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1. 完訳 日本の古典 第三十九巻 とはずがたり ㈡

とよのあかりえぞうし 豊明絵草子 、身にうれへたる色なし。人間に生をうけたれども、四 豊明のよな / 、は、淵酔舞楽に袖をつらねてあまたとし、 苦も八苦も身にあたらむものともしらざれば、善現城のた 臨時調楽のおり / 、は、おみのころもにたちなれて、みた らし河にかげをうっす。年いまだみそぢにみたずして、黄のしみにもことならず。たゞもろとものあそびたはぶれに 門郎にあがりて、あまさへ左大将をかけて朝恩にほこるの夜をあかし、日をくらすよりほかのことなし。愛に着し色 にそみて、有為無常のなさけなきことはりをしらず。もの みならす、家にありては、まどのうちにかしづかれて、天 にふれ、ことによそへては、松竹千秋のたのしみをいはふ。 子に、いをかけ、禁中にまじらはせむことを思かしづかせけ ( 麟 ) る人のむすめをえたり。かの楊玄珱がむすめをはじめてえ亀鶴をともとし、鳳鱗をもてあそびとす。家のうち門のほ か、たのしみいさめるよりほかのことなし。さらにかなし 給へりけむ、皇帝の御心地にもすぎたり。草のかりねのう みちまたにうれふれども、きくことなければこれをさとら 子ちふすほども、ひとりは夜をあかさず、あけぬる夜半のき 絵ぬム \ も、たちはなるべくもなし。公事につかふるおりず。貧窮孤独のたぐひは、めに見ざればありとだにもしら ず。卑賤醜陋のやからはちかづかざればあはれむことなし。 豊 / 、は、いゑちをおもふに、、。 してむことのみ心もとなく、 かたみにいまだいはけなかりしょはひのほどよりあひとも 料あけてもおなじゅかをはなるゝことなく、くれてもおなじ なひて、世々の宿縁あさからざりければにや、男女の子息 考ふすまをかはさぬ夜をへだつることなし。こゝろこと葉も 録たくみに、しわざありさまも人にすぐれたり。はるはみど両三人かずをそへたりき。 ( 偕 ) 付 陛老同穴のちぎり、年月をかさねて十とせあまりの春を りにかすむより、晴のそらに落花をおしみて哥をながめ、 7 秋は野もせのむしをまがきにうっして、管絃糸竹のねにあすぎぬるに、その秋ながっきのころ、女にはかにあきのき りにをかされて、やまふのゆかにふしたり。しばしはかり はせてあはれをそへ、すべて時につけて心にたらぬことな

2. ドストエーフスキイ全集4 死の家の記録

きくのだが、それがまるで樟の中で唸るような声なのさ。こ 『ちょっくら、度忘れしてしめえやした、旦那。もうお慈悲 っちはもう決まりきった話で、みんなと同じように、なんにに勘弁していただきてえもんで』 も覚えちゃおりません、旦那、すっかり忘れちまいました、 「みんな忘れてしまったのか ? 』 とやったものよ。 「みんな忘れちめえやした、旦那』 「よし、待っていろ、いまに口を割らしてやるから、どうも 「それにしても、きさまだってやつばり親父やおふくろはあ 見覚えのあるつらだ』といって、目玉をひんむいておれをに ったろう ? : : : せめて両親くらいは覚えているだろう ? 』 らみつけるじゃねえか。ところがこっちゃそれまで、一度も「多分あったんだろうと思えやすが、それでもやつばし、ち お目にぶら下がったことなんかありやしねえ。それから、つ よいと度忘れしましたもんで、旦那。ひょっとしたら、あっ ぎのやつに、『きさまは何者だ ? 』と来やがった。 たかもしれやせん、旦那』 「どろん決めこみ、でごぜえます、旦那』 「ぜんたいきさまは今までどこに住んでいたんだ ? 』 「そりやいったいきさまの名前なのか、どろん決めこみ、な「森の中なんで、旦那』 んて ? 』 「ずっと森の中にいたのか ? 』 「たしかにそのとおりでごぜえます、旦那』 「ずっと森ん中に』 「ふむ、よし。きさまはどろん決めこみだな。では、きさま 『ふむ、しかし冬は ? 』 『冬なんて、見たこともごぜえません、旦那』 これはつまり、三人めのやつにきいたんで。 「ふむ、じやきさまは、きさまの名はなんていう ? 』 「おれもあとから、でごぜえます、旦那』 「斧と申しやす、旦那』 「いや、きさまの姓名はなんというのかきいているんだ』 「では、きさまは ? 』 「だから、そういってるんで、おれもあとから、なんでごぜ『ばんやりしねえで研ぎすませ、てんで、旦那』 えますよ、旦那』 「じゃ、きさまは ? ・』 「いったいだれがそんな名前をつけたんだ、この業つく張り』 「ちょいちょい研げよ、と申しやす、旦那』 「親切な人さまが、つけてくれましたんで、旦那。この世に 「みんな何ひとっ覚えがないというんだな ? 』 記や、まんざら親切な人が、いねえわけでもごぜえませんから「何ひとっ覚えがごぜえません、旦那』 家ね、旦那もご承知のとおり』 署長のやっ、立って笑ってると、宿なし連もそれを見てに 死『その親切な人たちというのはだれのことだ ? 』 やにやしていやがる。でも、うつかりへまをやると、横っ面

