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1. 如月 柴田美佐句集

蔓薔薇のひと枝触るるマ 合歓の花赤子しづか に目覚めゐる 137 Ⅵ

2. 小説すばる2017年1月号

「素敵ーと顔をほころばせる綾子に気をよ の庭づくりにずいぶんと否定的だったようい香り」と満足そうに目を細めた。 だ。植物を育てるのに最適な環境だからとその仕草に、薔薇は主に花弁の表面からくした彼は、「じゃあプレゼントするよ」 彼女が選んだ土地も、不便だし携帯の電波香り立つのだと高校時代に綾子が話してくと云うなり、手にした鋏で無造作に薔薇の かたく が入りづらいから引っ越すべきだと頑なにれたのを思い出す。甘い香りに包まれた温枝を切り取った。あ、という引きつった声 室で、楽しそうに薔薇の手入れをしていたが誰のものだったのかはわからない 主張していたらしい 緑色のがくに包まれたまだ硬そうなつば 浩は綾子を自分の望むように変えようと綾子。 し続けたが、 綾子はどこまでも自由だっ 男子生徒に好意を寄せられることも少なみが切り落とされた瞬間、綾子の表情がシ ョックを受けたように色を失うのを菜摘は からずあったようだが、 菜摘の知る限り、 た。そして何より、彼女は薔薇を愛してい あの頃の綾子は恋愛よりも植物の世話の方目にした。 あまり開いていない薔薇のつばみは、切 真奈美の夫である陽介は飲食店をいくつに夢中だったようだ。 か経営しており、浩とは偶然にも仕事の関 たった一度だけ、綾子が凍り付くのを見り取れば水を揚げることができずに花首か たことがある ら萎れて確実に死んでしまう。綾子にはき 係で親しくしていた。陽介の評によれば、 浩は元妻の趣味には理解を示せなくても経当時、綾子に熱心にアプローチしていたっと、その花の悲鳴が聞こえたに違いな 営に関する能力には長けているらしい 男子がいた。爽やかな物腰で、育ちのよさい その後、綾子が彼からの誘いに応じ 「真奈美ちゃんの前で元夫の悪口は云えなそうな青年だったと記憶している 彼は綾子の関心を引くべく、自分の家のることは二度となかった。 いわね」と綾子が茶目っ気たつぶりに呟い てみせたことがある 庭に植えている薔薇を見に来ないか、と彼薔薇の甘い香りを嗅ぐと、不思議といっ月 近くのミニテープルに置かれた陶製のポ女を誘った。その言葉に興味を惹かれたのも、花の手入れをしていたあの頃の綾子の坂 ットに、あでやかな赤い薔薇が飾られてい か、綾子は珍しく「園芸部の友人たちも一面影が浮かぶ。いささか感傷的で気恥ずか しいけれど、綾子はまるで香りそのものの た。綾子がそこから一輪、ごく自然な手つ緒なら」と頷いた ガーデニングが趣味だという彼の母親がような人だと思った。香りはとらえどころ きで抜き取る ワイングラスを持つように茎を持って花手がけたイングリッシュガーデン風の庭がなく、言葉で説明しにくい。それでいて を真っすぐに立たせ、ゆっくりと花弁に顔は、なかなかのものだった。細めのアーチ記憶や感情にもっとも印象強く結びつく感 を近づけた。花と呼吸を合わせるように、 に這わせたトレリス仕立てのつる薔薇や、覚とされているらしい。 きらめいていた高校時代の思い出の象 すうっと静かに香りを嗅ぐ。それから「い鉢植えのオールドローズも美しかった。 、」 0 ノノ

