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検索対象: 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡
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1. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

てんじゃうわらは 一「長々しーで大人びた様子。 一つづつ、をさをさしく乗りたるしりに、殿上童乗せたるもをかし。 0 ニ行列が通り過ぎたのち、我が のち わたり果てぬる後には、などかさしもまどふらむ、われもわれもと、あやふちにその後を追おうとするさま。 三ゆっくり車を進ませなさい 子 くおそろしきまで、先に立たむといそぐを、「かうないそぎそ。のどやかにや供の者への言葉。 草 四少し通れるようになる程度に 枕れ」と、扇をさし出でて制すれど、聞きも入れねば、わりなくて、すこしひろ他の車をやりすごして。以下段末 まで三巻本とは文の順序その他異 き所に、強ひてとどめさせて立てたるを、心もとなくにくしとぞ思ひたる。き同が多い。 五うつぎの生垣。 ほひかくる車どもを見やりてあるこそをかしけれ。すこしよろしきほどにやり六驚くべき様子に。びつくりさ せるようなふうに。 五 過ごして、道の山里めき、あはれなるに、うつぎ垣根といふ物の、いと荒々しセうつぎの花、即ち卯の花。 ^ 「つばみたるものがち」の意か う、おどろかしげにさし出でたる枝どもなどおほかるに、花はまだよくもひら九桂。前ハーに「葵、かつらもう ち萎えて見ゅ」とあった。 け果てず、つばみたるがちに見ゆるを折らせて、車のこなたかなたなどにさし一 0 三巻本この前に「いとせばう、 えも通るまじう見ゆる」とある。 ゅ たるも、かつらなどのしばみたるがくちをしきに、をかしうおばゆる。行く先「さ」がはっきりしないが、近くな ってみると目的地とはちがった所 だった、の意と解する。一説、近 を、近う行きもて行けば、さしもあらざりつるこそをかしけれ。男の車のたれ 道を急いで行くと必ずしも近道で はなかった、の意。 とも知らぬが、しりにひきつづきて来るも、ただなるよりはをかしと見ゆるに、 = 「風吹けば峰にわかるる白雲 の絶えてつれなき君が心か」 ( 古 ひきわかるる所にて、「峰にわかるる」と言ひたるもをかし。 今・恋二忠岑 ) によって男が言い かける。言葉も交さぬままの別れ 四

2. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

くなっているの。葡萄染の織物の染色があせているの。色 っとわけがあるのでしよう」と言って、派手に笑うと、 「これもあの人が言わせなさるのでしよう」と、とても不好みの人が年とって衰弱しているの。明るく晴れやかな、 やしきこだち 邸の木立が焼けているの。庭の池などはそのまま残ってい 愉快だと思っている。「そんなふうにそうしたことを言い 子 うきぐさみずくさ るけれど、浮草や水草などが茂っていて。 はいたしません。人に言うのでさえにくらしいのですの 草 に」と言って、引っ込んでしまったので、そのあとでもや 一六八たのもしげなきもの はり、「人に恥になるようなことを、事実を曲げてこじっ てんじようびと 頼もしい感じがしないもの飽きつばくて人を忘れてし けて言う」と恨んで、「殿上人が、そう言ったら人がうわ さをして笑うというわけで、あんなことを言い出したのまいがちな人。婿の、夜、妻の家にやって来ることが少な ひとり だ」とおっしやるので、「それならばわたし一人をお恨みくなりがちなの。六位の人の、頭の毛が白いの。 んなことを一言う人が、そうは言うもののやはり、人の頼み になるべきでもないようですのに、妙なこと」などと言う けれど、そののちはわたしとの言葉のやりとりは絶えてそ事をきっとやりとげるといった顔をして、たいせつなこと す′一ろく を引き受けているの。第一番に勝っ双六。七、八十歳であ れでお終いになってしまったのだった。 なんにち る人が、気分を悪くして何日もたってしまったの。風が吹 一六七昔おばえて不用なるもの く時に、帆を上げている舟。 りつば 立派だった昔が思い出されて、今は役に立たないもの からえびよう うげんべりたたみ 一六九読経は不断経 繧繝縁の畳が古くなって、節が出て来ているの。唐絵の屏 どきよう ふだん 読経は不断経がいい 風の、表面がきずつけられているの。藤のかかっている松 じ *. りも の木が枯れているの。地摺の裳のはなだ色があせているの。 きちょうかたら 一七〇近くて遠きもの 絵師の目が見えないの。几帳の帷子の古くなってしまった も - 一う 近くて遠いもの宮のべの祭。情愛のないきようだいや の。帽額のなくなってしまったの。七尺のかもじの毛が赤 ( 原文八〇ハー ) ふし はで むこ えびぞめ

3. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

しておられることだろうよ。良少将といった人で、毎年舞 たいへん、終ってしまおうことは、残念である。上達部な びと どもつづいて出ておしまいになったので、ひどく物足りな人であって、それをすばらしいものとして思い込んでしま な かみみやしろ みかぐ かえだ く残念なのに、賀茂の臨時の祭の場合は、還り立ちの御神ったのだった人が、亡くなって、上の御社の、一の橋の下 にその霊がいるそうだということを聞くと、気味が悪く、 楽などによってこそ気持がなぐさめられるものだ。庭火の いちずに物を思い込まないようにしようと思うけれども、 煙の細く立ちのばっている折に、神楽の笛の音が明るく晴 ふる っこ , っ田い垣 れやかに震えて、細い音で吹き澄しているのに、歌の声も、やはりこの祭のすばらしいことをこそは、い てることはできそうにもない。 とても身にしみじみと感じられ、たいへん明るく晴れやか し・よギ、い うちぎめ に冴えて立ちのばって、打衣もとても肌に冷たく、扇を持「八幡の臨時の祭の終ったあとこそ、とても所在ないもの です。どうして帰って、また舞うことをしなかったのでし っている手が冷えるが、夢中なのでそれも感じられない。 にんじようぎえおのこ よ , つ。そ , っしたらおもしろいことでしょ , つのに。禄をもら 人長が才の男たちをお呼び寄せになって、才の男たちが跳 って、後ろから退出するのこそ、期待はずれでがっかりし んで来ているのも、人長の気持よさそうな様子などがたい しゅ 2 しし 4 う ます」などと女房たちが言うのを、主上におかせられては したものだ。 いっ第一う お聞きあそばされて、「あした帰って来ようのを、召して 里にいる時は、ただ一行が通って行くのを見るのに、そ みやしろ のお通りを見るだけでは不満足なので、御社まで行って見舞わせよう」などと仰せになる。「ほんとうでございまし ようか。そうしたら、どんなにすばらしいことでしよう」 る折もある。大きな木のもとに、車を立ててあるので、松 明の煙がたなびいて、その火の光に舞人の半臂の緒や、衣などと申しあげる。うれしがって、中宮様にも、「やはり それをお舞わせあそばしてくださいませ」と、集って夢中 装の艶も、昼間よりは格段にまさって見られる。橋の板を 第 で申しあげたところが、その時は帰って舞ったのは、うれ 踏み鳴らし踏み鳴らしして、声を合せて舞う折もとてもお しかったことだった。「まさかそんなことはあるはずがな もしろいのに、水の流れる音、笛の音などがそれと一緒に なって聞えるのは、ほんとうに神さまもうれしいと思し召かろう」と油断しているのに、舞人が、主上におかせられ つや かんだちめ ろく

4. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

いまいづくにか」といふ事を、うち出だしたまへりしかば、いみじうめでたし。一これほどびったりした句を。 -4 ニ中宮様の御座所。 いかでかは思ひ出でたまひけむ。おはします所に分けまゐるほどに、立ち出で三中宮様は立ってお出ましにな 子 四宴の半ばで中座して。 草させたまひて、「めでたしな。いみじう今日の事に言ひたることにこそあれ」 五頭中将 ( 斉信 ) びいきのお前 枕 ( 清少納言 ) にとっては。 とのたまはすれば、「それ啓しにとて、物も見さしてまゐりはべりつるなり。 六頭中将は私を。 なほいみじくめでたくこそ思ひはべれ」と聞えさすれば、「ましてさおばゆらセ「まほは「かたほ」の対。まと もに。夫婦として、の意。 ^ 古いなじみ、ひいき。 むーと仰せらるる。 九あなた ( 作者 ) とのお付合の思 わざと呼びも出で、おのづから会ふ所にては、「などかまろをまほに近くは 一 0 親しいお付合をするのは、む ずかしくはありませんが、仮にそ 語らひたまはぬ。さすがににくしなど思ひたるさまにはあらずと知りたるを、 うなったあとでは。 とくい = まるで役目のようにおほめ申 いとあやしくなむ。さばかり年ごろになりぬる得意の、うとくてやむはなし。 九 しあげるのに。 なに′」と てんじゃう あ 殿上などに、明け暮れなきをりもあらば、何事をか思ひ出でにせむ」とのたま三私に御好意だけお持ちくださ いませね。 のち かしやく へば、「さらなり。かたかるべき事にもあらぬを、さもあらむ後には、えほめ一三 ( 夫婦となったら ) 良心の苛責 にたえかねて、ほめ言葉も口にし おまへ にノ、 , っ′ギ、い士ー ) よ , っ・ものを一。 たてまつらざらむが、くちをしきなり。うへの御前などにて、やくとあつまり 一四そういう人こそ夫を他人の目 てほめきこゆるこ、 しいかでか。ただおばせかし。かたはらいたく、心の鬼出で以上にほめる連中が多いのだ。 一五それが私の気にさわらないの ならそれでもよいでしようが : 来て、言ひにくくはべりなむものを」と言へば、笑ひて「など。さる人しも、 きこ

5. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

197 第 312 ~ 引 5 段 一六 か。三四人ゐたりし者の、みなさせしかば、たくみのさるなンめりと思ふなり。宅「勿体なし」の語幹とみて、妥 当な状態ではない、の意から、不 都合だ、妥当ではない、の意に仮 あな、もたいなのことともや。 に解く。中古の用例に乏しい 一〈三巻本にこの一段なし。「物 語をするにもせよ、昔物語をする 三一四物語をもせよ、昔物語もせよ にもせよ」の意と仮にみなす。 あいづち いいかげんな相槌を打って。 一九 物語をもせよ、丑日物語もせよ、さかしらにいらへうちして、こと人と物一言ひニ 0 、別の人と口をきいて、物語の 方をはぐらかしてしまう人。 ニ一二番目の姫君。 まぎらはす人、いとにくし。 一三格式ある身分の家の子弟。 ニ三しゃれた者。 ニ四心の人格的な働き、気立て。 三一五ある所に、中の君とかや言ひける人のもとに ここでは物事の情趣をよく解する こと。 ある所に、中の君とかや言ひける人のもとに、君達にはあらねども、その心ニ五男が帰ったあとの風情を女か ら思い出してもらおうと。 ありあけ ニ四 いたくすきたる者に言はれ、、いばせなどある人の、九月ばかりに行きて、有明ニ六男が今は去ったことだろうと 女が遠く見送るその時間は。 なごり の月のいみじう霧りておもしろき名残思ひ出でられむと、ことのはをつくして毛しっとりとした美しさ。 たてじとみ ニ ^ 立蔀がちょうど合っている、 ニ六 ニセ の意とみる。 言へるに、今はいぬらむと、遠く見送るほど、えも言はずえんなるほどなり。 ニ九「長月の有明の月のありつつ ゅ たてじとみ かた 出づるやうに見せて立ち帰り、立蔀あひたる陰の方に添ひ立ちて、なほ行きやも君し来まさばわれ恋ひめやも」 ( 拾遺・恋三人麻呂 ) 。女が口ず ニ九 さむ。 らぬさまも言ひ知らせむと思ふに、「有明の月のありつつも」とうち言ひて、 きんだち

6. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

それも同じ、いにや、「しりそかせたまへ。かたじけなし」など言ふ。「恥ぢたま一どうぞ後ろにおさがりくださ いませ。もったいのうございます。 ニお立ち離れになった。 ふかな」と笑ひて、立ちたまへり。からうじておりぬれば、寄りおはして、 三不明。「少納言をむねたかな 子 どに見せないで、隠しておろせ」 「『むねたかなどに見せで、隠しておろせ』と、宮の仰せらるれば、来たるに、 草 と中宮が言われたということも、 五きこ 冗談かまた然るべき事情があった 枕思ひ隈なき」とて、引きおろして、ゐてまゐりたまふ。「さ聞えさせたまひっ つまびら か詳かでない。一説、別れた夫か。 四察しが悪い らむ」と思ふ、かたじけなし。 五中宮様が大納言様に。 まゐりたれば、はじめおりける人どもの、物の見えぬべき端に、八人ばかり六私が立ってかくして。 セどうだ、どうした。 よ ^ 「着る」の尊敬語。女院に対し 出でゐにけり。一尺余、二尺ばかりの高さの長押の上におはします。「ここに もからぎめ かしこまる意味で裳・唐衣の正装 きちゃう をしたという 立て隠して、ゐてまゐりたり」と申したまへば、「いづら」とて、几帳のこな 九一通りだろうか、それどころ から ぞハ ではないすばらしさだ。 たに出でさせたまへり。まだ唐の御衣も奉りながらおはしますそいみじき。 一 0 唐伝来の浮き織の綾絹。 くれなゐぞ九 からあややなぎぞえびぞめ ゃながさね 紅の御衣よろしからむや。中に唐綾の柳の御衣、葡萄染の五重の御衣に、赤 = 柳襲。表白、裏青。 三織物の名としては縦糸紫、横 も から ぞぢずりからうすものぎうがんかさ 色の唐の御衣、地摺の唐の薄物に象眼重ねたる御裳など奉りたり。物の色、さ糸赤。 す 一三白地に藍などで模様を摺り出 した織物 らになべて似るべきゃうなし。 こんでい 一四色糸・金泥で模様の縁を細く ふちどったものという。 「われをばいかが見る」と仰せらる。「いみじうなむ候ひつる」なども、言に 一五出発が遅れたのは。 とも 一六だいぶ 出でては、世の常そ。「久しうやありつる。それは、殿の大夫の、院の御供に一六中宮大夫道長。 ぐま し

7. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

きよみづ 一三巻本「清水」。 ワん ニ階段のついた屋根のある長廊 一二四正月寺に籠りたるは みたらし 下。一説御手洗川にかけた「呉橋」。 子 三不審。腰衣の掛け帯か。 こも くしゃ あびだつまくしやろん 草正月寺に籠りたるは、いみじく寒く、雪がちに氷りたるこそをかしけれ。雨 0 「倶舎」は『阿毘達磨倶舎論』の 略。「頌」は偈と同じく、字句を一 ふうじゅ 枕 定して諷誦しやすくしたもの。 、とわろし。 などの降りぬべきけしきなるは、し 五「衣うへさま」以下は、作者の まう さんナい つばね 初瀬などに詣でて、局などするほどは、くれ階のもとに、車引き寄せて立て一行のこととも一般参謌人のこと とも解かれているが、後者がよい あしだ 六「強し」。堅苦しい。儀式ば るに、おびばかりしたる若き法師ばらの、足駄といふ物をはきて、いささかっ っている。 くしゃのじゅ まらにしき セ下部を革で作り上部は薔薇錦 つみもなくおりのばるとて、何ともなき経の端をよみ、倶舎頌をすこし言ひっ をつけ細い革緒で締めた沓という。 くろうるし づけありくこそ、所につけてはをかしけれ。わがのばるはいとあやふく、かた〈木を浅く彫り黒漆で塗った沓。 深沓の頸を短くした形のもの。 ゅ かうらん はらに寄りて、高欄おさへて行くものを、ただ板敷などのやうに思ひたるもを九主家の内にも外にも ( 奥方・ 主人方 ) 出入りを許された若い男 。も たちや一門の子弟たち、という。 かし。「局したり」など言ひて、沓ども持て来ておろす。 一 0 三巻本「あまた」。 - も 六 からぎぬ 衣うへさまに引き返しなどしたるもあり。裳、唐衣などこはごはしく装束き = 追い越して行く他の者。 一ニ以下は、作者自身の体験を中 くっ ふかぐっはうくわ 心とする。 たるもあり。深沓、半靴などはきて、廊のほどなど沓すり入るは、内わたりめ 一三仏堂の内陣と外陣とを仕切る 作り付けの格子。内陣には本尊が きて、またをかし。 安置されている。 内外などのゆるされたる若き男ども、家ノ子など、また立ちつづきて、「そ一四「御あかし、は「燃えたる」の主 ( 現代語訳二四〇ハー ) はっせ きめ ないげ らう いたじき うち さうぞ

8. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

お勤めをしていらっしやったのを、関白様が「わたしに貸 ましあそばされるので、戸口で、女房たちが、色とりどり ごんだいなごん そでぐち してやってください、その数珠をしばらく。お勤めをして 幻の袖口を現して、御簾を引き上げていると、権大納言様が、 関白様の御沓を取っておはかせ申しあげあそばす。その御来世にすばらしい身の上になろうと思って借りるのだ」と 子 した おもおも いうことなので、女房たちが集って笑うけれど、やはりと 様子は、たいへん重々しくおきれいに容儀正しく見え、下 草 がさねきょ 襲の裾を長く引いて、あたりも狭いまでのお姿でそこに侍てもすばらしいことだ。中宮様におかせられてはこれをお 枕 していらっしやる。何より先に、「まあすばらしい。大納聞きあそばして、「仏になった場合こそ、関白よりはまさ るでしよう」と言って、にこにこしておいであそばすので、 言ほどのお方に、関白様は沓をお取らせになるよ」と見ら また今度は中宮様が、すばらしく感じられてお見申しあげ れる。山の井の大納一言、その弟君たち、その他お身内では る。大夫様がおひざまずきあそばされていることを、繰り ない人々などが、濃い色ー黒ーをひき散らしてあるように、 とうかでん ふじつばへい 藤壺の塀のきわから、登華殿の前まで座って並んでいるの返し申しあげると、中宮様は、「いつものひいきの人」と に、関白様はとてもほっそりとたいへん優雅なお姿で、御お笑いあそばされる。まして、大夫様ののちの御栄華のあ はかし りさまを中宮様がお見申しあげあそばされたのだったら、 佩刀の具合などをお直しになってちょっと立ち止っておい だいぶ せいりようでん であそばされる時に、宮の大夫様が、清涼殿の前にお立ちわたしの言うのも道理とお思いあそばされることだろうに。 あそばされておいでなので、その大夫様はおひざまずきあ 一三三九月ばかり夜一夜降り明かしたる雨の そばされるはずがないようだと見るうちに、関白様が少し 九月のころ、一晩中降って夜明けを迎えた雨が、今朝は お歩き出しあそばされると、すっとおひざまずきあそばさ ゃんで、朝日がばっと明るくさしている時に、庭の植込み れたのこそ : ・ : 。やはり、お積みになった前世の御善業の の菊の露がこばれるほどに濡れてかかっているのも、とて 程度はいったいどれほどなのだろうと関白様をお見申しあ らもんすすき もおもしろい。透垣、羅文、薄などの上に張りめぐらして げたのこそ、すばらしいことだった。 ある蜘蛛の巣がこばれ残って、所々に糸も切れそうな様子 女房の中納言の君が、忌日ということで、奇特な態度で くっ ぜんごう すいがし じゅず

9. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

を ようがいす う見えたるに、半臂の緒の、瑩じたるやうにかかりたる、すり袴の中より氷か一瑩貝で摺り磨き光沢を出す。 すりばかま ニ舞人のつける摺袴。左右の股 うちめ とおどろくばかりなる打目など、すべてめでたし。いますこしわたらせまほし立ちを縫わずかがってある。 三摺袴のかがり目から見える下 子 きに、使はかならず、にくげなるもあるたびは、目もとまらぬ。されど、藤の袴の光沢をいう。 ほ - っへいーレ 草 四祭の奉幣使。殿上人または受 領。 枕花に隠されたるほどは、をかし。 六 五「かならず」は「目もとまらぬ」 ぺいじゅう ゃなぎ なほ今過ぎぬる方見送らるるに、陪従のしなおくれたる、柳に、かざしの山 六舞人に従う地下の役人。 やしろ ゃなぎがさね 吹、面なく見ゆれども、あふひいと高く打ちて、「賀茂の社のゆふだすき」とセ表白、裏青の柳襲の下襲。 〈ふさわしくないようで厚かま うたひたるは、、 しとを一かし。 しい、の意か。 あふり 九不審。三巻本「泥障 ( 騎乗の泥 行幸になずらふる物、何かあらむ。御輿に奉りたるを見まゐらせたるは、明よけ ) いと高ううち鳴らして」。 一 0 「ちはやぶる賀茂のやしろの かうがう け暮れ御前に候ひっかうまつる事もおばえず、神々しういつくしう、常は何と木綿襷ひと日も君をかけぬ日はな し」 ( 古今・恋一 ) による。 もなきっかさ、ひめまうち君さへぞ、やんごとなうめづらしうおばゆる。御綱 = 以下一説別段とする。 ほうれん そうかれん 三鳳輦または葱花輦。 すけ ぐぶ 一三馬に乗って供奉する女官。 の助の中少将など、いとをかし。 みこし かよちょう 一四御輿の綱をとる駕輿丁の側に きのふ 祭のかへさ、いみじうをかし。昨日はよろづの事うるはしうて、一条の大路供奉する近衛中・少将。 一五三巻本にはこのあと五月の節 のひろう清らなるに、日の影も暑く、車にさし入りたるも、まばゆければ、扇会の記事がある。 一六四月中の酉の日に行われる賀 して隠し、ゐなほりなどして、久しう待ちつるも、見苦しう汗などもあえしを、茂祭の、翌日の行列。以下一説別 ぶきおも 四 つかひ五 さぶら はんび かた えう ニばかまなか あせ みつな おほぢ あふぎ やま

10. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

枕草子 20 一「孝」はここでは親の喪に服す ることであろう。「人の子ーで一語。 きんぶせんもう ニ吉野の金峰山に詣でるための 精進。修験道の霊地で、ここには えんぎようじゃ さんろう いるものは役の行者の千日参籠に ならってあらかじめ長期の精進を 行った。 三不審。自分の居室から礼拝の 場に出ていることか 四妻など。 一二三あはれなるもの 五長期の精進を終って、いよい みたけさんけい よ御嶽に参詣する時のありさま。 をとこ ね みたけさうじ で 六立ち出て御嶽に伺い到着する。 あはれなるもの孝ある人の子。鹿の音。よき男の若き、御嶽精進したる。 セ参詣のために簡素な烏帽子を いでゐたらむ暁の額など、あはれなり。むつましき人の、目さまして聞くらむ、用いた。 のぶたか ^ 藤原宣孝。紫式部の夫。正暦 まう かみ 元年 ( 究 0 ) 筑前守、長徳四年 ( 究 0 いかならむとつつしみたるに、たひらかに 思ひやる。詣づるほどのありさま、 えもんごんのすけ 右衛門権佐兼山城守。下文に見 六 えばうし 詣で着きたるこそいとめでたけれ。烏帽子のさまなどそ、なほ人わろき。なほえる隆光は宣孝の長男。 けってきほう 九もと武官の闕腋の袍の称から ゑもんの かりぎめ 転じてそれに仕立の似る狩衣の称 いみじき人と聞ゆれど、こよなくやつれて詣づとこそは知りたるに、右衛門 あき 一 0 藤原隆光。母は下総守藤原顕 すけのぶたか きめ みちじよ とのもりのすけ 佐宣孝は、「あぢきなき事なり。ただ清き衣を着て詣でむに、なでふ事かあら猷女。主殿亮は主殿寮の次官。 「長保元年 ( 究九 ) 六月蔵人、年二 む。かならすよも『あしくて詣でよ』と御嶽のたまはじ」とて、三月つごもり九」 ( 三巻本勘物 ) 。 = 水干は糊を用いず水だけで張 あを き一しめき かりめ った絹の意がもとで、狩衣に似て に、紫のいと濃き指貫、白き襖、山吹のいみじくおどろおどろしきなどにて、 冬は、いみじく寒き。 夏は、世に知らず暑き。 あかっきめか のり