海で見つけたこと

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「大を、大を捜してるんです。」 けあな 立ち止まったとたん、体じゅうの毛穴から汗がふきだした。 「どんな大 ? 」 「白くて、耳のたれた大。」 しお あせなが 目にも口にも塩からい汗か流れこむ。 「そ、ついやあ。」 ことば つぎ おばさんの次の言葉を待って、ごくりとつばをのみこんだ。 「十日あまり前から、白い大がこのへんをうろついとったけど : よ、つになったんじやろ ? 」 ううん、ううんとわたしは首をふった。表面張力で持ちこたえていた涙がポロリとこばれおち 「 : : : その大だと思う。いまどこにいる ? 」 めいわく す す 「さあなあ。このあたりにみんな大を捨てていってくれて、わたしらも迷惑しとるんよ。捨てら のうか れた大が野大になって群れをつくって、なんばでも増えるしねえ。このあいだは近所の農家の鶏 小屋がおそわれたんよ。」 ごや さカ む ま ひょうめんちょうりよく あせ も 。おたくの大はいま、おらん なみだ きんじよ とり 754

おばさんは、非難するべきか同情するべきか態度を決めかねるというように、とうさんとわた しを交互に見た す いつの間にかヒグラシが鳴きはじめていた。カナ、カナ、カナ、カナーー。澄んだ鳴き声は、 森の木々の間を反響して、あかね色の空高くのばっていった。 日のかげつてしまった駐車場に、わたしはひざをかかえてうずくまる。足の筋肉がつって、も みまも う走れない。、 少し離れた場所からとうさんが、そんなわたしを痛々しそうに見守っていた。声は おえっ かけてこない。汗でぬれたひざに額をのせ、わたしは嗚咽を一緒にだきしめた。まあるくまある く体を丸める かん このままさなぎになりたい。なにも考えずなにも感じず、まわりを堅いからでおおって蝶 になる日を待っさなぎになりたい。 「なっきー みじか そのときだ。緊張しきったとうさんの声が、短くわたしを呼んだ。頭をあげたとたん貧血がお む きて、ぐるりと世界が反転した。反転した世界のはしつこに、数匹の野大の群れがうつった。 えっ ? あわてて目をつぶり、もう一度ゆっくりと目をあけた。 こ、つご 0 はんきよう あせ きんちょう せかい ひなん はな はんてん ちゅ、つしやじよ、つ ばしょ ど、つじよう ひたい はんてん せかい たいど き よ すうひき いたいた かた きんにく ひんけっ ↓つよ、つ 755

林の入り口に大たちが姿を現していた。一匹、二匹、数えられるだけで四匹いた。そしてその ぐら 奥、ほの暗い林をバックに白い色が一点、そこだけ発光しているように浮かびあがった。一暼で じゅうぶんだった。 リンリンだー よろこびが体をつらぬく。血液が勢いよく体じゅうをかけめぐりはじめるのがわかる。頭の中 でガンガンバケツをたたくような音がした。 「とうさん、いた ! 」 いうより早くかけだしていた。 「リンリ 1 ン。」 したが 先頭の大が後ろに従えた大たちを守るように立ちはだかって、するどくほえた。それを合図に、 しっせいに大たちがほえかかる。こわかった。だけどひるまず目をあわせると、どの大ももとは 飼い大なのかどこか気弱でやさしい目をしていた。どろどろによごれて毛玉だらけになったマル くろ りようみみ チ 1 ズもいた。両耳のリボンは、もとの色がわからないくらい真っ黒になっていた。 「行くな。かまれるぞ。」 とうさんの制止も耳に入らない。わたしはリンリンだけを見つめて、かけだした。リンリンは おく すがたあらわ けっえき いきお びき ひき はっこ、つ ひき いちべっ