3. 如月 柴田美佐句集

雲の峰三味線の音の立ち上がる 青空の確かな日なり薔薇を剪る

4. ダ・ヴィンチ 2015年11月号

「ずるいぞ。本物の怪ならば僕も見たい」 なお聿、映画に現る 開み中禅寺、ネ津ーー 三人の虫逢いヒ初の事件ヒは ? 輩の 薔薇十字叢書 シュリエット・ケエム』 佐々原史緒 / 著すがはら竜 / イラスト / 講談社 X 文庫ホワイトハート 夥年 630 円 ( 税別 ) 昭和十七年四月 。中褝寺敦子は兄・秋 彦の薦めで、横浜の港蘭女学院に入学し、 シュい 寮生活をはじめる。同室の麗しい先輩・紗 を 江子と万里にかわいがられ、学校にも慣れ / 佐々原史諸 た頃、教室で「天使様」というゲームが流 イラみトすかはら池、洋。い京極夏彦 行りはじめる。天使様のお告げで、紗江子 が万引きの常習犯だと噂されるようになり、 敦子は兄の知識も借りて、天使様の存在を 否定する。ところがその翌日から敦子の周 囲で不気味な事件が相次ぎ・・・ 。少女探 偵・敦子登場 ! 薔薇十字叢書 さしきわらし 桟敷童の誕 ′佐々木禎子 / 著 THORES 柴本 / イラスト 富士見 L 文庫 560 円 ( 税別 ) 1 0 月 1 5 日発売 ーに亠腹違いの 8 人の子どもに 8 つの映画館を遺 し、社長が急逝した天城演芸社。カストリ 雑誌を賑わす遺産争いの渦中にいる嫡男・ を悠紀夫は土下座せんばかりの勢いで関口 ・、 - ' 巽に頭を下げた 0 弟子にしてください、 狼狽する関口をよそに、悠紀夫から映画館 むに繁栄をもたらす桟敷わらしの噂を聞いた 名探偵・榎木津礼ニ郎は妖怪探しに乗り出 しす。そして見つけたのは悠紀夫の異母妹の 死体だった 桟敷わらしに秘められた .. 、 1-- : 。ー ( 当真実を榎木津が暴く ! 「このせには、不思矗なこヒなビ はずなんだいなあ」 何もない ′ = 『薔薇十字叢書 石榴は見た古書肆京極堂内聞 新广 三津留ゆう / 著カズキヨネ / イラスト 講談社 X 文庫ホワイトハート 石 630 円 ( 税別 ) 見た 京極墨肉聞、 影吾輩は猫である。名は、石榴。飼い主は一 - ・一 - 古本屋兼拝み屋・中禅寺秋彦、通称京極 堂。石榴が人間たちの。不思議なことなど 三津留ゆう 何もない " 毎日を見届ける徒然ミステリ。 ( ラみトカスキ、ヨネ 、ン・京極堂と妹の敦子が大喧嘩 ! ? 石榴を連 れて兄宅を飛び出した敦子は、そのまま山 手線に乗り込んだが・ ・ ( 第 1 話 : 「猫盜 を人」 ) 。浅草で榎木津礼ニ郎の死体が発見 された。大喜びした張本人であり探偵の榎 木津は、首輪を付けた石榴を連れて現場に 向かう ( 第二話 : 「連れ添い猫」 ) など三編。 薔薇十字叢書 、 - 鬼の輩 イ / ノ 4 愁堂れな / 著遠田志帆 / イラスト = を第富士見 L 文庫 560 円 ( 税別 ) 10 月 15 日発売 一高に入学するも、勉強についていけず、 人見知りゆえ友人もできず、鬱々と過ごす 関口に声をかける者がいた。「鬱というの は伝染するんだ。悪い芽は早い内に摘んで おくに限る」という理屈で中褝寺は関口を 朝食に誘い、ともに過ごすようになる。さ らに榎木津という上級生の知己を得た関口 だが、軟派な彼は女学生を妊娠させた疑い で謹慎処分に。その真相を探るべく動き出 した関口と中褝寺だが、肝心の女学生は行 方不明になっており ! 佐々木子・・ いつわり ともから ー十字差書 4 あまのし ( わともから 3 「『天仗』はいない。呪いなんち、ない」 少女探偵・孑の港蘭女学院事件錞 ! ヤ曜に 4 ・ white heart "hite heart 薇十字叢書』。全ての生み人の美麗なビジュアルも見どころ さしきわらしいつわり の親・京極夏彦がそう命名だ。『 桟敷童の誕』では、すべて した、みシェアード・ワールド において人並み外れて優秀な美貌 小説シリーズ。あまり耳慣れない の変人・榎木津が、映画館に繁栄 さじきわらし = = ロ葉の通り、かなり異例の取り組をもたらすと言われるク桟敷童 % みだ。京極夏彦本人の著書である、の謎を暴くべく奮闘する。イラス 姑獲鳥の夏』、『魍魎の匣』などトは F-IOCU()D 柴本が担当。遠 田志帆版とはまた一風変わった、 に代表される「百鬼夜行」シリー ズ。第ニ次世界大戦後まもない東おなじみのキャラクターたちの雄 京を舞台に、妖怪に関連して起こ姿が見られる。『ジュリエット・ る様々な奇怪な事件を「京極堂」ゲエム』では中褝寺敦子の女学校 こと中褝寺秋彦が「憑き物落とし」 時代が描かれ、好奇心旺盛で活発 として解決する様を描く超人気シな、ク少女探偵・敦子 % の姿が明 らかになる。そして『石榴は見た リースだが、『薔薇十字叢書』は、 この世界観をそのままに、登場人古書肆京極堂内聞』では、なんと ざくろ 物たちそれぞれにスポットを当て、中褝寺の飼い猫、石榴の視点から、 富士見—l 文庫 (Y<OOY-O<) 「百鬼夜行」シリーズの登場人物 と、講談社 x 文庫ホワイトハート たちの毎日が描かれる。三編の中 をはじめとした複数のレーベルか に登場する馴染みのキャラたちの ら、別の著者が物語を紡ぐという姿に、ニャリとしてしまうこと請 プロ ) ンエクト。 け合いだ。 ラインナップも名に違わぬ豪華 月のこの 4 作刊行を皮切りに、 さで、月に 4 作が発売される。今後も豪華なラインナップで届け 鬱病気質で対人恐怖症の小説家・ られる『薔薇十字叢書』。昔から 関口を主人公に置き、その学生時のファンはもちろんのこと、原作 代 ( 中褝寺、榎木津も登場 ! ) を未読のあなたも、広がり続ける「百 あまのしやくともがら 描く『天邪鬼の輩』 ( 愁堂れな ) 。鬼夜行」の世界に、足を踏み入れ イラストは遠田志帆が担当し、三てみてはいかがだろうか 11 月以降も 続々刊行 ! 『薔薇 + 字叢書神社姫の森 春日みかげ / 著睦月ムンク / イラスト 富士見 L 文庫 薔薇十字叢書 ウアルプルギスの火祭 三門鉄狼 / 著るろお / イラスト 講談社ラノベ文庫 薔薇十字叢書 和菓子と古書肆の 優しいレシビ ( 仮 ) 』 葵居ゆゆ / 著取葉はづき / イラスト 講談社 X 文庫ホワイトハート しよし 97 ータ・・ゲインチ

