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検索対象: 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡
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1. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

325 第 257 ~ 262 段 ( 原文一六一 さくらが寺、ね きのう 翌日、雨が降っているのを、関白様は、「昨日降らずに 色をしているの。青葉。桜襲。柳襲。また、楝。藤。 きよう わたくし 男はどんな色の着物でもおもしろい 今日降ることで、私のすばらしい宿世がわかってしまいま した。どう御覧あそばしますか」と中宮様に申しあげなさ あんど 二六一単衣は るのも、その御安堵は当然のことである。 あこめ しようぞくくれない 単衣は白いのがよい。正式の装束の紅のひとえ衵など 二五七たふとき事 を、仮にちょっと着ているのはいい。けれど、やはり色が 尊いこと九条の錫拠を唱えること。念仏のあとで回向黄ばんでいる単衣など着ているのは、ひどく気にくわない。 もん ねりいろきぬ 練色の衣も着ているけれど、やはり単衣は白くあってこそ 文を唱えること。 よいのだ。 二五八歌は いまようふし かぐらうた 二六二男も女もよろづの事まさりてわろきも 歌は「杉立てる門」。神楽歌もおもしろい。今様は節が ふぞくうた のことばの文字あやしく使ひたるこ 長くて変化があるのがおもしろい。風俗歌をうまくうたっ そあれ ているのがおもしろい 男も女も、あらゆることに立ちまさって劣った感じのす 二五九指貫は るものそれは会話の一言葉を奇妙に使っていることだ。た さしぬき 指貫は紫の濃いの。萌黄。夏は二藍。ひどく暑いころ、 だ使う言葉一つで、奇妙なことに、上品にも、下品にもな るのは、どういうわけなのだろうか。そのくせ、実はこの 夏虫の色をしているのも涼しそうだ。 ように思う人自身が、万事についてすぐれているわけにも 二六〇狩衣は いかないのだ。そうだとすると、 いったいどれをよい、悪 いというようには判断するのだろうかしかし、そうだと 狩衣は香染の薄いの。白いの。ふくさの赤色。松の葉 かりぎぬ こうぞめ もえぎ すくせ ふたあい ひとえ おうち

2. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

161 第 257 ~ 260 段 ( 現代語訳三二五ハー ) 一四御安心なさったのは当然のこ とである。このあと三巻本には、 二五七たふとき事 中宮崩御後の回想とみられる一文 がある。いずれにせよこの一段は くでうのしやくぢゃうねんぶつゑかう 中関白家の盛時を描いた一大雄篇 たふとき事九条錫杖。念仏の回向。 であると同時に、作者の宮仕え年 時を推定する上でも貴重である。 しやくじよう 一五法要の折、柄の短い錫杖を振 二五八歌は って九条の経文を唱えること。 一六念仏後に唱える回向文。自分 かどかぐらうた いまやう 歌は杉立てる門。神楽歌もをかし。今様は長くてくせづきたる。風よくの功徳を述べて浄土往生を願う。 宅うたいもの、歌謡。 天「わが庵は三輪の山もと恋し うたひたる。 くはとぶらひ来ませ杉立てる門」 ( 古今・雑下 ) に類した歌謡。三巻 ふぞくうた 本によると「風俗歌」としてのそれ。 二五九指貫は 一九神事の折の古代歌謡。 ニ 0 当世風の歌謡。平安中期から もえぎ すず さしぬき と暑きころ、夏虫の色したるも涼し流行。 指貫は紫の濃き。萌黄。夏は二藍。い ニ一もと諸国の民謡で貴族のうた いものとなったもの。 げなり。 一三瑠璃色、青蛾の色、蝉の羽の 色など諸説がある。 ニ三丁字染。 二六〇狩衣は 一西不詳。柔らかい絹、一説、表 裏同じ色の絹の合せ。 狩衣は香染の薄き。白き。ふくさの赤色。松の葉色したる。青葉。桜。柳。一宝不詳。青朽葉の誤りか。 かりぎめ かうぞめ 一九 ふたあゐ はいろ く ゃなぎ せみ

3. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

者たちがたくさん出てそこらにひかえていて、車のもとに はじめにお見申しあげて、賛嘆して騒ぐ。このわたしたち 0 来て、車の装いを整えて話しかけなどする。 の車の、二十両立て並べてあるのも、女院の御行列に従っ によういん 真っ先に女院のお迎えに、関白様をはじめとし申しあげ て行くあちらの人々は、きっとまた同様におもしろいと見 子 てんじようびとじげ ていることであろう。 て、殿上人や地下というふうに、みな、御所に参上した。 草 しやくぜんじ 女院が積善寺にお出かけあそばしてそのあとで、中宮様は 早く中宮様がお出ましあそばすなら、などとお待ち申し お出かけあそばすはずだということなので、たいへん待ち あげるのにつけて、どうなのであろうと待ち遠しく落ち着 うねめ 遠しいと思っている間に、日がのばってから女院はおいで かない気持でいると、やっとのことで、采女八人を馬に乗 も あおすそご あそばす。女院の御車ぐるみで十五両、そのうち四両は尼せて、御門から引いて出るようである。青裾濃の裳、裙帯、 からびさし の車で、第一の御車は唐廂の車である。それにつづいて尼領巾などが風に吹き流されているのが、たいへんおもしろ じゅず ぶぜん の車、車の後ろの口から水晶の数珠、薄墨色の袈裟、衣装 豊前という采女は、医師の重雅の愛人である。葡萄染 すだれ さしぬき などがすばらしく、簾は上げず、下簾も薄紫色の裾の少し の織物の衣装、指貫を着ているので、たいへん並々ならぬ も がさねからぎめ きんじき 濃いの。次の普通の女房車十両、桜襲の唐衣に薄紫色の裳、様子である。「重雅は、禁色を許されてしまったのだった かとりうわぎ うちぎめ 紅の打衣をそろって着て、綵の表着どもが、たいへん優雅な」と、山の井の大納言がお笑いになって、さて、采女た かす だ。日はとてもうららかだけれど、空は薄緑に霞みわたっ ちがみな馬に乗りつづいて立っていると、今こそ中宮様の いろつや えいはっ りつば ているのに、女房の装束が色艶うつくしく映発して、立派御輿がお出ましあそばす。すばらしいとお見申しあげた女 いん な織物のいろいろな色のものや唐衣などよりも、優雅でお院の御様子に、これは比べようのないお立派さなのだった。 なぎ もしろいことが限りもない ? 朝日の華やかにさしあがるころに、屋根の水葱の花の飾 とのがた かたびら 関白様や、その御次の弟の殿方でそこにいらっしやる方りが、とてもきらきらと輝いて、御輿の帷子の色や艶など みつな 方はすべて、女院を大切にし御奉仕申しあげあそばすのは、 までが、すばらしい。御綱を張ってお出ましあそばす。御 たいへんすばらしい 。これらの様子を、こちらの人々は、 輿の帷子がゆらゆら揺れる時、ほんとうに、頭の毛などに おんつぎ すそ ひれ えびぞめ つや くんたい に。よう

4. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

枕草子 162 また、楝。藤。 男は何色の衣も。 一薄い青紫色。 もえ ニ藤襲 ( 表薄紫、裏萌黄または あこめ 三衵の下に着る裏のない絹の衣。 老年の人は白であるが普通は紅を 着る。 二六一単衣は 四正装。束帯の姿。 五春冬には裏のあるものを着用 あこめ さうぞくくれなゐ五 単衣は白き。昼の装束の紅のひとへ衵など、かりそめに着たるはよし。さするが略式にひとえの衵を用いる こともあった。 ねりいろきめ しと心づきなし。練色の衣も着た六白い色が黄ばんだの。 れど、なほ色黄ばみたる単衣など着たるは、、 セ白絹を練ったもので薄黄色。 れど、なほ単衣は白うてぞ。 〈男も女もあらゆること以上に 劣った感じのするもの。「 : ・まさ りて」までを前段、「わろきもの」 二六二男も女もよろづの事まさりてわろきものことばの 以下をこの段とみる説もある。 九会話の言葉を奇妙に使ってい 文字あやしく使ひたるこそあれ ることだ。「文字」は用語。 一 0 奇妙なことに。「あやし」は理 九 男も女もよろづの事まさりてわろきものことばの文字あやしく使ひたるこ解の範囲外にあること。 = 自分を念頭におく。 そあれ。ただ文字一つに、あやしくも、あてにもいやしくもなるは、いかなる三わかりにくい。「人を知らじ」 を挿入的にみて、ただ私にはそう 感じられることを、私は言うよう にかあらむ。さるは、かう思ふ人、よろづの事にすぐれてもえあらじかし。 だ、 ( たとえば次の例のように ) の づれをよき、あしきとは知るにかあらむ。さりとも、人を知らじ、たださうち意とみる。 をとこ ひとへ あふちふぢ きめ 四 ひ

5. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

枕草子 306 うかと見えるものは、普通の女房としてお仕えする人が、 し」の歌のようになど不満だと感じられることこそないの も めのと からぎめ 御乳母になっているの。唐衣も着ず、裳をさえ、どうかす っ くろうど もくぞう ると、着けないようなかっこうで、御前に添い臥して、御 すけただという人は、木工の允で、蔵人になっているよ。 ちょうだい てんじようびと ひどく粗野で、いやな感じなので、殿上人や女房は「あら帳台の中を自分の居場所にして、女房たちを呼び使い、自 つばね わに」とあだ名をつけているのを、歌に作って、「強引な分の局に何か用事などを言いに行かせ、手紙を取り次がせ おわり などして、いるさまよ。その思い上がって羽ぶりをきかせ お人は、なるほど尾張人のすえであったのだったよ」とう かねとき たうよ。尾張の兼時の娘の腹なのだった。主上はこれを御ているさまといったら、言いつくせそうにさえない。 ぞうしき 雑色が蔵人になっているの。これも、去年の十一月の臨 笛でお吹きあそばされるのを、高遠はそばにお付き添い申 みこと 時の祭に、御琴を持っていた人とも見えす、若君たちと連 しあげて、「やはり調子を高くお吹きなさいませ。すけた 。しったいどこにいた人かと思わ だは聞くことはできませんでしよう」と申しあげると、主れ立って歩きまわるのま、、 上は、「どうして吹こう、そうはいっても、聞いてわかるれる。蔵人所の雑色以外の役から蔵人になっている人など ないない は、同じことだけれど、そんなにも感じられない。 だろう」と仰せられて、内々でばかりお吹きあそばされる のを、この時は向こうの御殿からこちらの中宮様の御もと 二四三雪高う降りて、今もなほ降るに へ渡御あそばされて、「ここにはこの者はいないのだった 雪が深く降り積って、今もやはり降る折に、五位も四位 な。今こそ吹こうよ」と仰せられて、心おきなくお吹きあ そばされるのは、たいへんおもしろい も、色が端麗で若々しいのが、袍の色はとてもきれいで、 とのいすがた カメの帯のついているのを、宿直姿で、腰にたくし上げて、 二四二身をかへたらむ人はかくやあらむと見 紫色のものも雪に色が映えて、濃さがまさっているのを着 あこめ ゆるものは て、袍の下の衵が紅か、さもなければ、仰々しい山吹色の いだしぎめ を出衣にして、から傘をさしているのに、風がひどく吹い 生れ変っている人がいるとしたら、その人はこうもあろ ( 原文一三一一ハー ) かさ ふ み

6. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

くわんず いさして置きたるを、つとめて洗ひて、「その巻数ーとこひて、伏し拝みてあ一翌朝手を洗い清めて。三巻本 -4 「つとめて手洗ひて」。 けたれば、くるみ色といふ色紙の厚肥えたるを、あやしと見て、あけもてゆけニ依頼によって僧が経文や陀羅 どくじゅ 子 尼を読誦した時に、その巻数、巻 おいほふし 草ば、老法師のいみじげなるが手にて、 名等を記して僧から依頼主に送る 文書。受け取った藤三位方は、巻 五 しひしばそで 枕 数と思い込んでいたので、尊いも これをだにかたみと思ふに都には葉がへやしつる椎柴の袖 のとしてうやうやしく扱った。 六 - 一ういろ と書きたり。「あさましくねたかりけるわざかな。たれがしたるにかあらむ、 三表は薄い香色、裏は白の色紙 巻数は白紙に書き白木の棒につけ にわじそうじゃう 仁和寺僧正、さにや」と思へど、「よにかかる事のたまはじ。なほたれならむ。て願主に送るのが例。裏が白かっ たので巻数とみたのだが、ひろげ べたう 藤大納言ぞ、かの院の別当におはせしかば、そのしたまへる事なンめり。これてみるとくるみ色の表が出たので いぶかるのである。 と、いもとなけれ四「いみじ」は、普通ではなく甚 をうへの御前、宮などに、とう聞しめさせばや」と思ふに、し だしいこで、ここは悪い意であ ものいみ ど、なほおそろしう言ひたる物忌をし果てむと念じ暮らして、またのっとめて、ろう。変った、くせの強い、衰え た、など。 かへり′ ) と 藤大納言の御もとに、この御返事をしてさし置かせたれば、すなはちまた返し = 「椎柴の袖」は色の喪服をさ す。季節の移ろいの早い都のさま を、故院を思う心の移ろいやすさ して置かせたまへりけり。 レ言いかけたもの 六してやられたことだな。 それを二つながら取りて、いそぎまゐりて、「かかる事なむ侍りし」と、う おむろ セ仁和寺 ( 京都市右京区御室に おまへ かんちょう へもおはします御前にて語り申したまふを、宮はいとつれなく御覧じて、「藤ある真一一一。宗の本山 ) 寛朝僧正。円 かんちょう 融院の灌頂の師。 ^ 当時藤大納言は三人考えられ 大納言の手のさまにはあらで、法師のにこそあンめれ」とのたまはすれば、 とう う まへ しきしあっこ あら をが だら

7. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

枕草子 154 関白殿、その御次の殿ばら、おはする限り、もてかしづきたてまつらせたま一内大臣道兼、権大納言・中宮 大夫道長など。 ふ、いみじうめでたし。これらまづ見たてまつりさわぐ。この車どもの、二十ニ女院を。 三私たちが乗っている車の二十 両立て並べてあるのをも、女院方 立てならべたるも、またをかしと見るらむかし。 の女房たちはまた。 しし力なるならむと心も四中宮様。 しっしか出でさせたまはばなど待ちきこえさするこ、、ゝ ひめまうちぎみ 五姫大夫。行列の先導。 ・も あをすそご うねめ うねめ 六采女は多く出身地の名を称し となく思ふに、からうじて、采女八人馬に乗せて引き出づめり。青裾濃の裳、 六 ぶぜん くんたい ひれ くすりし 裙帯、領巾などの風に吹きやられたる、いとをかし。豊前といふ采女は、くすセ薬師の約。医師。 ^ 丹波氏。長徳四年 ( 究 0 八月 えびぞめ さしめき しげまさ 、と心ことなり。「重典薬の頭。 し重雅が知り人なり。葡萄染の織物、指貫を着たれば、し 九乗馬の必要から女性も着用。 雅は色ゆるされにけり」と、山の井の大納一一 = ロ笑ひたまひて、みな乗りつづきて一 0 「色ゆるさる」は、天皇の許可 がなければ着用できない衣服の色 み - 」し ・布質 ( 禁色 ) を、特に許されるこ 立てるに、今そ御輿出でさせたまふ。めでたしと見たてまつりつる御ありさま えびぞめ と。葡萄染は禁色の紫に似ている のでたわむれて言う。 に、これはくらぶべから、りけり。 = 道頼 朝日のはなばなとさしあがるほどに、なぎの花のいとはなやかにかがやきて、三女院の御ありさまに比べよう もない中宮の御輿の御立派さだっ みつな かたびら 御輿の帷子の色、つやなどさへぞいみじき。御綱張りて出でさせたまふ。御輿 なぎ 一三水葱の花。御輿の屋の先端に かしら の帷子のうちゅるぎたるほど、まことに頭の毛など、人の言ふは、さらにそら金色の水葱の花の形をつけて飾っ そうかれん 葱花輦。 ごと のち 言ならず。さて後に、髪あしからむ人もかこちつべし。あさましういつくしう、一四輿の四隅から綱を四方に張り、 つぎ

8. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

二四女のうは着は うす うすいろえびぞめもえぎ 女のうは着は薄色。葡萄染。萌黄。桜。紅梅。すべて薄色の類。 二五汗衫は くちば あをくちば かぎみ 汗衫は春は躑躅。桜。夏は青朽葉。朽葉。 一一六薄様色紙は ニ四 かりやすぞめあを 薄様色紙は白き。むらさき。赤き。刈安染。青きもよし。 段 二七硯の箱は ニ六 まきゑ くもとりもん 第すずり 硯の箱は重ねの蒔絵に雲鳥の紋。 付 うすやうしきし 一九 かさ しろ つつじ さくら・ あ さくらこら・ばい 一ニ麻笥。つむいだ麻を入れてお 一三水槽。または馬のかいば桶。 「舟」「船」が漢字として適当か。 一四下地が必ず汚いのに表面はき れいにみえるもの。 一五特に唐絵という理由は不明。 一六はげて来ると下地が汚い 宅お供えなどの装飾的な盛物。 かうしり 天「かうしり」は「河尻」とみる。 「かはしり」とする本もある。淀川 の川口の遊女。 一九以下、襲の色目を中心として いうとみる。 ニ 0 表裏とも薄紫色。 ニ一童女の表着。以下襲をいう。 すおう 一三表蘇枋、裏は青の襲。 ニ三薄手の鳥の子紙でできた色紙。 「色紙」は、和歌を書く料紙。 ニ四野草の刈安の茎や葉を用いた 黄色染。 一宝二段重ねた箱。↓一一一九段。 兵雲や鳥の形を紋様としたもの。 かさね

9. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

一六沿道の人も物見車のようだと ちゑみて見たまふ、うつつならず。されど、倒れす、そこまで行き着きぬるこ 見ているであろうと。 宅女房車の装いを直したり話を そ、かしこきか、面なきかとおばゆれど、みな乗り果てぬれば、引き出でて、 したりする。 おほぢしぢ 二条の大路に榻立てて、物見車のやうにて立ちならべたる、いとをかし。人も 一 ^ 東三条院詮子。道長の土御門 さ見るらむかしと、心ときめきせらる。四位五位六位など、いみじう出でゐて、邸におられた。 一九五位以下で昇殿できぬ人。 しやくぜんじ ニ 0 女院が積善寺においでになっ 車のもとに来て、つくろひ物言ひなどす。 たあとで。一説、こちら ( 二条大 てんじゃうびとぢげ まづ院の御むかへに、殿をはじめたてまつりて、殿上人、地下と、みなまゐ路 ) においでになったあとで、と 解き、下文のごとく中宮と女院が のち 一一条大路で合流して改めて積善寺 と、心・も りぬ。それわたらせたまひて後、宮は出でさせたまふべしとあれば、し に向うことをさすとする。 となしと思ふほどに、日さしあがりてぞおはします。御車ごめ十五、よっは尼 = 一女院は出家しておられたので お供にも尼が多いのであろう。 しりくち - すいしゃうずず から ぐるまいち 車、一の御車は唐の車なり。それにつづきて尼車、後ロより水晶の数珠、薄墨 = = 女院の車。 はふづくり ニ三屋根を唐風の破風造にした丈 つぎ の袈裟、衣などいみじく、簾は上げず、下簾も薄色のすそすこし濃き。次にた高い車。 ニ五 ニ四後方のロ。乗用ロ。簾・下簾 もくれなゐ からぎめ をかける。 うちぎめ 段だの女房十、桜の唐衣、薄色の裳、紅をおしわたし、かとりのうは着ども、 一宝紅の打衣をそろって着て。 かす みじうなまめかし。日はいとうららかなれど、空は戌緑に霞みわたるに、女房ニ六固織の約。目を細かく固く織 った薄絹。 第 ニセ 一うそく 毛統一のとれた色の美しさを、 の装束のにほひ合ひて、いみじき織物の色々、唐衣などよりも、なまめかしう さまざまの色が混じているのより かえって優雅だといったものか をかしき事限りなし。 きぬ とを おも たふ 一九 あま すだれ

10. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

189 第 295 ~ 300 段 たことはない 夢にだに見ず』となむ言ふ。いかが言ふべき」と言ふと聞きしに、 一 0 「守」に「神ーをかける。「浜名 の橋 [ は遠江 ( 静岡県 ) の名所。 ちかへ君とほっあふみのかみかけてむげに浜名の橋見ざりきや 「見」るは「橋ーを見ることと女に逢 うことを言いかけたもの。 = 具合の悪い場所で、ある男と 二九八便なき所にて、人に物を言ひけるに 話をした時に、胸がひどくどきど きしたのだった。 便なき所にて、人に物を言ひけるに、胸のいみじう走りける。「などかくは三逢坂の関の走り井は著名。一 七二段ー走り井は逢坂なるがをか しき」。「見つくる」の「見つ」に ある」と言ひけるいらへに、 「水」をかける。 あふさか 一三「唐衣」に「赤衣」は不審。この 逢坂は胸のみつねに走り井の見つくる人やあらむと思へば 一段は三巻本末尾付載の一本の本 えびぞめもえ 文「女の表着は薄色。葡萄染。萌 黄。桜。紅梅。すべて薄色の類」 二九九唐衣は 「唐衣は赤色。藤。夏は二藍。秋 は枯野 [ の二段に相当するものの からぎめ 中間脱落かとする説がある。 唐衣は赤衣。葡萄染。萌黄。桜。すべて、薄色の類。 物一ね 一四襲の色目なら表紫、裏赤。 同じく表薄青、裏はなだ。 一六同じく表白、裏赤または紫。 三〇〇裳は 一セ波、松、貝、洲浜など取り合 せて海辺の風物を表した模様。海 賦と一・もい , つ。 裳は大海。しびら。 天裳より形も小さく腰に巻きっ けて着用する軽い礼装用のもの。 びん おほうみ一 ^ あかきぬえびぞめもえぎ