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1. 日本古典文学全集(33)-謡曲集(2)

九処置。 ^ 懇意な者。 錦木 及びたる通り、物語申さうずるにて候。 ワキ「ちかごろにて候。 にんげんんによふうふなかだち アイ「 ( 正面を向いて ) 〈語リ〉まづ錦木細布と申す子細は、総じて人間男女夫婦の媒と申すは、その身の等 閑なき者か親類か、またよき縁をもって申し定め候ふが、この所の大法にて、錦木と申して色どりた をッと る木を作り、夫の方よりもわが妻になるべきと思ふ女の町に立て置き候ふを、また女も、わが夫にな すべきと思ふ男の立てたるをばやがて取り入れ、また逢ふまじきと思ふ男の立てたるをば取りも入れ ず、これが男女夫婦の媒の木にて候。さるほどにこの所に、とある男のありたるが、さる女を思ひか ちちはワ えん けて、錦木をよそほひすまし、女の門に立て置き候ふを、かの女の父母、しかるべき縁にてもなきと 存じけるか、女も内に細布をのみ織りゐて、その錦木を取りも入れず、すでに三年になりしかば、 、刀 せいりよくっ むな の男精力も尽きけるか、空しくなりたると申す。女そのよし聞きて、さてはかほどまでわれを思ひか けて、三年立てたる錦木を空しくなしたる事の悲しさよとて、その女もやがて空しくなりたると申す。 両人の親どもその有様を見て、さては両方ともに思ひ合ひたるを知らずして、空しくなしたる事の不 ににん 便さよとて、歎き悲しめども返らぬ事なれば、さあらば一一人の者の取置を致さうずると申して、三年 立てたる錦木と、一一人の者を一つ塚に築き込め、錦塚と申し候。また細布を織りしたる子細は、古 この所に鷲、熊鷹あって、幼き者を虚空に擱んで失せ候ふ間、ある人の申されけるは、ただ鳥の羽に て布を織り、着せたならば、取らぬ事もあらうずると申されければ、げにもと思ひ、われもわれもと まじな 鳥の羽にて布を織り着せければ、それよりはたと取り止み候ふほどに、子供の呪ひのため着する布な ・つようはら・ ればとて、ひとしほ重宝致し、この所にて取り扱ふ布にて候。 アイ「 ( ワキへ向いて ) まづわれらの承り及びたるはかくのごとくにて候ふが、ただいまのお尋ね不審に存 じ候。 ワキ「ねんごろに御物語候ふものかな。尋ね申すも余の儀にあらず御身以前に、市人夫婦来られ候ふほど に、すなはち言葉を交して候へば、錦木細布のれねんごろに語り、この所へ同道候ひて、錦塚を教 へ、何とやらんよしありげにて、夫婦ともに塚に入ると見て、姿を見失うて候ふよ。 アイ「これは奇特なる事を承り候ふものかな。さては疑ふところもなく、古錦木を立てたる二人の者の きどく 九とりおき たいほふ いにしへ いちびと みとせ いにしへ はね