5. キケンじゃないだろ!

「 : : : 落ち着けよ、如月」 「つつーか、朱雀つ、なにアレっ ? うわっ、鹿ヶ谷。寄っていかねーほうが、身のためだっ て ! ケツから食われたらどーすんのつ」 、「ああっ。い : : い : : : 伊集院先輩つ」 「は ? 伊集院 ? なに言ってんだ ? 」 「伊集院先輩つ。そこにいらっしやるのは、躑躅先輩ですねっ ! 」 「あ ? トカゲ先輩がどこに : : : いる : : : って ? 」 瞬間、剣は凍りつく。 すっくと立ち上がった鹿ヶ谷が、ドレスの裾を持ち上げてまっすぐに駆けだした。 まるで運命の王子に出会った姫のような勢いで走った鹿ヶ谷が、ホールの真ん中で薔薇の山 めがけて飛びついていく。 ろ ドレス姿の彼を抱きとめたのは、制服の上から全身に薔薇の花を飾りつけ、おまけに薔薇の だ いただ 冠を頭上に戴いた、伊集院躑躅その人だった。 や : トカゲ : : : 先輩 : : : ? 」 ケ うっとりと瞳を潤ませた鹿ヶ谷を優雅に片手で抱きとめつつ、異様な姿の伊集院が花に囲ま キ れた美貌にいつもながらの笑みを浮かべている。 「ふふ、ふふふふふつ。愛らしい後輩をここまで思い詰めさせてしまうとは : : : ほんとうに罪 びぼう うる

