世界 2016年08月号

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〇一〇年再検討会議では、それに加えて核兵器国は「配備・ 米国では、現役の核兵器運搬手段が二〇一一〇年代に耐用年 非配備を含むあらゆる種類の核兵器を削減し、究極的に廃棄数を迎えるのにそなえて、戦略核戦力の三本柱すべてに関し するため、いっそうの努力を行う」と約束した。しかし、こ て少数精鋭の新戦力の構築が目指されている。今後一〇年に のような政治的約東は空しいほど実行されなか 0 た。その経核兵器の維持と近代化に三五〇〇億ドルという冷戦期をはる 世緯こそが、外交的努力にエネルギーを注いできた国々に核兵かに超える巨費が投じられる。大陸間弾道弾につ 器禁止条約 ( あるいは他の法的文書 ) の交渉開始を急がせる要因 いては二〇三〇年までの寿命延長を完了したが、その先の次 となった。 世代ミサイルの開発に着手した。潜水艦発射弾道弾 現在世界に存在する核弾頭約一万五〇〇〇発の九四 % は米 では寿命延長・改良計画と並行して、それらを発射する 国とロシアが持っている。その次に多いフランスの弾頭数は 次世代の戦略原子力潜水艦一一一隻の開発が始まり、最初の一 米ロそれぞれの二〇分の一に満たない。したがって状況を変隻は二〇二一年に購入される予定である。もう一本の柱であ える鍵は米国とロシアが握っていると言って過言ではない。 る戦略爆撃機については、現在の二機種の改良とともに次世 なかでも唯一常時世界的に軍事力を展開している最大の軍事代爆撃機の開発が行われ一一〇一一五年に購入が開始される。爆 強国である米国が、状況を変えるためのイニシアチプを発揮撃機には新型巡航ミサイルが二〇一三年頃には搭載される。 しなければならないであろう。 一方、ロシアにおいては、ソ連崩壊後の経済的困難から生 米ロ間では二〇一八年中に配備戦略核兵器を弾頭数で一五 じた核戦力の遅れを取り戻すための近代化努力の成果が、最 五〇発、運搬手段で七〇〇基 ( 機 ) 以下に削減することを定近になって顕著に現れ始めている。旧ソ連時代の大陸間弾道 めた新 (-nE--«xe 条約があるが、その先の削減に関する交渉 弾の新型への転換が二〇二二年にほば完了する予定であり、 が始まりそうにない。最近の五年間で配備・非配備、戦略・ 新型ミサイルには米国のミサイル防衛網突破能力の向上とい 非戦略すべてを含む米国の現役弾頭数は五〇〇発減ったに過 う目的が含まれている。潜水艦発射弾道弾を新型の戦略原潜 ぎない。ポスト新交渉が始まらなければ、量的削 に搭載する近代化も始まっており、新型潜水艦八隻の建造を 減は止まるであろう。 二〇二〇年代半ばに完了する予定である。戦略爆撃機につい そのうえ、米ロとも、巨額の投資をして核兵器の近代化に ては、次世代爆撃機を開発中であり、二〇二三年に導入が予 取り組んでいる。 定されている。 特集 2

