ビジネス法務 2016年08月号

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わが社でもできる ! 贈賄防止プログラムの実践 ぜそのエージェントを利用するのか」「その トの経歴・特徴から , 誠実さを評価しておく わけだ。具体的な評価項目としては , 次のよ ェージェントは反腐敗ポリシーを遵守できる うなものが考えられよう。 のか」などについて , 合理的な説明を求め た。この時点で , 高リスク・エージェントの ⅵ 当該工ージェントに関して , 贈収賄の 数は約 5 , 000 となっている。 噂はないか 第 6 は , 高リスク・エージェントの再調査 当該工ージェントは , 贈収賄問題でマ を実施することである。リスクが高いエージ スコミに取り上げられたことはないか ェントについては , そのリスクが許容できる 当該工ージェントは , 汚職の嫌疑をか 範囲に収まるのか , コントロール可能なのか けられたことはないか まで確認する必要がある。そのために , より ⅵ 当該工ージェントは , 汚職につき , 有 詳細な確認項目を設け , 再調査を実施し , そ 罪判決を受けたことはないか の結果をデータベースに登録しておく。ちな 当該工ージェントを , 業界関係者は取 みに , タイコでは , 高リスク・エージェント 引先・信用先として扱っているか の再調査費用を , 各事業部に負担させること 当該工ージェントには , 政府関係者が とした。その結果 , スポンサーは , 多くの高 天下っていないか リスク・エージェントとの契約を解消してい 当該工ージェントは , 支払先として個 き , その数は 1 , 750 にまで圧縮された 5 人名義の口座を使っていないか 第 2 の視点は「業務遂行能力」である。業 工ージェント格付における 務遂行能力のないエージェントは , 贈収賄の 主な評価項目 仲介者としての役割が期待される可能性が高 い。そこで , 工ージェントの役割を明確にす 工ージェント・ DD の仕組みを持たない会 るために , 彼らの能力や実績を確認しておく 社にあっては , まず , 以上のような 6 つのス 必要がある。評価項目としては , 次のような テップを踏んで大枠を作る必要がある。大枠 ものが想定されよう。 ができたら , 後は日常的・定期的にエージェ ントを格付・評価していけばよい。すでに上 契約を履行するだけの専門性を持って 記第 5 および第 6 ステップとして , 工ージェ いるか ントの格付・評価・再調査に触れたが , そこ 契約を履行するだけのスタッフを抱え では , 具体的な手続内容にまで踏み込んで説 ているか 明はしなかった。そこで , 次に , 各社におけ 過去の実績を持っているか る実践を促すため , 格付・評価のための 3 つ 過去の成果に関し過大な説明をしてい の視点を提示するとともに , 具体的な評価項 ないか 目を例示しておきたい 6 ⅵ 過去の成果に関し虚偽の説明をしてい 第 1 の視点は , 工ージェントの「誠実さ」 ないか である。ここでは , 工ージェントが不正に関 政府関係者との密接な関係ばかりを強 与する可能性を把握するために , 工ージェン 調していないか 5 K 「 oll, K. Op. cit., pp. 54-55. この時点で , タイコは 3 万 2 , OOO のエージェントの約 95 % を , 中・低リスクのエージェント としている。 6 髙巖「外国公務員贈賄防止に係わる内部統制ガイダンス」 (R-BECO 1 3 ) 麗澤大学企業倫理研究センター , 2014 年 3 月 , 160 頁。 特集 35 ビジネス法務 2016.8

実態のない架空の業者ではないか 公表された住所に事業所・事務所を置 いているか いをあげたい。 だ。具体的な評価項目として , 次のような問 ェントの説明責任能力をチェックするわけ の存在を疑われかねない。このため , ェージ し , 適切に説明できなければ , 「不正の意図」 ージェントが自身の仕事の進め方や内容に関 第 3 の視点は「説明責任能力」である。工 過去数年間の財務諸表を見せることが できるか 過去に実態のよくわからない下請けを 個人名義の口座を多用していないか 異常に高い成功報酬を要求してこないか を抱えていないか 記録・帳簿が杜撰で , 財務報告に問題 使っていないか ペー / ヾーカンノヾニ 用していないか ーを介した支払を多 現金の支払を求めてこないか 領収書を出さないなどの傾向を有して いないか 工ージェント評価を終えたら , 最後にやる Ⅳ格付に応じたコントロール を用意されたい 7 性などを考慮し , より実践的・合理的なもの は , 各社の事業規模・内容やプロジェクト特 はあくまで一般的なものに過ぎない。実際に 連する評価項目を列挙した。ただし , これら 以上 , 3 つの評価の視点と , それぞれに関 べきは , その評価に基づき , ェージェントを コントロールすることである。ここでは会社 側が取りうる主な措置として , 以下の 4 つを あげておこう。 第 1 は「契約条項」を通じての管理であ る。一般に , リスクの高いエージェントの利 用は避けなければならないが , それを利用す るしか選択肢がない場合 , 企業側は , 少なく とも次の 5 つの条項の中に , 通常用いる契約 条項よりも厳格で広範な内容を盛り込んでお く必要がある 8 ①公務員に対し不正な資金を提供しない 旨の「法令遵守条項」 ②公務員との関係に関しみずからの立場 を保証する「表明保証条項」 ③上記 2 条項の遵守を確認するための監 査に応じる旨の「監査受忍条項」 ④上記 3 条項に違反があると合理的に判 断した場合の契約解除に関する「無催告 解除条項」 ⑤委託した業務を事前の相談なしに他の 下請に再発注しない旨の「再発注禁止条 項」 最後の「再発注禁止条項」を設けるのは , 業務を直接委託したエージェントが , 上記① から④までの条項適用を嫌い , 当該業務をそ のまま他のエージェントに丸投げしてしまう 可能性があるためである。もっとも , 当該業 務を分割し , その一部を他のエージェントに 委ねたほうが合理的という状況も , 実際には ありうるだろう。そうした場合に備え , 直接 業務委託したエージェントには , 契約段階で 「会社側への事前相談なしに再発注すること」 を禁止しておくのである。会社側が再発注を 認める場合には , 当然ながら , 再発注先の工 7 Abikoff, K. T. , Wood, J. F. and Huneke, M. H. Anti-Corruption Law and Comp/iance. ・ Guide わ the FCPA and Beyond, BIoombe 「 g BNA, 2014 , p. 344. 8 髙巖 , 前掲書 , 162 ~ 163 頁。 36 ビジネス法務 2016.8

