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検索対象: アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1
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1. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

ふんそうどうぐ ごしようだいじ したよ。そのうえジョージは、ばかなことに、つけひげその他の扮装道具を後生大事にし まっておいたんです。さよう ! その気になれば、証拠はいくらでもでてくるものでね。 ほ、つもん わたしはジョージを訪問して、ちょっとばかりおどかしてやりました。それがとどめの一 撃になったわけです。 ついでですが、彼はまた黒いちごを食べていましたよ。意地きたないやつですーーー食べ し エ・ビアン てんばっ ることばかり考えて。というわけで、天罰てきめん、その意地きたなさが彼の首を絞める ことになりました もしわたしが、とほうもない考えちがいをしていなければね。」 ににんまえ ウェイトレスが、二人前の黒いちごとりんごのタルトをはこんできた。 ようじん 「おいきみ、こいつはさげてくれ」と、ポニントン氏はいった。「用心して、しすぎること はないからね。そのかわりに、小さなサゴ椰子のプディングでがまんすることにしよう。 し しようこ た じ じ 67 ボワロの事件簿

2. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

かんじゃ 一流の医師が、案内されてきた新しい患者をながめるような、あたたかいが、すべてを見 しせん とおすような視線だ。 ややあって、彼はいった。 「奥さまは、ほんとうにわたしがお力になれるとお思いですか ? 」 「アリスはそういっていますわ。」 じしん 「いや、奥さまご自身のお考えをうかがっているのです。」 彼女のほおにかすかに赤みがさした。 「おっしやる意味がわかりかねますけど。 「要するにですね、わたしにどうしてほしいとおっしやるのか、それをお聞かせねがいた いのです。」 「あなたはー・ーあのうーー・ーあたくしがだれだかごそんじでいらっしゃいまして ? 」 「そんじあげています。 そうぞう 「でしたら、あたくしがおねがいしたいことはご想像がおっきになるはずですわ、ボワロ さんー、ーそしてヘイスティングズ大尉も。」ーー・ー・彼女がわたしの名を知っていたことに、わ しようさ おっところ たしはおおいに気をよくした いちりゅう おく おく あんない たいし 「リッチ少佐は、あたくしの夫を殺してはおりません。」

3. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

ボワロはのろのろといっこ。 「単純な事故死のケースだーーそうあなたはおっしやった。わたしが考えているのも、 お たって単純なことでねーー単純なひと押しということです。」 マカンドリュー医師はおどろいて目を見はった。 さつじん 「いいかえれば、殺人ということですな ! そうお考えになる根拠はあるのですか ? すいそく 「いや、たんなる推測です。ーボワロは答えた。 よっこ。 「そうですかな ? いや、きっとなにかあるにちがいない。」相手よ、 ボワロはだまっていた。 し マカンドリュー医師はつづけていった。 だんげん 「もし、あなたがうたがっておられるのが甥のラムジーなら、いまこの場で断言できます まよなか よーーそれはまったくの見当ちがいだとね。その夜、八時半から真夜中まで、ラムジーは じ けんししんもん ウイン。フルドンでブリッジの会にでていたのです。これは検死審問であきらかになった事 実ですよ。」 ボワロはつぶやいた。 とうぜんかくにん けいさつねんい 「そして当然、確認されたのでしような。警察は念入りなものですから。」 たんじゅんじこし し けんと、つ こんきょ

4. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

し 医師はいっこ。 ふり 「たぶんあなたは、彼に不利な事実をなにかごそんじなんでしような ? じんぶつ 「あなたからうかがうまで、そういう 人物がいることさえ知りませんでしたよ。」 「じゃあ、ほかのだれかをうたがっておられるのですか ? もんだい 「いや、いや、そういうことじゃないんです。問題はですな、人間という動物は一定の習 な かん 慣をもっということで、これはひじように重大な意味をもっています。ところが亡きガス し げんそく かんぜん コイン氏は、この原則をやぶった。なにかが完全にくるっているのですよ、いわばね。」 「なんのことだかさつばりわかりませんな、わたしには。 エルキュール日ボワロはほほえんで、立ちあがった。マカンドリュー医師も立ちあがっ て、いった。 「正直なところ、わたしにはどう考えても、ヘンリー 日ガスコインの死にあやしいふしが あるとは思えませんな。」 こがらたんてい 小柄な探偵は両手をひろげた。 ) 」うじよう 「わたしはもともと強情な人間でしてねーーー、ちょっとした考えにとりつかれているので こんきょ うらが ところで、マカンドリュー先生、 すよーーしかも、それを裏書きする根拠はなにもないー しようじき じじっ じゅうだい し し - いっていしゅう 49 ボワロの事件簿

5. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

じよせい 女性が人妻かなにかのように聞こえるじゃないかーーーっまりさ、亭主が死んだばかりだと りこん てつづちゅう か、でなくば離婚の手続き中だとか。」 じじよう 「そうだな、たしかに。」イヴシャムはあいづちをうった。「そういう事情なら、すぐには こんやく はっぴょう 婚約を発表できんというのはよくわかる。それにね、いま考えてみると、あのころは、さ ほど親しくマージョリーとっきあっていたわけでもなさそうだ。二人が親しかったのは、 なか そのまえの年のことで、どうもちかごろは二人の仲は冷えてきてるんじゃないか、そう 思ったのをお・ほえているよ。 「ふしぎですな。」クイン氏がいった。 「さようーーーまるでだれかが割りこんできたという感じだった。」 「ほかの女か。」コンウェイがいって、考えこんだ。 「とにかくだ、お・ほえているだろうーーーあの晩デレクのやっ、いささか不謹慎なほどはン こうふく しゃぎまわっていたじゃないか。いわば幸福に酔っているというかっこうだった。それで みよう せつめい いて、なにかこう うまく説明できないんだがーーー妙につつかかってくるような、挑一 せんてき 戦的なところもあった。」 うんめいちょうせん 「まるで運命に挑戦する男のようにねーと、アレック日ポータルがだみ声でいった。 した ひとづま ていしゅ ふきんしん ちょう 129

6. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

きんちょうかんへや もぞう でみんなの目の前にあるのに、見たところは、ただの模造ダイヤにしか見えない。たしか にうまい考えだったと思うわーーだれも気がっかなかったもの。」 「さあ、どうかな。」スタイン氏がいった。 「え、なにかいったかね ? 」 し うらおもて とがねちゅうしんあな ポインツ氏がバッグをとりあげると、裏表をあらためた。たしかに留め金の中心に穴が ねんど あり、そこに粘土のかすがこびりついている。彼はのろのろといっこ。 「落ちたのかもしれん。もういちど、よくさがしてみましよう。 きみよう あらためて捜索がおこなわれたが、こんどは、みんな奇妙にだまりこくったままだった。 緊張感が部屋じゅうにみなぎっていた。 けつきよく、全員がつぎつぎと立ちあがって、つっ立ったままたがいに顔を見あわせた。 「この部屋にはないな。」スタインがいった 「そして、この部屋からでたものはひとりもいない。 ジョージ卿が意味ありげにいっこ。 ちんもく ちょっと沈黙があって、それからイーヴがわっと位きだした。 かた 父親が彼女の肩をたたいて、「さあさあ、泣くんしゃない」と、無器用になぐさめた。 きよう ジョージ卿がレオスタインにむきなおった。 そうさく ぜんいん し な な きよう ぶきよう 218

7. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

についた。給仕の娘はモリーではなかった。その娘のいうところによると、モリーはきょ きゅうか うは休暇だということだった。 じこく ちょうど七時、まだこみあう時刻ではなかったので、その娘を相手に、ガスコイン老人 わだい の話題をもちだすのは、むずかしくはなかった。 「ええ。あのかたは、ずいぶん長いあいだ、つづけてお見えになっていましたわ。」彼女は いった。「でも、わたしたち店のものは、だれもあのかたのお名前をそんじあげなかったん しんぶんけんししんもん です。たまたま新聞に検死審問のことがでて、そこにあのかたのお写真がのっていました ろうじん の。『ねえ、これ、例の〈ひげのご老人〉じゃなくって ? 』って、わたし、モリーにいいま した。うちでは〈ひげのご老人〉でとおっていましたの。」 な 「亡くなった晩に、ここで食事をしていったそうだね ? 」 「そうですわ。三日の木曜日でした。いつでも木曜日にはおいでになるんです。火曜日と 木曜日ーー時計みたいに正確に。」 「ひょっとして、そのときなにを食べたかおぼえていないかね ? 」 A 一り・に′、い 「ええと、ちょっとお待ちくださいましよ。はじめは鶏肉入りのカレースー。フでした。ま ちがいありません。それから、ビーフステーキ・プディングーーそれともマトンだったか きゅうじむすめ ばん せいかく みせ むすめあいて しやしん ろうじん 51 ボワロの事件簿

8. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

「えーーーオ冫 よこーーーそのーーーもちろんですよ。きらいなわけがないでしよう ? す 「気にかかったものでねーー、彼を好いておられるかどうかが。」ボワロは平静にいっこ。 あいて そのあと、相手が答えようとしないのを見てとって、彼はつづけた。 「それにまた、ラングトンさんがあなたを好いているかどうかも気にかかります。」 「いったいなにをおっしやりたいのです、ボワ口さんワ・なにか考えていることがおあり らしいが、わたしにはさつばりわけがわからない。」 そっちよく ハリスンさ 「では、ごく率直にお話しいたしましよう。あなたは婚約なさいましたね、 じよう みりよくてき ん。お相手のモ リーⅱディーン嬢はわたしもそんじあけています。ひじように力的で、 こんやく うつく ひじようにお美しい。ディーン嬢はあなたと婚約するまえに、クロード日ラングトンと婚 かいしよう 約していました。あなたのために、ラングトンとの婚約を解消したのです。 ハリスンはうなすいた。 りゅう 「その理由がなんであったかは問いますまい。おそらく正当な理由があったのでしよう。 しかし、ラングトンとしては、けっしてわすれてはいないし、ゆるしてもいない、そう考 えても、考えすぎではないと思います。」 だんげん 「それはまちがいですよ、ボワ口さん。あなたの誤解だと断言してもよろしい。ラングト じよう と ごかい こんやく せいと、つ 17 ボワロの事件簿

9. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

るまでもなく、それはありえない、自分はひとりきりだということがわかっているのだ。 しかし、クイン氏のことは頭にこびりついてはなれなかった。そしてそれとともに、あ おもくる いっしゆききかんしようそうさいやく るべつのものもーー一種の危機感、焦燥、災厄がせまっているという重苦しい感じ。なに ふきっ さっきゅう か自分のしなければならないことがあるーー・・それも早急に。なにかひどく不吉なことが起 ころうとしていて、それをふせげるかどうかは、自分のはたらきいかんにかかっているの よかん その予感はひじように強かったので、サタースウェイト氏は、それとたたかおうとする のをあきらめた。かわりに目をとじると、クイン氏の面影を、より近くへひきよせようと した。いまここでクイン氏にたずねてみることさえできたらーーだが、その考えが頭にひ きたい らめいたときには、すでにその期待があやまりであることがわかっていた。クイン氏にな事 にかをたずねて、むくいられたことはけっしてないのだ。「あやつりの糸は、すべてあなたン こんな返事がかえってくるのがせきのやまだろう。 がにぎっているのですよ。」 かんじよう いんしようちゅうい 糸。糸とはなんの ? サタースウェイト氏は、自分の感情および印象を注意ぶかく分析 げんざい きけんよかん してみた。現在のこの危険の予感。はて、だれが危険にさらされているのだろう ? じようけい がんぜん ふいに、ある情景がまざまざと眼前にうかんできた。ジリアンⅱウエストがひとり自室 おもかげ ぶんせき 183

10. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

じんしゅてきとくちょうて 「いや、ありません。ただわたしは、人間の情緒的反応を、いくつかの人種的特徴に照ら とうめんもんだい きようみ して分類することに興味をもっているのですよ。それだけのことです。では、当面の問題 にもどりましようか。」 そっちよく 「率直にいうと、なぜあなたのところへくる気になったのか、自分でもわからないんです」 しん しようすい と、エヴァンルウエリンはいった。話しながら、あさ黒い顔に憔悴の色をうかべて、神 し ちよくし 経質に手をうごかした。パ パイン氏のほうを直視しようともしないのは、相手の さぐるような目が、おちつきをうしなわせるからだろうか。 「どうしてここへくる気になったのかわかりませんーと、彼はくりかえした。「だからと そうだん いって、どこにいくあてもないし、相談にのってくれるものもない。 簿 むりよくかん こんなはめになっているのに、どうすることもで事 腹がたつのは、この無力感ですよ の こうこく ぜん ン きないという : : : そんなとき、あなたのだされた広告が目につきました。それに、以前 イ なんじけん ある友だちがあなたのことをいっていたのも思いだしました。たしか、難事件をみごとに 解決なさったとか : : : それでーーまあーーーこうしておたずねしたわけです。ばかな考え ツ、きよ、つ だかい だったかもしれません。現在の。ほくの苦境は、だれがどう手をつくそうと、打開できそう にもありませんからね。」 けいしつ かいけっ ぶんるい げんざい じようちょてきはんのう あいて 221