2. 完訳 日本の古典 第四十二巻 平家物語 ㈠

めぐ 右なう失ふ事あるべからず。入道腹のたちのままに、ものさわがしき事し給ひ周って、向って来る。前にあった 事とちょうど同じ事が身の上に起 ひがこと つはもの ては、後に必ずくやしみ給ふべし。僻事して、われうらむな」と宣へば、兵ることをいう。 九ほかに気にかけておられるこ つねとほかねやす なさけ とは。思い残されることは。 共皆舌をふッておそれをののく。「さても経遠、兼康が、けさ大納言に情なう 一 0 代々善事を積み重ねた家には きッくわい しげもり一四 その報として子孫に慶福が及ぶ。 あたりける事、返すみ、も奇怪なり。重盛がかへり聞かん所をば、などかはは 悪事を積み重ねた家門にはその報 かたるなか ばからざるべき。片田舎の者共は、かかるそとよ」と宣へば、難波も瀬尾も共として子孫に災いが及ぶ。「積善 之家必有二余慶「積不善之家必有二 余殃こ ( 易経・文言伝 ) による。 におそれ入ッたりけり。おとどはか様に宣ひて、小松殿へぞ帰られける。 = あわただしい。騒々しい。せ ほど さぶらひ なかのみかどからすまる さる程に大納言のともなりつる侍共、中御門烏丸の宿所へはしり帰ッて此つかちだ。 三「くやむ」と同じ。後悔する。 由申せば、北の方以下の女房達、声も惜しまず泣きさけぶ。「既に武士のむか一三非常に驚き恐れるさま。 一四聞き伝える。 きんだち ひ候。少将殿をはじめ参らせて、君達も皆とられさせ給ふべしとこそ聞え候へ。 これほど いそぎいづ方へもしのばせ給へ」と申しければ、「今は是程の身になツて、残 一五無事でいてどうしようか。無 あんをん 一六ひとよ トりとどまる身とても、安穏にて何にかはせん。ただ同じ一夜の露とも消えん事事であってもしかたがない。 一六同時に死ぬことをいう。 第こそ、本意なれ。さても今朝をかぎりと知らざりけるかなしさよ」とて、ふし 巻 宅恥となるような。恥すかしい すで まろびてぞ泣かれける。既に武士共のちかづくよし聞えしかば、 かくて又恥ぢ一 ^ いやな。情ない。 一九やはりつらい ( たまらない ) か 一九 がましく、うたてき目を見んもさすがなればとて、十になり給ふ女子、八歳のら。 ほんい ゃう すで によし せのを

3. 日本古典文学全集(33)-謡曲集(1)

