銀煌の騎士勲章2 (一迅社文庫)

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はあ、と乾いた声が出た。 「しかし、そうか。騎士になるのか。学者や歴史家を目指しておるんだったら、正式にわしの 助手になってもらって、孫とともに手伝ってもらおうかとも思ったのじゃが : : : 」 「お孫さんがいらっしやったんですか」 「先月、十歳になった。君の今後の働き次第では、嫁にやってもいいぞ」 カインは困惑混じりの苦笑を浮かべた。そんなことを言われても、困る。 ハイラムⅡアズモードの執務室はあまり広くない。しかも、そこにあるのは執務机と堅い椅 子、小さな本棚で殺風景なことこの上なかった。使っている者には積極的に改善する気などな く、花でも飾られてはいかがでしようかと言った者への返事は、次のようなものだった。 「こんなところを居心地よくしてど、つする。卿はここがどこだと思っている ? 」 だが、先日から本棚の上に、白磁の花瓶が置かれている。花は時々取り替えられ、いまは竜 胆が蒼紫色の彩りを添えていた。 現在、部屋の主は、文官から報告を受けているところだった。中肉中背で、小さな目の中の 大きな黒い瞳が特徴的な男である。まだ三十にもならない若い男だが、ハイラムの信頼が厚い 人間のひとりだった。 】Ⅱ

「地下道の四ヶ所の出入口ですが、今朝すべて封鎖は完了したとの報告が入りました」 騎士登用試験において、不正に使われていた地下道のことである。ハイラムは試験当日の夜 には、地下道を使えなくするよう命じていたのだった。 書類を受け取り、目を通す。 こうかい 「石を積みあげて、膠灰で固めたのか」 「あの地下道を完全に埋めるのは無理な話です。恥ずかしながら、帝都の地下にあのようなも のが張り巡らされているとは、まったく存じませんでした」 「恥じることはない。私も知らなかったのだからな。正確には信じていなかった、というとこ ろだが」 そうぼう ハイラムの物言いに、文官の双眸が疑問の彩りを帯びた。 「卿は、アルティクス帝の皇帝伝を読んだことがあるか ? 皇帝伝は、歴代の皇帝たちが書き残した自伝のようなものである。自分が皇帝となって何を つづ 為したのかということが綴られているのだが、 書き方は皇帝によって違う。ルメリウスのよう に愛人の身体つきにまで言及するようなものを書いた皇帝もいれば、嘆息帝と呼ばれたラティ 章 勲ヌスなどは ソルヌス 「帝国歴六十一一年。麒麟月。本神殿を修復。帝祖の戦いを壁画に遺す」 パシロエス 「帝国歴六十五年。豊穣月。全土で凶作。一時減税。収穫祭は国庫から予算を出すー と目録のような書き方に終始している。

ノイラムの質問に、、 しえと文官は首を振った。皇宮に勤める者ならば、皇帝伝を読んでいる ことは必須事項のようなものとなっているが、それもルメリウス以降に限られる。 「アルティクスの皇帝伝に、地下道に関する記述があった。その前後は、この世はいやだ、絵 の世界に入りたいとかいう内容の詩で埋められていてな。気づく方がどうかしている。まるで 花畑の迷宮を彷徨っているような頭痛がしてくるからな。それでいて、たまに比喩や暗喩を使っ ているから性質が悪い インフェリア 「彼の皇帝は、隣国ではえらく評判が高いようですが . 「凝り性どもの国だからな、あれは」 ハイラムは冷笑を浮かべた。 インフェリアは、技術や文化という面では帝国を含めた周辺諸国の中で抜きん出ている。 かつばんいんさっ 眼鏡や時計を考案し、建築や釉薬に新たな発想を持ち込み、活版印刷を生み出して四角い とじほん 版型の綴本を多数つくりだすことに成功した。周辺諸国は負け惜しみを承知で、揶揄をこめ て「凝り性」と彼らを呼ぶのである。 「ともかく地下道の件は片付いたか。ご苦労だった」 次いで、ハイラムは五人ほどの文官の名を挙げ、言った。 「騎士登用試験を全面的に変更する」 さすがに文官は顔色を変えた。 「おそれながら、殿下。騎士登用試験は、ルメリウス帝より百年続いてきたもので :