161 ー核兵器・法的禁止への分水嶺 告書は「合衆国の核兵器の基本的役割は、合衆国および同盟 このように、米国とロシアの政治と軍事の現場においては 国・友好国に対する核攻撃を抑止することである」「合衆国 冷戦期と変わらぬメンタリティが支配している。 は、米国および同盟国・友好国の死活的利益を防衛する極端 米国における変化への原動力 な状況においてのみ核兵器の使用を考慮する」と述べる。同 月にロシアが提出した報告書も、ロシア軍事ドクトリンは オバマ大統領はプラハ演説で「冷戦思考に終止符を打つ」 ことを訴え、今回の広島訪問でも「恐怖の論理から脱して核「二つの例外的な場合、すなわち大量破壊兵器を用いた攻撃 がロシアないしその同盟国に対して行われた場合と、国家の 兵器のない世界を追求しなければならない」と述べた。 存立そのものが脅かされる場合においてのみ、核兵器の使用 一方、元米戦略軍総司令官 ( 一九九四年に退役 ) でありなが が許される」と述べる。これらのドクトリンにおいて、核兵 ー・バトラー空軍大将は、 ら厳しい核兵器廃絶論者となったリ 器の役割は冷戦期よりも限定されていることは確かである。 広島でのオバマ演説を聞いたのち、核兵器廃絶が緊急課題で しかし、このような極端な例外的場面に限定したドクトリン あることに同意しつつも、米国で核兵器の大幅削減が早期に においてさえも、米ロの核戦力は、前述したような、とめど 進むことに悲観的な見解を示した。彼によれば「 ( 米国の戦略 なく膨張する自動運動を続けている。 軍の抑止任務は ) 今も、がっかりするほど冷戦期を想起させる バトラー元総司令官は、核攻撃すべき敵の標的を評価し、 仮説と政策の上に成り立っている」。 一一〇一五年五月に提出された米国の核兵器政策に関する報保有すべき核弾頭の種類と数を決める戦略軍内部のプロセス 社会保障の削減。貧困の拡大。未 ブレイディみかこ 来を奪われる若者や労働者たち。 日本と同様の問題に直面する欧州 にあって、新たな求心力を持った ヨーロッパ・コ 1 リング 左派が大きなうねりをまきおこし ー地べたからのポリティカル・レポートー ている。在英二〇年のライタ 1 が 四六判・並製カバ ・ 304 頁本体 18 。 0 円 ( 税別 ) 綴る、話題の政治時評。 - 。ー特集 2 岩波書店

において、大統領や国防長官の方針がどのように無視され、 月 ) と述べ、また「核兵器のない世界とは、単に『今日の世 総司令官がこの力学を止めることにおいていかに無力であっ 界マイナス核兵器』の世界ではない」 ( 二〇一一年三月 ) と述 たかを回想録に記している。彼は問題の根深さを示す一つの べた。これらは核軍縮外交の困難さ以上の困難を克服しなけ 側面として「違法ではないが倫理的とは言えない」軍部に根ればならないという自覚を、彼らが持っていることを示して 世付く制度的な悪弊を指摘した。「軍部の高官が制服を脱ぐと 主要な軍需産業に入り、逆に主要な軍需産業の役員が国防総 四人の元高官のさらなる背後には、彼らを押し出したフー ー計画 ( 「核兵器のない世界」推進のイニシアチプ。スタンフォード 省の高官になる」。これが「庇い合いや甘い取り引き、軍の 要求の膨張、そして大量契約」が生まれる土壌となる。 大学フーバー研究所で始まった ) の元外交官マックス・カンベル 核兵器国とりわけ冷戦期の両雄であった米ロにおいては、 マン ( 故人 ) がいた。彼は米国こそが人類が正気を取り戻す 核兵器が比類のない破壊力を有しているがゆえに、国家安全 ために率先して動くべきと強く主張した。米国の努力にロシ 保障の名の下に、その周りに巨大な聖域が作られ、そこに今 アや中国が応じるかどうか分からないとしたうえで、彼は も「核の聖職者」が支配するアンタッチャプルなプロセスが 「正気への私たちの努力は、私たちアメリカ人ーーロシア人、 存在している。核兵器国における核軍縮の過程は、このよう 中国人、アフリカ人、ラテン系人、インド人、ドイツ人、フ な聖域を崩しつつ進行しなければならない。 ランス人の子孫であるアメリカ人ーーが人類の尊厳と平和を オバマ大統領が、プラハ演説において「私はナイープな人達成する努力に参加していること、そして、この努力はアメ 間ではない。 ( 核兵器のない世界の平和と安全を追求するという ) こ リカが世界のすべての人々のために示し追求しているもので あることを、世界の人々に確実に伝えるだろうと確信してい の目標は直ちに達成できるものではない」と言いつつ、「世 界は変わらないと我々にささやく声に惑わされてはならない。 る」と主張している。 『我々にはできる』と主張し続けなければならない」と述べ 核兵器国の内部に存在している、このような核兵器ゼロへ たことは記憶に新しい。オバマ大統領を背後で支えたキッシ の原動力を、分水嶺を迎えている核兵器の法的禁止の重要局 ンジャー 面においていかに活用し、核兵器国の継続的な関与を確保す ペリーら四人の元高官も、有名な共著論文に 「 ( 核兵器のない世界を創造するという ) 共同事業は、核兵器国の る動きとして作り上げるかが、国際的な核軍縮運動に問われ 体質を変容させることなどを含む」事業になる三〇〇七年一 ている。容易ではない課題であるが、長期的視野と見識にも