3. 完訳 日本の古典 第二十六巻 夜の寝覚 ㈡

のち 後しも、などかく、とりあへず追はせたまふらむ。『かくてはべる』とも、た一 = 故関白邸に残してきた小姫君 をさす。「なる」は伝聞。 どこち あ だきこえさせたまへかし。なでふ事かあらむ。乱り心地の悪しう、胸の痛けれ一 = 思わず長時間を過してしまう こと。晋の王質が石室山で仙童の ば、えまかづまじ。さばかり仰せらるるに、返す返す奏すとも、御車よに許さ碁や歌に気を奪われているうち、 斧の柄が腐るほど長い時間が経っ 一九 ていたという故事 ( 述異記 ) による。 れたまはじ。ことなく申し出でむが、いとかたはらいたからむ」とて、ただっ 一四以下、内大臣の応答。 わ くづくと臥いたまひたるを、言はむかたなく苦しく、おぼし侘びて、果て果て言どうしてこのようにあわてて 私を追い払おうとなさるのです。 ニ 0 は、物も言はれず、背きたまひぬるを、「まことは何事を思ひ惑ひつる。年ご一六内大臣がこうして来ています。 毛帝があれほどおっしやるので ろの心にもあらず、かたみに背き背き、恨み交はいてあべきかは。少し心のどすから、何度奏上したところで。 入輦車の勅許。 つみかうが かに心を延べてこそ、よろづの罪勘へ申すべかりけれと思ひなるは、なほ、胸一九確たる理由もなく。 ニ 0 以下、自省心を取り戻した内 いみじく苦しきに堪へはべらぬぞや。あが君、かくなおぼし背きそ」と、引き大臣の言葉。前半は独白調。「あ が君ー以下は寝覚の上に言う。 替へつつ、慰めこしらへて、からくして、さすがにうち忍びて歩み出でたまふ。 = 一長い間愛してきた心と裏腹に。 一三すべての過失を判断すべきだ ったとは思うが、そう思うには。 御ねくたれの御にほひ、いと見るかひあり。 四 ニ三ようやく。やっと。 ニ五とのゐどころ 御宿直所におはしまして、おぼし続くるに、「えもいはず、品「ねくたれ」は、寝乱れてしど 〔五〕内大臣暮を待てす けないこと、また、その姿。 けはひありさま まさ 巻再び寝所に入る をかしうなり優る、人の御気配、有様かな。これを、ほの = 五内大臣の宿直所は梅壺 ( 凝華 舎 ) であった。↓二〇ハー 実「人ーは、暗に帝をさす。 かに御覧じたらむ人の御心惑ひ、げにいかならむ」と推し量り遣るに、今の間 ニ四 ふ 一五 かへがヘ お はか あゆ 一八 てぐるま