謡曲集 一広く知れわたっている。なお、正 しくは「聞ゆる」であるが、この時代、 しばしば誤用されて、ハ行下一一段活 用として用いられた。「栄ふ」など も同様である。ニ那須氏は藤原道兼 の子孫で、下野国 ( 栃木県 ) 那須郡に 住した。三射あてることを勝負とし て賭けて、鳥を射ること。やや後に は、空飛ぶ鳥を射るところから、「翔 鳥」とも書くようになった。四褐いち は濃い藍色。このところ、いささか 不文であるので、次に掲げる『平家 物語』の文章を参照して解すれば、 褐の色の布に、一部分赤地の布のつ けられている直垂、の意か。「かちに、 赤地の錦をもって大領品 ( おくみ、 のこと ) 端袖 ( 袖先にさらに一幅だ けつけ加えた袖 ) いろへたる直垂に」 ( 平家巻十一・那須与一 ) 。五鎧の前 胴の上部についている紐。六この ような類のもの。七必す。 ^ 仰せ つけられるべきでもありましようか。 仰せつけられたらよいのではありま せんか。九かれこれと異議をとな える人々。一 0 「候へ」のロ語とし て略体となった「そへ」がさらに転じ たもの。 = しかるべき処置を申す ぞ。三ふたしか。一三毛色の黒い 馬で、やや体が小さいために名づけ られたのであろう。一四植物のほや ( やどり木 ) の形をまるく図案化した もの。一五うるしに貝をはめこんで 磨き出した。一六鞍などのヘりを金 または金色の金属で覆い飾ること。 一七矢を射る際の適当な距離。入だ いたい、午後六時ごろ。一九「南無」 一五〇 たれ ござさうらふなか しもつけ 誰かある。 ( 座を変え、実基の立場で ) さん候御味方に、聞ふる射手あまた御座候中にも、下野の国の ギうにんニなす すけたか よいちむねたか こひやう てじゃうず 住人、那須の太郎資高が子に、与一宗高とて小兵には候へども、手上手にて賭鳥などを仕るに三つに まうぐわん 二つは、必ず射おほせ候と申し上ぐる。 ( 座を変え、判官の立場で ) 判官、さあらばその与一を召せとて召 をのこ 四かちん ころ はたち されしに、 ( そのまま語り手の立場で ) その頃与一一一十ばかりなる男なるが、褐に赤地の直垂を着、兜を脱 たかひも おんまへ いで高紐にかけ、 ( 座を変えて、客席に背を向けて、判官の前に平伏する形で ) 判官の御前に出でてかしこまる。 かれ ( 座を変えて、判官の立場で ) 判官御覧じて、ははあ与一とは彼が事か。ゃあいかに与一、あの傾城の立てた まんなか けんぶッ ごぢゃう る扇の真中射て、平家に見物させいえい。 ( 座を変えて、与一の立場で ) 与一御諚承り、さん候いまだかや 七いちちゃう レ」もが・つ うの分の物を、仕ったる事も候はず。一定仕らんずる輩に、仰せ付けらるべうもや候ふらんと申し上 こんど ぐる。 ( 座を変え、判官の立場で ) 判官大きにって、今度鎌倉を立ってこの陣に供したらんずる侍ども、 一・も・から 一 0 ごにち 義経が命を背くべからず。それに子細を存ぜぬ輩は、急ぎ引いて、本国へお帰りそい。後日に鎌倉に て、沙汰し申さんと怒り経ふ。 ( 座を変え、与一の立場で ) 与一、辞し申さばあしかりなんとや思ひけん、 一ニふぢゃう おんまへ 一定仕らんずる事不定には候へども、仕ってこそ見候はめとて、判官の御前をまかり立つ。 ( 立って、 一三をぐろ 一五すッ 一六きんぶくりんくら 正面に座を変え、与一の立場で ) その頃那須の小黒とて聞ふる名馬に、まる・ほや摺ったる金覆輪の鞍置か かろ おんまへ せ、わが身軽げにゆらりと乗り、磯へ向いてそ歩ませける ( たづなをとり、むちで打っ型をする ) 。御前に ありし人々も、 ( 見送るような形をして ) ははああの若者こそ、一定仕らんずる者と存じ候と申し上ぐる。 ( 判官の立場で、開いた扇を顔の前にあて、その上から目で見送って ) 判官も、幀もしげにて見給ふ。 ( そのまま、 与一の立場で ) かくて矢頃少し遠かりければ、馬を海へさっと打ち入れ、馬の太腹、ひたすほどにそ見え さんぐわちジふはちにち一八とり にける。頃は三月十八日、酉の一点の事なるに、をりふし北風はげしう吹き、舟は小さし、波は高し、 浮きぬ、沈みぬ見えければ ( 静かに目を上下に動かす ) 、扇も定かならず。その時与一目をふさぎ、 ( 合掌 一九なむきみやうニ 0 ニ一あいぜんだいみやうじん しんヂう する ) 南無帰命八幡那須愛染大明神、この矢外させ給ふなと心中に祈念し、目をどんぐり目に開いて見 こひやうニ四イ れば、風も少しは吹き弱り、扇も射よげに見えにけり。与一、 ( 扇で床をたたき ) 小兵といふでう十一一束 三つ伏せ、 ( 肩衣の左袖を脱ぎ、弓の形に左手で閉じた扇を立ててにぎり、右手で矢を引きしぼって射る形をして ) ニ六ッび かなめもと よっ引いてひょうと放つ。 ( 以下、扇の海に入るさまや、源平の人々の様子を身ぶりで示す ) 過たず扇の要元 ニ七かぶら 一寸ばかり上を、ひっふっと射ちぎり、鏑は海に入れば、扇は空に上がり、春風に、一もみ一一もみも 五 ぶん つかまっッ 一七やごろ ざうらふおん はづ て ふとばら 三かけとり とも ひたたれき あやま ひと ざうらふ つかまっ さむらひ かぶとぬ

