る。だから日本人の方が欧米人よりも優秀な精神文明であるキリスト教にすら反抗し これでは私も浮かばれない。 て、サイエンスを構築したものは、ただひ である」 悲劇である。 とつ、ワンダーの精神だったのだ。 という迷信である。 ハード r.n や Z に対するこういった 「火焙りになっても″ワンダー″をはなし 戦争中、この迷信をよく先生から聞かさ ふしぎな反応は、私の体験では、サイエン ません」という人たちによって、サイエン スというものに対する認識というか感じかれた。この単純無類の珍説が迷信であるこ とは戦争その他で証明されたのだが、それスは生みだされたのだ。 たのちがいからくることが多い ワンダーとその超克、そして新しいワン でも後遺症はねづよくのこっている。 のはサイエンスであってもスベキ 今でもなお、サイエンスという言葉からダーの発見ーーーこれがサイエンスの神髄で ュラテイプであってもなんでもかまわない あり原点である。 ″実利的な小道具や″難解な数学理論″ ハードとか的科学解説とかい アインシュタインも、精神世界の発展は を連想してしまう人が意外に多いのであ うときには、たいていの人はサイエンス・ る。 ワンダーの感情の絶えまない克服であるー フィクションを念頭においているだろう。 たなか ーという意味のことを言っている。 サイエンス・フィクションはサイエンス 明治・大正期に活躍した物理学者の田中 だてあいきっ 欧米の科学者にとって、このことは本人 とフィクションを単純にたしたりかけたり館愛橘がこういった当時の指導者層の風潮 たちも気がっかないほどあたりまえになっ したものではない。新しい概念である。しをなけいて、政治家たちの前で、「自然に かしそれにしても″サイエンス″の本質を対するワンダーのために生命を投げ出す西ているが、それでも彼らはワンダーという 言葉が好ぎで、よく使っている。サイエン 認識しているかどうかで、サイエンス・フ欧文明の精神力をばかにしてはいけない」 スのがわから見れば、サイエンス・フィク という演説をしたのは有名な話である。 イクションに対する感じかたはずいぶんと ションをワンダー・フィクションと一一 = ロいか 欧米においてはサイエンスはワンダーと ちがったものになる。 えても、その語感はほとんど同じである。 一体となって発達してきた。″ワンダー サイエンスはうたがいもなく西欧文明の むろんこの″ワンダー″は、仲秋の名月 所産であるが、その西欧文明を受け入れるのために生命を捨てることのできる精神的 に天然の美を見出す心の動きではない。そ とき、かっての日本の指導者たちは大きな風土のなかで誕生したのが″サイエンス″ である。 の種の感動はファンタジーには通じるかも 誤りを犯してしまった。 ワンダー しれないが、ワンダーではない コペルニクスも・フルーノもケ。フラーもガ サイエンスの精神を導入するではな リレオも、″ワンダー″のために一生を捧とは、小さなリンゴは落ちるのに大きな月 く、その結果として出てきた実利的な小道 ということに はちっとも落ちてこない 具や小手先の理屈たけを大量に輸入してしげた。富や名声のためにサイエンスにとり くんだのではない。逆に富や名声や命まで驚嘆する心の動きである。また月にも人が まったのである。 住みうるのではないかーーーと考える心の動 も捨てて、ワンダーを選んだのである。 そのため、迷信が生じた。 ありとあらゆる迫害にあい、火焙りの刑きである。 「西欧文明は強力ではあるが物質文明であ サイエンスという語によってこのワンダ に処せられ、また西欧のもうひとつの巨大 る。しかし日本人は精神文明をもってい 5
以外のふつうのがものすごく発展ものなんだなあーーとビンときていただけ る。 したので、相対的にショポショポした感じ のはワンダーである になっているだけである。 しかし一般にはそうよ、 . し、刀 / - し フィクションもノンフィクションも、あプロバーの作家が的″とい ひさしぶりで連載を担当することになっ の有名なインデックス類も健在である。フ うのだから、とても近よりがたい堅苦しい た。本誌での連載はこれで四度めである アンの皆様、ご安心くたさい 話なのだろうと ( そして難解で理屈つぼい が、前回の『ロポット学入門』のおわ ( インデックスの新装版もさいごの校正に ことを自慢しているのだろうと ) 誤解され ったのが一九七一年のはじめだから、ノン入っています。ご期待ください ) てしまうことが多い。 フィクションではもう一〇年ちかくもごぶ さて、今回の連載も Z ( サイエンス 最近、妻の知人が、私がを書いてい さたしていたことになる。 ・ノンフィクション ) である。むろん るという話をきいて、親切にも本を買って ロの悪い人は、原稿用紙の買いかたを忘 マガジンへの連載だから的なでくれた。だが、奥付けに工学博士と記され れてしまったのではないか などと言っある。 ているのを見て、びつくりして読むのをや ロポッ てからかうが、そんなことはない。 的なといえば、伝統ある本 一 = ルめてしまった。高校受験でむりやりやらさ ト学以後もうまずたゆまず、 = クョやライの読者には説明の必要はなにもない。私がれた複雑怪奇な数学問題が連想されて、悪 フ社を喜ばしつづけてきた。ただ、 ( ー 的と言った場合、だ、たいあんな風な感がしたらしいのである。 新連載銀河旅一打と特殊相対ム刪 章 0 夢と好奇心の拡大 石原藤夫 イラストレー、ンヨン・宮武一員 4
〈特別掲載〉現代中国 U)L-L 宗教・理性・実践 目野田昌宏のセンス・オプ・ワンターランド サイエンス・クリティック地震予知ーーーナマズの超能力 映画講座第十三回失われた地平線 ◇新連載◇銀河旅行と特殊相対論 章 0 夢と好奇心の拡大 リータース・スト ーリイ〈豊田有恒選・評〉 題名未定新コラ乙⑧ 大会レホート スタジオぬ、ん 8 ・スターシッフ・ライフラリイ⑩ ) 乗越和義 ・スキャナークラリオンの卒業生、エフィンジャー 安田均 ・アーチスト・ア・ラ・カルト ( ④スティーウン・フェビアン 池見照ニ ・サイエンス・トヒック頭脳の集団移転 亀和田武 / 川又千秋 / 中島梓 / 森下一仁 ・レビュウ 霜月象一 DIMENSION 0 世界情報 ファンタム・スポット・ ◇連載◇メチル・メタフィジーク② 星雲賞の正しい使い方 巧 7 ロ 2 てれぽーと 第六回「ハヤカワ・コンテスト」宀爆規定発表 9 吾妻ひてお 厳家其 岩辺卓浩訳 野田昌宏 日下実男に 井口健ニ 石原藤夫 4 田 2 8 90 イラストレーション 依光隆金森達 中島靖侃岩淵慶造 畑農照雄中原絛 高信太郎霜月象ー 加藤直之佐治嘉隆 宮武ー貴 加藤直之 表紙 宮武ー責 目次カット 扉・目次レイアウト安藤三香子