で認識されている図書館情報サービスの役割に ついても触れるべきである。目的と達成目標 は , しかるべき公式の機関から出される教育ポ リシーと一致させる必要があり , また親機関や 国から学生・卒業生の学習成果・能力として求 められている資質を満たす必要がある。 計画と評価図書館情報学教育プログラムでは , 計画・評価の過程を明確にし , それらを定期的 に行っていくべきである。そうした過程では , 図書館情報学分野やそれを含む上位社会におい て今後予測される変化を踏まえつつ , ポリシー や手順が絶えず見直される必要がある。教員 , 職員 , 学生を計画・評価の活動に関わらせると ともに , 設置機関や実務家にも意見を求めるべ きである。教育プログラムは , その国で規範と される教育要件や専門職認証評価要件を満たし ービ 達成目標 G2. カリキュラムの要素 ていなければならない。 コア・カリキュラムでは , 以下に挙げる要素が 重要である。 図書館情報学力リキュラムのコア要素は以下の 原則 と方法を組み込むこと ・カリキュラムの中に地域固有の先住民の知識 り組みに繋がるものを含めること ・過去の取り組みのうち , デジタル環境での取 5 . 情報資源管理 , これには情報の組織化・処 4 . 情報の伝達過程 ス計画 3 . 情報ニーズの評価とそれに対応するサ 2 . 情報の生成 , 伝達 , 利用 報ポリシー・倫理 , 図書館情報学の歴史 1 . 情報環境・社会が世の中に及ばす影響 , 情 とおりである。 7 . 図書館情報学分野のあらゆる成果とサービ 6 . 情報の研究 , 分析 , 解釈 式や媒体も多様である 理・検索・資料保存・修復が含まれ , 表現形 図書館情報学専門職教育プログラムのためのガイドライン スに対して情報通信技術を応用すること 8 . ナレッジマネジメント 9 . 情報機関の運営 10. 情報と図書館利用の成果に対する量的・質 的評価 37 り , 図書館情報学分野における研究や実践の理論 スやその他の教育的経験から構成されるべきであ 的や達成目標に基づいて , 統合された一連のコー 図書館情報学力リキュラムは , プログラムの目 達成目標 G3. カリキュラム 2012 ) 。 統性・革新・敬意・言語の問題がある (Lilley, となる価値観やテーマとしては , 伝統・保護・正 語で表現される ) 。一方 , 先住民に共通する中核 マをもっている ( 自身の文化構造から派生する言 community) は , 自分たち独自の価値観やテー る。そのため , それぞれの先住民社会 (indigenous 民にはそれぞれ共通点もあるが , 大きな違いもあ てさらに理解が深まるであろう。地域固有の先住 これらの特徴は , その価値観を知ることによっ が重要である点 うした人びとに合った調査方法を用いること る情報資源やサービスについて調べる際 , そ ・地域固有の先住民の図書館利用者が必要とす ことの影響 語が , 先住民の知識の枠組みに内在している ・地域固有の先住民の [ 思考 ] 過程・信条・ 構造についての理解 ・地域固有の先住民の知識の重要性 , 多様性 , ること。その範囲は以下を含む。 11. 地域固有の先住民の知識パラダイムを認識す ては , 以下の指針を示す。 番目の地域固有の先住民の知識パラダイムについ 文書の範囲を超えている。しかしコア要素 11 上記の要素すべてについて述べることは , この すること 11. 地域固有の先住民の知識パラダイムを認識
36 現代の図書館 Vol. 51 No. 1 ( 2013 ) レベルを対象とし , どちらも専門的な資格に繋が るものである。 前回 2000 年に大幅にガイドラインを改訂して 以来 , 図書館専門職は多くの課題に直面してき た。なかでも無視できないのは , インターネット や他のデジタル技術とともに生じた課題であり , そのすべてがわれわれの日常生活の多くにまで持 ち込まれている。それとともに , 一部のライプラ リー・スクールでは i-School の考え方が採用さ れるようになったが , これは , 同じ国の中で同種 のスクールが行っている , 伝統的ではあるが未だ 有効な図書館情報学教育のやり方と競合するよう になっている。また , 図書館情報学教育で必要と される多くの教育・知識基盤が , 他の専門職 , 例 えば , アーカイブズ学・博物館学・記録管理学の 領域を含むことが明らかになっている。さらに は , 教育プログラムの知識基盤において地域固有 の先住民問題 (indigenous matters) が欠落して きたことも指摘しておく必要がある。 IFLA 教育研修分科会 (Education and Training Section : SET) では , 常任委員会 (Standing Committee) に , ガイドラインの改訂に責任をも つ小委員会を任命した。そのメンバーは , Gillian Hallam 教授 , S. B. Ghosh 教授 , Kerry Smith 准 教授である。改訂版を以下に記す。 [ 執筆代表 ] Kerry Smith 准教授 : FALIA ( オーストラ リア図書館情報協会フェロー ) , IFLASET ガイドライ ン小委員会委員長 , 2012 年 7 月 達成目標 このガイドラインの目的は , 世界中の図書館情 報学教育機関 ( / ライプラリー・スクール ) に対 し , 一連の望ましい実践の指針を提供し , 教育プ ログラムを開始したり運営したりする際に利用さ れることである。このガイドラインは , 教育プロ グラムの見直しと改善だけでなく , 新しいプログ ラムを計画し , また比較するための実用的なツー ルとして利用できる枠組みを提供するものであ る。このガイドラインは , 図書館情報サービス部 門の新しい教育プログラムを計画する際にも用い られることが期待される。 よく知られるように , 国によっては順守される べき広範な教育基準があり , この分野の専門職団 体が , 特に認証評価を行うために , LIS スクール にとって守るべき教育ポリシーを定めている。 のガイドラインの原則 (principles) が , そのよ うな国レベルの認証評価要件の基盤となることを 期待したい。 ガイドライン GI . 大きな枠組み 達成目標 図書館情報学教育プログラムの中身と組織にお ける地位づけは , 国内の他の職業・専門教育プロ グラムと同等である必要がある。専門職を養成す るためには , 教育プログラムが学位授与機関に置 かれる必要があり , 高等教育 ( 大学 ) レベルが妥 当である。図書館情報学教育プログラムは , 他の 教育プログラムと同じ基準に基づいて , 博士レベ ルの研究課程を提供する資格をもつべきである。 原則 使命図書館情報学教育プログラムの使命は , 般公開された公式文書に明記する必要がある。 プログラムの使命においては , 政治的・社会 的・経済的・実務的視点でその目的が述べられ るべきだが , それは当該専門職における偏見の ない価値観と合致している必要がある。使命 は , サービス対象集団を同定し , 国ごとのニ ズに対応するものであり , 独立・自立した機関 でない限り , 親機関の価値観と一致すべきであ る。図書館情報学教育プログラムは , 関連する 専門職と学問分野について認識されている事柄 をはっきりと示す必要がある。 目的と達成目標図書館情報学教育プログラムで は , その目的 (goals) を明記し , 目的から派 生する具体的な達成目標 (objectives) を掲げ るべきである。その中で , プログラムの根本原 理・原則・方法 , 専門分野 , 提供される養成レ ベル , 教育・サービス・研究上の価値観 , 社会
0 図書館情報学専門職教育プログラムのためのガイドライン 35 0 訳 : 日本図書館協会国際交流事業委員会 国際図書館連盟 (IFLA) 教育研修分科会 ガイドライン 図書館情報学専門職教育プログラムのための このガイドラインは , 2012 年夏の国際図書館連 盟 (IFLA) 専門委員会 (ProfessionaI Committee) の会議で承認を得たものである。 目次 はじめに 目的 ガイドライン 0 GI. G2. G3. G4. G5. G6. G7. 参昭 大きな枠組み カリキュラムの要素 カリキュラム 教職員 学生 支援 教育資源と施設 このガイドラインは , 2000 年に行われた前回 の大幅な改訂に代わるものであり , 21 世紀に 入ってからの図書館情報サービスの発展を反映さ せ , ライプラリー・スクールのカリキュラムに取 り入れている。ガイドラインでは , 図書館情報学 教育プログラムにとって不可欠な目標の枠組みを 設定した。すなわち , 図書館情報学教育プログラ 0 ムに含めることが求められる有益なコア・カリ キュラムの要件 , 教育プログラムに関わる教員 , 職員 , 学生にとって必要な事柄 , そして , 情報資 源その他の資源によって教育プログラムを十分に 支える必要性である。 はじめに 図書館情報学教育プログラムには , 長く輝かし い歴史がある。過去の教育プログラムでは , 図書 館という建物の中における図書その他の資料のコ レクション形成が中心に据えられ , 図書館には , それらの資料の選択・収集・組織化・検索・貸出 を学んだ職員が配置されてきた。今日の図書館情 報学教育プログラムは , 物理的なコレクションや 建物の枠を超えてインターネットという仮想空間 に広がっている。今日では公共部門・民間部門・ 第三セクターを問わず , さまざまな状況下におけ る利用者への情報提供に力点が置かれているが , そこでの利用者とは必ずしも , 図書館の建物や図 書館環境に入ることができるとは限らず , あるい は入る意思をもっとも限らない。アーカイブズ・ 博物館・記録管理部門のパートナーとの協力がま すます顕著になっており , 共通の課題認識を教育 プログラムに含めることが適切である。教育プロ グラムは , [ 学部・ ] 実務レベル , 大学院・専門 レベル , 研究・博士レベルで提供されている。 こに示されるガイドラインは , 主に大学院と学部