わが社でもできる ! 贈賄防止プログラムの実践 ージェントにも , 上記①から⑤までの条項が く必要がある。データベースが常に最新の情 適用されなければならない。 報に更新されていればこそ , 社員スタッフは 第 2 は「トレーニング」を通じての管理で これにアクセスし , 会社として取るべき合理 的措置を確定できるからだ。通常 , 情報の更 ある。厳格な契約条項を設けたところで , ェ ージェントがその趣旨や会社側の意図を正し 新は , 「モニタリングを実施した後」「委託業 務が完了した後」などに行われる。なお , く理解していなければ , コンプライアンスは 定期間 ( たとえば , 5 年間 ) を超えて利用実 徹底されない。それゆえ , 会社側は , 工ージ ェント向けの贈収賄防止に関する教育訓練 績のないエージェントについては , これをデ ータベースから削除しても問題はなかろう 1 ニングでは , まず , すべてのエージェントに 対する共通事項として「海外腐敗防止関連規 V 結びにかえて 制に関する基礎知識」「コンプライアンス・ ポリシー」「契約条項に盛り込まれた禁止事 ビジネ 項」などの基本的内容を取り扱うこととす 企業活動がグローバル化する中で , スの形態はますます多様化している。とりわ る。さらに , 工ージェントのリスクが高い場 合には , 教育内容や教育頻度 , 教育媒体 ( 講 け , 海外で新規事業を展開する場合 , ジョイ 習会や e ラーニングなど ) , 対象者の範囲など ント・べンチャー (JV) やコンソーシアム を適宜変更することも検討されたい 9 の組成 , 特別目的事業体 (SPV) の設立 , サ プライチェーンの拡大・多様化など , 従来と 第 3 は「モニタリング」を通じての管理で は異なる手段が用いられるようになってい ある。高リスクのエージェントであれば , ト る。このような形態の取引は , 複雑なスキー レーニングを実施したとしても , 契約条項を ムを使って行われるがゆえに , チェックの目 無視して行動するかもしれない。そのため , が届きにくく , 場合によっては , 贈賄の事実 企業側は , 定期的に監査を実施し , 遵守状況 を隠蔽するために悪用される可能性もある。 の確認を行う必要がある。モニタリングで このため , 企業としては , 内部統制の範囲を は , 契約履行に関する監査に限定せず , より 広い視点からチェックを行うのが合理的であ 拡大し , 広くコントロールを行き届かせる必 要があろう。そのための重要な一歩として , る。もっとも , 工ージェントのリスクに応じ 日本企業がより体系的かっ合理的なエージェ て , 監査実施のインターバルを変更すること ント・ DD に着手することを期待したい。 も重要である。たとえば , 低リスクでは 3 年 , 中リスクでは 2 年 , 高リスクでは 1 年と 髙巖 ( たかいわお ) ルール化しておく 1 。 いったように 麗澤大学大学院経済研究科教授。詳細は 1 7 頁参照。 第 4 は「データベースの更新」を通じての 藤野真也 ( ふじのしんや ) 管理である。企業グループとして , 工ージェ 1982 年生まれ。大分県出身。京都大学経済学部卒業 , ントを合理的にコントロールするためには , 京都大学経営管理大学院修了 (MBA), 麗澤大学経済 研究科博士課程修了。博士 ( 経営学 ) 。企業倫理研究セ 工ージェント情報を常にアップデートしてお ンター特別研究員 , 麗澤大学経済学部非常勤講師。 9 ICC Commission, ICC Guidelines on Agents, lntermediaries and 0 e 「万わ / 「 d Parties,lnte 「 national Chambe 「 Of Comme 「 ce, 201 0, p. 7. 1 。髙巖 , 前掲書 , 1 65 頁。 11 髙巖 , 前掲書 , 165 ~ 166 頁。 特集 ( トレーニング ) を実施するわけだ。トレー 37 ビジネス法務 2016.8