法学セミナー2016年03月号

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049 析」を行いながら会社法立法に関する議論を深めて いくような研究を今後進めていくことに対して、多 少なりとも貢献することを試みたい 8 ) 日米構造協議ー「アメリカによる 2 日本の構造的障害除去プログラム」。 日米構造協議は、 1989 年 7 月、宇野宗佑首相と ジョージ・ H ・ W ブッシュ大統領がアルシュ・サミ ットの際に行った日米首脳会議の結果、日米間に存 在する貿易不均衡の原因となる構造的な問題の解決 に向けた次官級の協議を開始することに合意したこ とから始まった。 1989 年 9 月から 1990 年 6 月まで に 5 回の作業グループ全体会合が開催され、 1990 年 6 月 28 日に「日米構造問題協議共同報告」が両 国の 3 省庁 ( 日本側の外務省・大蔵省・通産省、米国 側の国務省・財務省・米国通商代表部〔 USTR 〕 ) の次 官級幹部から海部俊樹首相・ブッシュ大統領に提出 された 10 ) 1990 年 4 月には中間報告がとりまとめられ、日 本側では、それに盛られた日本側措置について閣議 ヾ 11 ) 了解がなされているか この中間報告は、米国側 が議会対策上望ましいと考えたために作ったもので あな 2 。また、同年 6 月に最終報告に盛られた日本 側措置について、「今後政府は、これらの措置を着 実に実施してゆくものとする」旨の閣議了解がなさ れている ( 米国側については不知广 日米構造協議においては、両国がそれぞれ持って いる貿易不均衡の原因となる構造的な問題点を指摘 し合い、その改善策を講じることを約東するととも に、その成果を報告し合う形で行うこととされてい る 14 ) 。しかし、これは建前で、外務事務次官・駐米 大使を歴任した元外交官は、次のように述べている。 国際政治と会社法制改革 「現実には米国側の障壁として日本側カ醍起した 諸問題・・・・・・の取扱いは形式的にすぎず、多くは単 に聞き流され、実質は八割、あるいは九割方米国 が日本側の障壁と見倣す事項を取り上げて一方的 要求をつきつけ、最終的に一定の約東をとりつけ たものであった。」 15 ) このことは、第 1 回目のフォローアップ会合 ( 日 米構造協議の最終合意内容の実施状況点検のため、日米 双方の次官クラスが集まり、 1 年目は 3 回、その後は年 2 回開くこととされていた会合 ) の様子からも垣間見 ることができる 16 。第 1 回目の会合は、 1990 年 10 月 にポストンで開催されたようであるが、全体として は日本側の進捗状況についてアメリカ側の質問が集 中する形となり、特に、系列取引の問題については、 アメリカ側は、日本政府側の対応に対して「もう少 し真面目に取り組んでもらいたい」と厳しい調子で 具体案の早期実現を迫ったようである。最終合意か らわずか 4 ヶ月しかたっていないにもかかわらず、 日本側はアメリカ側から具体的な成果の実現を求め られる状況であったことがうかがえる。 また、「日米構造協議」のアメリカ側の呼称は Structural lmpediment lnitiative であるが、先述 の外務事務次官経験者は、「内容もこの文字どおり 『構造的障壁撤去策』であって、『構造協調とは日 本側の意図的誤訳である」 1 のとしている。同趣旨の ことを指摘する社会経済学者の記述もあるので、か いつまんで引用しておくと、以下のとおりである。 「アメリカの意図ははっきりとしている。日本国 内の構造的な障害に関してアメリカ政府がイニシ 8 ) 前掲の「会社法の選択』は、本文に述べたような研究の出発点と位置づけられ、岩原紳作の推薦の辞が寄せ られている ( 同書 i-ii 頁 )。 9 ) 「」の用語は、佐伯啓思『従属国家論日米戦後史の欺瞞』 ( PHP 研究所、 2015 年 ) 158 頁から借用。 10 ) 道垣内正人「日米構造問題協議の法的位置づけ」商事法務 1258 号 ( 1991 年 ) 25 頁以下、 25-26 頁参照。 (1) 道垣内・前掲注 10 ) 26 頁。 12 ) 村田良平「村田良平回想録 ( 下巻 ) ーー祖国の再生を次世代に託して』 ( ミネルヴァ書房、 2008 年 ) 97 頁。 13 ) 道垣内・前掲注 10 ) 26 頁参昭 14 ) 萌「日米構造問題協議と会社法の見直し一一日米構造問題協議フォロー・アップ会合」商事法務 1296 号 ( 1992 年 ) 44 頁以下、 44 頁。 15 ) 村田・前掲注 12 ) 96 頁から引用。 16 ) 第 1 回目のフォローアップ会合については、大某「日米構造協議フォローアップ会合の焦点」商事法務 1231 号 ( 1990 年 ) 52 頁を参照した。 17 ) 村田・前掲注 12 ) 72 頁から引用。

