのあと五月の節 のひろう清らなるに、日の影も暑く、車にさし入りたるも、まばゆければ、扇会の記事がある。 一六四月中の酉の日に行われる賀 して隠し、ゐなほりなどして、久しう待ちつるも、見苦しう汗などもあえしを、茂祭の、翌日の行列。以下一説別 ぶきおも 四 つかひ五 さぶら はんび かた えう ニばかまなか あせ みつな おほぢ あふぎ やま

3. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

139 第 254 段 と、かの言ひたりし人そをかしき。 え みちのくに紙、白き色紙、ただのも、白う清きは、得たるもうれし。 もとすゑと はづかしき人の、歌の本末問ひたるに、ふとおばえたる、われながらうれし。 一四左右に分れて物を合せ、優劣 常にはおばゆる事も、また人の問ふには、清く忘れてやみぬるをりそおほかる。を競う遊び。歌合せ、香合せ、絵 合せ、貝合せ、根合せなど。 とみに物求むるに、言ひ出でたる。ただいま見るべき文などを求めうしなひ一五ちょっとした機知で自慢の鼻 を折ることができたの。「はかる」 は工夫して計画を練り、欺くこと。 て、よろづ物をかへすがヘす見たるに、さがし出でたる、いとうれし。 一六返報。意趣返し。 ものあは 宅相手がきっとするだろう、と 物合せ、何くれのいどむ事、勝なる、いかでかうれしからざらむ。また、い こちらが思うのである。 をと - ) え みじうわれはと思ひて、知り顔なる人、はかり得たる。女などよりも、男はま天はかられた相手は、知らぬ顔 をして、反応を示さず、こちらを さりてうれし。これが答はかならずせむずらむと、常に心づかひせらるるもを油断させて時を過すのもおもしろ 。下二段他動詞「たゆむ」は、気 をゆるめさせる意。 カーしキ、こ、、 しとつれなく、何と思ひたらぬさまにて、たゆめ過ごすもをかし。 一九「荒き目」でひどいことと解す ニ 0 う るが疑わしい。三巻本「あしき目」。 にくき者のあらき目見るも、罪は得らむと思ひながらうれし。 - 一うむ ニ 0 仏罰を蒙っているだろうと思 ぐしむす い・ながら。 さし櫛結ばせてをかしげなるも、またうれし。またおほかる物を。 ニ一「結ぶ」とは具体的内容は不明。 ぐし 日ごろ月ごろなやみたるがおこたりたるも、いとうれし。思ふ人は、わが身三巻本「さし櫛すらせたるに」。 一三「また」の語が多い、と自分の 表現を反省したものとみる。 よりもまさりて , つれし。 がみ 一九 しきし たふ一七 かち ふみ 一三たった今見なくてはならない 書物などを探すのになくしてしま って。「求めうしなふ」はやや疑わ

4. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

137 第 252 ~ 254 段 ながえ 一 ^ 「鴟の尾ーは車の轅の後方につ あっかふは聞くらむかし。 き出た部分。自分の衣にひっかけ 二月に人の八講したまひし所に、人々あつまりて聞きしに、この蔵人になれてしまうぐらいの近さで座ってい たのを。 一七 はかますはうがさねくろはんび る婿の、ろうのうへの袴、蘇芳襲、黒半臂など、いみじうあざやかにて、忘れ一九車の中の妻は夫を。 ニ 0 車の中の人を妻と知っている とみを にし人の車の鴟の尾を、ひきかけつばかりにてゐたりしを「いかに見るらむ 三この話を聞いた人たちか。 と、車の人を知りたる限りはいとほしがるを、こと人どもも、「つれなくゐた一三よくも平気で座っていたもの だ、とあとでうわさをした。 のち ニ三以下一般論。やはり男は、何 りしものかな」と、後にも言ひき。 かにつけて気の毒だと思う気持や、 ニ三をとこ なほ男は物のいとほしさ、人の思はむ所は知らぬなンめり。人のむすめは言人がどう思うかといったことはわ からないものであるらしい みやづか ふべきにもあらず、宮仕へをすとも、年若う世ン中いたうくつろぎなれざらむニ四宮仕えに出仕せず家にいるむ すめ。以下の一節三巻本にはない。 ニ六 一宝まだ年が若くて男女の間柄に 十′学 / 子′ ものな ついて物馴れないような女は。 ニ六「男というものは平気で女を 見すてるものだ、ということを知 二五四うれしきもの っていなくてはいけない」といっ たことの省略を考える。 うれしきものまだ見ぬ物語のおほかる。また、一つを見て、いみじうゆか毛一巻目。一冊目。 夭一一冊目を読んでみると予想よ ニ八 り悪く感じられることもある。 しうおばゆる物語の、二つ見つけたる。心おとりするやうにもありかし。 ニ九その手紙の続きをたくさん見 ニ九 やす つけたの。 人の破り捨てたる文を見るに、同じつづきあまた見つけたる。 ニ 0 ふみ ニ七 ニ四 人は。 とみ

5. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

一硯や墨についての感想。次段 たまふこそ、いかで聞きたまひつらむと、あさましかりしか。 と一つのものとみる立場もあるが いずれも三巻本には見えない。 ニ墨が片一方に、曲げてだらし 子 二一九硯きたなげに塵ばみ なく磨り減らしてあり。 草 三筆先が墨を含んでふくらんで かしら すずり すみかたかた しるき、士とい、つ。 枕硯きたなげに塵ばみ、墨の片っ方に、しどけなく磨りめ、頭大きになりた 四筆先にかぶせるさや。 てうど 四 五不満でじれったい気持。 る筆に、かささしなどしたるこそ、心もとなしとおばゆれ。よろづの調度はさ 六硯箱の蓋と身が合う部分の、 るものにて、女は、鏡、硯こそ、心のほど見ゆるなンめれ。置きロのはざめに金銀を沢かけた縁。 セ箱の身の縁の、蓋を受けるた めに高くしてある内部をさすとい 塵ゐなど、うち捨てたるさま、こよなしかし。 ふづくゑ 男はまして、文机に清げに押しのごひて、重ねならずは、二つの懸子の硯の、〈重なるように作った硯箱。 九他の箱の縁にかけて、中には まるようになった硯箱。 いとっきづきしう、蒔絵のさまも、わざとならねど、をかしうて、墨、筆のさ 一 0 手入れがよかろうと悪かろう と、どんなものでも字を書くのに まも、人の目とどむばかりしたてたるこそをかしけれ。 は同じこ A だ ) ン ) いって。 くろはこふた一ニ うるしめり とあれどかかれど、同じ事とて、黒箱の蓋もかたしおちたる、硯わづかに墨 = 黒い漆塗の硯箱という。以下 文脈がたどりにく、 の磨られたる方ばかり黒うて、そのほかは瓦の目にしたがひて入りゐたる塵の、三片一方が欠け落ちている。ま かた たは「絵し落ちたる」で蓋の形容か あをじ かわら この世には払ひがたげなるに、水うちながして、青磁のかめのロ落ちて、頸の一三瓦硯のことであろう。質が ちり 悪いので、その目に塵がはいる。 一四墨をする水を流すさまとみる。 かぎり、穴のほど見えて、人わろきなども、つれなく人の前にさし出づかし。 ふで かた ちり まきゑ かはら か一 ら 六 お 九 くび ふた ふち

6. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

たかみつとのもりのすけ くれなゐきぬす やや簡単な服。水干袴は水干を着 隆光が主殿亮なるには、青色の襖、紅の衣、摺りもどろかしたる水干袴にて、 る時にはく長袴。 一ニ下との続きが悪い。「事とし うちつづき詣でたりけるに、帰る人も詣づる人も、めづらしくあやしき事に、 て」で「あさましがりし」に続くか 一三『小右記』正暦元年八月三十日 「すべてこの山道にかかる姿の人見えざりつーと、あさましがりしを、四月っ ともあきら 「筑前守知章辞退、スナハチ宣孝 ちくぜんかみう ごもりに帰りて、六月十よ日のほどに、筑前の守失せにしかはりになりにしこ任ズ」。これによれば死去したの ではない。三巻本「辞せしに」。 そ、「げに言ひけむにたがはすも」と聞えしか。これはあはれなる事にはあら一四「たがはすもあるかな」などの 略。 みたけ ねども、御嶽のついでなり。 九月つごもり、十月ついたち、ただあるかなきかに聞きわけたるきりぎりす一五今のこおろぎという。 一六一説、卵。ただし卵を抱いた にはとり一六いだ あさぢ の声。鶏の子抱きて伏したる。秋深き庭の浅茅に、露の色々玉のやうにて光り鶏はあまりに日常的で「あはれな 一九 るもの」として疑わしい かはたけ ゅふぐれ よる ちがや 宅背丈の低い茅萱。 たる。河竹の風に吹かれたるタ暮。暁に目さましたる。夜なども、すべて。思 一 ^ 『和名抄』に「苦竹ーを「カワタ ひかはしたる若き人の中に、せく方ありて、、いにもまかせぬ。山里の雪。男もケ」と読んでいる。真竹の異名か。 三巻本「タ暮暁に河竹の風に吹か あ 段女も清げなるが、黒き衣着たる。二十六七日ばかりの暁に、物語してゐ明かしれたる、目さまして聞きたる」。 一九上の「暁 : ・」に添えて「夜など も目さましたる、すべてあはれな て見れば、あるかなきかに心ばそげなる月の、山の端近く見えたる。秋の野。 り」の意か よもぎ 第 おこ むぐらは 年うち過ぐしたる僧たちの行なひしたる。荒れたる家に葎這ひかかり、蓬などニ 0 喪服。 ニ一下弦の細い月がおそく出る。 一三年の盛りを過ぎている僧。 高く生ひたる家に、月の隈なく明かき。いと荒うはあらぬ風の吹きたる。 お ニ 0 きめ かた きこ すいかんばかま をとこ

7. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

おさめ あげなさるのをも、主上は御存じあそばさぬ間に、長女の めて、「倒れるな」と言って連れておいでになるみちみち、 にわとり あした ゅ ぎんしよう 使っている童が、鶏をつかまえて持っていて、「明日里へ 「遊子なほ残りの月に行くは」と吟誦なさっていらっしゃ 持って行こう」と言って、隠しておいたのだった、その鶏るのは、また、たいへんすばらしい が、どうしたのだろうか、犬が見つけて追いかけたので、 「このようなことを大騒ぎして感心する」と言って、大納 ろう 廊の先の所に逃げて行って、恐ろしい声で鳴き騒ぐので、 言様はお笑いになるけれど、どうして、やはりとてもおも しろいものは、すばらしがらず・にはいられよ , つか だれもみな起きなどしてしまったようである。主上もお目 をおさましあそばしていらっしやって、「これはどうした 二九三僧都の君の御乳母、御匣殿とこそは ことだったのか」とおたずねのそばされると、大納言様が、 こゑめいわう めのと みくしげどの そうず 「声明王のねぶりをおどろかす」という詩を、高らかに声 僧都の君の御乳母、ーーその場所は御匣殿とこそは申し ず つばね に出して誦んじていらっしやるのは、すばらしくおもしろ あげようーーーその乳母の局にわたしが座っていたところが、 いので、一人で眠たかった目もとても大きくばっちりあい そこにいる男が、板敷 9 もと近く寄って来て、「ひどい目 にあったことでございますよ。どなたにお訴え申しあげま てしまった。「たいへんびったりした折のことであるよ」 と、中宮様もお興じあそばされる。やはり、こうしたこと しようかと存じまして」と、今にも泣きそうな様子で一言う。 こそがすばらしいのだ。 「何事か」とたずねると、「ちょっとよそへでかけておりま おとど 段次の日は、夜の御殿に中宮様はお入りあそばされた。夜した間に、汚い、わたしの住んでおります所が焼けてしま 中ごろに、廊に出てわたしが人を呼ぶと、「退出するのか。 いましたので、このところずっと何日かはやどかりのよう 。しり もからぎめ わたしが送ろう」と大納一一 = ロ様がおっしやるので、裳や唐衣 に、よその人のあちこちの家に尻を差し入れて暮しており うまづかさおん 第びようぶ は屏風にうち掛けておいて行くと、月の光がたいへん明る ます。馬寮の御まぐさを積んでございました家から、火が のうし かき さしめき くて、大納言様の直衣がとても白く見えるのに、指貫が半出てきましたのでございます。ただわたしの家は垣を隔て そで よどの 分踏みつつまれるようなかっこうで、わたしの袖を引きと た隣にございますので、夜殿に寝ておりました愚妻が、す いたじき

8. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

おと るに、片っ方の人、しはぶきをしまぎらはしてさわぐに、念じて、音高う射て = 不審。一説、それほど取られ る所があるとも知らず。 当てたるこそ、したり顔なるけしきなれ。碁を打つに、さばかりと知らで、ふ三「ふくつけし」は、欲が深いこ と一 一四かた かかわる、す こと方より目もなくして、おほ一三「かかぐるは、 ノ、つけさは、またこと所にかかぐりありくに、 がるなどの意という。 かち ひろ く拾ひ取りたるも、うれしからじゃ。ほこりかにうち笑ひ、ただの勝よりはほ一四別の方から、目もなくて、の 意とみる。 こりかなり % 一五長い間ずっと同じ状態を続け ずりゃう ありありて、受領になりたる人のけしきこそうれしげなれ。わづかにある従ているさま。 一六失礼な態度で。 宅「ねたしと」は、仮に「ねたし 者もなめげにあなづりつるも、ねたしといかがせむとて、念じ過ぐしつるに、 とて」の意とみなす。 ずりよう われにもまさる者どものかしこまり、ただ「仰せうけたまはらむ」とついじゅ一 ^ 一旦受領になると。 一九「追従」。 うするさまは、ありし人とやは見えたる。女方には優なる女房うち使ひ、見えニ 0 以前と同じ人と見えようか。 いつのまにか出現する。 てうどさうぞくニ一 ざりし調度、装束のわき出づる。受領したる人の、中将になりたるこそ、もと一三近衛の中将。 ニ三もともと君達 ( 貴族の息子 ) の きんだち 段君達のなりあがりたるよりも、けだかう、したり顔に、いみじう思ひたンめれ。身分の人。 一八四位こそなほめでたきものにはあれ。同じ人ながら、 第 大夫の君や、侍従の君など聞ゆるをりは かたかた ニ 0 一七 かた ずん

9. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

125 第 226 ~ 227 段 ( 現代語訳三〇三ハー ) 九夢の中に。 よるあらはれてのたまひける、 一 0 「わがれる」は四段動ーわが を ななわた る」の存在を想定させるが疑わし 七曲にわがれる玉の緒をぬきてありとほしとも知らずやあるらむ 仮に「曲がれる」の意に従う。 七曲りに曲った玉に緒を通したの とのたまひける」と、人の語りし。 あり は、玉を貫いて蟻を通したのだと いうことを人は知らないでいるの だろうか、の意。明神が名の由来 一三六降るものは を語った歌。 = 「き」は、自分の経験した過去 ましろ あられ についていう。私に語ったのです 降るものは雪。にくけれど、みそれの降るに、霰、雪の真白にてまじりた よ。 るをかし。 三「にくけれど」は、みぞれにつ していう ひはだぶき ひのき 一三檜の皮で屋根を葺いた家。 檜皮葺、いとめでたし。すこし消えがたになるほど。 ひわだぶき 一四檜皮葺の屋根の上で、少し消 えそうになるところ、の意であろ おほくは降らぬが、瓦の目ごとに入りて、黒うまろに見えたる、いとをかし。 しぐれ いたや かわら 一五瓦で葺いた屋根の、瓦と瓦と 時雨、霰は板屋。霜も板屋。 の葺き合せ目。一説、檜皮葺の棟 がわら 瓦。 一六瓦の、雪におおわれていない 一三七日は 部分が、雪にふちどられて丸く黒 く浮き出て見えることをいう。 日は入り果てぬる山ぎはに、光のなほとまりて、あかう見ゆるに、薄黄ば宅板葺の家。音を賞でる。 一 ^ 「山ぎは」は、山の稜線に接す るあたりの空。 みたる雲のたなびきたる、いとあはれなり。 は五 ら うすき むわ

10. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

二九墨は 三〇貝は 三一櫛の箱は : 三三蒔絵は : 三四火桶は : 三五夏のしつらひは : 三六冬のしつらひは : 三七畳は 三八檳榔毛は 三九荒れたる家の蓬ふかく、葎はひた る庭に 校訂付記 図録 四〇〔又一本〕 出で湯は 陀羅尼は 時は 下簾は : 目もあやなるもの : めでたきものの人の名につきてい ふかひなくきこゆる : 見るかひなきもの まづしげなるもの 本意なきもの ・ : 三六三 ・ : 三六四 ・ : 三六四 ・ : 三六四