法学セミナー 2017年1月号

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特集 最高裁判決 2016 ーー 弁護士が語る 049 《判決要旨》最高裁第三小法廷 2016 ・ 6 ・ 7 決定 最高裁判決は上告棄却決定であったため、以下の地 裁および控訴審判決の内容で無罪が確定している。 ① 3 号営業規制 ( 注 : ダンス営業規制 ) の目的に ついて ( 控訴審判決 ) 3 号営業規制は、性風俗秩序の維持と少年の健全育成 が主な目的であり、規制薬物蔓延や粗暴事案発生の防 止、騒音や振動による周辺環境悪化の防止は、目的に 含まれるが副次的に考慮されるにとどまる。 ② 3 号営業規制の対象について ( 控訴審判決 ) ダンス営業の立法当時の状況やその後の変化からし て、 3 号営業の対象は、立法当時から想定されていた、 男女が組になりかっ身体を接触させて踊るのが通常の 形態とされているダンスを、設備を設けてさせて飲食 をさせる営業を指す。 ③ NOON の 3 号営業該当性について ( 控訴審判決 ) NOON では②のようなダンスをさせていたことは 認定できないから、 NOON の営業は 3 号営業には該 当しない。 同時に、この逮捕 ~ 起訴が憲法上の権利侵害とし て認められるかどうかは、裁判所が社会通念をどう 評価するかにかかわるとも考えた。そうであれば、 NOON を支援する世論、ダンス営業規制に疑問を持 っ世論を圧倒的なものにして、社会通念自体を変え てしまえばよいのではないか。そう考えて、裁判支 援組織である「 NOON TRIAL SUPPORT 」の立ち 上げを援助した。彼らは、 WEB 上での広報活動や、 支援のためのクラブイベント開催など、金光氏及び 弁護団と一体となって NOON 訴訟を支え続けてく れた 3 ) 。また、同様にダンス営業規制削除などを求 める署名運動である Let's DANCE 運動にも、金光 氏らと共に参加し、法改正運動を強めていくことと [ 3 ] 弁護方針の大枠 弁護方針の出発点は、 NOON をはじめとするクラ プでは、性風俗秩序を侵害するようないかがわしい ダンス営業は行われておらず、これを規制するダン ス規制法は憲法違反である、というものである。 金光氏は、 20 余年前に DOWN を設立して以後、 3 号営業の許可を取得していなかったのは、 NOON ④憲法適合性について ( 地裁判決 ) ア憲法 22 条 1 項について 的見解の通り、見通しは明るくなかった。ただ、ダ 争った例もほとんどなく、すでに述べた周りの否定 罪に問われた事件で無罪を勝ち取った例はおろか、 もっとも、これまでダンス営業規制の無許可営業 めさせる。 の判断を引き出す。さらに、公訴権濫用の主張も認 されていなかったとして、構成要件該当性を欠くと に該当せす、摘発当日も風営法上の「ダンス」はな NOON の営業は風営法にいう「ダンスさせる営業」 らの点を主張立証し、法令違憲を勝ち取る。加えて、 ス営業規制は適正手続違反 ( 同 31 条 ) である。これ 22 条 1 項 ) を侵害する。また、不明確な基準のダン であり、表現の自由 ( 憲法 21 条 1 項 ) 、職業の自由 ( 同 秩序の保持を目的とするダンス営業規制は時代遅れ むこととなった。すなわち、現代においては性風俗 したがって、訴訟には、次のような弁護方針で臨 とに対して納得がいかなかったことにあった。 俗営業」であるとして許可を得なければならないこ って経営してきた NOON が、何かいかがわしい「風 った最大の理由は、文化の発信基地として尊厳をも せなかったのもあるが、。 もっとも、許可を得なか では構造・設備基準 ( これも根拠薄弱だが ) を満た 1 項、 31 条に違反しない。 ても判断することは可能であるから、 3 号営業は 21 条 が不明確であるともいうことはできず、一般人にとっ 規制対象営業は、過度に広範であるとも、規制対象 ウ 憲法 21 条 1 項、 31 条について い限度であり、 21 条 1 項に違反しない ものでないことなどから制約の程度は必要やむを得な 制約する必要性が高く、表現行為の規制を目的とする の自由を制約しうるが、目的達成のために営業行為を 3 号営業規制は、それを営もうとする者や客の表現 イ憲法 21 条 1 項について なし、。 規制によっては目的達成ができず、 22 条 1 項に違反し を保護するために必要かっ合理的な措置であり、事後 由を制約するが、許可制であっても重要な公共の利益 3 号営業規制は、それを営もうとする者の職業の自

