現代の図書館 2013年 09月号

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( 3 ) 重要な活動の一覧 ここには , 前半の ( 3 ) で決定したこと , つまり事 業の目的を達成するために必要な活動の一覧と , それぞれの活動を実行に移すための方法 , 手段を 箇条書きや表形式でまとめる。日常の業務手順を そのまま書くのではなく , 前に述べたように , イ ンフラなどが使えない状況のもとで , どうすれば BCP の目的に沿った活動を実現できるのかを書 4 BCP 完成後の管理と活用 くのがポイントだ。 ーティングと同じ感覚で進められる。 対処すればよいかを討論するというもの。社内 を想定し , BCP を参照しながらその災害にどう 急点検訓練」など。机上の訓練は , 何か災害事例 上の二つがある。実地では「安否確認訓練」「緊 2 回のペースで行う。 BCP の訓練には実地と机 難誘導 , 救護訓練などは , これまでどおり年 1 , まず「防災訓練」は必須である。初期消火 , 避 ( 1 ) どんな訓練を行えばよいか ? の二つだ。 はここにある。基本的な BCP の訓練の要件は次 である。 BCP に「訓練」が不可欠とされる理由 実行力や行動力を身に付けた " 社員自身 " だから BCP という名の紙の東ではなく , BCP に即して 非常時に社員を守り , 事業を守ってくれるのは してきても , ほとんど役には立たない。なせなら 出しの奥で埃をかぶっている BCP を引っ張り出 な問題もある。大地震が起きたときだけ棚や引き また , " いざというとき動けない " という切実 つかめなかったといった話はよくあることだ。 サービス業者を呼ばうとしたら , 移転して所在が と。災害が発生した際 , BCP に規定した保守 ように定期的に見直しと更新を行う必要があるこ ーっは , BCP に記載した情報が古くならない き機能しないからである。 においても管理し , 活用しないと , いざというと することが目的ではない。次の二つの意味で日常 BCP は災害が起きたときだけ取り出して参照 BCP 策定のためのポイントと課題 155 ( 2 ) 年に何回 , いつ行えばよいか ? 一般に防災訓練などのスケジュールを組み立て るときは , 会社の年間行事一覧を作成してそこに 組み込むことが多い。 BCP の訓練も同じである。 例えば防災訓練は年 1 回 , 8 月下旬 ~ 9 月 1 週目 の防災週間に行うとしたら , BCP の訓練もそこ に含めるか , あるいは人事異動のある年度初め や , 社内研修の一環として組み込む方法もあるだ ろう。 5 図書館の被害の傾向と対策 こからは後半の説明に入る。ます東日本大震 災における被災地図書館の状況を考察してみた。 目的は図書館の被災に何か特徴的な傾向はあるの か , あるとすれば BCP 上どのようなことに配慮 すればよいかを探ることである。情報源は宮城県 図書館発行『宮城県図書館における東日本大震災 の被災・復旧の記録』の他 , 宮城県 , 岩手県 , 福 島県 , 茨城県の図書館の被害状況を参照した ( い すれも参考文献を参照 ) 。ただし , 大津波による 壊滅的被害を受けた三陸沿岸部の一部の図書館は 特異なケースとしてここには含めていない。各資 料からは次のようなことがわかった。 ( 1 ) 人的被害 全体としては負傷者がほとんど出ていない。こ の理由はいろいろあるだろう。推測の域を出ない が , 例えば壁据え付けの書架を除きフロア中央の 書架は背の低いものが多いので , 本の落下による ケガはなかった , 日頃の避難訓練等の成果が出 た , といったことである。総じて図書館というの はフロア全体がゆったりとしていて , 避難しやす く安全な施設であるという印象を裏付けるもので あった。 ( 2 ) 物的損害 建物のヒビ , 壁や天井ポードの剥離 , ガラス片 の飛散 , エレベータの停止 , 照明器具の外れ , 防 火シャッターの歪み等はどの事業者にも共通する 被災事象である。図書館特有の被災事象として は , 本の落下や書架の転倒が多く見られた。これ