4. 吉川英治全集 別巻 第1巻 神州天馬侠

にんけん 忍剣が気のついたクロとは、そもなにものかわからないが、 いるのだ、汝らの見せ物ではない。帰れというに帰りおらぬ えりんじやけあと 彼のすがたは、まもなく、変りはてた恵林寺の焼跡へあらわれか』 えり 一人が腕、一人が襟がみをつかんで、ずるするとひきもどし にんけんまゆ かけると、忍剣の眉がビリとあがった。 じゃま 『これほど、ことをわけてもうすのに、なお邪魔だてするとゆ にんけんじゅず がっしよう 忍剣は珠数をだして、しばらくそこに合掌していた。するるしません ! 』 ばん と、番小屋のなかから、とびだしてきた侍が二人、うむをいわ『なにを』 にんけん さず、かれの両腕をねじあげた。 ひとりが腰繩をさぐるすきに、ふいに、忍剣の片足がどんと ひばらけ もんぜっ 『こらツ、そのほうはここで、何をいたしておった』 彼の脾腹を蹴とばした。アッと、うしろへたおれて、悶絶した み、むらい 『はい、国師さまはじめ、あえなくお亡くなりはてた、一山ののを見た、・ へつな侍は、 霊をとむろうていたのでござります』 それ 『おのれッ』と太刀の柄へ手をかけて、抜きかけた。 とくがわけ か りようぶん 『ならぬ。甲斐一帯も、今では徳川家のご領分だそ。それをより早く、 かしんおおすかやすたか あずかる者は、ご家臣の大須賀康隆さまじゃ。みだりにここ 『やッ』と、まッ向から、おがみうちに、うなりおちてきた忍 けんてつじよう らをうろついていることはならぬ、とッととたちされ、かえ剣の鉄杖に、なにかはたまろう。あいては、かッと血へどをは いてたおれた。 にんけん 『ど、っそしばらく : ほかに用もあるのですから』 それに見むきもせず、鉄杖を小脇 ' 。かかえた忍剣は、一散 『怪しいことをもうすやつ。この焼けあとに何用がある ? 』 と、昼なおく に、うら山の奥へ奥へとよじのばってゆく。 うらやませんぎん 『じつは当寺の裏山、扇山の奥に、わたしの幼なじみがおりまらい木立のあいだから、異様な、魔鳥の羽ばたきがつめたい雫 す。久しぶりで、その友だちこ会 しいたいとおもいまして、はるをゆりおとして聞えた。 ばる尋ねてまいったのです』 「ばかをいえ、さよ、つな聿頃はここらにいない』 鎖『たしかに生きているはずです。それは、友だちともうして らんらんと光る二つの眼は、みがきぬいた琥珀のようだ。そ おおわし たけだけ ひとみ 、 - かばわ も、ただの人ではありません。クロともうす大鷲、それをひとの底にすむ金色の瞳、かしらの逆羽、見るからに猛々しい真黒 の せんざん 目見たいのでございます』 な大鷲が、足の鎖を、ガチャリ、ガチャリ鳴らしながら、扇山 くろわし 、ナど ぜっきよう 『だまれ。あの黒鷲は、当山を攻めおとした時の生捕りもの、 の石柱の上にたって、ものすごい絶叫をあげていた 大 じよう はままつじようけんじよう きよしん 1 ) っ洋」 * 、 大切に餌をやって、ちかく浜松城へ献上いたすことになって そのくろい翼を、左右にひろげるときは、一丈あまりの巨身 あや え 0 おさな おおわし 、しばしら こしなわ なんじ ・一う まちょう こわき しすく

5. せいかつの図鑑 : 楽しく遊ぶ学ぶ

て よごれたくっしたは手であらうと、 とてもきれいになります。 きみもあらってみましよう。 よういするもの ④やってみよう くっしたド どろらけ ! 0 くっした宮あらおう せんたく用せんざい * 1 せんたくばさみが ついた八ンガー 水 30 し せんめんき あらいかた きるあらおう よごれたくっしたを入れて、しばらく つけておく。 みす せんめんきに水を入れる。 せんたく用せんざいをくわえてかきまぜる。 * 2 ・んう、 。。粉よ容に ば。い意 れん注さ あせやだ でま助法く 用い用て / 、う くまるし たかい用 あ・洗もてし使 はでれて て れれ形さっ し・先こ固記が やにた 一 J * 末き器し よ る せ わ あせふ靴 さ す . じすね 感ますさ をきでだ さていく し よいなて カ・ち地わはみ う・の感い心し と 3 成る 2 試 こ達れ い下・る、ぬで すでがの 2 レ J く〔反」い 上 潔こるす 、み見てし て手 でをき着い す洗 む・洗うばて手 か . て手よれも のくすッ っ い下 を てあ、冫ノ ちて手や 分 」ト ぶ お落にチ 立ロ ン がでカ ヒ れいン る る ごちっ . れ・つうつか によ当 - 八 . ほ ご 験しにの よ . 体まろい下 こ 8