050 法学セミナー 2016 / 03 / no. 734 アテイプをとって変えてゆくといっている。アメ リカがイニシアテイプをとり、次に日本政府がそ れを受けて構造を変えてゆく・・ それを日本側は『日米構造協と訳した。 ・・・お互い対等な立場でやっているように見せて いる・・ でも実際はそうじゃない。アメリカ側から見れ ば、はっきりと、アメリカ主導によって日本の構 造的障害を取り除くといっている・・ 全体の構図はアメリカが決めている。その中に 日本はすつほりと入ってしまっている。にもかか わらず、日本の中では、日米の対等な交渉であり、 協議だということになっている。こういう非対称 的な二重構造になっている・・ なお、先述の外務省国際情報局長経験者も、アメ リカは、日米構造協議や現在の TPP などの日米経 済交渉において、日本の社会システムそのものを変 更させ、米国企業が利益を得られるようにするとい う明確な目的を持っていることを述べている 19 ) とりあえず、日米構造協議は、英文の呼称が示唆 するとおり、「アメリカによる日本の構造的障害除 去プログラム」であった、と見ておいてよさそうで ある。 3 日米構造協議と平成 5 年商法改正 日米構造協議において、アメリカ側は、大きく 6 つ の分野で 200 項目以上に及ぶ構造障壁の具体的改善 を要求してきたようである。 6 分野は、①貯蓄・投 資パターン、②土地利用、①流通、 @腓他的取引慣 行、⑤系列関係、⑥価格メカニズムである加。この うち、系列関係が会社法制の見直しに関係している。 1991 年 5 月に開催された第 3 回フォローアップ 会合では、第一回年次報告書がとりまとめられた。 18 ) 佐伯・前掲注 9 ) 157-158 頁から引用。 19 ) 孫崎・前掲注 2 ) 324 頁。 その中において、日本政府は、「系列関係をより開放 的かっ透明なものとするよう所要の措置を講ずると の意図を再確認」し、「近い将来外国企業による我が 国市場への参入が円滑に行われるよう各般の施策を 実施する」として、法制審議会がディスクロージャ ー制度・株主の権利の拡充・合併の弾力化の観点か ら「会社法の見直しに関する日米構造問題協議の最 終報告における合意を踏まえ、会社法の見直し作業 を開始している」ことを説明するとともに、改正法 を速やかに成立させるべく努力するとしている これに対し、アメリカ側は、日本側の上記の再確 認を歓迎しつつも、会社法の見直し作業が始まった ばかりであるなどコミットメントが弱いことを憂慮 するコメントをしている。また、日本政府が、「独 立した社外重役が役員会及ひ監査委員会に存在する ことの必要性」等の事項について考慮することを希 望するとして、要望をいくつか追加している 22 こうした中、当時の法務省民事局参事官は、次の ような趣旨のことを述べている。アメリカから社外 取締役制度の導入を図れという要請があるが、アメ リカには監査役制度がなく、取締役会の中の監査委 員会が日本の監査役に相当する機関である。そして、 監査委員会の取締役はほとんどの場合社外者である という実態があるので、日本にも社外取締役制度の 導入を図るよう要請しているのであり、そうであれ ば、社外監査役という形で仮に手当をしたとしても、 日米構造協議の関係ではアメリカの要請にかなりの 程度応ずることにはなる、と 23 1992 年 7 月に行われた第二回年次報告書作成の ためのフォローアップ会合では、日本側が、米国側 が主張するような社外取締役による監査委員会の設 置という考えを強く拒絶したようで、結局、報告書 において取りあげられることはなかった。その一方 で、法制審議会では、監査役会制度・社外監査役制 度の導入の検討が進められていた 24 ) 20 ) 村田・前掲注 12 ) 97-98 頁。東風「米国の構造改善要求の功罪」商事法務 1212 号 ( 1990 年 ) 51 頁も参昭 (1) 資料「日米構造問題協議フォローアップ・第一回年次報告 ( 抄録 ) ( 平成 3 年 5 月 22 日 ) 」商事法務 1251 号 ( 1991 年 ) 30 頁以下、 34 頁・ 35 頁参照。冂は同頁から引用。 22 ) ニュース「日米構造問題協議フォローアップ会合、第一回年次報告をまとめる米国側会社法改正等を強く 要望」商事法務 1251 号 ( 1991 年 ) 51 頁以下、 52 頁参照。冂は同頁から引用。 23 ) 河本ほか・前掲注 5 ) 23-24 頁〔大谷禎男発言〕参照。 24 ) 萌・前掲注 14 ) 45 頁胆 : ク。い、 0

