1 アクセント習得法則 東京アクセントの法則について 東京で日常用いられる語は , 何万とある。その語をひとりひとりの東京人は , 同 じようなアクセントで発音している。これは決していちいち周囲の人のアクセント を耳に聞き , それを覚えてゆくのではない。それが証拠には , 新しい単語ができて も , 東京人である限り , 大体同じアクセントで発音される。これはなぜかという と , 前もって頭の中にアクセントの法則のようなものを心得ていて , その法則にあ わせて発音しているからである。その法則が各個人を通じて同じであるから , 大体 同じアクセントになる。 実は , この本文に掲げたすべての単語のアクセントも同様で , 基本的な幾つかの 語のアクセントをよく覚え , あとはその語のアクセントとアクセント法則によっ て , 他の語のアクセントも類推しているのである。 ーこにおいて , 東京アクセント をマスターするための近道は , こういうことになる。 “基本的な単語のアクセントを覚えること”“東京アクセントの法則を覚えるこど アクセントの法則は , 例えば , 名詞であるとか , 動詞であるとかいう品詞によって 異なり , また , その語が複合語であるとか , 転成語であるとか , 畳語・省略語であると かいう語のでき方によって異なる。なおまた , その語が和語とか , 漢語とか , 外来語と かの語の戸籍によっても異なるし , その語の拍数が何拍であるとかによっても違う。 東京アクセントは , 他の方言アクセントにくらべて法則が比較的はっきりしてい るので , それらの法則を徐徐に習得してゆけば , 個個の単語のアクセントを丸暗記 するよりもずっと楽に , 東京アクセントをものにすることができる。 こでは , そ れら東京アクセントの法則をグループ別に 0 から 99 までの項に収め , 本文から各 の単語に関係する番号を参照させた。 なお , アクセントの法則を考える場合 , 語は次のように分類される。 単純語ーーー複合していない語で , それ以上小さな語に分けられないようなもの。 〔例〕葉 , 五 , 秋 , 草 , 七 , 桜 , クリーム , 上がる , 晴れる , 青い 複合の度合が最も強く , もとの語のアクセントの影響があま 癒合語 りみられないようなもの。〔例〕青葉 , 七くさ , 秋晴れ 複合の度合が中間で , もとの語のアクセントによって定まる 結合語 もの。〔例〕葉桜 , 七草がゆ , 雨上がり , 七五調 , アイスク リーム , 晴れ上がる , 青白い , 物すごい 複合の度合が最も弱く , 前部の語のアクセントを生かす傾向 接合語 があるもの。〔例〕木の葉 , 青い鳥 , 我が子 , 雨風 , 七つ八 つ , 物言う , 見て取る 主として和語の単純語が , 形を変えて , 他の品詞及び他の用法に転じ 転成語 るもの。もとの語のアクセントによって定まるものが多い。 〔例〕暮 , 光 , 鮨の , 見える , 細める , 暖かい , 喜ばしい , 黄色い 前部の語と ( 中部の語 ) 後部の語が複合せず , 息の切れめがあって , それ 分離語 ぞれのアクセントをそのまま生かすもの。〔例〕秋の七草 , 三十六歌仙 複合語
東京アクセントの法則について 1 あとがき・・・ 東京アクセントの習得法則・・・ 音韻とアクセントとの関係の法則・・・・・・ 4 , 5 , 6 アクセント習得法則目次・・・ ・・・ 89 ・・・ 7 ~ 88