老人 - みる会図書館


検索対象: アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1
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1. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

くろかみ せ 黒髪で背の高い、やせた人物でしよう。 「自分の好むときのほかは、だれからもその姿をかくして見えなくなれる存在です。すこし人間 じけん かんしん こいびと ばなれしていますが、人間の事件、ことに恋人たちに関心をもっています。彼は死んだ人たちの じけんば じよぶん 弁護者でもありますーと、クリスティは『クイン氏の事件簿』 ( 一九三〇年 ) の序文で語っています。 ゅうれい れんあい 肉体をもった幽霊とよぶにふさわしいクイン氏は、恋愛がらみの事件が起きそうになると、だ しゆっげん しぬけにその場に出現します。そして、愛するあまりにたがいに信じられなくなった恋人たちを むじっ つみ すくったり、無実の罪におとされた恋人を助けたりするのです。 とうじよう クイン氏が登場するとき、そこにはかならずといってよいほど、小柄なサタースウェイト老人 げんば ねこぜ たにん も現場にいあわせます。〈やや猫背で、干からびた感じの人物〉で、他人の生活ぶりに深い関心を じんせい ほうかんしゃ いだいています。いわば人生の傍観者というべき老人ですが、クイン氏のさりげないことばから、 ひげき 悲劇の裏にある真相を見ぬいて、恋人たちを助ける役をはたすことになるのです。 こうふく そうだん ハイン「あなたは幸福ですか ? そうでないかオを こよ、わたしに相談してください。 リッチモンド街一七番地 。ハイン」 べんごしゃ ページぜんぶを、ボワロ探偵の死亡記事で埋めたほどです。それほどボワロ探偵ファンが多かっ た、ということでしよう。 にくたい ー丿ー この ′ーリクイン クイン探偵役として、もっともふしぎな人物が、道化師という奇妙な名前をもつ、 すがた しんそう たんていやく たんてい ひ し じんぶつ こがら そんざい きみよう ろうじん 238

2. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

がんらい 「ほら、 いったとおりだろう ? ーポニントンがうなるようにいった。「女ってのは、元来、 食べるもののことではあてにならないものなのさ ! 」 彼はレストランのなかを見まわした。 「世のなかというのはおもしろいものでね。そら、あのすみの席に、あごひげをはやした おかしな風体の老人がいるだろう ? モ リーにきけばわかるが、あの老人はいつもきまっ て火曜と木曜の夜にこの店にあらわれる。かれこれもう十年ちかくもかよってきているそ いわばこの店の商標みたいなものだよ。ところが、あの老人の名前とか、どこに しよくぎ ) よう 住んでるかとか、職業はなにかってことになると、店のものもだれも知らない。考えてみ ればおかしな話さ。」 しちめんちょう ウェイトレスが七面鳥をはこんでくると、彼は話しかけた。 ろうじんせいきん 「あいかわらずあのひげの老人、精勤ぶりを発揮しているようだね。」 「そうですわ。火曜日と木曜日があのかたのお見えになる日です。でも先週だけは、月曜 日にもいらっしゃいましたのよ ! あのときはすっかりあわててしまいましたわ ! 自分 が日をまちがえて、きようは火曜日だったかしらと思ったくらいですもの。でも、つぎの りんじ 晩もつづけておいでになりましたのでーーそれで、月曜日はいわば臨時だったんだなと思 ふうてい ろうじん しようひょう みせ はっき せき

3. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

は地下鉄のなかでである。 しんどう み 二人はとなりあった吊り革にぶらさがって、電車の震動に身をまかせながらうなずき あった。やがてビカデリー・ サーカスまでくると、どっと客がおり、二人は車両のいちば ん前にならんですわることができた。乗り降りする客はそこまではやってこないので、そ こではおちついて話ができた。 し ポニントン氏がいった。 「ところであんた、おぼえているかな。いつだったか〈ギャラント・ エンデヴァー〉で、 よ かわった老人に会ったろう ? どうやらあの老人、あの世へいっちまったんじゃないかと 思われるふしがあるんだ。ここ一週間、まるきり姿を見せないんでね。モリーがたいへん 気にしている。 エルキュールⅱボワロはすわりなおした。目がきらっと光った。 「ほほう。それ、ほんとうのことですかな ? ポニントンはいっこ。 ろうじん しやしんさっ しよくじせいげん 「あのときいっただろうーー・あの老人は医者の診察をうけて、食餌制限をいいわたされた しよくじせいげん じようだん んだって。食餌制限はまあ冗談にしても、医者の診察をうけたことは事実じゃないのか ちかてつ ろうじん っ かわ の お すがた きやく じじっ しやりよう

4. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

についた。給仕の娘はモリーではなかった。その娘のいうところによると、モリーはきょ きゅうか うは休暇だということだった。 じこく ちょうど七時、まだこみあう時刻ではなかったので、その娘を相手に、ガスコイン老人 わだい の話題をもちだすのは、むずかしくはなかった。 「ええ。あのかたは、ずいぶん長いあいだ、つづけてお見えになっていましたわ。」彼女は いった。「でも、わたしたち店のものは、だれもあのかたのお名前をそんじあげなかったん しんぶんけんししんもん です。たまたま新聞に検死審問のことがでて、そこにあのかたのお写真がのっていました ろうじん の。『ねえ、これ、例の〈ひげのご老人〉じゃなくって ? 』って、わたし、モリーにいいま した。うちでは〈ひげのご老人〉でとおっていましたの。」 な 「亡くなった晩に、ここで食事をしていったそうだね ? 」 「そうですわ。三日の木曜日でした。いつでも木曜日にはおいでになるんです。火曜日と 木曜日ーー時計みたいに正確に。」 「ひょっとして、そのときなにを食べたかおぼえていないかね ? 」 A 一り・に′、い 「ええと、ちょっとお待ちくださいましよ。はじめは鶏肉入りのカレースー。フでした。ま ちがいありません。それから、ビーフステーキ・プディングーーそれともマトンだったか きゅうじむすめ ばん せいかく みせ むすめあいて しやしん ろうじん 51 ボワロの事件簿

5. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

さいのう 本編では、ボワロは自分の才能を誇らしげに語ります。ロぐせの「わたしは偉大なる男だ」と はくしゅ いうせりふもみられます。また、ボワロは、「自分に匹敵する才能のぬしに出会ったら拍手しよう はんにんこうしゆだい かんぜんはんざい ともいいます。そして最後に、完全犯罪にやぶれた犯人を絞首台に送らねばならないことを嘆い てみせます。 どくしゃ しんし そっちよく このようなイギリス紳士らしからぬ率直さが、つつしみが美徳のイギリス読者に、かえって受 けたのでしよう。 と、つじよ、つ “クイン登場」 (The Comming of Mr. Quin) 十二月三十一日の夜のパーティの席上 ろうじん きみようちゅうねんふうふ のドラマです。サタースウェイト老人は、奇妙な中年夫婦に惹きつけられます。深く愛しあって なぞ みようあいて いる彼らなのに、妙に相手の心をさぐっているようすなのです : : : その謎を、だしぬけにあらわ やみき と はめつ れたクインが解いて、夫婦を破減からすくいだし、ふたたび夜の闇に消えていぎます。 ばうかんしゃ ものがたり じんせい 人生の傍観者であるサタースウェイト老人は、この物語ではじめて、芝居の観客の立場をすて なぞと えんぎしゃ て、演技者のようにふるまうことになりますーーーっまり、謎を解いたクインにかわって事件の真 しせん 相を語り、人びとの視線をあびる立場にたつのです。 ほんべん クイン登場ーと同じように、短編集 「ヘレンの顔」 (The Face of Helen) 本編も「ハ じけんば しゅうろく 『クイン氏の事件簿』に収録された作品です。 たんていやく かつやく この物語では、サタースウ = イト老人が探偵役として活躍します。古代ギリシアの国トロイと そう ほんべん し ひってき ひ びとく かんきやくたちば じけんしん たんべんしゅう せきじよう なげ 241

6. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

「あっ これはすまん。どうかしてるな、・ほくは。」 イヴシャムが、彼のわびるのをさえぎった。 「なあに、かまわん。かまわんよ、気にするな。それよりきみ、ふしぎなのは いまの 音で思いだしたことがあるんだ。たしか彼女もーーー・アプルトン夫人もーーーそれとおなじこ とをやったんじゃなかったかね ? つまり、ワインのびんをたたきこわしたんじゃなかっ たかね ? 」 「そうだ。アプルトン老人は、毎晩ーーーたった一杯だけだがーーポートワインを飲んでい し た。ところが彼の死んだ翌日、夫人がそのデキャンターをもちだして、たたきこわしてい めしつか たね ふうふなか るのを召使いのひとりが目撃した。当然、そのことがうわさの種になりだした。夫婦仲が しゅうち うまくいっていないことは、周知の事実だったからね。うわさはうわさをよんで、だんだ し んひろがっていった。そしてとうとう、何か月もたってから、故人の親類のひとりが、死 たいはつくつきよか しんせい ひそ どくぶっし 体発掘許可を申請した。調べてみると、案のじよう、老人の死は砒素による毒物死たった。 そうだったね ? 」 し 「いやーーーストリキニーネじゃなかったかな。まあそれはどっちでもいい、とにかく、死 どくぶつ こんせき はつけん 体からは毒物の痕跡が発見された。それをやれたと思われる人間はひとりしかいない。ア ろうじん しら よくじっ もく・けき まいばん ふじん とうぜん じじっ あん こじんしんるい ふじん 138

7. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

じけんちよくぜん 「そうだ、そのとおりだよ。」コンウェイが叫んだ。「あれは、アプルトン事件の直前だっ ちよく′」 「直後じゃなかったかい ? 」 「ちがう、ちがう、おぼえていないか ? ケイベルはアプルトン夫妻と知りあいだった ろうじん まえの年の春、ア。フルトン家に滞在していたんだーーー老人の死ぬ一週間まえだそうだ ふゆかい ばんろうじん がね。ある晩、老人のことを話してたことがあるーーーじつに不愉快なおいぼれだ、アプル うつく トン夫人のような若くて美しい女性が、あんなじじいにしばられていたんでは、さそっら かったことだろう、ってね。そのときはまだ、彼女が夫をかたづけたんじゃないかというよ うな、そういう疑いはでてきていなかったんだ。」 しんぶん したいはつくつきよか 「そうだよ、思いだした。その日の新聞で、死体発掘許可がおりたという記事を見たお・ほ事 えがある。あれはおなじ日だったーーー半分うわのそらでそれを見たのをお・ほえている。む ろんあとの半分は、二階で死んでるかわいそうなデレクのことを考えていたんだがね。 げんしよう 「よくあることですが、きわめてふしぎな現象ですな、それは」と、クイン氏がいった。 じゅうよう きんちょう ことがらしゅうちゅう 「ひじように緊張しているときに、心がほかの、さして重要でない事柄に集中している。 しかもずっとあとになってから、それをまざまざと思いだす。いわばそれは、そのときの ふじん うたが わか じよせい たいざい おっと ふさい 135

8. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

る地区における最近の死亡者の名簿だった。 ボワロの指がとまった。 「ヘンリー 日ガスコイン、六十九歳か。これから最初にあたってみるとするか。」 それから数時間後、エルキールⅡボワロは、キングズ・ロードのはすれで開業してい し ちょうしんあかげ しんさっしつ るマカンドリュー医師の診察室にいた。マカンドリ = ーは長身、赤毛のスコットランド人 ちてきふうばう で、知的な風貌をしていた。 「ガスコインですって ? 」彼はいった。「ああ、あのひとですな。かわった老人でしたよ。 こわれかかったような古い家に、たったひとりで住んでいましてね。あの地域はぜんぶと きんだいてき りこわして、近代的なアパートに建てかえることになっているんですが、そこにがんばっ しんさっ すがた ていたわけです。わたしは診察したことこそありませんが、姿はちょいちょい見かけてい ましたから、どこのだれかは知っていました。 ぎゅうにゆうはいたっ 最初に異変に気づいたのは、牛乳配達でしてね、とどけたびんがそのままになってい きんじよれんちゅうけいさっ るので、へんに思ったわけです。けつきよく、近所の連中が警察にとどけでて、警察がド し はねお ろうじん アをこわして踏みこんだところ、老人は死んでいた。階段から落ちて、首の骨を折ったん です。・ほろ・ほろのひものついた、古ぼけたガウンを着ていましてね。ーーそのひもに足をと さいきん しばうしやめいば た かいだん ろうじん かいぎよう

9. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

じんころ しようさ はんこうしめ 人を殺してはいない。しかし、あらゆる証拠が少佐の犯行を示していることはごそんじで けつかん しよう。あなた個人として、その証拠になにか欠陥があるとお思いですかな ? 、え。あるとは思いません。」 しゅじん 「ご主人がスコットランドにいくことを、最初にあなたに告げられたのは、いつでした か ? 」 ちゅうしよく 冫をし力ないと申しておりま 「昼食のすぐあとです。気がすすまないが、いかないわけこま、 ようけん ひょうかがく した。なにか土地の評価額についての用件だったようですわ。」 「で、そのあとは ? 」 クラプへいったんだと思います。それきり 「外出しました せん。」 しようさ 「さて、ではリッチ少佐ですがーーーその夜のようすはどんなでしたか ? い ありませんでしたかな ? 」 「ええ、そう思います。」 「はっきりおっしゃれませんか ? マーガリータはまゆをよせた。 がいしゆっ こじん しようこ しようこ っ 一度も会っておりま つもとかわり 83 ボワロの事件簿

10. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

ゅうじん 「いや、まじめな話、ありうべき解釈はひとっしかないと思うね。われらが未知の友人 もじ どうてん かんじよう は、なにかはげしい感情にとらわれていた。気持ちが動転していたんだ。それで、文字ど ちゅうもん おり、なにを注文しているか、なにを食べているかもわからなかったのさ。 そこで彼はいったんことばを切り、しばらくしてからまたつづけた。 ろうじん 「こういうと、あんたはすぐにいうだろうーーーーではあの老人は、なにが気にかかっていた さつじんけいかく のかわかるか、とね。自分ではきっと、殺人計画をねっていたんだ、とでもいうんだろう けど。」 じようだん そして彼は、自分の冗談に声をたてて笑った。 エルキュールⅡボワロは笑わなかった。 はくじよ、つ のちに白状したところによると、そのときからひどく気にはしていたのだという。なに たしようよかん が起ころうとしているか、多少の予感があってもよかったはすなのだが、自分としたこと が、ちとうかつだった。 そこまで考えるのは、あまりに考えすぎだ、と友人たちはなぐさめるのだが。 さいかい それから三週間ほどたって、エルキ = ールⅡボワロとポニントンは再会した かいしやく わら ゅうじん みち こんど 41 ボワロの事件簿