6. 完訳 日本の古典 第十一巻 蜻蛉日記

ぢもく あなづりてーあなくりて 5 思へばー思から 1 除目挈、かーし。ーーし・もにか . ー ) ずく 1 貶大夫のー大夫のちの 5 人少なーとすくな そそきーにもき ひろはたなかがは 2 いとほしき ( 阿 : ・吉 ) ーいとはしき 7 広幡中川ーひ一はたなからは 期 7 かくべき ( 松・急・彰・無・萩・ : 黒 ) ー 己 5 せでもありけむーせてそなりけん 8 こと」とーーこと かノ、つキ、 1 三ロ かた 日 5 若々しう ( 見・黒 ) ーわか / 、う Ⅱ片かけたるーかたかきなる ä 7 あらねばーあられねは のりゆみ 蛉 6 まばゆき ( 萩・ : 黒 ) ーまえゆき Ⅱ・水・ーと 8 院の賭弓ー院のゝしりゆみ 1 人 0 蜻 9 なりぬらむーなりぬるらん 、 1 1 きこゅべしーきこゅ 11 1 本ー平 圏 0 . お、・ しつきてもーっいつけても ( 底 ) お思ひしかどーおもひしいと 11 1 ーム 水ーと ひとずず いつけても ( 松 ) 2 びなかなれば ( 阿・ : 無・萩・見 ) ーひな 3 一数珠 ( 彰 ) ーひとすく 1 1 かれーこれ りなれは 3 明けぬ ( 彰 ) ーあけめ 思ひあふ ( 阿・ : 吉 ) ーおもふあふ 6 床 - とー・とこ ところによりーーところよりかへり・ 2 久しううつりゆくーひさしうゝっゅ 4 え知らでーししらて ( 底 ) しらて ( 松 ) せちにーせちこ したがさね 7 下襲 ( 萩 ) ーしたるさね なりたるーなにたる 3 鳴きぬーすきぬ 9 あれば」などーあれはかと 1 ありつる』とーありつなと 4 たりつる ( 黒 ) ーたりたりつるゝ 清らーきよく のたまひつれば ( 阿 : ・吉 ) ーのたまひ うぶや 5 つごもりの日ーっこもりの又日 昭産屋 ( 阿 : ・吉 ) ーそふや 6 にギ、ははー ) け・れ・ーキ、にはゝー ) け・ . れ 1 ことほギ、ー・ことはた 3 となむーんなん 7 答ヘーみえ 6 わかみーりかみ 5 さて、その日ーこてし日 たるひ 昭ムフ日をーけふに 垂氷 ( 阿・ : 無・見・黒・吉 ) ーたりひ 5 文ありーまたあり 2 あやしーあし 1 かーしらーーよしら 5 一込りとー・かへりしと 5 歌をーうたと ( 底 ) うた ( 見・黒 ) 1 成らざるはーならさるか 6 思ひたまふるーおもふる 7 ことふくろーにとふくる 2 濡らすーぬらすぬらす 6 申させー申さゝせ おとま * - Ⅱ劣り優りーおとりまされり 3 ャほり . はは「 0 ・も - 、ーこほははる。も 7 きこえーきこひ 1 1 かう ( 阿・ : 吉 ) ーから 5 わびしーわいかし 8 にーし、かゾー・にーレ こちー , っち - 9 東ーいかんかし Ⅱあるべかしう ( 阿・神・松・上・吉 ) ー すまひ 2 相撲ーすさひ おばえーおほひ 4 聞けば ( 阿・ : 吉 ) ーき 1 二十五日ー十五日 書きてーになし りゆく ひんがし ある人かしう つれはは

7. 谷崎潤一郎全集 第13巻

ありさまを見てとって急にひきかへし、馬にむち打ちもろあぶみにて小谷へはせつき、人をとほざけてな がまさ公へ申されますやうは、それがしつくみ \ 信長公の御ゃうだいをうかゞひますのに、ものごとにお ゑんこう 氣をつけられることは猿猴のこずゑをつたふがごとく、御はつめいなことは鏡にかげのうつるがごとく、 すゑおそろしいおん大將でござりますゅゑとても此の、ち殿さまとの折り合ひがうまく行くはずはござり ませぬ、こよひのぶなが公はいかにも打ちとけておいでなされ、お宿にはほんの十四五人がつめてゐるだ じゃうふんべっ けでござりますから、しよせん今のまにお討ちとりなされるのが上分別かとぞんじます、いそぎ御決心な されて御にんずをお出しあそばされ、おだどの主從をことる、く討ち取って岐阜へらんにふなされました なら、濃州尾州はさっそくお手にはひります、そのいきほひにて江南の佐々木をおひはらひ、都に旗をお あげなされて三好をせいばつあそばされるものならば、てんがを御しはいなされますのはまた、くうちで ござりませうと、しきりに説かれましたさうでござります。そのときにながまさ公の仰せに、およそ武將 となる身にはこ、ろえがある、はかりごとをもって討つのはよいが、こちらを信じて來たものをだまし討 ちにするのは道でない、 のぶながゞ今こ、ろをゆるしてわが領内にとゞまってゐるのに、そのゆだんにつ け入って攻めほろばしては、たとひ一たんの利を得てもつひには天のとがめをかうむる、討たうとおもへ ば此のあひだぢゅう佐和山においても討てたけれども、おれはそんな義理にはづれたことはきらひだと仰 語っしやって、どうしてもおもちひになりませなんだので、遠藤どのもそれならいたし方がござりませぬカ 目あとでかならず後悔あそばされるときがござりますぞと申されて、またかしはゞらへおもどりなされ、な 5 にげないていで御馳走申しあげまして、あくる日無事にせきがはらまでお見おくりなされましたとやら。