4. 集英社ギャラリー「世界の文学」16 -アメリカ1

メルヴィル 410 ていてつ っち側には馬の蹄鉄が打ちつけてあるんだがな。また戻ってだろう。ああ、そうだったな、あいつはス。ヘイン金貨が何に きた。ありやどういうつもりだい ? しーっ ! 何かぶつぶ使うものかも知らないんだ。どっかの王様のズボンから取れ ひ っ言ってやがるーーがたの来たコーヒー挽き器みたいな声だ。 た古ボタンとでも思ってるんだろう。や、またひっこみだ , しつば 耳をすまして、ようく聴きな ! 」 幽霊悪魔のフェダラーのおでましときた。例によって尻尾は しろくじら つま ) き 「もしも白鯨が見つかるとすれば、そいつはいまからひと見えないところへ巻きこんでやがる。靴の爪先にも槇皮を詰 月と一日ののち、太陽がこの宮のどれかに入るときじゃ。わめこんでるんだぜ、相変らす。あの面で何を一言う気かな ? しるし サイン サイン しは十二宮のことを研究したことがあるから、記号も知っとへつ、宮にむかって何やら妙な手まねをして、おじぎしてや る。四十年前にコペンハーゲンで巫女のばあさんから教わっ がら。あの金貨にや太陽がついてる・ーーあいつは拝火教徒に たんじゃ。さて、太陽はそのときどの宮に入るかな ? 馬蹄まちがいなし つぎからつぎだ。今度はピップか のしるしの宮じゃ。なんでかちゅうに、この金貨のまうしろ かわいそうなやっ ! あのときいっそ死んでくれりやよ かったんだ。それともこのおれか、どっちかがな。あいつは に馬蹄があるじやろが。ところでと、馬蹄のしるしの宮は何 じゃったかな ? 獅子じゃ、獅子が馬蹄のしるしじゃーー大どうも薄気味が悪いや。あいつはみんなが謎解きするのを見 ふるぶね 声で吼えてむさばりくらう獅子じゃ。船よ、古船よ ! おまていたつけが このおれがやるのもーーそこで今度は自分 えのことを思えば、わしの白髪頭も震えるわい」 で読んでみようってわけか、あの浮き世ばなれした白痴づら 「また新解釈が現われたな。だが本文はひとつだ。世界はひをぶらさげて。さあ、もう一度すっこんで聞いてやろう。そ とつ、人はさまざまというわけだ。おっと、もういっぺん隠ら ! 」 れろ ! クイークエグがやってくるーーー入れ墨だらけのクイ 「わたしは見る、あなたは見る、彼は見る。われわれは見る、 ークエグが。まるであいつの体そのものが十二宮みたいだ。あなたがたは見る、彼らは見る」 あの人喰い人種は何て言うかな ? まちがいない、目下比較「こいつはおどろきだ、あの小僧はマレーの文法の本を勉強 - も - も 検討中だ。てめえの腿を眺めてやがる。たぶん、太陽は腿に してたのか ! 精神向上ってやつを心がけてたわけだな、か はぎ はらわた あるのか、脛にあるのか、臓腑のなかにあるのか、考えてるわいそうに , さて、今度は何を言い出すか 「わたしは見る、あなたは見る、彼は見る。われわれは見る、 んだろう。草深い田舎のばあさん連中が人体天文学とやらの ことをしゃべるようなもんだ。おや、やっこさん、腿のあたあなたがたは見る、彼らは見る」 て 「おやおや、暗記しようってわけか また何か言 りに何か見つけたらしいそー。・ーおおかた人馬宮の射手か何か しらが まいはだ

5. 百姓伝記 下

よせて手をくれよ。つる四五尺に及ば & 、さきをとめて、なりつるを出 さすべし。さゝげ葉は三つ宛あり。葉こみ合てあっき処は、三つのうち かきたけ 一つのこすか二つのこして切とれ。風入てよし。垣竹風にふかれふらめ きては、さゝげの根くつろぐなり。中にも浅黄さゝげはつる大きに葉ひ = ゆるぐ。ゆるくなる 9 ろき故、風にあたるなり。またつる長くなる事一丈五六尺にも及び、や しなひに随てよくなるぞ。ひらまきにするにも小さゝげよりは垣さゝげ ぶじき がひさしくなりてよし。葉も多し。さやさゝげを切ぼしにして夫食用て、 葉をばほし置、猶以いつまでも夫食にする。あへものにするに実さゝけ 六茹で。野菜などを熱湯 をいで、すり潰して、さやさゝげのいでたるをあへる。自害あへと云。 で短時間煮る。 集風味能ものなり。種を手置するに能虫付ものなり。さやのま & あみてしセ保存する。 作 耕めりけなき処に置てよし。 あわを作る事 五 + 一、栗にわせあわ・中手・おくあり。またそのうちにうるしあわともちへうるち栗。実に粘りけ・ の少ない栗。 あわあり。穂色々ありて、大小あり。国々里々にて名かはる。いづれを とーも 四よしともあしき共いひがたし。土地にきらひ多、また病ひ付安く、作り なかて