156 現代の図書館 VOL51 No. 3 ( 2013 ) らについては , 図書館内では耐震 , 固定対策を , また , 書架メーカーなどに働きかけて落下や転倒 を低減する構造のものを開発するなどの工夫も必 要だろう。 OA 機器 , AV 機器 , 各種サーバー等 のコンピュータシステムは大きな被害はなかった ようだが , 重要なデータは必す館外にバックアッ プを持っことが重要である。民間企業では本社ー 工場 , 支店間で定期的にバックアップを相互交換 しているところもある。 ( 3 ) 初動 ~ 復旧 ~ 開館まで この部分は『宮城県図書館における東日本大震 災の被災・復旧の記録』のみの参照であるが , 発 災から館内放送での呼びかけ , 避難誘導 , 利用者 帰宅の措置 , 復旧要員の参集と復旧活動まで , お おむね指揮命令に沿って適切に行動したことが見 て取れる。他の多くの図書館もこれに準する活動 ができたとすれば , 日頃の職員への防災教育と訓 練の成果であると思われる。 開館の時期については , 震災から数日後に開館 した図書館もあれば , 頻発する余震や建物への深 刻な被害などで数カ月後に再開した図書館もあ る。これらは建物の新旧や地盤の強弱など , その 場所固有の要因がある。これらの復旧の早さや遅 さから , 一概に BCP として活かせる教訓を見出 すことはできないが , 日頃から本震 , 余震を含め た転倒・落下防止 , 固定対策がとられていれば , それだけ物的被害は軽微ですみ , 開館が早まった であろうことは間違いない。 6 災害時における図書館の使命と役割 災害時における図書館の使命と役割とは何だろ うか。これを考えるには , 「 3. BCP 策定のポイ ント」で述べたように , 災害時に BCP をどのよ うに役立てたいのか , その「目的」を明確にする ことが何より肝要である。こでは BCP の導入 意義の最も大きい業種として , サプライチェーン に組み込まれている製造業の「 BCP の目的」を 例に , これと比較するところからはじめよう。 ・製造業 X 社の BCP の目的 : 「大規模災害で 事業が停止しても , 早期に生産活動を再開 し , サプライチェーン全体および工ンドユー ザーへの影響を最小限にとどめること」 では図書館の場合はどうだろう。製造業 x 社 と同じように書くことはできるだろうか。 ・ Y 市立図書館の BCP の目的 : 「大規模災害で 業務が停止しても , 早期に本の貸出し業務を 再開し , 市民サービスへの影響を最小限にと どめること」 これは間違いではないが , BCP の目的を貸出 サービスの継続に限定してしまうと , 非常事態下 での活動の緊急性や優先性から考えて , 動機がや や希薄と言わざるを得ない。そこで , もう少し幅 広い観点から図書館の持つ次のような特長に着目 して考えてみよう。 ( 1 ) 図書館の公共サービス性 どんな市民も自分の必要としている情報や知識 を知る権利があるが , 図書館はそれを保障してく れるサービスである。これは「日常」→「災害 時」に読み換えても根本的な意義や目的は変わら ない。災害時における意義や目的はこの後の ( 3 ) と ( 4 ) で具体化される。 ( 2 ) 常に不特定多数の人が出入りしている場所で あること 図書館は日中多くの利用者が出入りする場所で ある。災害が発生したとき , 一般の利用者はもと より , 特に高齢者や児童 , 身体障害者などの災害 弱者の安全をいかに守り , 家族に送り届けるかが 大きな課題となる。 ( 3 ) 人々の心のよりどころであること 私たちは知識や情報を得ることで , 心の充足や 安らぎを得ることができる。とくに災害で財産を 失った人々に対する機会均等なサービスは不可欠 であるし , 災害のトラウマや避難所の単調な生活 から人々を解放するという意味でも , 図書サービ スの果たす役割は大きい。

