SFマガジン 1984年3月号

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「カン・ツメ買っといてよかったでしよう ? 」 これで、たしか八食目のはずだ ( うぶ ! ) 。 始めている。 みのりが、先見の明を自慢した。 山下は、口元に運びかけていたカンパンをほうり出して、シート・ 「いやあ、まったくですね」 に寝ころんだ。そして、『禁煙なんざ、くそっくらえだ』と呟きな サトルが、ニコニコと笑った。しかし、次の瞬間 がら、煙草の。 ( ッケ】ジを乱暴にひきむしって、一本を口にくわえ 「あっ」 た。火をつける。」 みのりが、小さな叫び声をあげた。 「ど、どうしたんです ? また何かあったんですか ? 」 体の細胞のすみずみにまで、ーニコチンが行きわたるようだった。 「困ったわ」 「ねえ先輩」 本当に困ったという表情のみのりを、山下とサトルは、思わず手「なんだ」 に汗を握って見つめた。 「みのりさん、食べなくて平気なんですかね ? 実験室にこもっ みのりは、ペろっと舌を出して、言った。 て、かれこれ三時間くらいたちますよ。おなかすかないのかなあ」 「カンキリ、忘れちゃった」 「だれかさんとはちがうよ」 天井を見つめたままで、山下が言った。 こわれたものなら、修理すればい 。簡単なことだ。なぜもっと 5 早く、気づかなかったのだろう。なにも、あんなに大騒ぎするほど のことじゃなかったのだ。 ただ、ひとつだけ気がかりなのは、 「しかし、なんですね、先輩」 家がとっくに光速をこえて、なおもぐんぐん加速を続けているとい 口をもぐもぐやりながら、サトルが言った。 うことだ。どうやら衝突のショックで、制御システムが完璧に狂っ 「この、冷えきったレトルト食品ってのは、信じられないくらいま てしまったというのが真相らしいが、それにしても無茶苦茶な h ン ずいですね」 ジンだ。このまま、時間を逆の・ほり続けたら、いったい・ 「そうかい」 山下は、不意に身を起こした。あたりをきよろきよろと見回す。 山下は、げんなりした表情で、うなずいた。目の前にあるカン。ハ なんだ ? ンにも、ほとんど手をつけていない。 山下は首をひねった。今、たしかに、なにか違和感のようなもの 「うーん、まずい。次は何かな ? お、五目ごはん。ごはんのレト ルトってのは、ひとかたまりになってて、なんか食べにくいんですを感じたのだ。 山下は、二本目の煙草に火をつけて、ふとコンソール上のクロノ 5 よねー」 とか何とか言いながら、サトルは喜々として「、 , パッケージを破りメーターに目をやった。山下は、もう少しで、火のついた煙草をの

応もない。みのりは、山下をふり返って、不思議そうな声で言っ みこむところだった。 ~ 外部時間の経過を示すその針は、今やびくりとも動いていない。 「ねえ、何もかも正常なのに、 エンジンが動かないなんてこと、あ そういえば、それまでずっと応接室を満たしていた、重力場エンジ ンのかすかなうなり音も、聞こえない。山下が感じたのは、これだると思う ? 」 「さあ」 ったのだ。 ーー完全な静寂。 他に言うべき言葉もないって感じで、山下は、ゆっくりと首をふ ってみせた。 エンジンが停まっているー 山下は、はじかれたように立ちあがると、戸口のところから大声「さっきまでは停めようとやつぎになってたのに、今度は動かな で、みのりを呼んだ。 い。なんだか、ちょっとおもしろいわね ? 」 「そうですね」 「みのりさん ! みのりさん ! 」 陰々減々とした声で、山下が言った。 「なあに、山下さん。大きな声出して」 実験室から出てきたみのりが、廊下を小走りにやってきた。腕ま「どうなっちゃってるんです ? 」 五目ごはんのレトルト・ パックを握りしめたままのサトルが、の くりをして、片手にドライ・ハ 、片手にモンキーレンチを握ってい んきそうな顔を、二人の間につき出して言った。 る。鼻の頭が、油で黒く汚れていた。 「お前、今度は、やけに落ち着いてるな ? 」 「制御装置は、直ったんですか卩」 「そりゃあもう。ーー人間、メシさえ腹いつばい食ってれば、何も 山下が、つかみかからんばかりに言った。その勢いにおされて、 心配することはありません」 二、三歩後ずさりしながら、みのりは肩をふった。 サトルは、自信たっぷりにうけあった。 「もう少しよ。あとは配線を、エンジン本体に接続するだけ」 「じゃあ、どうして 案外、その通りなのかもしれない。サトルの丸顔をぼんやり見つ 山下は、我知らずコンソールのクロノメーターをふり返った。みめながら、山下がそんなことを考えていると、 「ちょっと、二人とも。窓の外を見て何か気づかない ? 」 のりも、山下の視線を追って、事態に気づいた。 みのりが、山下たちの注意をうながした。 「あら。変ねえ。どうしちゃったのかしら、この子。ーーーちょっと 待ってて」 「そう言えば」 みのりは、再び実験室にかけこんだ。 と、山下が言った。ついさっきまでは、何やら灰色つぼくもやっ 山下が煙草を一本灰にする間があって、みのりは戻ってきた。コていたのが、今はまっ暗た。一 ンソールの前に座って、いくつかのスイッチを素早く操る。何の反「まっ暗ですね」 6 4

0 サトルが言った。 「これ以上はないってくらい、まっ暗でしょ 「それが、なにか ? 」 「こういうことだと思うの。つまり、あたし たちは、エンジンの異常加速で、時間をどん どん逆行していたわね ? ここまではしし 小学生みたいに、う 二人は、お行儀のい なずいた。 「逆行して、逆行して、とうとう着いちゃっ たのよ」 「どこへ ? 」 「中国の古い言葉で言うところの『太極』っ て所。つまり、今はこの宇宙が始まる前の状 態なのよ。時間も空間もない。ビッグ・ハン以 前の状態ってわけ。エンジンが停まって動か ないのは、そのせいだとしか考えられない わ。だって、動きようがないでしょ ? 」 「要するに、行きつくところまで来たってこ とですか」 「そういうこと」 しささかの感慨を胸に、窓の外の 山下は、、 暗黒を見つめた。全てはここから始まったの ー ( ℃力なる道も存在しえ どから、この先こよ、、、