6. 谷崎潤一郎全集 第13巻

きりに鐵炮を打ちましてそのへんのてきをみなごろしにいたしましたが、あらてのぐんぜいが人れ代り / ( \ おしよせてまゐりますのをひっしにふせぎましたこと、ゝて、なか / \ けんごに持ちこたへまして、こ の様子では左右なくやぶられさうもござりませなんだ。そんなぐあひでその日はどちらも手負ひ死人を出 しまして引きとりましたところ、あくる廿三日のあかっき、寄せ手の陣がきふに攻めつゞみのおとをひか へてひっそりいたしましたので、何かとおもってをりますと、お堀のむかうに五六騎の武者があらはれま して、「御子息しばた權六どの、ならびにさくまげんばどのを昨夜いけどりにいたしました、おいたはし い儀でござる」とだいおんに呼ば、りましたので、おしろではそれをきくとひとしくみなさまがちからを おとされ、その、ちはたゞ中しわけに御門をかためてをりますばかりで、てつばうなどもはかみ \ しくは 打ちませなんだ。わたくし、じつは、そのうちにひでよし公よりなんとかお使ひがありはせぬか、おくが たのことをいまもおもっていらっしやるなら、きっと、きっと、どなたかお人がみえさうなものだがと、 ない / \ それにのぞみをつないでをりましたことでござりますが、あんのごとくそのときになっておあっ かひがござりました。お使者にた、れましたのはなんと申されるおかたでしたか、お名まへまではわすれ ましたけれども、お武家ではなくてさる上人がおこしなされたとおばえてをります。それでそのおかたの 御口上には、ちくぜんのかみこと、昨年以來よぎないしあはせで柴田どのとかっせんにおよび、さいはひ 武運にめぐまれてこ、までおしよせてまゐりましたが、むかしをおもへば總見院さまにおっかへ中した朋 輩のあひだがらゆゑ、御一命までを申しうけようとは存じませぬ。しゆりのすけどのにおかせられても、 しようはいは弓矢とる身の常、なにごともまはりあはせとおばしめされてけふまでのいしゅを水にながさ 130

7. アーネスト・サトウ : 女王陛下の外交官

き おうぼしゃ きよ、っそ、つりつか 応募者二十四人、八倍の競争率を勝ちぬいて、 かいむしょ , っ つうやくせい 見事、外務省の通訳生となる。 にほんしんこく せんたく 日本・清国のいすれかを選択できた。 もちろんサトウは日本を希望する。 んきゅうがんねん 一八六一 ( 文久元 ) 年十一月、 と、つよフ ふねの サトウは東洋にむかう船に乗り、サザンプトン港を離れた。 かんじ 日本語を学ぶまえ、漢字に慣れるのがよいというので、 しんこく ちゅう」く」 いったんは清国に立ちより、中国語を勉強させられた。 よこはまっ そしてやっとあこがれのジパング、横浜に着いたのは、 ぶんきゅう にち 一八六二 ( 文久一 l) 年八月十五日である。 生まれてはじめてサトウが見た日本は、 聞いていたとおり紅葉の美しい東洋の島国だったが、 み」と にほん」 まな にん ねんがっ こ、つよ、つ にほんき、ほ、つ がっ み 、な と、つよ》っしまぐに に一は。ん べんきよう ラ」》っ 0

8. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

てんじゃうわらは 一「長々しーで大人びた様子。 一つづつ、をさをさしく乗りたるしりに、殿上童乗せたるもをかし。 0 ニ行列が通り過ぎたのち、我が のち わたり果てぬる後には、などかさしもまどふらむ、われもわれもと、あやふちにその後を追おうとするさま。 三ゆっくり車を進ませなさい 子 くおそろしきまで、先に立たむといそぐを、「かうないそぎそ。のどやかにや供の者への言葉。 草 四少し通れるようになる程度に 枕れ」と、扇をさし出でて制すれど、聞きも入れねば、わりなくて、すこしひろ他の車をやりすごして。以下段末 まで三巻本とは文の順序その他異 き所に、強ひてとどめさせて立てたるを、心もとなくにくしとぞ思ひたる。き同が多い。 五うつぎの生垣。 ほひかくる車どもを見やりてあるこそをかしけれ。すこしよろしきほどにやり六驚くべき様子に。びつくりさ せるようなふうに。 五 過ごして、道の山里めき、あはれなるに、うつぎ垣根といふ物の、いと荒々しセうつぎの花、即ち卯の花。 ^ 「つばみたるものがち」の意か う、おどろかしげにさし出でたる枝どもなどおほかるに、花はまだよくもひら九桂。前ハーに「葵、かつらもう ち萎えて見ゅ」とあった。 け果てず、つばみたるがちに見ゆるを折らせて、車のこなたかなたなどにさし一 0 三巻本この前に「いとせばう、 えも通るまじう見ゆる」とある。 ゅ たるも、かつらなどのしばみたるがくちをしきに、をかしうおばゆる。行く先「さ」がはっきりしないが、近くな ってみると目的地とはちがった所 だった、の意と解する。一説、近 を、近う行きもて行けば、さしもあらざりつるこそをかしけれ。男の車のたれ 道を急いで行くと必ずしも近道で はなかった、の意。 とも知らぬが、しりにひきつづきて来るも、ただなるよりはをかしと見ゆるに、 = 「風吹けば峰にわかるる白雲 の絶えてつれなき君が心か」 ( 古 ひきわかるる所にて、「峰にわかるる」と言ひたるもをかし。 今・恋二忠岑 ) によって男が言い かける。言葉も交さぬままの別れ 四

9. SFマガジン 1971年10月臨時増刊号

をあけてにたっとわらってみせた。はがにほんおれていた。 もが、かおにしようべんをひっかけていた。そこがえりあだった ときおり ってわけだ。 いっかげつににかいかさんかい、ものすごいくろい あらしのようなものが、どこからかおそってきた。そのときは、がき がけからっきおとされたり、とげだらけのさ・ほてんのうえにぶつ どもは、ちかしつやとだなのなか、しんだいのしたなどにかくれてけられたり、さんざんひどいめにあって、おれはやっとなかまにい ふるえてるんた。それはくさいにおいのするおそろしいあらしで、 れてもらえた。そのときは、ちいさいながらも、いきてゆくために ものすごいおとをたてておそってくると、おふくろや、よそのおふや、じぶんをまもらなきゃいけないってこと、たにんのものをぶん くろをぶちのめし、はだかにひんむいて、しめころすみたいなおおどらなきゃいけないってこと、だからじぶんのものをぶんどられな さわぎをやった。おれもおふくろがすつばだかにむかれて、おれの いためには、 , うでっぷしをきたえ、なめられないようにしなきゃい かくれてるとだなのまえのしんだいのうえで、おおきな、くろい、 けないってことをからだにたたっこまれていた。 こんなにひで けだらけのものにおさえつけられ、ぎゃあぎゃあわめきながらあしえよのなかでも、おなじとしごろで、やられてしんじまったってや をばたばたさせているのを、ちもこおるおもいでふるえながらのそっは、さんにんしかいないんだから、にんげんってつよいもんだ。 いていた。そのあと、おふくろははらのしたからちをながして いもっともとしうえのやつは、くいものをどろのなかにたたきおとし た。ちくしよう、けだものめ、とうめいていたが、なんだかまんそたり、つつころばしたり、いじわるはしても、とししたのやつには くしたみたいなところがあるのがへんだった。 てかげんしてるみたいだったけど : ましいんのところへゆけ そのくろいあらしが、おとなってものだということを、おれはあば、かっかっくえるものはくれたから、それほどひもじいおもいを とになってしった。おとこのおとなだ。 そいつらがくると、 したわけじゃない。ただなかまはすれにされないためには、なめら つも、に、さんにん、おんなたちがしんだ。 れないようにしなきゃならなかった。 おれたち、としうえのや みつつになったとき、おふくろのはらがおおきくなった。したのがつには、どうしてもかなわなかった。だから、もっとおおきくなっ たら、きっとやつらをぶちのめしてやる、と、おなじとしごろのな きができたんだってことは、これもあとからわかった。おふくろは おれを、まえよりもこっぴどくひつばたいた。でていけ ! このい かまはいつもいいあった。おおせいでひとりにかかれば、としうえ けすかないできもんやろう ! とおふくろよ、つこ。、、 をしナし力ないとほのやつにまけやしないんだが、そんなことをすれば、あとでむこう とこへでていってい おれはこわくなったが、・ んとにころすよ。 もおおぜいでしかえしにやってくる。そうしたら、どんなひどいめ いかわからなかった。するとおふくろは、まあ、こいつはなんてきにあうか、かんがえただけできんたまがちちみあがった。 きわけのない、うすのろのがきなんだろうといっておれのくびにぶ おおきくなるにつれて、けんかはたんだんひどくなった。さしで れえとのついたくさりをまきつけてしめた。きをうしなっているう やるにしても、おおぜいでやるにしても、はんごろしのめにあわせ ちに、おれはしらないところにすてられていて、としうえのがきど たり、かたわにするようなひどいことをやった。そのころから、お 4