8. 現代日本の文学 Ⅱ― 3 北原 白秋 斎藤 茂吉 釈 迢空 集

ひた心目守らんものかほの赤くの・ほるけむりのその煙はや あさひこ 天のなかに母をひろへり朝日子のの・ほるがなかに母をひろ へり 日のひかり斑らに漏りてうら悲し山蚕は未だ小さかりけり こつがめ ふき 蕗の葉に丁寧に集めし骨くづもみな骨瓶に入れ仕舞ひけり はふみち よだ 葬り道すかんぼの華ほほけつつ葬り道べに散りにけらずや ひばりな うらうらと天に雲雀は啼きのぼり雪斑らなる山に雲ゐず おきな草ロあかく咲く野の道に光ながれて我ら行きつも ひとはふりどあめあ あざみ どくだみも薊の花も焼けゐたり人葬所の天明けぬれば あま わが母を焼かねばならぬ火を持てり天っ空には見るものも 其の四 なし かぎろひの春なりければ木の芽みな吹き既る山べ行きゅく 星のゐる夜ぞらのもとに赤赤とははそはの母は燃えゆきにわれよ けり やまばと ほのかにも通草の花の散りぬれば山鳩のこゑ現なるかな まさ夜ふかく母を葬りの火を見ればただ赤くもぞ燃えにける 山かげに雉子が啼きたり山かげの酸つばき湯こそかなしか らかも あ りけれ 晄はふり火を守りこよひは更けにけり今夜の天のいつくしき 酸の湯に身はすつぼりと浸りゐて空にかがやく光を見たり うっしみ 火を守りてさ夜ふけぬれば弟は現身のうた歌ふかなしくふるさとのわぎへの里にかへり来て白ふぢの花ひでて食ひ 共の三 * やまこ なら 楢わか葉照りひるがヘるうつつなに山蚕は青く生れぬ山蚕 はだ はふ よな こよひてん あ さん ていねい あけび うつつ