( 4 ) 貴重な文化的財産である図書利用価値の大きさ 心のよりどころである図書館自体が被災して貴 重な情報資産を利用できなくなることは , 図書館 の存在意義がゆらぐことであり , BCP の目的が 果たせないことでもである。これは , 防災・減災 対策として事前に考えておかなければならない課 題である。 以上に述べたいくつかの見方や考え方を総合的 に勘案すると , 非常時における図書館の BCP は どうあるべきかが見えてくる。 7 図書館経営における BCP のあり方 ます , 前セクションで述べた図書館の使命と役 割の考え方をもとに , ( 筆者の個人的見解として ) BCP の目的をまとめると次のようになる。 ・すべての図書館利用者および職員の身の安全 を守ること。 ・心のよりどころとしての本の貸出しサービス を継続すること。 ・貴重な文化的財産である図書の保全と早期復 旧をはかること。 このような目的を持つ BCP は , 具体的 にはどのような活動要件を備えていればよいだろ こでは「初動対応のあり方」 , 「業務・ サービスの継続と復旧」の二つの側面から考えを 述べたい。なお , ひと口に図書館といっても , い わゆる「中央図書館」と呼ばれている中央組織と その傘下にある各地区の図書館 ( 地区図書館と呼 ぶことにする ) とでは , 活動内容について共通す る部分と異なる部分があると考えられる。以下で は , この点をふまえてそれぞれの BCP のあり方 を説明する。 ■初動対応のあり方 初動対応は人命の確保と二次災害拡大の防止が 最大の目的であるため , 中央・地区図書館とも採 るべき行動はおおむね共通と考えてよいと思う。 基本的な行動の流れは , 発災→身の安全確保→避 難誘導 ( 安全なエリアへの集合 ) →点呼・安否確 認→来館者への情報提供 ( 災害情報 , 公共交通機 BCP 策定のためのポイントと課題 157 関 , 道路等の周辺情報 ) →帰宅指示・・・・・・となるだ ろう。 こで留意したいのは最後の「帰宅指示」であ る。都市部では公共交通機関の途絶による人や車 の大混雑と大渋滞 , 山間部では土砂崩れやダム崩 壊 , 大洋沿岸部では大津波発生の危険などがある ため , 安易に帰宅を指示してはならない場合もあ る。市町村によっては図書館が帰宅困難者の一時 受入場所に指定されているところもあるので , 積 極的に災害時協定を結ぶなどして継続的な利用者 の安全確保につとめる必要がある。 また , 初動の際にどこまで適切かっスピーディ に動けるかは , 日常の訓練の取り組み度合いに比 例するといっても過言ではない。現行の防災訓練 だけでなく , さまざまな災害の種類や被害の状況 を想定した机上訓練 ( 机上討論 ) なども有効であ る。 ■業務・サービスの継続と復旧 ( 1 ) 中央・地区図書館共通の役割 帰宅困難者対応は初動の一環であったが , 避難 施設としての提供はその後を継ぐ重要な活動であ る ( 気仙沼市本吉図書館などの例 ) 。また , 被災 状況 , 復旧状況 , 安否不明者に関する情報は一過 性のものではないので , 中央図書館と各地区図書 館のネットワークを活かして , 継続的な情報収集 と発信を行えるようにしなければならない。 次に図書の巡回・出張貸出しサービスの充実で ある。本節冒頭では BCP の目的として「心のよ りどころとしての本の貸出しサービスを継続する こと」と述べた。日本図書館協会の活動記録に は , 都内の図書館職員が被災地を巡ってさまざま な支援を行ったことが記載されている。こうした 活動については , どこへ ( 避難所 , 学校 , 介護施 設 , 保育園等 ) , どんな移動手段で , どんな図書 を持参し , どのようなサービス ( 貸出し , 読み聞 かせ等 ) を提供するか , スタッフ ( 職員 , ボラン ティア等 ) は何名必要か , こうした活動を速やか に実行するためには事前にどんな情報が集まれば よいかといった段取りや手順をあらかじめ BCP に規定しておくのが望ましい。