6. 新潮 2016年07月号

そのためだ。 からはすぐに飽きられて、様々な大人たちとはできない。なぜなら「敵ーは警察と結 の自分勝手な欲望や都合に振り回され、漂託し、仲間である健太や康太に放火の濡れ 宗教団体でカリスマ的な人気を集める、 女性嫌悪の牧師。親友が赤ん坊を買う様子流していく。ついには原発周辺に取り残さ衣を着せて、逮捕させてしまったからだ。 そこで仲間のシイラは、薔薇香に国外へ を番組にしようと目論む、テレビディレクれて甲状腺癌を患い、手術することにな ター。甲状腺癌を患った少女を反原発のヒる。不幸ばかりを引き受ける、なんとも気逃げるよううながす。合理的な判断といえ よう。ところが薔薇香の考えは違った。彼 ーローに仕立て上げようとする脱原発派。の毒なキャラクターである。 逆に彼女を「フクシマは安全だ」と印象付だが興味深いのは、最初は利用されるだ女は声の出ない「おじいちゃんーの代わり けるために使おうとする広告代理店のオーけの受け身の存在だったバラカが、途中かに、こう言ったのである。 「いいえ、お願いします。私たちを乗せ ら変化していくことだ。 桐野は震災後の日本をリアルタイムで観彼女は沙羅からつけられた「光」というて、このまま旅を続けてください。なぜな 察し、絶えず「現実」にインスピレーショ名前を拒絶するあたりから、大人たちへのら、私たちは何も法律を犯していません。 ンを受けながら、こうした「あるある」的抵抗を始め、主体性を発揮し出す。そして健太や康太もそうです。だから、私たちが なカリカチュアを形成していったのだろ「おじいちゃん」こと豊田吾朗に引き取ら彼らを助けないで、誰が助けるのでしょ れて「薔薇香」という名を与えられてからう」 そんな中異彩を放っているのが、小説のは、はっきりとした自分の意志を持ち始め僕はこの言葉に意表を突かれた。 タイトルにもなっている「バラカ」というる。原発推進派・脱原発派の両方から利用そして不思議な感動に包まれた。 少女である。彼女は社会に存在するあらゆされ、誰が味方で誰が敵なのかも分からぬ先述したように、小説「バラカ」が描く る負のエネルギーを吸い込んでしまうよう袋小路に人り込んでも、知性と判断力と決ディストピアは、多少のデフォルメはある な、とらえどころのない不思議なキャラク断力を駆使して、自由を獲得しようと闘っものの、私たちが直面する世界そのもので ある。 ていくのである。 そのどうしようもない世界で生きていく バラカは最初、現代社会に生きる大人た絶望的な状況の中でもがく彼女は、もし ちの欲望や絶望や心の荒廃を投影する、キかしたら震災後の世界に生きる「私たち」ために、私たち一人ひとりに、いったい何 のメタファーなのではないか ? 小説を読ができるのか。薔薇香のセリフには、その ャンバスのような存在として提示される。 ための重要なヒントがあるのではないか 日系プラジル人の子として生まれた彼女み進めるうちに、そんな気がしてきた。 ラスト近くで、とても印象的なシーンがと、僕には思えたのである。 は、赤ん坊の頃「バラカ」という名前でド ( 集英社刊・一八五〇円 ) 本 バイで売られてしまう。彼女を買ったのはある。 「男はいらないけど子供は欲しいーという「敵」に追われ、命を狙われる薔薇香。だ 日本人女性・沙羅。しかし・ハラカは、沙羅が、助けを求めるために警察へ駆け込むこ

7. キケンじゃないだろ!

196 「う : : うわ、もしかして、鹿ヶ谷っ ? 」 ドレス姿の、 それもただの白ではなく、スカートのあちらこちらに薔薇の生花をつけた、 しかも頭にまでミニ薔薇をあしらった、 とびきり派手な格好の鹿ヶ谷が、腰に手で自慢気に胸を張っていた。 かたちのいい鼻をつんと天に向け、さくらんぼのようなくちびるで自信たつぶりの笑みをつ みは にら くっている。きらきらと輝く大きな瞳を挑戦的に瞠って、剣のほうをまっすぐ睨みつけ、 「待っていたよ、如月剣 ! といっても、キミは案外に地味な服装なんだね。やつばり思った とおり、しよせんは編人生のキミ。中等部上がりで筋金人りの青桃院生である僕の敵じゃない のさ ! 」 「じ : : : 地味か ? オレ」 「うふふつ。見てよ、これ ! 昨夜はあれから青桃館ホールで躑躅先輩のお手伝い : : : それか らキミのところまで夜明けのお使い : : : そのあと朝まで寝ずにこれを仕上げたんだ。一針一 針、先輩のことを思いながら、ピンクの絹糸で薔薇の花をドレスじゅうに縫いつけてね : : : 」 「ど・ : ど、りで、派手だと」 「それから、この巻き毛 ! いつにもまして、ラブリーだと思わないかい ? まるで目覚めた ばかりの天使みたいだろう ? このエアリーな感じを出すのに苦労したんだよ。それに比べ