050 ンス営業規制削除を求める Let's DANCE 運動との 連動の中で、少しでもよりよい結果を残すことを K 氏と合意し、獲得目標とした。 [ 4 ] 訴訟活動の展開 (a) 第一審の訴訟活動 第一審の訴訟手続は、 K 氏及び弁護団が要求した 結果、公判前整理手続に付され、徹底した証拠開示 と求釈明を行った。整理手続は 2013 ( 平成 25 ) 年 9 月 30 日まで合計 14 回に及んだ。 公判手続きは、 2013 ( 平成 25 ) 年 10 月 1 日から開 始した 4 ) 。第 1 回公判では、パワーポイントを用い た冒頭陳述 ( すべて暗唱 ! ) や、証拠調べを行った。 特に証拠調べでは、摘発された際に DJ が流してい た音楽を CD - R で証拠請求し、実際に法廷で 14 分以 上にわたり再生した。摘発当時の NOON がいかにピ ースな状況だったかを裁判所に分かってもらえたと じ、 ) 0 その続行される公判のなかで、専門家証人や当日 の来店客、捜査担当警察官など総勢 18 名の証人尋問 を行った。専門家証人としては、弁護側が多数申請 した証人のなかから採用された新井誠先生 ( 広島大 学教授 ) 、高山佳奈子先生 ( 京都大学教授 ) 、永井良 和先生 ( 関西大学教授 ) の 3 名からそれぞれ意見書 5 をいただき証拠として提出し、公判で証言をいただ いた 証人尋問においては、それぞれに見せ場があった が、なかでも捜査担当警察官らに対する尋問が潮目 を変えたと思う。証言などによれば、彼らは摘発の 1 年以上も前から NOON に対して内偵活動を行っ ていたようである。しかし、摘発前の内偵や摘発当 日も潜入してから 2 時間程度は、ダンス営業規制に いう「ダンス」はなされていないとして摘発に踏み 切ることはなかった。そこで、いかなるダンスであ れば摘発可能なのかについて質問が及ぶと、ある者 は府警本部から取り寄せた表 ( ステップは〇、腰を くねらすは△、リズムをとるだけの上下運動は x など とあるらしい ) に基づき判断した、捜査官同士で話 し合ってステップ幅が 1 メートル幅くらい ( ! ) な ら「ダンス」に当たると考えたなどと証言し、ある 者は表を参考にせす男女の享楽的雰囲気が醸成して いるか等を自分たちで判断したと証言、別の者は音 楽に合わせて楽しくリズムに乗って踊っている状況 があればよいなどと証言した。結局のところ、「ダ ンス」の基準が捜査官ですら一致しておらす、さら には「ダンス」に該当するかの判断が極めて主観的 恣意的に行われていることが明らかとなった。その 他、男女間の享楽的雰囲気が問題といいながら男女 の人数を数えていないなど、捜査が杜撰であること が多くの点で明らかとなった。 結審では、主任弁護人の水谷恭史弁護士がやはり パワーポイントを使って圧巻の弁論 ( やはり暗唱 ! ) を行い、公判を締めくくった。 公判を通じて、ダンス営業規制が憲法に反し、時 代遅れであること、「ダンス」の基準が曖味で杜撰 な取り締まりが行われたこと、なにより NOON が芸 術的文化発信の拠点であったことなどが明らかにで きたと思う。 (b) 第一審判決 この訴訟活動の結果、第一審では無罪の判決が言 い渡された ( 大阪地裁判平 26 ・ 4 ・ 25 ) 6 ) 。判決は、 合憲限定解釈ないし法令限定解釈に基づき、ダンス 営業規制の合憲性を肯定したうえで、ダンス営業の 概念を絞り込み、 NOON の営業はこれに当たらない とした。 判決は、構成要件該当性を否定されて当然ながら も無罪判決という判断がなされたこと、ダンス営業 規制を表現の自由に対する制約の問題として捉えた ことは評価できる。これは、何よりも事実に基づき、 法令違憲の主張・立証を十分に行う訴訟活動を実現 できた結果であると考える。他方、ダンス営業規制 の合憲判断に対しては、同規制が表現の自由、職業 の自由に対する不当な制約であること、適正手続違 反であることを認めて、法令違憲の判断をなすべき であったと評価している。 (c) 第二審の訴訟活動 第一審判決に対して検察官が控訴した結果、控訴 審で審理が続行され、 2 回の公判が開かれた。 K 氏 および弁護団は、検察官控訴趣意書の不合理性を答 弁書で明らかにし、さらに主張を補充し、立証を追 加した。当然ながら、控訴審が法令違憲の判断をな すべきことも指摘している。そして、上記新井誠先 生、髙山佳奈子先生から補充意見書を頂戴し、証拠 として提出した。 (d) 第二審判決 第二審でも、無罪判決が維持された ( 控訴棄却 ) ( 大 阪高判平 27 ・ 1 ・ (1) 7 ) 。判決は、基本的には原審を 踏襲しながら、ダンス営業規制が事前許可制である

