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検索対象: アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1
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1. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

りえき ふりえき 「ごそんじかどうか知りませんが、探偵であることの利益、もしくは不利益のひとつは、 はんざいしやせっしよく いやおうなしに犯罪者と接触をもっことになるということです。そしてこの犯罪者という れんちゅう 連中、つきあってみると、いろいろとおもしろい、めずらしいことを教えてくれるもので してね。 じよ、つしゅうはん きようみ こうした連中のひとりに、あるスリの常習犯がおりました。わたしがその男に興味を し ) 」と もったのは、彼のやったと思われた仕事が、じつはそうではないとわかったからでして、 おん しやくほうじんりよく それで、彼の釈放に尽力してやったわけです。彼はそれを恩にきまして、自分にできる唯 しよくぎようじようひけつでんじゅ おん 一の方法で、恩がえしをしようとしましたーーそれが、自分の職業上の秘訣を伝授して くれることだったのですよ。 しな ひつよう そんなわけで、それ以来わたしは、必要となれば相手に知られぬよう、ポケットの品を こうふん かた ぬきとれるようになりました。相手の肩に手をかけ、興奮しているように見せかけて、 簿 どうさ ろんな動作をする。相手はそれに気をとられて、なにも気づかない。だがそのあいだにこ件 しな せんたく ちらは、相手のポケットの品をこちらのポケットにうっし、かわりに洗濯ソーダを入れて口 ワ おくこともできるというわけです。」 よ ボワロは自分のことばに酔っているようにつづけた。 いつほ、つほ、つ れんちゅう たんてい

2. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

しじようほ 「いや、まあ、若い連中はべつかもしらんが。ーポニントン氏は譲歩した。「ああいうなま いきざかりの連中はな ! ちかごろの若いものときた日にや、どいつもこいつもおなじだ れんちゅう どしようばね 土性っ骨もなけりや、覇気もない。ああいう連中はどだい相手にせんことにしてるん こうへい もっともむこうはむこうでーー・」と、公平なところを見せてつけくわえてーー「こ んな年寄りに用はないというかもしれん。あるいはそのとおりかもしれんがねー いじよう わかれんちゅう それにしても、ああいう若い連中のいうことを聞いていると、六十以上の人間は生きる お げんどう けんり 権利がないみたいな気がしてくるよ。やつらの言動から推して、ひょっとするとこの連中、 手をくだして年寄りの親戚をあの世に送りこんだんじゃないか、なんて思ったりしてね。」 「いや、じっさい、それくらいのことはやりかねませんな」と、エルキ = ールⅱボワロは し / けいさっ 「あんたはたしかにりつばな見識をもっているよ、ねえボワロ。警察の仕事なんかさせて おくのはおしいぐらいだ。」 エルキュールⅱボワロは微笑した。 「とはいうもののですな、六十歳以上の人間の事故死の統計をとってみたら、きっとおも 、つ こうきしん けつか しろい結果がでるはずですよ。好奇心をかきたてられること請けあいです。いや、失礼。 としょ わかれんちゅう しんせき びしよう けんしき いじよう わか し′」と しつれい 35 ボワロの事件簿

3. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

親愛なるヘンリー伯父さん ざんねん きたい アントニー伯父さんについてのご依頼の件、まことに残念ながら、ご期待にそえな ほ、つこく ほ、つ。もん いラ」、つ かったことをご報告いたします。あちらをご訪問なさりたいという伯父さんのご意向 しめ にたいし、アントニー伯父さんはなんら熱意を示されなかったばかりか、過去のこと は水に流そうという伯父さんからのおことづけには、返事もしてくださいませんでし ようだい わる た。もとより、かなり容態がお悪いので、とりとめのないことしかおっしやらぬのは むりからぬこと、おそらくはお命もそう長くはないのではないかと思います。じっさ 実の弟である伯父さんのことも、ろくにおぼえておられないようでした。 やく さいぜん お役にたてなかったことは申しわけありませんが、。ほくとしては最善をつくしたこ りようかい とをご諒解いただきたいとそんじます。 ちゅうじっ あなたの忠実なる甥 ジョージ日ラムジー ふ、つと、つ けしいん いちべっ 手紙の日付は十一月三日になってした。。、 、 - ホワロは封筒の消印を一暼したーー午後四時三 十分。 しんあい ひづけ いのち ね けん

4. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

けじゃないでしよう ? イギリスだってあぶないって聞いたわよ。」 みようじよう 「それでも、〈明けの明星〉だけはとらせはしませんよ。」ポインツ氏はいった。「まず第 うち とくべつじた 一に、特別仕立ての内ポケットに入れてありますからね。それにどっちみちーーわたしも ねんき みようじよう この道では年季を入れてますから、そこにぬかりはありません。〈明けの明星〉だけは、 だれにもとらせるものですか。 ィーヴは笑った。 「ふ、ふ、ふーーーあたしなら盗んでみせるわー 「そうはいきませんよ。ーポインツ氏は、目をきらめかせて相手を見かえした。 ねどこ しいえ、やれるわ。ゅうべ、寝床のなかで考えてみたのーーーおじさまがあれをみんなに まわして、見せてくたさったあとで。すごくうまい方法を考えたのよーー。あれならぜった い盗みだせるわ。」 ほ、つほう 「ほう、どんな方法です ? 」 きんばっ ィーヴはいきおいよく金髪をふって、首をいつ。ほうにかしげた。 「教えられませんよーだ いまはね。なにか賭けるっていうんならべつだけど。」 わか ポインツ氏の胸に、若ゃいだ気分がわきあがった。 ぬす わら むね ぬす あいて 206

5. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

をごそんじでしたか ? 「ええ、知っていました。」 たいど へんか イヴシャムの態度がわずかに変化した。イギリス人というものの気質を研究したことの ないひとだったら、まず気づかなかったろう。それまでは、どことなくよそよそしさが あったのだが、いまではそれがすっかり消えてしまっている。クイン氏はデレクⅱケイベ ルを知っていた。したがってイヴシャムの友だちの友だちであり、それだけで全面的に人 ほしよう しんらい 物を保証され、信頼できる男ということになるのだ。 ちょうし じけん 「じっさいおどろくべき事件でしたよ、あれはと、イヴシャムはうちとけた調子で話し だした。「ちょうどいま、そのことを話していたところなんです。そりやね、わたしも正直 てきとう なところ、この屋敷を買うのは気がすすみませんでしたよ。ほかに適当なところがあれば事 ばんの じさっ よかったんですが、それがなくってね。ごそんじかどうか知らんが、あの男が自殺した晩、 わたしはこの家にいたんですーーーここにいるコンウェイもそうですが。そんなわけで、わ ば、つれい たしはいつも思っているんですよ いまにあの男の亡霊がでてきやせんかとね。」 くちょ、つ ようじん じけん ふかかい 「ひじように不可解な事件でしたな」と、クイン氏はゆっくりした用心ぶかい口調でいう せりふ と、ちょっと間をおいた。そのようすにはどこか、だいじなきっかけの台詞をいいおえた ぶつ やしき きしつけんきゅう ぜんめんてきじん しよ、つじき 121

6. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

はっげん 沈黙には、なにか奇妙に挑発的なものがあり、まるでいまのコンウェイの発言にたいし むごん て、無言のうちに異議をとなえているかのようにうけとれた。コンウェイが知らずしらず べんかい くちょう 弁解がましい口調になったのは、そのせいだったかもしれない。 「そうだろ、ほかに考えられたかね ? え、イヴシャム ? 「わからんな。」トムイヴシャムはのろのろといった。「あのときデレクは、正確にはな しんこんしゃ んといったつけな ? たしか、新婚者レースに出走しようとしているとかいうことーー・相 て きよか はっぴょうだんかい 手の許可があるまでは、そのご婦人の名はいえないということーー・まだ発表の段階ではな いということ。ああそうだ、こうもいってたなーー自分はひじように幸運な男だ、来年の さいたいしゃ こうふく いまごろは、自分も妻帯者として幸福に暮らしているだろうということを、二人の親友に 。こザつ、 . っ 知ってもらいたかったんだ、とね。むろんわれわれは、相手の女性をマージョリー すいそく と推測した。二人は長いっきあいだったし、よくいっしょこ 冫いたからね。」 「ただひとっ コンウェイがいいかけて、ロをつぐんだ。 「なんだね、ディック ? 」 こんやく 「いや、つまりね、もし相手がマージョリ ーだったら、すぐに婚約を発表できないという ひみつ のは、ちとおかしいと思うのさ 。いったいなぜ秘密にするんだろう ? なんだか、相手の ちんもく きみようちょうはってき ふじん しゆっそう じよせい はっぴょう こううん せいかく らいねん しんゅう 128

7. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

「というと、事実はそうじゃないのか ? 」 きたく しよ、つさ ひてい リッチ少佐はその点を否定しているんだよ。自分が帰宅したときは、 「わすれたのかね しようげん クレイトンは帰ったあとだったと、はっきり証言しているんだ。 じゅうばく 「しかし、従僕にいわせると、クレイトンがでていったのなら、とびらのしまる音でそれ がわかったはずだそうじゃないか。それに、クレイトンがいったんでていったのなら、 つもどってきたんだい ? 十二時すぎということはありえない。すくなくともその二時間 せつめい し しやだんげん まえには死んでいた、そう医者が断言しているんだからね。だとすれば、考えられる説明 はひとっしかない。」 モナミ 「いってみたまえ、きみ。」 きやくま 「クレイトンは客間で五分間、ひとりきりでいた。そのあいだにだれかがはいってきて、 じゅうばく なんてん 彼を殺したんだ。だけどこの場合にもおなじ難点がある。従僕に気づかれずにはいってこ 簿 はんにん かぎ られるのは、鍵をもっているものだけだし、おなじ意味で、犯人がでてゆくときにも、や件 じゅうほく の はり玄関のとびらが音をたてる。そうすれば従僕に聞こえるはずだ。」 ワ 「いかにも。ーボワロはいった。「だからしてーーー ? せつめい けつろん 「だからして , ・・・ー・・ー結論はなにもなしだ。ほかの説明は考えられないしね。 げんかん ころ じじっ

8. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

にんぎよう ちょうほんにんそうい にいて、糸をあやつり、人形をうごかしている張本人に相違ない。彼はすべてを知って しようち いる。二階の手すりぎわにうずくまっている女のことも。そう、彼は承知のうえなのだ。 やく かんきやく ふかぶかといすにすわりなおしたサタースウェイト氏は、観客といういつもながらの役 わりまんぞく もくぜんてんかい 割に満足して、目前に展開されてゆく芝居を見まもることにした。クイン氏はらくらくと、 ごくし。せんに糸をひき、人形をうごかしていた。 「女性ねーーーなるほど」と、クイン氏は考えぶかげにいった。「その夕食の席では、女性の 話はでなかったのですか ? せき はっぴょう 「でましたよ、むろん。」イヴシャムが声をはりあげた。「その席で婚約を発表したんです からな。だからこそ、ますます話がこんぐらかってくる。彼はそのことでひじようには どくしん はっぴょうじき しゃいでいました。まだ発表の時期ではないと いいながら、そのロの下から、長らく独身事 しんこん さんか をとおしてきたが、もうじき新婚レースに参加する、というようなことをほのめかしたり してね。」 じよせい 「むろんわれわれはみんな、その相手の女性がだれだか見当をつけていた」と、コンウェ イかいった。「マージョリー とうぜん このあとは、当然、クイン氏がなにかいう番だと思えたのに、彼はだまっていた。その じよせい にんぎよう 日ディルク。気だてのいい女性です。」 ばん けんと、つ こんやく せき 127

9. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

ちくおんき ている。カーティスはふたをあげ、ナイフをふるうーーーそばでは蓄音機が〈ウォーキン・ ー・バック・ホーム〉を流しているという寸法さ。」 マイ・ベビ わたしはやっとのことで声をし・ほりだした。 「しかし、どうして ? なぜそんなことを ? 」 かた ボワロは肩をすくめた。 じさっ 「男はなぜ。ヒストル自殺をするんだろうかね ? なぜ二人のイタリア人は決闘なんかし ひ じようねっ じみ ないめん た ? カーティスは地味だが、内面に強い情熱を秘めた男さ。彼はマーガリータⅱクレイ ていしゅ トンに思いを焦がした。じゃまものの亭主とリッチをとりのそけば、かならず自分になび いてくるーーーすくなくとも本人はそう考えたわけだ。」 かんがい そのあと彼は、感慨をこめてつけくわえた。 きけんしゅぞく じよせい てんしん 「ああいった天真らんまんな子どもつ。ほい女性 : : : あの手の女性はきわめて危険な種族だ 簿 てぐち げいじゅってき モン・デュ よ。それにしても、まったく、なんとみごとな、芸術的な手口だったろう ! あんな男を事 じしんてんさい だんちょう こうしゆだい ロ ワ 絞首台に送るなんて、断腸の思いだよ。はばかりながら、わたし自身天才であるだけに、 かんぜんはんざい れんちゅうてんぶん ほかの連中の天分をおしむことしきりなんだ。完全犯罪だよ、きみ。このエルキュール タ ン かんぜん ボワ口がそういうんだからまちがいない。完全なる殺人 : : : たいしたものだ ! 」 ほんにん さつじん すんばう 工 モナミ けっと、つ

10. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

は身のおきどころがないんです。」 どうじよう ハイン氏は、同情にたえぬというようにうなずいた。 わる 「表だって非難されるよりまだ悪いというわけですな。」 ぎわく 「そうです。目下のところは、たんなる疑惑にとどまっているんでしようが、とにかく、 てつづじようちょうさしよう しんべん ・ほくの身辺をさぐりまわっているやつがいましてねーー手続き上の調査と称していますが、 いっかん こうみよう きんだいてきそうさほう なに、ありようは例の近代的捜査法とやらの一環ですよ。ひじように巧妙で、なにをうた かね がっているのかおくびにもださない。ただ、これまで・ほくが金に詰まっていたのが、ここ へきてきゅうに金まわりがよくなったことに興味をもってる、というだけでね。」 「ほうーーー・そうなんですか ? 」 あな かけや 「ええ 競馬で二度ほど穴をあてましてね。ただあいにくなことに、賭屋をとおさず、 けいば ばけん じっさいにレース場で馬券を買ってるーーーしたがって、その金が競馬であてたものだとい はんしよう しようこ う証拠はどこにもないんです。むろん、そうじゃないという反証をあげることもできませ にゆうしゆさき んがーーーーしかしこれは、金の入手先をあかしたくないときに、だれもがたやすく思いつく うそですからね。」 けいさっ どうかん 「同感です。といっても、警察がそれ以上の挙にでるためには、まだまだ多くの証拠をあ おもて ひなん もっか かね いじようきょ きようみ しようこ 226