死去する前年のフィンレイ、 ( ゲリ・ド・ラ・リー撮影 ) 。 1 その友達の一人に—という男がいて、彼の顔をたて るため、私の車は、彼の勤務先である・フリジストンの タイヤ以外使えぬことになっているのだが、この が、十数年前に突如ギックリ腰になってしまった。そ して、全快するまでの無聊に耐えかね、ステレオのシ ステムを買いこんた。岩城宏之の従弟たし、もともと 嫌いじゃないわけで、たちまちステレオに淫して、 つの間にか十年以上経ってしまった。金持ちの伜だ し、私などが自分で造った 3 0 0 のタマ・アンプで 迫っても迫りきれるものではない。イギリスのタンノ イという、今では手に入らぬーーーアメリカ製なら今も あるがー・・ーースビーカーから出てくるその音の豊かさは まさにこの世のものとも思えない : 彼の家でその音を聞く機会は一年に一度か二度しか ないのだが、学生時代に歌った、たとえば〈ポニー ェロイーズ〉とか〈スイート・ジェネヴィーヴ〉なん かが聞こえてくると、たちまちどーっと目の前の時間 が消え失せて、私は学生時代の日々に戻ってしまうの である。金がなくても、腹が減っていても、寒くて も、なんの苦にもならす、ただ、眼の前に無限の可能 たという 性がキラキラしていたあの頃 : : : 。あアー のに、俺の人生はなんでこうもトチ狂い、とっ散らか を・ 0 てしま 0 たんだろう : としをとってしまったなあ : : : と思うのはそんな時 である。 5
学生時代の私は、もし本を求めて神保町界隈をウロついてい くっていたのだから、やつばり気違いだ。 なければ、大学の構内でコーラスをやっていた。嘘だと思うかもし先日ひょんなことから、小松さんが清水脩の〈月光とビ = ロ〉と れないが、これで私は、日比谷公会堂の舞台にーー、その頃、東京文多田武彦の〈柳河〉の全曲の歌詞を暗記しているのを知 0 て腰を抜 化会館はまだなかったからーー・・東京交響楽団とともに何度も立ってかしたのだが、男声コーラスの ( ーモ = ーというやつは、 いったん いるのだ。プラームスの〈ドイツ・レクイエム〉、ヴェルディ、 モのめり込んでしまうとまさに″淫する″としか言いようのない妖し ーツアルト、フォーレ、ケルビー = などの〈レクイ = ム〉、それにい魅力のとりこになってしまう。大会用に、誰か男声カルテ 〈エリア〉や〈メサイア〉や〈四季〉なら、ぶつつけで今ステージ ット〔あるいはダブル、トリプルでも〕をつくる気のあるやつはい に立たされても、ちゃんとテナーの。 ( ートを受持って見せる。〈第ないかなあ。毎年、巡業して回ろうじゃないか。〈ザ・フ = ーチャ 九〉なら譜面なしでも大丈夫だ、ーーろうと思う。 1 メン〉とか、〈ハインラインズ〉とか名をつけて : いや、グ ところがこういっこレ。 ト丿ーをこなす混声コーラスだけたっ ルー。フ名は介ハ ーミリオン・サンズ〉だな ! ) て練習はきついのにーーーおまけにマネージャーまでやりながら 大学時代、ともにこの男声の ーに″淫した″仲Ⅲカ 一方で私は男声コーラスにも籍をおいて練習無欠席のレ「ードをつ私の、数すくない友達の大部分を占めている。 私を ()D I-L に狂わせた画描きたち わが青春のフィンレイ 野田昌宏 カット / 加藤直之 い : ロ 1 〒川Ⅷ 1 Ⅷ謝帯Ⅲ当ⅲ置 4
堀晃のマッド・サイエンス入門 ( 連載第 + 一回 ) ータース・ストーリイ ^ 豊田有恒選・評〉 横田順彌 目題名未定新コラ乙 ◇連載◇私をに狂わせた画描きたち 野田昌宏 4 簽わが青春のフィンレイ スタジオぬえ ・スターシッフ・ライフラリイ 7 大野万紀 ・スキャナー反世界の日本神話 8 安田均 ・エデイター・ア・ラ・カルト③デヴィッド・ 池見照ニ ・サイエンス・トピックメスの臭いで害虫駆除ーーーー ・レビュウ 亀和田武 / 川文千秋 / 谷口高夫 / 中島梓 / 深見弾 霜月象一 DIMENSION 0 0 第五回「ハヤカワ・コンテスト」中問発表 世界情報・ ・アネックス講座 2 ・ 豊田有恒の創作講座 サイエンス・クリティック宇宙の中で生きる 映画講座第六回ファンタジイ映画の興隆 ( 四 ) 連作宇宙叙事詩Ⅸ アョドーヤ物語 ( + ) ・てれほーと : ファンダム・スポット・ ートウエル 光瀬龍十萩尾望都 日下実男 井口健ニ 120 68 イラスト 依光隆 岩淵慶造 畑田国男 角田純男 千葉たかし 佐治嘉隆 城ノ内あずま 加藤直之 表紙 宮武ー責 目次カット 扉・目次レイアウト安藤三香子