ブランコのむこうで

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なと思っていたが、そうじゃなかった。椅子にかけて並んでいる、かなり大ぜいの人 が見えた。劇場みたいなところらしい。みんなこっちを見ている。どの人も驚きにあ ふれた目つきだった。 拍手の音が押しよせてくる。音楽のメロディ 1 がわきあがり、興奮を高めるような 短い演奏をした。そばには催眠術師がいた。ひげをはやし、えんび服を着て、頭にタ ハンを巻いてした。、 ゝ ' へつにインド人じゃないんだけど、ターバンをしてたほうが神 で秘的にみえていいんだろうな。そんなことから、これがショ 1 だとばくにもわかって こ むきた。この本人はお客のなかから舞台に呼びあげられ、術をかけられたらしかった。 の コ催眠術師がこっちをむいて説明していた。 乃「あなたは、さかだちがお上手ですねえ。わたしはあなたに術をかけて、少年時代に さかのばらせたのです。そこに花が咲いています、つみとってにおいをかぎなさいと 命じた。その次には、さかだちをやるように言った。また、目の前にいやなやつがい ます、やつつけなさい、あなたは強いから決して負けませんと暗示をかけた : ばくは、ははあと思った。その相手にされてしまったんだな。あの時、なぐられる 役の少年が、ばくのうしろに出現していたのかもしれない。たが、運の悪いことにば くがやられてしまったんだ。催眠術師はつづけてしゃべっていた。

「 : : : あなたはそいつをやつつけ、助けおこし、握手をした。それから、 いまの年齢 に戻って目がさめたのです。ご自分のなさったことを、おばえておいでですか : え、すこしも : 客席のほうでは、拍手とともに笑い声がおこっていた。きっとこの人、さっき暗示 をかけられ、子供つばい動作で舞台の上でさかだちをしたり、なぐりあう動作などを やったのだろうな。それを本人は、ぜんぜんおばえていないんだよ。 で「そうでしよう。目ざめる前に、そのことはすべて忘れるようにと、わたしが言った むからです。だから、あなたがさっき訪れた少年時代に関することは、すっかり消えて の コしまっているはずなのです」 方催眠術師がそう話しているのを聞き、ばくは思った。さっきの世界は消えちゃって いるのだな。それなら、ばくはどこへ戻るのだろう。戻るところがなくなってしまっ たんだ。大変なことになった。と考えたのだが、すぐにべつなことを思いついた。帰 るべき夢の国がなくなったということは、現実の世界に行く以外にないわけだ。 うまいことになったぞ。ばんざい。ばくはうれしくなった。やっと、もとへ戻れる んだ。さまよいつづけてきたこの変な長い旅も、これで終わりとなるんだ。さあ、目 をあけよう。そして、目をあけた :

息がとまるような思いだった。現実の世界じゃなかったんだ。あまりのことに、ば くは頭が一瞬ばんやりとした。 そこは無の世界だった。なんにもないんだ。地面もない。下になんにもないばかり か、上にももちろんなんにもない。前やうしろ、右や左、どこにもなんにもないんだ。 上下左右、どっちがそうなのかもきめようがない。遠くも近くもない。光もなければ、 やみ で 闇もない。明るすぎもせず暗すぎもしないという感じなんだ。 むそこに、ばくのからだだけがただよっているんだよ。重力もない。無重力の宇宙に コほうりだされたってところかな。でも、宇宙空間なら、太陽だの星だの星雲などを見 プることができるだろう。しかし、ここにはそんなものもないんだ。星や星雲など、宇 宙のなかにある物質をすべて光というエネルギーに変えて分散させ、平均してしまう とこんなになるんじゃないかなと、ばくはふと思った。 宇宙空間を飛ぶ一人乗りの宇宙船の話などを読むと、すごくさびしいだろうなと想 像しちゃうが、ここよりはまだいいはずだ。そこには星々があり、出発した星があり、 めざすべき星もある。連想をひきおこしてくれる、なにかがある。 ここにはなんにもないんだ。色もなく、形もなく、音もなく、においもない。完全 165