た三人の化学者が、この隕石中から、メタン系の炭化水素化合物を発見し 読者ならば、まず例外なく地球外の生命の可能性を認める立場に立っ て、これを、宇宙のどこかに、生命の存在する証拠かもしれないとして発表 だろうが、それをノン読者に認めさせようとすると、これまた例外な く、ひどく難渋した経験を持っているはずである。なぜなら、彼 ( または彼し、非常なセンセ 1 ションをまきおこした。つまり、生命伝播説を裏づける 女 ) が生命発生のメカニズムを、いかに詳細刻明に説明し、それゆえ宇宙の手がかりかもしれないというのである。 これに対し生物学や生化学界は否定的で、その炭化水素は、オルゲイユ隕 他の天体に生命が存在するはずだと力説したところで、それは飽くまでも確 石が大気圏に突入して以後に附着したものにちがいない、と主張し、証拠と 率論的な推論の域を出ずーー・・したがって説得力に欠けるからである。 ーリン博士らは、隕石が宇宙空間を飛 しては認めなかった。またソ連のオパ ところが最近、そうした読者に強力な武器を与えるトビックが伝えら れた。宇宙に生命の可能性を裏づける有力な証拠が、去年オーストラリアに 行中に太陽放射線にたたかれて偶然発生するという可能性もありうるとし というセンセ—ショナルな発表を 落下した隕石によってもたらされた て、生命伝播説をしりそけた。 だがもちろん、今度のポナンベルマ博士らの研究は、これらの事実を踏ま アメリカ航空宇宙局の科学者が行なったのである。 えた慎重なもので、彼自身発表に際して「アミノ酸はビーカーに指紋をつけ のエ 1 ムズ研究センタ 1 の地球外生物学研究局化学進化研究部長 彼よ去年水を入れてかきまわしただけでも検出できる」といって、分析中に地球上の でセイロン出身のシリル・ポナン。ヘルマ博士がその当の人物だが、 , し アミノ酸が混入するおそれが十分にあることを認め、にもかかわらずこれが 九月二十八日オーストラリアのヴィクトリア州マーチソン附近に落ちた隕石 をガス・クロマトグラフィ 1 をはじめとする種々の慎重な化学分析にかけた地球外のものでありうる理由として、つぎのような幾つかの分析結果を示し 結果、その表面から、他の有機分子とともに、十六種類のアミノ酸と多くの 一、発見された十六種のアミノ酸のうち五種類は、地球上の生体細胞内で 炭化水素を発見した。 アミノ酸は、いうまでもなく地球上のあらゆる生体細胞のもとである蛋白発見される二十種類のアミノ酸と同型だが、他の十一種類は地球上の生体内 では機能を果さないものだった。 質の構成物質であり、また炭化水素は、通常生体のなかで発生する物質であ 二、地球上のアミ酸は、すべて左旋回性ーー・・結品体にしたとき、光をあて る。こうした生命の母体となる物質が宇宙空間から飛来した隕石で発見され ると、かすかに左に光を旋回させる性質ーーだが、この隕石中から発見され たということはーーーっまり、宇宙空間にも、生命が存在するかもしれないと たアミノ酸は、左旋回性のものと右旋回性のものとが、ちょうど半々に混っ いう証拠になるわけだ・ : ていた。 隕石にアミノ酸や炭化水素が発見されたのは今度がはじめてではない。な 三、炭化水素を分析した結果、地球上のものよりも、炭素片の含有量がは かには、原始的有機物の化石そっくりのものや、生きたパクテリアが発見さ るかに多かった。 れたと伝えられた場合もある。たとえば読者ならば、すぐに、オルゲイ こうした理由からポナンベルマ博士は、この隕石中のアミノ酸と炭化水素 ュ隕石を思いだすだろう。 とが地球起源のものではないと推測したのだ。これは、かってのケースとく ォルゲイユ隕石は、一八六四年五月にフランス、ツールーズ近郊のオルゲ らべて、はるかに信憑性のある発表とみていいだろう。 イユ村に落下した二〇個あまりの隕石だが、一九六一年、これを研究してい 4
S F マガジン 3 月号・ ( 第 12 巻 3 号 ) 250 昭和妬年 3 月 1 日印刷発行発行所東京都 千代田区神田多町 2 の 2 郵 1 0 1 早川書房 TEL 東京 ( 254 ) 1551 ~ 8 発行人早川清 編集人森 . 優印刷所東洋印刷株式会社 スキャナー 第ニ次大戦前のヒ十ローたち 空想不死術入門 明侃達侃明篤 咽土門土円ロ 藤島森島藤村 斎中金中斎杉 紙扉ト博造子 ・ス慶苑 次ラ鍋淵井 表目イ真岩新 ー新人競作 友よ、明日を : 美亜へ贈る真珠 特別読物インサイド・ ()D u- ・ワールド〈下〉 新連載コラム 、にックネの世驫 新連載科学読物 でてくたあ サイエンス・ジャーナル宇宙にも生命の可能性 人気力ウンター 世界 t-f) LL 情報・ すべーす・たいむ・あんてな・ この愛すべき (DI.L 作家たぢ 第一章生きものと時間 U)I-L 雑誌の動向 第三回ス 伊藤典夫 ーバーマンはなぜ結婚しないか 」野耕世 第十一章ロポットは進化する ! 石原藤夫 団精ニ 126 67 15 日 本 司 外 加大福渡 藤伴島辺 昌正 喬司実晋 228184 4 100120 104 てれぽーと・ 世界みすてり・とびつく 横田順弥 梶尾真治 横田順、弥一一、 6 一 140 18 6 1 1
19 7 1 年 3 月号目次 ストルガッキー兄弟 アライドの白い柱 ハフノフ 『オー ! 』にご注意を ドニエプロフ 予言者 ビレンキン 生命の圧力 エムツェフ & パルノフ 酵素 深見〉蹕ⅱ 手塚虫。 --J ・スプレイグ・一イ・キャンプ 命令 アルジス、、、ハドリス ナゾゴ礁にて 長期連載異能作家 zo ・ 1 のニューアイーリンク最新作ー 解説・現代ソ連の 巻頭特集Ⅱ現代ソ連最新傑作選 第六回 脱走と追跡のサンバ 脱出への鍵は「時問流の乱れ」の秘密をとけばい 筒井康隆 ーそれを知ったおれは天文台へ : 11 129