リトルボーイ

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死人たちの代弁 ひろひこ 広彦は目がさめたとき、いっしゅん自分がどこにいるのかわからなかった。、いおばえの道をあて ねむ もなく歩きまわっているうちに夜がきて、こわれたビルのひとつに足をふみいれ、そこで眠ってし まったのだ。 さいしょ 目がさめて最初に見えたのは、コンクリ 1 トの残骸にうつった木の影だった。その影の横に人ら しき影がひとっ伸びてきて、広彦は立ちあがりつつ顔をふりむけた。 近づいてきたのは、広彦よりも年がいくつか上だと思える女の子だった。 目があうと、ふたりは意味もなく笑いあった。 「ばくは松井広彦。どうだ、びつくりしたか」 「びつくりしないわ。どんな人にも名前はひとつあるもの」 女の子はいいかえし、こんどは顔いつばいに笑みをひろげた。 さらに言葉をついで、 ひょうど、つまゆみ 「わたしは兵藤真弓。十四才よ。あなたよりは年上だわね」 真弓と名前をつげた少女を、広彦は、まじまじと見つめかえしている。たしかに真弓の目鼻立ち は、だれもが見とれるほど整っていた。でも、そのせいではない。服装に見とれているのだ。 だいべん ととの わら ざんがい

せんとうばう ば、つ , 、、つ亠 9 を」ん ほとんどの人が、女ならもんべをはいて防空頭巾を背中にくくりつけ、男なら戦闘帽をかぶり、 ししゅう まゆみ むね 草色がかった国民服というものを着ている。それなのに真弓は、胸のあたりに花の刺繍をあしらっ こんじ た長そでの白いプラウスと、紺地のフレアスカ 1 トで身を かわくっ つつみこんでいた。そして赤い革の靴をはき、 茶色つほい布カバンを肩からさげている にあうでしよ」 ひろひこ 広彦の心を読みとった真弓が、 スカートをふわっとひろげつつ、くるつ とまわって見せた。のばりはじめた ざんがい ばかりの太陽が、ビルの残骸に照りつけて いる。石だらけの大地がオレンジ色にそまり、 ぶたい その廃虚の舞台で右に左にまわる真弓も オレンジ色にそまっていた。 、刀学 / おたがいに、これまでのいきさつをかいつまんで語りあったあと、 「真弓ちゃんも、お母さんとはぐれたんだね。これからどうする ? 」 「病院とか救護所をさがしてみるわ」 きゅうごじよ

「じゃあふたりで、病院とか救護所をさがして歩くことにしない ? 」 ひろひこ 「いいわよ広彦くん」 ひょうどうまゆみ げんしばくだんさくれつ せんこうばくはっ 兵藤真弓である。原子爆弾が炸裂したそのとき、校庭で朝礼をうけていた。いきなり閃光と爆発 おん 音がしたあと、爆風に両足をすくわれた真弓は、地面にたたきつけられていた。 A 」、つ、刀し てんまちょう 校門を走りでたが、倒壊したものに道をふさがれ、天満町のわが家へは近づけなかった。己斐町 ふくしまがわやまてがわ のほうへ逃れる人らにまじって、福島川と山手川の橋をわたる。気がつくと、もんべがやぶれてい た。どこかにひっかけたらしい。お尻まで見えそうで、真弓はたちまち恥すかしさにとらわれた。 ノ、つしゅう ぶんさん 空襲にそなえて、母は西や東の知人に衣類とか食器などを分散してあずけていた。 己斐の山すそにある戸田家をたずねると、 「あずかっていたものを、どろばうに盗られたのよ。ごめんね」 おばさんが、さらりといってのけた。 戸田の長女が真弓のプラウスを着ているのを見て、彼女はさりげない口ぶりで、 「そのプラウス、啓子さんが着ててくれたから、盗られなかったのね。ありがとう」 ししゅう 啓子は真弓をにらみつけ、刺繍のついたプラウスを足もとにぬぎすてた。戸田のおばさんも、母 のスカートをはいている 「そのスカ 1 トもおばさんがはいててくれたから、盗られなかったのね。よかった」 のが ば′、ふ、つ きゅうごじよ しるし こ、っていちょうれい まち