051 以上のような経緯で、 1993 年に改正法が成立す る。この平成 5 年商法改正においては、大会社につ いては、監査役を 3 人以上とし、社外監査役を強制 するとともに、監査役会が法制化された。改正法が 成立する直前に、当時の法務省民事局参事官は、「社 外監査役の問題は、 ・・・日米構造問題協議の中で、 アメリカ側から社外取締役という制度を日本でも採 用したらどうか、上場基準として社外取締役によっ て構成される監査委員会というものを上場会社に置 くべきであるというのがアメリカ側からの一つの要 求ですけれども、それはちょっとできませんと、取 締役会の中に監査役とはまた別の監査機能を担うよ うなものを上場基準とはいえ置くようなことは日本 の法制にはなじまないのではないか。日本の法制の 中には監査役という立派な制度があって、これが機 能するようになっていますというような対応をした わけなのです」と発言していた 25 ) 。ところが、平成 5 年商法改正法の解説において、同参事官は、同改 正で取りあげられた監査役制度その他の改正事項に ついて、いずれも「わが国固有の契機に基づく改正 事項である」とし、「今回の改正事項の一部について、 いわゆる外圧によるものと言挙げする向きがある が、それは当たらない」と記述している 26 。このコ メントには引用が付されていないので、推測するし かないが、おそらく、同参事官の解説に先立ち、改 正要綱の解説を執筆した会社法研究者が、監査役制 度の改正の問題カ陬り上げられるに至った直接の契 機として外圧をあげ、日米構造協議カ蹴外監査役制 度導入につながっていることは否定し得ない旨を述 べていたこと 27 ) を念頭に置いているものと思われ る。同参事官のコメントは不可解なものであり、そ のことは、平成 5 年商法改正の注釈書において、「わ が国固有の契機に基づく改正事項である」旨を強調 している同参事官が、別の箇所で上記のような発言 国際政治と会社法制改革 をしていることについて、要綱解説者とは別の会社 法研究者が注意を促していることにも現れてい る 28 。このように、同参事官のコメントは理解に苦 しむのであるが、その理解の鍵は、 2 で見た意図的 誤訳や社会経済学者のコメントにあるのかもしれな なお、日本側がアメリカからの要望に対して監査 役制度強化のための法改正で対応した理由について は、アメリカからの要望に対して高度の政治的課題 として応える必要があり、他方で、経営の自立性を 確保したい経済界の要望を踏まえると取締役・取締 役会制度改革を回避する必要があったからである、 という見方がある四 4 日米構造協議に対する日本側の反応 日米構造協議において、系列関係との絡みで会社 法上の制度の改善策が要求されたことをどう見るか について、ある会社法研究者は、当時開催された座 談会において、次のように述べている。 「日本の生産なり流通なりのマーケットに入り込 もうとしたところ、大きな有力メーカーに部品を 供給しようとしても入り込めない。製品を持って 来て売ろうとしても流通が系列化されていて入れ ない。それならすでにその系列の中に位置づけら れている日本の企業に参加して、実質的に日本の 市場に入り込もうということになり、そこでこの 会社法の問題が出てくるのでしようね。 これは、アメリカが問題視する系列関係と会社法 の問題をあえて関係づけるとすれば、このように理 解できるということである。実際、同じ座談会に参 加していた別の会社法研究者は、系列関係と会社法 25 ) 江頭憲治郎ほか ( 座談会 ) 「監査役制度改正の方向と論点」商事法務 1309 号 ( 1993 年 ) 10 頁以下、 23 頁から引 用〔吉戒修一発言〕。 26 ) 吉戒修一「平成五年商法改正法の解説〔 1 〕」商事法務 1324 号 ( 1993 年 ) 9 頁以下、 10-11 頁。「」は同頁から 引用。 27 ) 前田庸「平成五年商法等の改正要綱について〔上〕」商事法務 1315 号 ( 1993 年 ) 40 頁以下、 40-41 頁昭 : 彡い、 0 28 ) 上柳克郎 = 鴻常夫 = 竹内昭夫編「新版注釈会社法第 2 補巻 ( 平成 5 年改正 ) 』 ( 商事法務、 1996 年 ) 5 頁〔上 29 ) 松井・前掲注 7 ) 502 頁。 柳克郎〕参照。 30 ) 河本一郎ほか ( 座談会 ) 「「系列」をめぐる法律問題〔上〕 1258 号 ( 1991 年 ) 4 頁以下、 19 頁〔龍田節発言〕から引用。 日米構造問題協議の背景を探る」商事法務