9. 現代日本の文学 46 吉行 淳之介 北 杜夫 集

375 幽霊 それはそれとして、くりかえし・ほくは昆虫図譜を見た。姿に気をとられて、小一時間をすごすこともあった。虫の おぼ どの頁もほとんど空で憶えてしまうほど眺め暮した。ある形態同様に、魔物の棲むくずれかかった城のかたちが、な 形態が、ある色彩が、ことさら・ほくを魅することもないで・せか心を惹きつけたりした。見おわると、元のとおりに本 はなかった。そういうとき、・ほくは・ほんやりと何事かを感をしまいこんで、そそくさと部屋を逃げだした。 じ、何事かを考えようとしている自分に気がついた。おそ あるとき、・ほくは押入れの奥のほうに首をさしいれてい らく・ほくは、自分の生れてきたほのぐらい母体を、自分をた。ひと重ねの雑誌が乱雑につまれてあったのを苦労して 形造ってぎた影ぶかい大気を、無意識ながらも、まさぐっ取りだしてみると、それは従姉が以前熱中していたらしい ていたのかも知れない。そのうちにも、しずかにゆっくり少女歌劇の雑誌であった。気ままに半ば無関心に頁をくる とき こしみの と刻がながれた。それはどこへながれてゆくのかわからな と、それでも面白くないこともなかった。腰蓑をつけた黒 かったにしろ、・ほくの尿を次第に澄ませ、・ほくの顔色をとん坊がおおぜいで踊っている写真もあったし、剣をさげた とのえてくれた。 王子が本物の馬にまたがっているところもあった。そのう 三月ほども経ってようやく起きられるようになると、・ほちに、そういうグラビアの片隅に、あどけない少女の顔が くは退屈しのぎに家のなかを歩きまわり、殊にひとりの従目にとまった。それはほんのちいさな円形の写真で、少女 姉の部屋にはよくはいりこんだものだ。彼女は女学校の上は首から上をだして人なっこそうな黒目がちの瞳をむけて 級生で、・ほくたちと遊ぶのを嫌ったから、その留守の間を いた。顔の片がわはたしかに愉しげに笑っており、小さな えくぼ 狙うのである。彼女はたいそうな読書家で、その本棚にもうえにも小さな靨が見てとれるのに、もう片がわの顔は生 まじめ ゅううつ 押入れにもぎっしり本がつまっていたが、彼女は常にその真面目な様子をしていた。なんだか憂鬱そうにさえ感じら 一冊をひろげながら、大きなチ ' コレートをすこしずつ惜れた。その顔を、・ほくは好ましいと思った。ちょうど手に しみ惜しみ齧っていた。チョコレートをるために本をよした虫をながめているうちに、その微細な彫刻や模様が次 むのかも知れなかった。 第に心をひきよせるときのように、・ほくはその写真に熱中 ・ほくは好き勝手に押入れのなかから、童話のたぐいをひした。眺めれば眺めるほど気にいった。はじめて見る顔だ つばりだして、きれいに色どられたロ絵をながめた。文字ちなのに、よく見知っている顔のようにも思われた。そう をよむことはあまり好まなかったから、絵や写真のある本気づくと、しきりに心のなかにしまいこまれてあるなにか ばかりを探しだすのだった。ときどき騎士や姫君や妖怪のの顔のように思えてならなかったが、記憶をさぐっても無 ねら すみ ひとみ

10. 完訳 日本の古典 第二十六巻 夜の寝覚 ㈡

なにごと 一五きっとこうなるだろうと寝覚 御返りはいかがきこえたまへる」、「何事をか。ただ御返りばかりこそは、い の上は予期なさっていたので。 なほな こた と直々しく」と答へたまふ。「さてもいかが」と問ひきこゆれど、「忘れにけ一六帝 ( の返事の試し書きである。 宅よく考えもまとまらぬままに り」とて、のたまはぬを、「あながちに隔てたまふべきほどの事にもあらぬも書きましたので、の気持。 穴以下、右大臣の嫉妬の言葉。 一四 「いかで : ・申さばや」は、右大臣が のを」と恨みられて、「かならずかからむものぞーとおぼしければ、筆心みた 憶測する帝の心中。 ここち 一九寝覚の上へのお見舞 まへるままに書き付けられつるを召して、「かやうにぞ書く心地しつる。かた ニ 0 帝が思っておられたところ。 はらいたしゃ。物の覚えざりつるままに」とあるを、月に当ててうち見たまひ = 一あなた ( 寝覚の上 ) のほうでも こうした機会を喜びながら。 一九 とぶら ニ 0 て、「『いかでいかで、この御訪ひを申さばや』とおぼしけるに、かかるついで = = 帝にご返事申しなさったのは。 ニ三今まで以上に、帝は。 をよろこびながら、ねんごろにあはれげに申したまひてけるは、いかに身にし品あなたのほうもご返事を。 ニ五だからこそ、帝へのご返事の むばかり、いとど待ち御覧じつらむな。心を尽くいて、はた書き尽くいつら可否をご相談したのです。このこ とは先の脱落部分にあったらしい。 せう む」など言ひ続けて、いとものしくおぼしたるを、「怪し。さればこそ、御消 = 六ご返事しないでほしいとおっ しゃればよかったのに、の気持。 そこ 五息はきこえつれ。『さらでありなむ』とこそ、のたまはましか。すかすやう毛これでは私をだますようでは ないかというのである。 ことの ニ九 に」とて、「故殿の、この御事を夢ばかりかすめ出でたまふに、我が『いみ ll< 以下は、寝覚の上の心中表現。 巻 ニ九男君の御事をほんのわずかほ か けしき あやま じ』とうち変はる気色を見たまひては、いみじき過ちしっとおぼして、引き替のめかされた時に。 三 0 男君のことを気にしながら、 へ、こしらへ慰め、思ひながら、かけてもかけたまはざりしものを。あながち決して口にはされなかったのに。 ニ六 ふぞ