10. SFマガジン 1972年10月号

: しかし、もっと重要なことは、現在もうつっていないという事実「わからないな。まったくわからない。どうも信じられないことだ : と なんです。もし・ほくが幻影を見ているのであれば、カメラは現在のと思いますよ。しかし、もしそこに何かがあるのだとすれば : ころで、あなたは恐ろしくなったことがありますか ? あなたはそ 写真をとっているべきでしよう。しかし、はっきりしたのは、カメ ラがうっすべきものが何ひとっ存在していないということです。・ほのことこ、、 冫しまではずいぶん落着いており、当然のこととしておら くは、カメラがおかしいのか、それともまちがった種類のフィルムれるようだ。しかし、最初はきっと恐ろしかったはずですが」 を使ったのだと考えました。それで・ほくはカメラを何台も変え、 「最初は、ふるえあがりましたよ。おびえただけでなく、肉体的な ろんな種類のフィルムを使ってみましたが、事態は変わりませんでおびえ : : : 自分の安全に対する恐怖、永久に脱出できない場所へ落 した。写真をうっすことはできなかったのです。何かを持ってかえちこんでしまったのだという恐怖 : : : そういったものだけではな ろうともしてみました。花があるようになると、・ほくは花をつみまく、自分が気違いになってしまったのではないかと恐ろしくなりま した。花をつむのになんの苦労もなかったんですが、現在にもどっした。そして、淋しさです」 「どういう意味です : : : 淋しさとは ? 」 てみると手には何も持っていないんです。・ほくはほかのものも持っ てかえろうと試みました。・ほくが持ってかえれなかったのは、花の 「それは正しい言葉しゃないかもしれません。場ちがい。いるヘき ような生きたものかもしれないからだと考え、それで生きていないでないところにいる。人間がまだ現われておらず、何百年もたたな ものを試してみました : : : 岩石といったものです : : : でも・ほくは、 ければ現われない場所にさまよっている。ひとことで言うなら、ま 何ひとっ持ってかえることができなかったのです」 ったく異様なところにいるので、ちちこまってふるえていたいとい 「写生してみるのはどうでした ? 」 う思いです。その場所ではなく。そこでは・ほくがまったく異質のも 「それは考えてみましたが、やってみたことは一度もありませんでのなんです。いまでもときどき、そんな想いがすこしします。もち した。絵のほうはぜんぜんだめなんです : : : それに、・ほくはそんなろんそのことはわかっており、しつかりしていようと思いますが、 ことをしても役にたたないと思ったんです。画用紙も空白のままもときどきまだその感情にとりつかれるんです。・ほくは、別の時代の どってくるだろうからです」 空気や光には場ちがいの者 : : : もちろん、それはみな想像なんです が」 「でもあなたはやってみなかった」 「そうとばかりも言えないな」 ダニエルズは答えた。 「ええ、やってみたことはありません。ときどき、・ほくは現在にも「でもいまは、最大の恐怖はもう去りました。完全になくなったん どってきたあとでスケッチをしてみました。いつもではなく、ときです。・ほくが気違いだという恐怖はです。それにはもう確信があり どきです。記憶によって。でも、お話ししたとおり、・ほくは絵がうます」 「どうして確信できました ? どうして人は確信を持てるものなん まくないんです」 5 6