8. 文學界 2016年08月号

圓丈明子は庭に花を咲かせるのが二十年来の趣味である。 博多駅から下り快速電車のどれに乗っても、十五分で着 く郊外の住宅団地だ。定年退職後の土いじりは健康な身心を つくると信じている。 ーにマフラ 1 の出 薔薇作りがことに好きで、冬はジャンパ で立ち、夏は鍔の広い大きな日よけ帽をかぶって、地植えの 薔薇の剪定をする。 花木も太い枝を切るので、明子の手の指はどんどん太く逞 しくなる。仕事盛りにここへ家を建てたとき、手の人差し指 のリングサイズは 7 だった。細いアスパラガスの茎みたいに 生白かった。それが今は川になって、かっての指輪は入らな 飛族 新連載第二回 庭の陽当りの良い一角には薔薇の女王のようなべンジャミ 1- ・ト・一フ ン・プリテンや、密やかな内巻きのバロン・ジロ ン、白衣の美女のようなグラミス・キャッスルが春の栄華を 誇っている。向かいのフェンスのそばには赤いゼラニウムや 1 べナ、白く清楚なマ 1 ガレット、オレンジ色の大きなキ ンセンカが咲いている。花々をめがけて微かな羽音をたてな がら野蜂が蜜を吸いに来た 「おはよう、みんなお出ましね」 この辺りの空はちょうど自衛隊の小型機やヘリコプタ 1 の 飛行路に当たっていて、聞き慣れたヘリの爆音を低くしてい 村田喜代子

9. キケンじゃないだろ!

196 「う : : うわ、もしかして、鹿ヶ谷っ ? 」 ドレス姿の、 それもただの白ではなく、スカートのあちらこちらに薔薇の生花をつけた、 しかも頭にまでミニ薔薇をあしらった、 とびきり派手な格好の鹿ヶ谷が、腰に手で自慢気に胸を張っていた。 かたちのいい鼻をつんと天に向け、さくらんぼのようなくちびるで自信たつぶりの笑みをつ にら くっている。きらきらと輝く大きな瞳を挑戦的に瞠って、剣のほうをまっすぐ睨みつけ、 といっても、キミは案外に地味な服装なんだね。やつばり思った 「待っていたよ、如月剣 ! とおり、しよせんは編人生のキミ。中等部上がりで筋金人りの青桃院生である僕の敵じゃない のさ ! 」 「じ : : : 地味か ? オレ」 「うふふつ。見てよ、これ ! 昨夜はあれから青桃館ホールで躑躅先輩のお手伝い : : : それか らキミのところまで夜明けのお使い : : : そのあと朝まで寝ずにこれを仕上げたんだ。一針一 針、先輩のことを思いながら、ピンクの絹糸で薔薇の花をドレスじゅうに縫いつけてね : : : 」 「ど : : ど、りで、派手だと」 「それから、この巻き毛 ! いつにもまして、ラブリーだと思わないかい ? まるで目覚めた ばかりの天使みたいだろう ? このエアリーな感じを出すのに苦労したんだよ。それに比べ みは

10. ホンキでいくだろ! : 青桃院学園風紀録

192 「僕たちのころとは、だいぶ飾りつけが変わったようだね。薔薇がきれいだ」 「伊集院家のご子息の美的センスが冴えているらしいと、現役執行部のメンバーから聞かされ たよ」 教員席には、各教科教諭、各クラス担任教師らが、勢ぞろい 「子犬組の生徒たちがだいぶ頑張っているようですね」 こじか 「いやいや、子鹿組もなかなかですよ。コンテストの審査結果は二学期の成績に響きますか ら、みな一生懸命だ」 ふんいき 第一日目のステージは、モザイク模様が美しいアラビアンな雰囲気。 へり 舞台の縁は山ほどのピンクの薔薇に華やかに彩られている。 れいれい 『美少年コンテスト』と書かれた看板が麗々しく掲げられて、ミラーポールの準備も万端。 じゅうたん ステージまえの客席には赤い絨緞が敷かれ、ズラリと並んだロココ調の美しい椅子が、アラピ アンなステージ装飾と相まって、いやが上にもコンテストの雰囲気を盛り上げる。 ウエルカム・ドリンクが早くも配られ、招待客たちはパンフレットを手に歓談中。 在校生である一一年生と、これを機会に学園に戻ってきた三年生たちとが、楽しげに、かっ優 雅に出場生徒たちの品定めだ。 ひとみ 「やつばりエントリーナンバー二十番の下北沢くん。彼の揺れる瞳が魅力的だよ , 「僕は〃学年一の美少年み鹿ヶ谷薫くんのかわいらしさにゾッコンかな」 かおる しもきた」わ