相手 - みる会図書館


検索対象: アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1
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1. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

りえき ふりえき 「ごそんじかどうか知りませんが、探偵であることの利益、もしくは不利益のひとつは、 はんざいしやせっしよく いやおうなしに犯罪者と接触をもっことになるということです。そしてこの犯罪者という れんちゅう 連中、つきあってみると、いろいろとおもしろい、めずらしいことを教えてくれるもので してね。 じよ、つしゅうはん きようみ こうした連中のひとりに、あるスリの常習犯がおりました。わたしがその男に興味を し ) 」と もったのは、彼のやったと思われた仕事が、じつはそうではないとわかったからでして、 おん しやくほうじんりよく それで、彼の釈放に尽力してやったわけです。彼はそれを恩にきまして、自分にできる唯 しよくぎようじようひけつでんじゅ おん 一の方法で、恩がえしをしようとしましたーーそれが、自分の職業上の秘訣を伝授して くれることだったのですよ。 しな ひつよう そんなわけで、それ以来わたしは、必要となれば相手に知られぬよう、ポケットの品を こうふん かた ぬきとれるようになりました。相手の肩に手をかけ、興奮しているように見せかけて、 簿 どうさ ろんな動作をする。相手はそれに気をとられて、なにも気づかない。だがそのあいだにこ件 しな せんたく ちらは、相手のポケットの品をこちらのポケットにうっし、かわりに洗濯ソーダを入れて口 ワ おくこともできるというわけです。」 よ ボワロは自分のことばに酔っているようにつづけた。 いつほ、つほ、つ れんちゅう たんてい

2. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

はっげん 沈黙には、なにか奇妙に挑発的なものがあり、まるでいまのコンウェイの発言にたいし むごん て、無言のうちに異議をとなえているかのようにうけとれた。コンウェイが知らずしらず べんかい くちょう 弁解がましい口調になったのは、そのせいだったかもしれない。 「そうだろ、ほかに考えられたかね ? え、イヴシャム ? 「わからんな。」トムイヴシャムはのろのろといった。「あのときデレクは、正確にはな しんこんしゃ んといったつけな ? たしか、新婚者レースに出走しようとしているとかいうことーー・相 て きよか はっぴょうだんかい 手の許可があるまでは、そのご婦人の名はいえないということーー・まだ発表の段階ではな いということ。ああそうだ、こうもいってたなーー自分はひじように幸運な男だ、来年の さいたいしゃ こうふく いまごろは、自分も妻帯者として幸福に暮らしているだろうということを、二人の親友に 。こザつ、 . っ 知ってもらいたかったんだ、とね。むろんわれわれは、相手の女性をマージョリー すいそく と推測した。二人は長いっきあいだったし、よくいっしょこ 冫いたからね。」 「ただひとっ コンウェイがいいかけて、ロをつぐんだ。 「なんだね、ディック ? 」 こんやく 「いや、つまりね、もし相手がマージョリ ーだったら、すぐに婚約を発表できないという ひみつ のは、ちとおかしいと思うのさ 。いったいなぜ秘密にするんだろう ? なんだか、相手の ちんもく きみようちょうはってき ふじん しゆっそう じよせい はっぴょう こううん せいかく らいねん しんゅう 128

3. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

「えーーーオ冫 よこーーーそのーーーもちろんですよ。きらいなわけがないでしよう ? す 「気にかかったものでねーー、彼を好いておられるかどうかが。」ボワロは平静にいっこ。 あいて そのあと、相手が答えようとしないのを見てとって、彼はつづけた。 「それにまた、ラングトンさんがあなたを好いているかどうかも気にかかります。」 「いったいなにをおっしやりたいのです、ボワ口さんワ・なにか考えていることがおあり らしいが、わたしにはさつばりわけがわからない。」 そっちよく ハリスンさ 「では、ごく率直にお話しいたしましよう。あなたは婚約なさいましたね、 じよう みりよくてき ん。お相手のモ リーⅱディーン嬢はわたしもそんじあけています。ひじように力的で、 こんやく うつく ひじようにお美しい。ディーン嬢はあなたと婚約するまえに、クロード日ラングトンと婚 かいしよう 約していました。あなたのために、ラングトンとの婚約を解消したのです。 ハリスンはうなすいた。 りゅう 「その理由がなんであったかは問いますまい。おそらく正当な理由があったのでしよう。 しかし、ラングトンとしては、けっしてわすれてはいないし、ゆるしてもいない、そう考 えても、考えすぎではないと思います。」 だんげん 「それはまちがいですよ、ボワ口さん。あなたの誤解だと断言してもよろしい。ラングト じよう と ごかい こんやく せいと、つ 17 ボワロの事件簿

4. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

つぎの日曜日の午後、サタースウェイト氏はキ = ー植物園に、しやくなげの花を見にで かけた。 わか 遠いむかし ( サタースウェイト氏自身、信じられないほどむかし ) 、ある若い婦人とここ ヘブルーベルを見にきたことがあった。その日サタースウェイト氏は、まえもって心のな わか ふじんけっこん かで、これから自分のいおうとすること、その若い婦人に結婚を申しこむのに使うべき せりふ にゆうねん 台詞を、入念にまとめあげていた。それをくりかえし頭のなかでそらんじることに夢中 さんたん だった彼は、彼女がしきりにブルーベルのことで賛嘆の声をあげるのに、なかばうわのそ あいて らであいづちをうっていた。そのときショックがおそってきたのだ。相手の女性がブルー たんせい ベルにたいして嘆声を発するのをやめて、きゅうにあらたまってサタースウェイト氏にむ事 まえお だんせ 力し 心からの友として話すのだがと前置きして、他の男性への思慕をうちあけたのであ きゅう こくはくむね る。あわてたサタースウェイト氏は、急きよ、用意してきたささやかな告白を胸のおくに ひきだ ゅうじようきようかん しまいこむと、心の引出しのいちばん底をかきまわして、相手への友情と共感のことばを さがしたのだった。 こい かくしてサタースウェイト氏の恋はおわった いささかなまぬるい、初期ヴィクトリ しじしん そこ しよくぶつえん しよき じよせい ふじん むちゅう 167

5. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

しゅ かくせいき の小屋が三つもあって、それそれがべつの音楽を拡声器から流している。 まど 「窓をしめよう。これでは話もでぎない。」 まど し ポインツ氏がふきげんにいって、自分から窓をしめにいっこ。 いちどう 一同がテーブルをかこんで席につくと、ポインツ氏は満面に笑みをたたえて客たちを見 じしん まわした。この客たちをじゅうぶんにもてなしているという自信があったし、そのうえ、 よろこ しせんじゅん 彼の視線が順ぐりに客のうえにとまった。 ひとをもてなすのがなによりの喜びでもあった。 / かんぜんほんもの じようりゅうふじん きようふじん りつばな上流夫人だ。むろん、完全な本物とはいえない。 まず、マロウェイ卿夫人 じん クレム・ド・ラ・クレム いっしよう それはよくわかっているーー、彼が一生をつうじて〈社交界の粋〉とよびならわしてきた人 しようち そんざい ふさい 種は、マロウ = ィ夫妻などとはほど遠い存在だということは、じゅうぶん承知のうえだ。 簿 し いちりゅうじんし しかし、そうよばれるほどの一流人士となると、むこうがポインツ氏を相手にしてくれ事 の ン / . し イ きようふじん いきびじん だから、たまにブリッジでい ともあれ、マロウェイ卿夫人はすばらしく粋な美人だ きよう かさまをやることがあっても、大目に見ることにしている。だが、ジョージ卿にはそんなカ まねはさせない。見るからにこすからそうな目をして、金もうけとなると、どんなことで ばあい . し、刀十 / もやりかねない男だ。しかし、このアイザックⅱポインツが相手の場合は、そうま、 こや せき おおめ え まんめん かね あいて きやく 203

6. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

「やれやれ、ロひげがすっかりぐったりしてしまいましたよ。なにしろこの暑さですから な ! 」 「それで、こちらのほうへはどんなご用で ? ーむかいあったいすに腰をおろしながら、 リスンはたずねた。「おたのしみですか ? しごと モナミ 「なあに、あなた、仕事ですよ。」 かたいなか 「仕事 ? こんな片田舎でですか ? 」 ボワロはおもおもしくうなずいた。 モナミ はんざい 「そうですとも、あなた。犯罪は、かならずしも人のおおぜいいるところでばかり起こる とはかぎりません。」 あいてわら 相手は笑った。 「そうでしたな。わたしとしたことが、 ばかなことをいったものだ。しかし、こんな土地 までわざわざおいでになるからには、よほどの事件なんでしよう ? それとも、これはき いてはならないことですか ? 」 たんてい 「いや、かまいませんよ。」探偵は答えた。「むしろ、おたずねになるのを期待していたの です。」 じけん こし

7. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

フィリツ。フィーストニーは、一瞬けわしい目で相手を見なおしたが、すぐにその表 じよう 情をかえた。 「というと ? [ と、彼はしずかにいった。 たんとうちよくにゆう サタースウェイト氏は単刀直入にいっこ。 「わたしはミス・ウエストのア。ハートからきたところだ。 ごちょう きみ わる まえとおなじ声、おなじ気味の悪いほどしずかな語調だ。 「われわれはーー死んだ猫を部屋からつれだした。」 ちょっと沈黙があった。それからイーストニーはいっこ。 「だれだ、あんたは ? 」 し サタースウェイト氏は答えた。そのまましばらく話しつづけて、事件のいきさつを一気 にものがたった。 「だからおわかりだろう , ーーわたしはまにあったというわけだ。」そう彼は話をしめくく ま い一つことは、ない ると、ちょっと間をおいてから、しすかにつけくわえた。「で、なにか かね ? ちんもく し し いっしゅん あいて じけん ひょう いっき 190

8. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

「なんですって ? 」 「ですから、お聞きになってはいないはずだと申しあげたのです。わたしが調べているの は、まだ起こっていない犯罪なのですよ。 「しかしそれはーーー・・ナンセンスも、 しいとこだ。」 さつじん 「ところがそうじゃないんです。もしも殺人が起きるまえにそれを調べておくことができ ゅうり たら、あとで調べるよりもずっと有利なはずです。ひょっとしたら、それをーーっまらん うぬぼれかもしれませんがーー・ふせぐことさえできるかもしれない。」 ハリスンはまじまじと彼を見つめた。 ほんき 「本気でおっしやってるんじゃないんでしよう、ボワ口さん ? 「いや、大まじめです。」 さつじん 「じゃあ、ほんとうに殺人が起こりかけていると信じておいでなのですか ? これはおど ろいた ! 」 かんたんし 最後の感嘆詞の部分は聞きながして、ボワロは相手のことばをひきとった。 モナミ 「そうです、われわれの手でそれを防止できないかぎりは、そうなるのですよ、あなた。 それをわたしはいっているのです。」 ぶぶん はんざい しら しら 13 ボワロの事件簿

9. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

ボワロはのろのろといっこ。 「単純な事故死のケースだーーそうあなたはおっしやった。わたしが考えているのも、 お たって単純なことでねーー単純なひと押しということです。」 マカンドリュー医師はおどろいて目を見はった。 さつじん 「いいかえれば、殺人ということですな ! そうお考えになる根拠はあるのですか ? すいそく 「いや、たんなる推測です。ーボワロは答えた。 よっこ。 「そうですかな ? いや、きっとなにかあるにちがいない。」相手よ、 ボワロはだまっていた。 し マカンドリュー医師はつづけていった。 だんげん 「もし、あなたがうたがっておられるのが甥のラムジーなら、いまこの場で断言できます まよなか よーーそれはまったくの見当ちがいだとね。その夜、八時半から真夜中まで、ラムジーは じ けんししんもん ウイン。フルドンでブリッジの会にでていたのです。これは検死審問であきらかになった事 実ですよ。」 ボワロはつぶやいた。 とうぜんかくにん けいさつねんい 「そして当然、確認されたのでしような。警察は念入りなものですから。」 たんじゅんじこし し けんと、つ こんきょ

10. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

「われわれとおっしやると ? 「さよう、われわれです。あなたのお力をかりたいのです。」 「それでここへおいでになったのですか ? 」 あいて またしてもボワロは相手を見つめ、こんどもまたある漠然としたなにかが、ノ 不安におとしいれた。 「ここへきたのは、、 ノリスンさん、あなたがーーーそのーーー好きだからですよ。」 ちょ、つし それから、がらりとかわった調子になって、ボワロはつづけた。 ハリスンさん、お見うけしたところ、お宅の庭にはすずめばちの巣があるようですな。 たいじ あれは退治してしまわなけりやいけませんよ。」 ふしん わだい ハリスンは不審そうにまゆをひそめた。それから、ボワ きゅうに話題がかわったので、 しせん ロの視線を追いながら、ややうろたえぎみに答えた。 「じつをいうと、わたしもそうするつもりでいたのですよ。というより、ラングトン君が そうしてくれるはずです。クロードⅱラングトンのことはお・ほえておいででしよう ? ・わ ばんさんかい しゆっせき たしがお目にかかったあのときの晩餐会に、彼も出席していたはすです。たまたま今夜、 すたいじ あの巣を退治しにきてくれることになっていましてね。どっちかというと、おもしろい仕 ふあん たく にわ ばくぜん す す 、リスンを こんや くん し