る 五ロ = = ロ 士 護 弁 6 0 2 決 判 高 最 集 ことに着目してダンス営業の概念を変更するなどし 判決が、無罪判決という判断、表現の自由に対す る制約の問題として捉えていることは評価できる が、法令違憲の宣告をなすべきであったという点は 第一審同様である。 (e) 上告審での活動と判決 第二審判決に対して検察官が上告した結果、最高 裁に係属した。金光氏および弁護団は、検察官上告 趣意に対する意見書の提出、これまでいただいてお きながら書証として認められなかった専門家証人の 意見書を全て提出するなどして、訴訟活動を展開し NOON 営業再開を喜ぶ金光正年氏 そして、上告審でも、無罪判決が維持された ( 上 NOON 訴訟における無罪獲得の要因は、金光氏と 告棄却 ) ( 最高裁平 28 ・ 6 ・ 7 ) 。判決内容は、検察官 弁護団の法廷内での刑事裁判としての徹底した闘い 上告趣意における上告理由を否定する簡潔な内容で に加え、このような法改正運動による世論の高まり あった。 の後押しを受けた側面もあった。各方面から一定の この最高裁判決により、ようやく金光氏が被告人 根拠をもってダンス営業規制が時代遅れであり改正 の地位から解放された。 の必要があるというメッセージが発信され、世の中 4 ツ ' 営業規制削除を含む風営法改正に。いて を行き交ったことは、我々の法廷での主張を事実上 裏付ける役割を果たしたといえる。 [ 1 ] 風営法改正の経緯と意味 また、 NOON 訴訟における無罪判決 ( 第一審判決 ) NOON 訴訟における無罪判決は、 Let's DANCE は、もはやダンス営業規制を改正しなければ行政の をはじめとするダンス営業規制改正運動と無関係で 現場に大きな混乱が生じるというインパクトを与 はない 8 ) え、ダンス営業規制削除の閣議決定、そして法改正 2012 ( 平成 24 ) 年 5 月に開始されたダンス営業規 へと大きくアシストできたと評価できよう。 制削除を求める署名活動によって 16 万余の署名が集 その意味で、 NOON 訴訟と法改正運動とは両輪で められ、国に提出された。ダンス営業規制に関する あり、いすれが欠けても共に実現できなかった。 一般向け著書の刊行 9 や、 NOON を題材にしたドキ ュメンタリー映画 ( 「 SAVE THE CLUB NOON 」 ) の [ 2 ] 改正法の問題点 制作・上映 10 ) がなされ、また各種業界団体が設立さ 改正法では、風俗営業としてのダンス営業規制は れた。多くのマスコミもこれを取り上げ、報道がな 削除された。 20 年近くの間、ペアダンス業界が規制 された。 削除を求め、近年にクラブ業界も運動に加わって実 このような動きの中で、 2013 ( 平成 25 ) 年 5 月 20 現できたものである。その改正の歴史的意味は大き 日ダンス文化推進議員連盟が発足し、同月には政府 の規制改革会議が開始されて、それぞれダンス営業 しかし、問題も残っている。改正法は、深夜営業 規制について検討がなされた。その後、 2014 ( 平成 を可能とすることと引き換えに、特定遊興飲食店営 26 ) 年 7 月より警察庁の有識者会議「風俗行政研究 業という許可制の規制を新たに設定した。ダンス営 会」が開催され、同年 9 月にはダンス営業規制撤廃 業は、この「遊興」に包摂されるという。そしてそ をも内容とする報告書が提出された。その結果、 の特定遊興飲食店営業規制の内容のほとんどは、ダ 2015 ( 平成 27 ) 年 6 月にダンス営業規制撤廃を内容 ンス営業規制が属していた風俗営業の規制条文を準 とする同改正が成立した。そして、 2016 ( 平成 28 ) 年 6 月より施行され、ダンス営業規制の文言はなく 用するものとなっている。その結果、いわゆるクラ プ営業に対する規制は、深夜営業以外、従前のダン なった